2022年6月6日更新会社・事業を売る

合併公告とは?期間や事例、決算公告をご紹介

合併公告とは、合併で複数の会社が一つに統合した際に行う公告です。合併公告は法律で義務付けられており、官報公告・日刊新聞への公告・電子公告のいずれかの方法で実施します。公告には費用が発生しますが、怠れば法務省による罰則の対象となるため必ず実施しましょう。

目次
  1. 合併公告とは?
  2. 合併公告の事例
  3. 合併公告のタイミング
  4. 合併公告の手続きの流れ
  5. 決算公告とは?
  6. 合併公告のまとめ

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合併公告とは?

法定公告の中でも、年々増加傾向にある公告に「合併公告」が挙げられます。合併公告とは、M&Aなどによる合併で複数の会社が一つに統合された際に行う公告のことです。

そもそも合併には、会社の組織再編を目的に複数の会社が一つに統合された際に用いられる「新設合併」と、すでに存在する会社に対して承継する「吸収合併」の2種類があります。このいずれの合併を行う際にも公告を実施する必要があるため、注意しておきましょう。

そこで本章では、まず合併公告の特徴・種類・掲載方法などを中心に紹介します。

合併公告の特徴と公告の種類

合併の実施を決定した際、規定の期間中に公告を掲載する必要があります。公告は原則として義務付けられており、仮に期限に遅れたり通知を行わなかったりすると罰則の対象となるため注意しましょう。そもそも公告は、以下の2種類に分かれています。

  • 法令で官報掲載を求める規定があるもの(例:合併公告・資本金の額の減少公告・準備金の額の減少公告・解散公告)
  • 官報・日刊新聞紙・電子公告から選び掲載するもの(例:決算公告・株券提出公告・基準日設定公告)

後者は、いずれの媒体に掲載するのか会社の定款により定める仕組みです。その一方で、前者では、法令により官報への掲載が義務付けられているため怠ってはなりません。前者には、上記に挙げたほかにも、決算・新株式の発行・配当・株式分割などに関する公告が該当します。

官報の掲載方法

公告は、合併契約を締結した後に実施する段取りです。基本的には国立印刷局が発行している官報に掲載します。官報の記載例は複数の種類があり、以下のように分類することが可能です。

  • 新設合併
  • 吸収合併
  • 簡易吸収合併
  • 簡易&略式吸収合併

また、以下の3つの型によっても分けられます。

  • 連名型
  • 存続会社単独型
  • 消滅会社単独型 

上記を組み合わせると、記載型を選択できます。なお、新設合併の場合は記載例が1つのみであり、これに当てはまるよう原稿を作成する仕組みです。なお、官報に掲載しなければならない事項は、以下の5つです。

  • 合併公告であること
  • 最終貸借対照表
  • 当該事業所の名称
  • 当該事業所の所在地
  • 会社代表者

合併公告を官報に掲載する際の費用は、最低でも1行22文字3,589円(税込)かかります。掲載費用のみを見ると電子公告よりも官報に載せた方が節約できると感じる方もいますが、官報では郵送で案内を送る必要があり、郵送費の負担も考慮すると割高になるケースもあるため注意しましょう。

また、合併公告を行う際は、合併契約が締結された際に官報に申し込みを行う段取りです。申し込み方法には、インターネット・FAX・郵送・事務所へ来所などの方法があります。その後、取次所に原稿を作成してもらい原稿の確認などを行ったうえで、修正がなければ校了して官報に掲載される仕組みです。

参考:官報公告掲載料金(全国官報販売協同組合)

電子公告とは?

