2022年6月6日更新会社・事業を売る

事業戦略とは?事業戦略策定方法やフレームワーク、事業戦略事例、おすすめの本をご紹介

事業戦略を立てるときには、会社の内部環境や外部環境をしっかりと把握して分析することが重要です。事業は闇雲に進めてもうまくいきません。事業戦略を立案し、実行することで成功しています。今回は、事業戦略についてさまざまなフレームワークや事例を紹介します。

目次
  1. 事業戦略とは?
  2. 事業戦略策定方法
  3. 事業戦略のフレームワーク
  4. 事業戦略事例
  5. 事業戦略でおすすめの本
  6. まとめ

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事業戦略とは?

「事業戦略」とは、会社の全体的な戦略ではなく、会社の各事業ごとに戦略を立てることをいいます。また、事業戦略を立てることを「策定する」と表現します。ちなみに、会社全体の戦略は「経営戦略」といいます。

市場では各事業ごとに競争が起きているため、経営戦略とは別に事業戦略を策定することが一般的になっています。したがって、「事業戦略」と「経営戦略」の2つの効果を合わせて事業を成功させることで会社全体が大きく成長します。

「事業戦略」では、事業として向かう方向性と進み方を策定します。「事業戦略」は、事業の目的を達成するために必要な事項と、自社の経営方針に関する事項を盛り込んだものになっており、事業ごとに戦略を策定して目標やプロセスを明確にしていきます。

また、「事業戦略」ではできる限り具体的な目標を示すことで事業を推進していく機能を持ちます。市場、環境、競合他社の存在、消費者の動向、流通の変化など、自社の力だけではコントロールできないことを予測し、会社の従業員数や人材のスキル、生産設備、資金力などを考慮に入れて戦略を策定していきます。

さらに、具体的な目標がない状態で事業を進めた場合、事業が成長しない可能性があります。それを避けるために「事業戦略」は重要な役割を果たします。「事業戦略」を策定して事業を進めていくことで目標や方針を明確にし、事業部全体で取り組む姿勢が大切なのです。

事業戦略策定方法

事業戦略は、下記の5つのステップで策定します。順番に見ていきましょう。

  1. 目的・定量目標の設定
  2. 現状分析
  3. 方向性の策定
  4. フィジビリティスタディ
  5. 施策を策定し実行する

⑴目的・定量目標の設定

はじめに行うことは、「目的・定量目標の設定」です。「目的・定量目標の設定」では、「なぜ事業戦略を策定するのか?」という目的を明確にした上で、定量目標を設定します。「目標達成自体」を「事業の目的」と考えても良いのですが、その「目的」が明確でなければ、最終的に「目標」もブレてしまい、のちにうまくいかなくなってしまいます。
目的・定量目標の設定をする場合は、曖昧な目標ではなく、事業部全体が納得のいく具体的な目標を決めましょう。そして、何のための事業戦略なのかを明確にしておく必要があります。

⑵現状分析

目的や定量目標を明確にしたら、「現状分析」を行います。「現状分析」は、事業戦略の非常に重要なプロセスであり、今後の計画にも大きな影響を与えます。

事業内容によって分析する内容は異なりますが、事業を実施している業界での自社の位置づけ、消費者の動向、市場での自社のブランドイメージや競争力、競合他社との比較などの分析をします。

自社の現状を分析することで、自社製品のシェア率をはじめ、競合他社と自社を比較した場合に強みとなっているところと弱みとなっているところなどを精査して分析していきます。

また、自社の製品やサービスについて、消費者がどのように感じているのか、どのようなニーズがあるのかなども分析しておく必要があります。事業戦略の方向性を明確化するためには非常に重要なプロセスです。

⑶方向性の策定

3つ目のステップでは、事業戦略の「方向性の策定」を実施します。2つ目のステップで現状の分析をしたことで、「どのようなことが戦略として必要なのか」を予想できるようになります。それらのデータをもとに、市場や消費者の動向、競合他社との比較によって、社外に対する事業の方向性を検討していくのです。さらに、自社の製品やサービスなどについても、強みとなっているところと弱みとなっているところを深堀して方向性を考えていきます。

また、事業戦略策定時は、一つの方向性だけでなく、複数の方向性を準備しておく必要があります。一つの方向性だけでは、戦略として行き詰まる場合があるからです。どんなに具体的な事業戦略の方向性の策定をしても、それが策定通りにいかないことも想定しておかなければなりません。

