M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2022年12月27日更新会社・事業を売る
事業譲渡のメリット・デメリットとは?手続きの流れも紹介
事業譲渡はM&Aの1手法であり、主に組織再編・事業承継・事業拡大の目的で行われます。事業譲渡には、特有のメリットやデメリットがあるため、実施前に把握しておくと良いです。今回は、株式譲渡・会社分割と比較しつつ、事業譲渡のメリットとデメリットを解説します。
事業譲渡とは
事業譲渡のメリットやデメリットを紹介する前に、まずは事業譲渡の概要を取り上げます。事業譲渡とは、会社が持つ事業を他の会社に譲渡することです。事業譲渡における事業の定義は、「一定の目的のために組織化した財産」とされています。
その財産は有形・無形を問わず、債権・債務・事業組織・従業員・ブランド・ノウハウ・取引先などです。事業譲渡は、この事業を1つ・複数・あるいは全部を譲渡します。ただし、会社そのものは譲渡しないため、会社の独立性・法人格を維持できるのが特徴です。
事業譲渡は、主に以下のような目的で行われます。
- 不採算部門の処分を行う際に、赤字の事業だけを事業譲渡で切り離す(売り手)
- ノンコア事業を事業譲渡で除外し、コア事業だけに集中する体制を作る(売り手)
- 新規事業をスムーズに始めるため、他会社の事業を譲渡してもらう(買い手)
上記のケースは、事業譲渡のメリットを最大限に生かしています。このように事業譲渡は、単に赤字となっている事業を切り離す目的のみで使用されるのではなく、あらゆるケースで採用できる手法です。
後継者不在の解決策としても有効
昨今、中小企業において「後継者不在」が深刻な問題となっています。事業譲渡は、後継者問題の解決策として有効な手段です。経営者の引退にあたって、事業を他社に譲渡することで事業承継が実現します。また、売却益が得られるので、これを経営者への退職金とするのも可能です。
事業譲渡はさまざまなシチュエーションで役立つ手法であり、フレキシブルに活用できます。最近はM&Aの実施が一般化し、多くの業界で積極的に行われている状況です。将来的に選択する可能性の高い手法であるため、特徴を十分に把握しておきましょう。
なお、個人事業主の場合、法人格を持っていませんので、選択できるM&A手法は事業譲渡だけとなります。
事業譲渡と株式譲渡の違い
事業譲渡は会社内の事業を譲渡する手法であるのに対して、株式譲渡とは、株式を譲渡するM&A手法です。株式は会社の経営権を司る要素であり、買い手が過半数の株式を取得すれば、その会社の経営権を掌握できます。
つまり、株式譲渡は会社の経営権を譲渡することであり、会社を丸ごと譲渡する行為です。この点が、事業譲渡と大きく異なっています。事業譲渡は、あくまでも一部の事業を譲渡する手法であるため、会社の経営権や独立性を失うことはありません。
一方、株式譲渡の売り手となる会社は、買い手企業の子会社となり独立性は失われます。「会社の独立性が維持されるかどうか」が、事業譲渡と株式譲渡の基本的な違いです。
M&Aでは株式譲渡が一般的
株式譲渡は、M&Aで最も一般的に用いられている方法です。株式譲渡のプロセスは株式の取引のみですむため、公的機関に届け出る必要がなく、手続きが簡潔である点に特徴があります。これに対して、事業譲渡は、非常に多くの手間がかかる手法です。
事業譲渡では、譲渡する事業の内容を取捨選択できるため、相手と事前の協議が必要になります。このプロセス自体はそれほど大きな負担はかからないものの、事業譲渡の実施後に経営主体が変わることから、従業員や取引先との契約、許認可の取得など多くの手間がかかるのです。
手続きが非常に煩雑であるため、買い手の立場であれば、M&Aで事業譲渡の手法を積極的に採用するケースは比較的に少なくなります。
事業譲渡と会社分割の違い
事業譲渡と類似する手法として、会社分割が挙げられます。会社分割とは、会社がその事業に対して持っている権利・義務を分割し、他の会社に承継させる手法のことです。事業譲渡と類似して見えますが、会社分割は譲渡対象を選別せず、事業部門を丸ごと譲渡します。
その結果、事業譲渡と会社分割では、法律面での取り扱いが異なっており、手続きや税務が異なるのです。まず、会社分割を行う際には、株主総会で特別決議をする必要がありますが、事業譲渡では基本的にその必要がありません。
また、税務では、事業譲渡は主に譲渡した会社に関して譲渡損益が発生するのに対して、会社分割では一定の場合、譲渡する会社の株主にみなし配当や譲渡損益が発生する点に違いがあります。
債権や債務の扱いも異なる