公告は原則として官報に掲載しますが、会社のWebサイトに電子公告を掲載するケースも見られます。電子公告では、他者が内容を編集できないようPDFファイルでの公開が一般的です。最近はインターネットの普及・ペーパーレス化が進み、官報・日刊新聞ではなくWebサイトから最新情報を得る人が増加しています。

電子公告を利用すると個人に知らせなくても良いメリットがあり、株主や債権者に郵送する手間を省略できます。しかし、電子公告を利用する際は、事前に電子公告調査機関に調査を依頼したり法務省に報告したりする必要があるため事前の準備が必須です。

また、郵送での催告に慣れている人やインターネットの利用に慣れていない人は、電子公告の実施を把握できないおそれがあるほか、たとえ知ったとしてもインターネットを利用できる環境がない場合もあります。そのため、株主・債権者のすべてに情報が届いているのか確認できない点がデメリットです。

そもそも公告は株式会社に法律で義務付けられており、怠ると罰則の対象に該当します。罰則を受けないためにも、合併の際は専門家に相談すると良いでしょう。

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法定公告の問題点

法定公告の主な問題点は、公告の実施に費用がかかり、法定公告を怠ってしまうおそれがある点です。つまり、経営上の重要な決定事項について、株主や債権者に周知できないおそれがあります。なお近年では、法定公告を官報で公告するとともに、自社のWebサイトでも行う会社が増加中です。

社会全体でペーパーレスへの移行が進んでおり、官報ではなくWebサイトへの掲載を優先する会社も見られます。Webサイトでの掲載は2002年4月から「決算」が認められるようになったほか、2005年2月からは「新株発行」など一部の事項についてWebサイトでの公告が認められるようになりました。

しかし、Webサイトへの掲載では、インターネット環境が整っていない場所で公告を把握できない点がデメリットです。とはいえ、インターネットを利用する会社は年々増加しているため、株主や債権者側でもインターネットの利用環境を整えておく必要があります。

【関連】会社の合併
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合併公告の事例

本章では、これまでに実際に行われた合併公告の事例として、以下の2つを取り上げます。

  1. ニトリホールディングス✕デコホーム
  2. 東洋刃物✕熱研工業

それぞれの事例からポイントをつかみ、自社の合併公告の実施に役立てましょう。

①ニトリホールディングス✕デコホーム

ニトリホールディングス

出典:https://www.nitorihd.co.jp/

もともとデコホームはニトリホールディングスが出資比率70%で設立した会社であり、家具やインテリア用品の商品を輸入代行していた子会社でした。しかし、2018年8月、ニトリホールディングスは、デコホームの株式を追加取得して完全子会社化しています。

ニトリホールディングスは北海道札幌市に本社を構えており、家具やインテリア用品のほか家電製品を取り扱っています。ニトリホールディングスの主な国内企業は、以下のとおりです。

  • ニトリ(ホームファッションのチェーンストアを運営)
  • ホームロジスティクス(物流会社)
  • ニトリパブリック(広告宣伝を手掛ける)
  • ニトリファシリティ(保守業務・保険代理店の運営)

上記は、すべてニトリホールディングスの傘下にある企業です。本件子会社化により、ニトリホールディングスでは、輸入代行部門の事業拡大を通じてさらなる企業の成長を図っています。なお、本件合併により、デコホームは解散しました。

本件の合併公告は電子公告(PDFファイル)で実施されており、官報公告と組み合わせて各債権者への個別催告を省略したと考えられています。

②東洋刃物✕熱研工業

東洋刃物

出典:http://www.toyoknife.co.jp/

熱研工業は神奈川県川崎市に本店を構える企業であり、もともと東洋刃物の100%連結子会社でした。しかし、2018年8月、東洋刃物は熱研工業を吸収合併すると発表しています。東洋刃物は宮城県富谷市に本社を構えており、1925年設立と長い歴史を持つ工業用機械刃物の製造販売会社です。

熱研工業は工業用刃物製品の製造・加工を手掛ける企業ですが、2018年2月に火災にあった影響で一時は操業を停止していました。このときに、復旧にかかる時間や財務状況などを考慮した結果、東洋刃物による簡易吸収合併の実施に至っています。

本件吸収合併は同業種が当事会社であり、相乗効果の獲得が期待されています。合併公告は官報公告と電子公告(PDFファイル)を組み合わせて実施されており、株主や債権者への催告は行われていません。

