2022年10月27日更新会社・事業を売る

バリュエーションとは?意義と算出方法の種類、注意点を解説

バリュエーションとは投資案件全般において対象の価値を評価する行為であり、M&Aの際にも非常に重要なプロセスです。本記事では、M&Aシーンに焦点を絞って、具体的なバリュエーション方法の詳細を紹介するとともに、注意点などについてもわかりやすく解説します。

目次
  1. バリュエーションとは?
  2. バリュエーションの方法・種類
  3. バリュエーションの注意点
  4. スタートアップが抱えるバリュエーションの課題
  5. バリュエーションのまとめ

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バリュエーションとは?

個人であっても法人であっても、投資行為をしようとする場合、投資対象に投資する価値があるかどうか評価してうえで決断・決行しなければなりません。このときに、投資に値するかどうか価値を計算・評価する行為のことを、バリュエーション(Valuation)と呼んでいます。

バリュエーションの方法には、NPV(正味現在価値)・ペイバック(回収期間)法・会計上の収益率・IRR(内部収益率)などが挙げられます。また、新たな指標としては、経済的付加価値(EVA)が代表的です。

なお、現在の株価と本来の企業価値を比較する株価指数(株価バリュエーション)をバリュエーションと呼ぶケースもあり、株価指数の具体例を挙げるとPER(株価収益率)・PBR(株価純資産倍率)などです。

投資対象というと一般的に株式や不動産などが挙げられますが、このうち株式の評価は結果的に対象企業の評価を行う行為と同等です。つまり、M&Aシーンにおいて「買収対象企業を相手に行う価値の評価」となります。

M&Aシーンにおいてバリュエーションは実施されますが、これは日本語で「企業価値評価」と表記されるプロセスです。そこで本記事では、M&Aにおけるバリュエーションについて詳しく紹介します。

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バリュエーションの意義

M&Aにおけるバリュエーションの意義は、企業価値の評価にあります。簡単にいうと、対象の会社を買う場合にふさわしいと考えられる値段の算定です。しかし、ひとことに値段といっても、値付けには複雑な計算が伴います。企業価値にはさまざまな要素があり、一面的な観点での計算は不可能であるためです。

企業には多くの社員が所属しており、業種に特化した施設・設備を所持する企業もあります。また、事業所として土地や建物を所有するケースもあるほか、何らかの特許を有している可能性もゼロではありません。

そのほか、対象会社ならではの営業ノウハウ・販売ノウハウ・開発ノウハウなどを抱えているケースもあります。その反面、投資に失敗して大きな負債を抱えている可能性もゼロではありません。企業は、こうした複雑な要因のうえに成り立っています。

上記を踏まえて、M&Aにおけるバリュエーションとは、企業が現在行っている事業の将来性や今後の収益性を予測して価値を評価する(値段を付ける)行為です。

そのため、実際に採用される方法は一つに限定されていません。一つの手法だけでは、正しい評価を出せるとはいい切れないためです。

加えて、現在価値の評価だけでなく将来性の評価の加味が望ましい点も、算定方法が複数存在する理由の一つです。

M&Aにおけるバリュエーションには数種類の方法が採用されており、複数の方法を組み合わせて最終評価を出すことも多いため、算出には専門知識が求められます。よって、M&Aのバリュエーションを行う際は、専門家に依頼することをおすすめします。

M&A総合研究所には豊富な知識と経験を持つアドバイザーが在籍しており、培ってきたノウハウを生かしてM&A手続きをフルサポートいたします。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。

相談料は無料となっておりますので、M&Aをご検討の場合にはお気軽にお問い合わせください。

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M&Aでのバリュエーションの生かし方

M&Aでバリュエーションを行う理由は、買収候補企業の適正価格を把握するためです。つまり、少しでも安く買収する目的で行われるのではなく、その企業の価値を正確に把握するために実施されます。

買収側の経営陣は、買収を決定すると株主をはじめステークホルダーへの説明責任を負います。このときに、合理的かつ定量的に説明できる適性価格であれば、ステークホルダーから反発が起きないため、バリュエーションを行うのです。