そのような事態が発生した際は、複数の戦略を策定しておくことで最悪の事態を免れることができます。一つの方向性だけに絞った事業戦略は、その方向性では成功しない可能性もあるので、複数の方向性を考えておきましょう。

⑷フィジビリティスタディ

4つ目のステップは「フィジビリティスタディ」です。「フィジビリティスタディ」とは、事業戦略の実現可能性を事前に調査・検討することをいいます。

3つ目のステップ「方向性の策定」では、複数の事業戦略に関する方向性を策定します。この段階では、複数ある戦略の中で、どの方向性に実現的な可能性があるのかを見極める作業をしていきます。複数あった方向性の違う戦略の中から、より実現的な可能性がある方向性を当てはめていき、事業戦略として適切なやり方を示しているものを選定していくのです。

「フィジビリティスタディ」では、選定した事業戦略に対して、かかる費用、予測される結果、実現の可能性などについて話し合い、シミュレーションを実施して、それぞれの方向性を客観的に評価していきます。最終的にどの方向性で事業戦略を進めていくのかを明確化していくのです。

⑸施策を策定し実行する

5つ目のステップでは、4つ目のステップ「フィジビリティスタディ」で適切な方向性を決めた事業戦略を実行に移します。具体的には、事業戦略としていた内容を実行可能なレベルの施策に策定して実行します。事業戦略を策定しただけでは方向性を示すだけのものとなってしまうため、具体的な実行内容にしていく必要があります。

複数の施策については、まず、重要度や緊急度などを踏まえて優先順位を決めます。それからスケジュールを決定し、事業戦略として実行していきます。事業戦略の策定方法にはいくつかの方法がありますが、段階的に事業部内で話し合いや会議などを経て、事業戦略を策定します。

事業戦略のフレームワーク

事業戦略には、適切な状況の分析が必要不可欠です。しかし、ただ闇雲に情報だけを集めても、事業戦略を策定することは困難です。得た情報を「どのような内容でどのようにまとめるか」「どのように多くの情報をまとめるか」など、情報は得るだけでなく活かせなくては意味がありません。

そこで、得た情報に対して、事業戦略に適した「フレームワーク」を取り入れることで、何をどのようにまとめればよいのかが明確化されます。戦略に用いられる「フレームワーク」にはいくつかありますが、ここでは事業戦略に適切な以下のフレームワークをご紹介します。

  1. PEST分析
  2. 5Forces分析
  3. バリューチェーン分析
  4. VRIO分析
  5. 3C分析

PEST分析

事業戦略では、外部環境の分析が重要です。外部環境は自社ではコントロールできない部分が多いため、外部環境を分析することで事業戦略を策定することができます。

PEST分析とは、政治の「Politics」、経済の「Economy」、社会の「Society」、技術の「Technology」の頭文字をとった分析方法で、それぞれの外部環境から分析をする方法です。

  1. 政治的(Politics)環境要因は、法律、規制緩和、税制改革、政権交代などを示します。
  2. 経済的(Economy)環境要因では、景気物価指数、為替変動、企業の設備投資動向などの分析をします。
  3. 社会的(Society)環境要因は、人口動態、生活習慣、ライフスタイル、宗教や文化などを中心に分析をしていきます。
  4. 技術的(Technology)環境要因は、新しい技術や特許などの分析をします。

 

これらの外部環境は自社だけの力でコントロールできるものではありません。PEST分析を行うことで、政治や経済などが事業に与える影響を考え、整理・分析を実施することができます。

5Forces分析

5Forces分析は、業界の魅力を分析するためのもので、マイケル・E・ポーターが提唱した方法です。自社製品やサービスの魅力度を分析することで、将来的な売上高を見極めることができます。

また、売り上げに与える影響について下記の5つの要素から分析できます。

  1. 既存競合同士の敵対関係
  2. 新規参入の脅威
  3. 代替品・代替サービスの脅威
  4. 供給者の交渉力
  5. 買い手の交渉力

 