【関連】M&A成功事例とは?大手・中小企業、スタートアップやベンチャー企業のM&A成功事例を解説

合併公告のタイミング

合併公告は、いつどのタイミングで行っても良いわけではありません。具体的にいうと、合併公告は、合併の効力発生日前日の1カ月以上前までに済ませておく必要があります。合併公告には異議申し立てを受け付ける目的もあるため、合併契約締結後に即座に手続きを進められるよう事前に準備しておきましょう。

なお、掲載期間の取り扱いは開始時間や日数により異なります。具体例を挙げると、3月28日から1カ月の期間を設ける場合、掲載終了日は4月28日です。28日・30日までの月であったとしても、月単位で数える点に注意してください。

合併公告の手続きの流れ

吸収合併・新設合併の違いにより手続きの流れは若干異なりますが、本章では合併公告の大まかな流れを解説します。合併公告の大まかな流れは、以下のとおりです。

  1. 合併実施の決定と締結
  2. 合併公告・通知
  3. 承認決議
  4. 効力発生前に必要な書類の準備と配置
  5. 合併の効力発生
  6. 効力発生後に必要な書類の準備と配置
  7. 合併の登記申請

それぞれの項目を順番に詳しく紹介します。

①合併実施の決定と締結

吸収分割のケースでは合併会社・被合併会社が、新設合併のケースでは被合併会社が、それぞれの承認機関において合併を実施する決議を行います。なお、取締役会設置会社では、取締役会で決議を行う決まりです。

合併実施に関する決議を行った後は、合併契約書に調印します。この契約書に掲載する事項は、「法定記載事項」と「任意的記載事項」の2種類です。

②合併公告・通知

次に、株主や債権者に対して官報・日刊新聞・電子公告・個別通知のいずれかで「合併する」旨を通知します。M&Aなどによる合併では、合併公告から効力発生まで短くても2カ月程度の期間が必要です。また、会社の合併では、一般的に交渉開始から全プロセスの終了まで半年から1年程度かかります。

そのため、合併公告を実施する際は、合併の意思確認が済んで契約を結んだ段階で準備を開始すると良いでしょう。なお、合併公告は「株式会社」に義務付けられているため、大手企業だけでなく中堅・中小企業でも実施する必要があります。

大手企業では契約締結までに1年以上かかるケースもあるなど、会社の規模により合併公告を行う時期が変動するため注意が必要です。合併公告の手続き自体にかかる期間は、官報・日刊新聞に情報の掲載を依頼したケースにおいて申し込みからおよそ1週間程度だといえます。

官報へ情報を載せる際は、インターネット・FAX・電話・メールで情報掲載を依頼します。官報の発刊を手掛ける国立印刷局には全国に取次所が存在しており、掲載の依頼が可能です。官報へ公告を載せた後は、株主や債権者などにそれぞれ個別的に通知を行います。

その一方で、自社のWebサイトに情報を掲載する場合は、法務局への報告などの手続きがあるため事前準備の期間を設けると良いでしょう。インターネットを利用する際は、それぞれ個別に通知を送る必要はありません。

③承認決議

合併の効力が発生する前日までに、株主総会の承認を受ける必要があります。株主総会の開催前には招集通知を送る必要がありますが、非公開会社では1週間前・公開会社では2週間前までに通知する決まりです。なお、吸収合併において合併公告・通知を行う際は、合わせて株主総会開催を通知することも可能です。

④効力発生前に必要な書類の準備と配置

合併のでは、効力が発生する前に合併に関する書類を会社に準備・配置しておく必要があります。期間は6カ月間です。早めに準備しておくと良いでしょう。

⑤合併の効力発生

新設合併の場合は登記を行った日から合併効力が発生するため、法務局が休みの土日祝日に登記を行うことはできません。吸収合併の場合は、登記時のタイミングで効力は発生しないため土日祝日でも登記を行えます。