また、M&Aでは交渉相手である売り手企業が存在します。売り手企業としては、M&A取引に臨む際、事前に売却希望価格(オファー価格)を検討しなければなりません。

そこで、買い手と売り手が争うことなく買収協議をスムーズに進めるうえで、バリュエーションにより評価された適正価格は大きな役割を担います。

M&Aを行う際は、事前に次項から紹介するさまざまなバリュエーション手法の実態を把握しておきましょう。

複数種類から最適な手法を選び取ることも重要であるほか、交渉時はバリュエーションで算定した適正価格に固執せず、柔軟に売却価格を決定していく姿勢もM&Aを成約させる秘訣です。

スタートアップにおけるバリュエーション

スタートアップ企業にとって、事業成長や出口戦略、資金調達などの手段を活用する際は、バリュエーションが重要です。

目的が事業の継続的な成長であれば、5年、10年、20年と事業継続を前提した価値の算定が必要ですが、バイアウトとして事業を清算したいケースであれば企業を手放す前提の算定になるでしょう。

また、バリュエーションをとおして自社の企業価値が算出されるため、資金調達をする際なども投資家やベンチャーキャピタルに対する重要な判断材料として用いられます。

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バリュエーションの方法・種類

本章では、M&Aで実際に採用されているバリュエーションの手法について具体的に紹介します。M&Aのバリュエーションの種類は、大きく分けてコストアプローチ・インカムアプローチ・マーケットアプローチの3つです。これら3つの手法は、さらに具体的な評価・算定法に細分化されます。

ここからは、これら3つの手法について順番に詳しく紹介します。その後、ベンチャー企業で例外的に採用される手法「ベンチャーキャピタルメソッド」についても取り上げるので合わせて把握しておきましょう。

①コストアプローチ

コストアプローチとは、基本的に貸借対照表にある純資産と負債に着目して企業価値を評価する方法です。コストアプローチの大きな特徴は、貸借対照表を使って行うのみのシンプルな方法であり、手軽かつ手早く客観的な評価を行える点にあります。

ただし、コストアプローチでは企業の過去から現在の状況までは読み解けるものの、将来性など未来の価値は評価要素に組み込まれていません。そのため、M&Aにおけるバリュエーションとしては、現在それほど採用されていない評価方法です。

なお、コストアプローチはさらに「簿価純資産法」と「時価純資産法」の2つの方法に分類されるので、ここからは個々の違いを比較し把握しておきましょう。

簿価純資産法

簿価純資産法とは、貸借対照表の純資産合計額から負債総額を差し引いて企業価値を評価する方法です。

ただし、帳簿上の数字は会計上の決まりに沿って計上されており、実際の資産価値と乖離している可能性があるため、簿価純資産法で得た評価の確実性は低いといえます。

時価純資産法

時価純資産法は、簿価純資産法の欠点を補うべく考案された方法です。具体的にいうと、純資産について簿価ではなく時価に換算してから負債総額を差し引く手順で評価を算出します。

この方法についてはさらに種別がありますが、M&Aでは主に「再調達原価」の指標が採用されます。これは資産や負債を新たに取得し直す前提に立って、その場合に生じる付帯費用なども時価に加算する方法です。

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②インカムアプローチ

インカムアプローチとは、コストアプローチと対照的に、評価対象の会社が将来獲得するキャッシュフローに着目して企業価値を評価する方法です。インカムアプローチに分類される方法も複数ありますが、M&Aで主に採用される方法としては「DCF法」が挙げられます。

DCFとは「 Discounted Cash Flow」の略であり、具体的にいうと将来のキャッシュフローを現在価値に割引したうえで有利子負債などを差し引く企業価値評価方法です。この方法は、評価対象企業の将来性を加味した評価の算出に適しています。