事業譲渡と会社分割では、手続きや税務以外に、債権や債務契約などの扱い方も異なります。事業譲渡では、債権は債権譲渡の手続きを行ううえ、債務は債権者からの承諾を得ておくことが必要です。これに対して、会社分割では、債権と債務それぞれに特別な手続きが発生しません。
総括すると、事業譲渡は会社独自の判断で行えるものの、事業に関係する各種契約の締結し直しなどに手間がかかります。その一方で、会社分割は、株主総会の特別決議こそ必要とされるものの、その後の手続きが比較的、簡便である点が大きな違いです。
なお、事業譲渡と会社分割以外にもM&A手法は多数あり、目的によって最適な手法が異なります。そのため、M&Aを行う際は、適切な手法を選択する必要がありますが、判断に迷うケースも少なくなりません。
M&A実施をお考えの際は、ぜひ、M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所には専門的な知識や経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、培ったノウハウを生かしてM&Aをフルサポートいたします。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ、譲受企業様は中間金がかかります)。随時、無料相談をお受けしておりますので、事業譲渡などのM&Aをご検討の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
事業譲渡が適しているケース
ここでは、M&Aを検討される際に、手法として事業譲渡を実施するのが適していると思われる3つのケースを紹介します。
- 不採算部門があるケース
- 企業を残しつつ再建を図りたいケース
- 外部の支援を得て事業を存続させたいケース
不採算部門があるケース
企業において事業の多角化は、よく行われる経営戦略です。しかしながら、多角化した全ての事業がうまくいくとは限らず、中には不採算に陥ってしまう事業もあるでしょう。
そのような場合、無理して不採算事業を継続するよりも、不採算事業から撤退し、経営資源を主力事業に集中させた方が、会社の業績は向上が見込めます。その不採算事業撤退の手段として有効なのが、事業譲渡です。単に不採算部門を閉じるだけでは、負の遺産が残ります。
しかし、事業譲渡で不採算事業を売却できれば対価を得られるので、会計的にはこれまでの赤字の補填、キャッシュとしては主力事業への投下資金に用いれるのです。
企業を残しつつ再建を図りたいケース
中小企業が経営不振に陥った場合、真っ先に問題となるのは資金繰りです。金融機関などから融資を受けるのも難しい場合、経営再建を図るための資金を得る手段として、事業譲渡があります。複数の事業を行っている中小企業であれば、いずれかの事業を売却するのです。
これで、経営のスリム化が図れますから資金繰りに余裕が生まれると同時に、売却した対価を運転資金に回せます。
外部の支援を得て事業を存続させたいケース
端的に言えば、後継者不在の中小企業における事業承継の手段として、事業譲渡が有効です。一般に、事業承継を目的とするM&Aの場合、会社を丸ごと譲渡する株式譲渡が行われることが多いですが、税金対策その他の理由で会社を手元に残したい場合は、事業譲渡で事業承継できます。
事業譲渡のメリット
本章では、事業譲渡を採用するメリットを、当事会社それぞれの立場に分けて取り上げます。売却・買収いずれの立場のメリットを把握しておき、自社の戦略策定にお役立てください。
売り手側のメリット
事業譲渡の売り手側におけるメリットには、主に以下のような内容が挙げられます。
- 現金が獲得できる
- 一部の事業のみ譲渡できる
- 残したい従業員や資産を残せる
- 後継者不在問題を解決できる
事業譲渡は会社自体を売却するわけではないため、売り手側のメリットは、今後の会社経営にとって大きな利益をもたらしてくれる可能性を秘めています。
現金が得られる
事業譲渡の売り手側は、会社や事業を売却することで相応の現金を獲得できるのがメリットです。事業譲渡は、事業を売却する手法であるため、会社売却と比べると得られる現金は少ない可能性はありますが、ある程度まとまった額の現金を得られる可能性は十分にあります。
事業譲渡を行っても会社は存続するため、事業譲渡で得た現金を経営の資金に充てられるのです。
一部の事業のみを譲渡できる
法人格を残したままで事業の一部分のみを譲渡できる点も、事業譲渡のメリットの1つです。事業譲渡では、「不採算部門を手放したい」、「主要部門の事業に集中できる体制を整えたい」などのニーズに的確に応えられます。