とはいえ、会社の合併では存続会社と消滅会社を生じさせるため、効力が発生する日から2週間以内に手続きを行いましょう。

⑥効力発生後に必要な書類の準備と配置

合併の当事会社では効力が発生した後も、合併に関する書類を本店の所在地に置いておく必要があります。期間は、合併前と同様に6カ月間です。

⑦合併の登記申請

効力の発生日から2週間以内に、合併会社の変更登記と解散登記を同時に実施します。このときには、合併契約書・株主総会議事録などの書類が必要です。

このように、合併では合併公告を含めてさまざまな手続きを行うため、多くの時間と手間が必要になるため、専門家からサポートを得ると効率的に進めることができます。

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また、通常M&Aでは半年〜1年程度の期間が必要とされていますが、M&A総合研究所ではスピーディーなサポートを実践しており、最短3カ月での成約実績も有しています。

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【関連】合併の手続きについて解説します

決算公告とは?

決算公告とは、会社の設立時に取り決めた定款に沿って決算の内容を公告する行為をさします。決算公告の実施は会社法で定められており、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表の公告は株式会社の義務です。

とはいえ、決算公告が義務付けられていることを知らない会社は依然として存在しており、公告を実施していない会社も少なからず見受けられます。こうしたケースは、法務省により罰則の対象となるため注意しましょう。つまり、合併公告を行う際は、「決算公告(貸借対照表の開示を伴う公告)」が必須です。

決算公告は多くのケースで官報に掲載されていますが、日刊新聞(主に日本経済新聞)に公告するケースも見られます。また、2001年の法改正により自社のWebサイトへの掲載も可能となっており、インターネットを利用している会社も増加中です。

株式会社の決算公告では定時株主総会の終了後に貸借対照表の公告を行いますが、大企業に分類される会社では損益計算書の公告も合わせて実施します。なお、金融商品取引法により有価証券報告書の提出義務を負う株式上場企業などは、有価証券報告書により詳細が公告されるため決算公告を行わないとされています。

合併公告の際には決算公告が必要

合併公告を行う際は、決算公告が必要です。決算公告は、大会社(資本金5億円以上または負債総額200億円以上の株式会社)とそれ以外の会社で、公開内容が異なります。また、非公開会社と公開会社によっても、公開する内容が異なるため注意しましょう。

大会社に分類されない会社であり非公開の会社では貸借対照表のみを公開するため、資産の部・負債および純資産の部がわかるものを公開します。このとき、株式資本と評価交換算差額などは貸借対照表に記載しましょう。

大会社でない公開会社でも、上記と同じ内容で貸借対照表を公開します。とはいえ、固定資産に当たる内容は詳細に記載しなければならないため、注意が必要です。ここでは、有形固定資産・無形固定資産・投資など資産について詳しく記入しましょう。

そして、大会社に分類される会社は公開会社・非公開会社のいずれにおいても、貸借対照表と損益計算書を公開します。損益計算書は、記載されているすべてを公開する決まりです。

【関連】決算対策と節税

合併公告のまとめ

合併公告の実施は法律で義務付けられており、官報・日刊新聞・電子公告のいずれかの方法で行う必要があります。これを怠れば法務省による罰則対象に該当するため、費用がかかっても実施しなければなりません。

株式会社では、株主のほか債権者・関係各社などに対して、経営に与える影響が大きい決定事項を周知する義務があります。近年の法改正により電子公告も認められるようになったため、官報・日刊新聞に掲載を依頼する際の費用の節約が期待可能です。

今後も、電子公告による公告は増加すると想定されます。本記事の要点は、以下のとおりです。

・合併公告とは
→M&Aなどによる合併で複数の会社が一つになった際に行う公告のこと

・合併公告のタイミング
→合併の効力発生日前日の1カ月以上前までに済ませておく必要

・合併公告の手続きの流れ
→合併実施の決定と締結、合併公告・通知、承認決議、効力発生前に必要な書類の準備と配置、合併の効力発生、効力発生後に必要な書類の準備と配置、合併の登記申請

・決算公告とは
→会社の設立時に取り決めた定款に沿って決算の内容を公告する行為

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