その反面、インカムアプローチは、緻密な事業計画を作成しなければ正確な企業評価の算出が難しい方法でもあります。また、算定に用いる割引率の数値や事業計画の数値内容などは担当者の裁量次第で決められるため、担当者の主観に左右されてしまう点もデメリットです。

したがって、DCF法を用いる場合は、担当者を複数体制にするほか、事業計画内容自体が妥当かどうか精査を行うといった措置を講じると良いでしょう。

【関連】インカムアプローチ
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③マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、すでに市場で成立している価値を参照して企業価値評価を行う方法です。過去に実際に行われた取引や市場で成立している価値を参照して企業価値を評価する方法であり、客観性を担保しやすい点がメリットといえます。

ただし、評価対象となる会社と類似している会社や類似するM&Aの成立案件探しは困難です。類似している会社やM&A成立案件を見つけられない場合、マーケットアプローチの採用を断念しなければなりません。

また、比較対象とする会社を選ぶ行為自体が担当する人物による主観的判断にもとづくため、恣意性を排除できない点もデメリットです。さらに、マーケットアプローチ手法で導き出す企業価値評価の数値は、比較をもとにした推察であるために精密性を欠きます。

したがって、実際には、別のバリュエーション方法と組み合わせて行うのが望ましいです。状況に応じて適用により評価できるケースとそうでないケースがありますが、マーケットアプローチには以下の5種類の方法が挙げられます。

  • 市場株価法
  • 売買実例法
  • 類似企業比較法
  • 類似取引比較法
  • 類似業種比較法

それぞれの方法を順番に詳しく紹介します。

市場株価法

市場株価法とは、上場会社のみ採用できるマーケットアプローチの一つです。具体的にいうと、対象会社の直近1~6ヵ月の平均株価を評価額とする、シンプルかつ客観的で便利な方法だといえます。ただし、値動きに特殊な変動が見られる場合には、期間設定などに注意が必要です。

売買実例法

売買実例法とは、非上場企業で取引市場には株価のデータは存在しないものの、第三者に対して自社株式の売買を行っている場合に採用できる方法です。具体的にいうと、過去の売買取引での価格を株式評価額として考えます。

この論拠は、法人税法における「過去の売買取引額が適正と認められる場合は株式評価額とみなす」規定にもとづいています。

類似企業比較法

類似企業比較法とは、評価対象企業と同業種で企業規模などが類似している上場企業を探したうえで、その企業の株価などをベースに対象会社の評価を導き出す方法です。

類似する企業があれば非常に信頼性の高いデータが得られますが、類似企業の探索が非常に困難であるケースも多く見られます。類似企業が見つからない場合、類似企業比較法を用いることはできません。

類似取引比較法

類似取引比較法とは、近年成立したM&A事例の中から評価対象会社と類似するケースを探したうえで、そのM&Aの売買成立価格を対象会社の評価の一つとして採用する方法です。

バリュエーション方法として一定の評価はあるものの、M&Aが盛んに行われている業種とそうでない業種では価格の算出方法が異なるとの指摘も目立っています。

類似業種比較法

類似業種比較法は、マーケットアプローチの中で最も緻密さに欠けます。具体的にいうと、資料として国税庁が発行する「類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等」を用いて、ここから評価対象企業と同一業種の株価やそのほかの数値データを参照して評価を行う手法です。

上記の資料は業種ごとの上場企業の平均値であるため、たとえ同業種であっても対象企業の現実的な評価に直結するとはいえません。したがって、M&Aにおけるバリュエーションとしては、現在ほとんど採用されていない方法です。

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④ベンチャーキャピタルメソッド

M&Aで採用されるバリュエーション方法は3種類あると述べましたが、そのほかにベンチャー企業を対象とする例外的なバリュエーション方法も存在します。それが、ベンチャーキャピタルメソッドと呼ばれる方法です。

具体的にいうと、評価対象であるベンチャー企業が仮に上場したとして、その際に得られるであろう金額を、一定の数式を用いて現在価値に割り引いて株価評価を算出します。

ベンチャー企業では、収益が不安定でインカムアプローチのもとになる事業計画書が作りにくい(作成しても信用がおけない)ため、結果的にインカムアプローチが不適格です。また、ベンチャー企業が手掛ける新興事業では、類似する上場企業がほとんど見られません。