会社の独立性を保ったまま組織再編を行える点において、一部の事業を譲渡するのみで成立する事業譲渡は、組織再編を考えている経営者にとって有効な手段です。
残したい従業員や資産を残せる
残したい従業員や資産を残せることも事業譲渡のメリットです。事業譲渡では、当事者である会社同士が譲渡する事業の範囲を定め、それをもとに譲渡契約書を作成します。そのため、売り手側が希望すれば、特定の従業員や資産を残せるのです。
これは、株式譲渡や合併などのように会社を丸ごと譲渡する手法では実現できず、事業譲渡ならではのメリットだといえます。
後継者不在問題を解決できる
後継者不在は、日本の中小企業が抱える大きな問題です。親族が事業承継するケースが年々減っていますが、事業譲渡を活用し第三者へ事業を売却することで、後継者不在問題を解決できます。
買い手側のメリット
事業譲渡の買い手側のメリットは、主に以下の項目が挙げられます。
- リスクを承継しなくてもよい
- 節税になる
- 新規事業にコストを抑えて着手できる
- 債権者へ通知する必要がない
事業譲渡の買い手側では、最小限のリスクに抑えられるうえに節税効果も得られるなど、非常に大きなメリットがあります。
リスクを承継しなくてもよい
事業譲渡の買い手側の最大のメリットは、リスクを承継しなくてもよい点です。事業譲渡では、譲渡する事業の範囲を契約書で定められるため、買い手側では「不要資産」、「承継したくない負債」などを契約の段階で除外できます。
つまり、売り手側にあるリスクの承継を回避でき、良い部分のみを承継できるのです。株式譲渡や合併などの手法では、売り手側の全てを包括承継するため、買い手側にとって不要な資産や負債も背負ってしまいます。
特に負債に関しては、偶発債務などの簿外債務がM&A後に発生すると、買い手は大きな経営ダメージを受けるかもしれません。事業譲渡では、これを避けられるのです。
節税になる
事業譲渡では、買い手側にとって節税効果が期待できます。事業譲渡を行った際、のれん相当額を5年償却の損金扱いが可能です。そのため、法人税の節約につなげられます。買い手側の中には、節税効果を得るために事業譲渡を多用する企業もあるほどです。
新規事業にコストを抑えて着手できる
新規事業に着手する場合、軌道に乗るまでに非常に多くの手間・時間がかかります。しかし、事業譲渡を通じて、すでに軌道に乗っている事業を買い取れば、手間・時間を大幅に削減することが可能です。
近年の日本では、自身で事業を立ち上げるケースだけでなく、事業譲渡により事業を買い取ってビジネスに着手する人が増えています。
債権者へ通知する必要がない
事業譲渡の場合、会社法に債権者保護手続の規定が存在しません。ただし、債権者保護の必要が全くないわけではなく、債務を譲渡する際には債権者に対して説明が求められます。
このとき、債権者に不利益が生じうる場合は事業譲渡手続きが止められてしまう可能性があるため、事業譲渡を進める際は債権者への配慮も必要です。
事業譲渡のデメリット
ここでは、事業譲渡で問題となりやすいデメリットを、当事会社それぞれの立場に分けて取り上げます。売却・買収いずれの立場のデメリットも把握しておき、自社にふさわしいM&A手法の選択にお役立てください。
売り手側のデメリット
まず、売り手側の主なデメリットは以下のようなものです。
- 負債を肩代わりしてくれるとは限らない
- 譲渡益に税金が発生する
- 取引先・従業員との契約は個別に引き渡す必要がある
- 競業避止義務を負うおそれがある
- 条件次第では株主総会の特別決議が求められる
- 複雑な手続きを経なければならない
負債を肩代わりしてくれるとは限らない
事業譲渡のメリットとして、譲渡する事業の範囲を契約で定められる点を紹介しましたが、これは裏を返せばデメリットといえます。このデメリットが発生する最大の原因は、負債です。包括承継である株式譲渡や合併などは、負債も買い手に承継されますから、売り手は負債から解放されます。
これに対して、事業譲渡は契約の範囲で譲渡資産を定められるため、買い手が契約の段階で負債の承継を拒めば、売り手がその後も継続して負債を背負うのです。仮に負債の承継を買い手が承諾したとしても、債権者との交渉も必要とされるため、その手続き・交渉に手間・コストがかかります。
譲渡益に税金が発生する
事業譲渡を行い現金を手にすると、売り手には譲渡益が発生します。利益が発生すると、税金を収めなければなりません。譲渡益に対して発生する税金は法人税であるため、売り手は事業譲渡を行う際に、どれほどの法人税が課税されるかを念頭に置いておく必要があります。
なお、譲渡益が出たとしても他の部分で損失が出ていれば相殺されるため、必ずしも譲渡益で計上した金額に法人税がかかるわけではありません。