例としてハンバーガー業界を当てはめてみましょう。

  1. 既存競合同士の敵対関係については、すでにチェーン展開をしているお店として、マクドナルドやロッテリア、モスバーガーなどが当てはまります。
  2. 新規参入の脅威については、国内飲食チェーンの参入や海外ファストフードの日本進出などが考えられます。
  3. 次に、代替品・代替サービスの脅威として、カフェやコンビニエンスストアがあげられます。
  4. 供給者の交渉力については、「原材料の生産者などの協力が得られるのか」などの分析になります。
  5. 買い手の交渉力については、「買い手は学生や40歳代ぐらいまでの社会人」などの分析となり、主な買い手の分析を実施します。

 

このようにして、業界の魅力を分析することで、どのような戦略を実施する必要があるのかを分析・検討することができます。

バリューチェーン分析

「バリューチェーン」とは、価値連鎖のことをいいます。つまり、「バリューチェーン分析」を実施することで、内部環境の分析が可能となり、どの段階で付加価値を創出できるかを分析することができます。「バリューチェン分析」は、事業内容によって項目が変わるため、ここでは製造業と通信サービス業界のバリューチェーンを見ていきます。

製造業では、①商品企画、②設計、③試作、➃資材調達、⑤生産、⑥流通、⑦販売、⑧保守サービスという流れになります。この工程の中で付加価値になる部分を分析して、自社の強みとなる部分を見つけていきます。

通信サービスの場合は、①インフラ(基地局)構築、②営業、③サービス契約、➃サービスの提供、⑤通信料金の徴収、⑥保守サポートという流れになります。この工程の中で、付加価値となる部分やどのように事業活動をしていくのかを分析をしていきます。

VRIO分析

「VRIO分析」は、経済価値の「Value」、希少性の「Rarity」、模倣困難性の「Imitability」、組織の「Organization」の頭文字をとったフレームワークで、内部環境分析をすることができます。自社の強みと弱みを把握することができるフレームワークです。分析は以下の流れで行ないます。

  1. 見極めに使用するツール(一覧表もしくはフローチャート)を選択する
  2. 価値(Value)の評価
  3. 希少性(Rarity)の評価
  4. 模倣可能性(Imitability)の評価
  5. 組織(Organization)の評価
  6. 強みの質と競争優位性の見極め
  7. 戦略や施策を検討する

 

事業戦略を策定する上で、自社の強みを活かすためには、外部環境の分析だけでは不十分な可能性があります。そのため、まずは自社の内部環境をしっかり把握するためにVRIO分析を活用します。それぞれの項目に合わせて、どのような状態にあるかを把握して分析を実施します。

3C分析

「3C分析」とは、内部環境と外部環境からの分析ができる方法です。「3C」とは、顧客の「Customer」、競合「Competitor」の動向、自社の「Company」の頭文字からなっている分析方法です。自社を中心に、顧客、競合の動向の分析を実施します。

顧客については、流行や市場のニーズなどの分析をします。競合の動向については、業界内の競合他社がどのような動きをしているのかを調査します。これらの調査結果をベースに、自社の強みを見極めて事業戦略を策定していきます。

また、「3C分析」は、自社の問題や課題を明確に分析する場合に多く使用されます。たとえば、売上の低下、在庫過多、キャッシュフローの悪化、人件費の上昇など問題となっている分析をしたあと、競合の動向として、競合会社に新商品の投入、新規参入業者の増加で競争激化などがあることを確認します。

そして、顧客については、既存顧客の来店率の低下、新規顧客獲得に減少などのような問題点を提示していきます。この3つの要素から、どのように事業戦略を立てればいいのか、検討し分析を実施するのが「3C分析」です。

SWOT分析

SWOT分析は、内部環境・外部環境両方の分析が可能であるため、事業戦略で頻繁に用いられているフレームワークです。SWOT分析は、会社の強み「Strength」、弱み「Weakness」、機会「Opportunity」、脅威「Threat」の4つの単語の頭文字をとった分析方法になっています。

会社にとって強みと弱みを把握しておくことは、経営をする上で非常に重要なことです。くわえて、機会や脅威についても把握しておくことが戦略を策定するときのポイントになります。強みと弱みに関しては、内部環境の把握につながり、機会や脅威に関しては外部環境の把握につながります。

フレームワークには以上の5つ以外にもたくさんの種類があります。他のフレームワークについて知りたい方は、ぜひ関連記事もご覧ください。

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M&Aによるシナジー効果とは?