上記の理由から、マーケットアプローチに適さないため、代用できる方法として考えられたのがベンチャーキャピタルメソッドです。

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バリュエーションの注意点

M&Aでバリュエーションを行う際に注意すべき点は、「恣意的な評価」と「実際の売却額との違い」です。インカムアプローチでのバリュエーションは担当者の主観性が加味される余地があるため、結果的に恣意的な評価となるおそれがあります。

ここで恣意性の振れ幅が大きい場合、バリュエーションで得た企業評価は実態と大きく乖離しており、大問題をもたらしかねません。

また、バリュエーションで算定した適正価格に固執しないことも大切です。そもそもM&Aにおける最終的な価格は、バリュエーションで算定した数値をもとに買い手と売り手が協議して決められます。

場合によっては予期せぬ事態の発生などで、バリュエーション結果とかけ離れた数字で決着するケースもあります。

実施のタイミング

バリュエーションが実施されるタイミングは、一般的には基本合意の締結前・デューデリジェンス実施後の契約交渉前・意思決定前です。

まず、基本合意の締結前に実施する場合は、契約をするかどうかの判断材料とすることができます。デューデリジェンス実施後の契約交渉前に実施する場合は、デューデリジェンスで調査した結果が反映される点がメリットです。

また、意思決定前に実施する場合は、投資実行前の取締役会でバリュエーション結果が必要であるケースが多いですが、契約詳細が最終段階であるため簡易的なものが一般的です。

売却側と買収側の企業価値の違い

企業価値を算出する際、売却側と買収側の価額が一致しないこともあり、多くみられるのは、買収側がデューデリジェンスを行った結果、売却側が提示したバリュエーション結果と大きく違うケースです。

これは不良在庫や帳簿価格より時価が下がった資産、実現性の低い事業計画などがあった場合などに発生します。このような場合、買収側はM&Aによるシナジー効果をとともに、減価要因・増価要因を検討し、再度算出をする必要があるでしょう。

バリュエーションは評価する要素が多く、算出方法も多いため、バリュエーションの目的や対象企業の状況に合わせた手法を選択する必要があります。バリュエーションの結果をより公正なものとするには、複数の方法を併用するのがよいでしょう。

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スタートアップが抱えるバリュエーションの課題

スタートアップ企業からみるとバリュエーションは資金調達における一つの指標です。しかし、スタートアップ企業はほとんどが設立数年の会社が大半であり、一般的な事業会社で使われているバリュエーションが適用しにくいといった特徴があります。

スタートアップ企業と投資家では選択したバリュエーションの計算方法によっては、微妙に評価が異なってくるため双方の落とし所を模索していることになります。スタートアップは、有形固定資産を持たず、ブランドや技術力、ノウハウといった無形固定資産がバランスシート上に表れません。

一方でAIやIoT、ドローンなど今後価値が高くなるであろう可能性を秘めたスタートアップ企業が多く存在します。しかし、現在のバリュエーションは、基本的に資産や負債を中心に価値決定がされるケースが多いのが現実です。

将来的に価値が上がると予想される技術やノウハウ、エンジニアなどの人的価値など、バリュエーションに換算されてないものを、投資家やベンチャーキャピタルが価値や期待値として突き合わせていけることが重要といえるでしょう。

バリュエーションのまとめ

バリュエーションはM&Aで最も重要なプロセスの一つであり、現在までさまざまな手法が考案されてきました。これまで一つの手法に問題が生じれば別の新たな手法が考え出されたように、今後も新たな手法が生まれる可能性が高いです。

そのため、特定の手法に固執せず、柔軟に新たなバリュエーション手法も研究して取り入れていく姿勢が大切です。バリュエーションでは既存の手法に固執しないことで、良い結果を招くことにつながります。

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