取引先・従業員との契約は個別に引き渡す必要がある
事業譲渡では、これまで取引先・従業員との間で締結していた契約を、買い手側は再び個々に結び直さなければなりません。そこには、取引先・従業員の同意が必要です。新たな契約の締結者は買い手ですが、それぞれの再契約が無事に締結されなければ事業譲渡は成立しません。
売り手としても、取引先・従業員への説明・説得に力を尽くす必要があります。
競業避止義務を負うおそれがある
事業譲渡を行うと、会社法の競業避止義務の定めによって、その後、20年間にわたり買い手と同一の区市町村および隣接する区市町村で譲渡対象事業と同一の事業を行えなくなります。ただし、事業譲渡契約で買い手側が合意すれば、適用を排除することも可能です。
競業避止義務の有無は売り手にとって重要な事項であるため、念頭に置いて契約締結に臨みましょう。
条件次第では株主総会の特別決議が求められる
事業譲渡では、原則として株主総会の特別決議はいりません。ただし、以下の条件に該当する場合は、株主総会の特別決議が必要です。
- 譲渡内容が全事業の場合
- 売り手の総資産の20%超となる資産を含めた重要な事業を譲渡する場合
複雑な手続きを経なければならない
事業譲渡以外のM&Aスキーム(例:株式譲渡、会社分割など)では包括的に承継できるものの、事業譲渡は個別に取引を行う手法であるため、複雑な手続きが求められます。特に大企業になるほど、手続きに大きな負担を感じやすいです。
買い手側のデメリット
事業譲渡の買い手側のデメリットは、主に以下のとおりです。
- 手続きに手間がかかる
- 人材流出のリスクが高い
- 消費税がかかる
- 許認可を承継できない
- 条件次第では株主総会の特別決議が求められる
手続きに手間がかかる
事業譲渡の大きなデメリットは、手続きに手間がかかる点です。事業譲渡を行うと、取引先や従業員との契約を締結し直さなければならず、その段階で手間とコストがかかります。
加えて、事業に付随する不動産や特許を移転する際には、移転登記や権利の移転をそれぞれ個別に行わなければなりません。この際、不動産取得税や登録免許税が発生します。
人材流出のリスクが高い
買い手のデメリットとして、人材流出のリスクが高い点も挙げられます。事業譲渡を行うと、取引先・従業員との契約が一度リセットされるため、あらためて取引先や従業員と契約を結ばなければなりません。中でも、最もリスクが多いのが、従業員です。
従業員との契約では、まず同意が必要であるため、入念に同意を取りつけたうえで契約を結ぶ必要があります。しかし、M&Aに共通するデメリットとして、従業員の心証が懸念点です。従業員がM&Aに否定的である場合、人材流出を招いたり、統合後にトラブルに発展したりしかねません。
そのため、M&Aは、従業員への合意を確実に得ておく必要があります。事業譲渡は事業のみを取引する手法ですが、事業の中には特定の従業員の手腕に依存しているものも少なくありません。仮に従業員が離職してしまえば、その事業の価値が低下するおそれがあります。
事業譲渡を行う際は、従業員の承継に関して売り手側と綿密に協議するとともに、従業員の合意を確実に得ておくことが必要です。
消費税がかかる
事業譲渡で譲受する資産の中に消費税課税資産が含まれていれば消費税が発生し、対価の支払い時にその分を加算して売り手に渡します。この点を把握しておかなければ、予定していた資金よりも多くの費用がかかってしまいかねません。消費税課税資産は以下のようなものです。
- 有形固定資産(土地を除く)
- 無形固定資産(ソフトウェア、商標、特許権、意匠権など)
- 棚卸資産
- のれん
許認可を承継できない
最も注意すべきデメリットが、許認可に関してです。特定の事業を行う際は、関係省庁から許認可を得る必要があります。許認可は申請を行った事業主に対して出されるものであるため、事業譲渡では許認可を承継できません。
したがって、買い手は、事業譲渡が完了するまでに関係省庁から許認可を得ておかなければ、事業を開始できないのです。
条件次第では株主総会の特別決議が求められる
事業譲渡では、原則として株主総会の特別決議はいりません。ただし、以下の条件に該当する場合は、株主総会の特別決議が必要です。
- 譲受する事業が売り手の全事業であり、買い手が支払う対価が買い手の純資産額の20%超である場合
事業譲渡の手続きを行う流れ
事業譲渡の手続きは、基本的に以下のプロセスで進行します。
- 相手先企業とのマッチング
- 意向表明書の提出
- 基本合意書の締結
- デューデリジェンスの実施
- 取締役会決議
- 事業譲渡契約書の締結
- 株主総会特別決議の実施(必要な場合)