事業戦略事例

企業の事業戦略事例について、アメリカのGoogle社の事例を見ていきましょう。

現在では、ほとんどの方が使用しているスマートフォンですが、発売当初はApple社のiPhoneが先行している状態でした。そこに、Google社が参入することになりましたが、Apple社は独自のOSを利用しているため、Google社も独自のOSが必要になりました。

大手企業であるため、開発する予算は十分にありましたが、先にApple社が事業を展開しているため、Google社は早期のOS開発と販売をしなければならない状態だったといえます。そこでGoogle社は、自社で開発を行うのではなく、独自のOSを開発している会社のM&Aを実行して、開発期間を短縮することにしました。 これによってアンドロイドを最適化して市場に参入することができたのです。

スマートフォン市場において、Google社はApple社に先を越されていました。しかし、アンドロイドの開発をしていた会社を買収することによって、スマートフォン市場に無事参入できたのです。そのほかにも、Google社はアンドロイドをオープンソースにしたことやplayストアの展開によって、市場を広げています。

この事例のように、会社の事業戦略を実現するためのひとつの手法としてM&Aを実施する場合もあります。M&Aを実施すれば、事業規模の拡大や新規事業への進出など、自ら時間とコストをかけて現地調査から行うよりも、目的を達成する可能性を高めることができます。

ただし、実際のM&Aの成功率は決して高くありません。また、M&Aは長ければ1年以上の時間がかかり、内容的にも専門性が必要となるため簡単には実行できません。このようにM&Aは、時間やコストがかかり、判断を誤ると場合によっては失敗に終わってしまう可能性があります。

M&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所にお任せください。M&A総合研究所ではM&Aの知識・経験豊富なアドバイザーがフルサポートいたします。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)M&Aに関して、無料相談をお受けしておりますのでお気軽にお問い合わせください。

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事業戦略でおすすめの本

⑴事業戦略のレシピ

著者は鬼頭孝幸と山邊圭介で、日本能率協会マネジメントセンターからの出版されています。「現状分析」「戦略プション策定」「オプション評価・絞込み」「計画・アクションへの落とし込み」という各ステップで、「具体的に何をすればいいのか」「何に注意しておくべきなのか」実際に現場で評価の高い戦略作りのノウハウを公開しています。

各ステップの説明では、多くの企業事例が掲載されているため、実際にイメージしながらわかりやすく理解できるようになっています。 また、戦略立案のプロセスや必要最小限のフレームワークも紹介されており、実務的な書籍です。

⑵戦略策定概論―企業戦略立案の理論と実際

著者は波頭亮で、産業能率大学出版部から発行されています。戦略の定義や分析のためのフレームワークなどが掲載されており、それぞれのポイントがフレームワークできっちりと整理され、解説させているのでわかりやすい書籍です。

ポーター、コトラー、アンゾフの戦略理論からSISまで、おもしろく読むことができます。1995年の出版で多少古い書籍ではありますが、現在でも十分に活用できる書籍です。

⑶戦略力を高める ―最高の戦略を実現するために

著者は平井孝志で、東洋経済新報社から出版されています。「思考の質をどう高めるか」「決断のスピードをどう速めるか」「なぜ一流の企業や人材でも道を誤るのか」など、日本人最大の弱点を克服するためのノウハウが掲載されています。

実際の企業例やケース演習も満載です。2010年に出版されていますが、戦略についての仮説を航海で目的地にたどり着くための海図に例えており、わかりやすい構成となっています。

まとめ

事業戦略を立てるときには、会社の内部環境や外部環境をしっかりと把握し、分析することが重要なポイントです。事業は闇雲に進めてもうまくいきません。どのような会社でも事業戦略を立案し、実行することで成功しています。さまざまなフレームワークを利用して、適切な事業戦略を策定するようにしましょう。

下記に要点をまとめました。

 

  • 「事業戦略」とは、会社の各事業それぞれに戦略を立てること


【事業戦略策定方法】

  1. 目的・定量目標の設定
  2. 現状分析
  3. 方向性の策定
  4. フィジビリティスタディ
  5. 施策を策定し実行する


【事業戦略のフレームワーク】

  1. PEST分析
  2. 5Forces分析
  3. バリューチェーン分析
  4. VRIO分析
  5. 3C分析
 

【事業戦略でおすすめの本】

  1. 事業戦略のレシピ
  2. 戦略策定概論―企業戦略立案の理論と実際
  3. 戦略力を高める ―最高の戦略を実現するために

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