- 効力発生・クロージング
事業譲渡を決めたら、まず自社の分析や今後の経営戦略などを検討したうえで、相手先企業とのマッチングを行い、交渉を進めます。交渉がまとまったら基本合意書の締結です。その後、買収側によるデューデリジェンス(企業調査)が行われます。
デューデリジェンスとは、譲渡対象企業に対する事前調査のことで、事業(ビジネス)、財務、法務、税務、労務などの観点から行う売却側企業への調査です。デューデリジェンスで問題がなければ、取締役会での決議を経て、事業譲渡契約書を締結する流れとなります。
その後、必要な場合には株主総会の特別決議で承認を得て効力発生日を迎えると、クロージングに移行し、完全に引き継ぎができれば、事業譲渡契約の手続きは完了です。
このように、事業譲渡で求められるプロセスは数多いうえに専門的で複雑であるため、スムーズにプロセスを進行させたい場合には、M&A仲介会社などの専門家にサポートを求めることをおすすめします。
事業譲渡時の一般的な取引額
事業譲渡を検討する際に意識する要素の1つが、取引価額です。一般的に事業譲渡では、譲渡する事業資産の時価を割り出し、それに営業権をプラスした金額で取引されます。事業資産の時価は譲渡時点の価額であり、営業権は譲渡する事業の正常利益の2~3年分ほどが一般的です。
ただし、業種の特殊性や事業の希少性などにより、「営業権を何年分で算出するか」の判断は変わります。たとえば、「飲食店など比較的参入しやすい業種であれば1.5年分」、「参入が難しい病院などの業種では5年分」といった算出となるのです。
このように、事業譲渡の取引額は譲渡する業種によっても大きく異なるため、一概に相場のようなものがありません。
正常利益の求め方
営業権のベースとなる正常利益は、単に損益計算書で計上されている数値をそのまま使用するわけではありません。利益や損失の中には一時的に発生したものだけでなく、役員報酬や保険料など会社全体で発生しているものもあります。
会社自体を譲渡するわけではないため、これらは除外したうえで正常利益を算出しなければなりません。事業譲渡時の取引額の計算式自体は簡単であるものの、ベースとなる数値を割り出す手続きには専門的な知識・経験が求められます。
事業譲渡を行う際の注意点
最後に、事業譲渡での注意事項として、以下の2点を掲示します。
- 詐害行為取り消しに注意
- 社員の解雇時は労働法の決まりに注意
詐害行為取り消しに注意
詐害行為とは、債権者に不利益となるのをわかっていながら、債務者が自己の財産を減少させる(=売却する)行為のことです。民法(債権法)では、詐害行為を受けた債権者の立場を守るために、債権者の訴えによる詐害行為取消権を認めています。
事業譲渡を実施した売り手側の債権者が、当該事業譲渡での資産売却が詐害行為に該当すると訴えてそれが認められれば、その事業譲渡は取り消されてしまうので適切な価額で売買を行うことが肝要です。そのうえで、債権者に対し、十分な事前説明を行うよう心がけましょう。
社員の解雇時は労働法の決まりに注意
まず、日本では、労働基準法、労働契約法により、労働者の権利が固く守られていることを念頭に置きましょう。事業譲渡実施時、売り手企業が人員の整理解雇を実施するには、慎重に行わないと不当解雇(解雇権の濫用)と断じられてしまうおそれがあります。
整理解雇とは、事業の継続が難しいという状況で行われる人員整理を目的とした解雇のことです。現在、整理解雇が認められるには、以下の4つの要件全てを満たしていなければなりません。
- 人員整理の必要性
- 被解雇者選定の合理性
- 解雇回避努力義務の履行
- 解雇手続きの妥当性(従業員への十分な説明の実施を含む)
事業譲渡のメリット・デメリットまとめ
事業譲渡は、適切に用いれば売り手・買い手双方に利益をもたらすM&A手法です。事業譲渡を行う際には、売り手・買い手双方が入念に協議して実行しましょう。
事業譲渡に限らず、全てのM&A手法にはメリット・デメリットの両方があるため、経営者は自分の会社の状況や求めている利益に合わせて選択すべきです。事業譲渡の主なメリットとデメリットをまとめると、以下のようになります。
・売り手側のメリット
→現金が得られる、一部の事業のみを譲渡できる、残したい従業員や資産を残せる
・買い手側のメリット
→債務を肩代わりしてくれるとは限らない、譲渡益に税金が発生する
・売り手側のデメリット
→リスクを承継しなくてもよい、節税になる
・買い手側のデメリット
→手続きに手間がかかる、人材流出のリスクが高い、消費税がかかる
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