2022年10月21日更新資金調達

資本コスト(WACC)とは?種類、計算方法をわかりやすく解説

資本コスト(WACC)とは、会社が資金調達するときに必要となる費用です。資本コストには、負債コストと株主資本コストの2つがあります。本記事では、資本コスト(WACC)の種類、計算方法、資本コストを下げる方法などをわかりやすく解説します。

目次
  1. 資本コスト(WACC)とは
  2. 資本コストの種類
  3. 資本コストの計算方法
  4. 資本コストを下げる方法
  5. 資本コスト(WACC)のまとめ

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資本コスト(WACC)とは

資本コストとは、会社が資金調達の際に必要となる費用のことです。資金を集めたいときに、会社は銀行からの融資に頼ったり、新株を発行して株主からの投資を依頼したりします。こうした銀行融資の利息や、株主への配当などに必要となる費用が、資本コストです。

一方、投資家の観点から見ると、資本コストの意味は少し変わります。会社にとっては費用でも、投資家にとっては、投資に対する利益(配当)です。会社を経営する際は、常にこの資本コストを意識しなくてはなりません。

資本コストに対して、キャッシュフロー(利益)が上回っている会社は優良な会社ですので、投資家からの資金が集めやすくなり、安定してキャッシュフローを生み出している会社として、銀行融資の審査もとおりやすいです。

利益よりも資本コストが大きい会社は、投資に対する配当を出せない、融資の返済能力がない会社であると判断されるため、会社は資本コストを支払っても、利益が生み出せるよう注意しなければなりません。

日本のビジネス界では、資本コストの考え方がしっかり認識されている状況ではありません。資本コストは、事業の価値計算において必須です。また、グローバルに事業を広げるうえでも欠かせない概念といえます。

資本コストと資金調達の関係性

上述したとおり、会社が円滑に資金調達するには、資本コスト(WACC)を意識し会社を経営しなければなりません。その指標の一つが、キャッシュフローがWACCを上回っているかどうかになります。

WACCを上回るキャッシュフローを得られると、銀行、投資家、株主などに魅力的と思われるでしょう。その結果、資金調達を行いやすくなります。キャッシュフローがWACCを下回る場合は、リスクに見合ったリターンが得られない投資先と思われるので、資金調達は困難となるでしょう。

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資本コストの種類

会社が資金を調達する際、その方法は大きく分けて以下の2種類があります。

  1. 株主資本コスト
  2. 負債コスト
株主からの投資と、銀行や金融機関などからの借り入れです。株主からのお金は「投資」と考えられ、銀行融資などの借り入れは「負債」と考えられます。

①株主資本コスト

株式を保有している株主に還元する、いわゆる配当が株主資本コストです。株主が会社に投資する動機はさまざまですが、最終的には会社の利益からもらえる配当を期待しています。

投資してもらったからには会社は株主に対し、より多額の配当金を渡すため、利益を獲得する必要があります。つまり、株主資本コストは、投資家と会社の両方の観点から見た配当金です。

②負債コスト

銀行や債権者などからの借り入れには利息が付きますが、その利息が負債コストです。銀行や債権者は、会社にお金を貸してくれますが、無料では貸しません。銀行や債権者などから資金を借り入れする際は、利息を支払う必要があります。

銀行などの融資をしてくれる機関は、返済能力がある会社にしか資金を貸しません。負債コストは、融資を実施する機関で利率が変動するため、どこの機関から融資を受けるかをしっかりと検討する必要があります。

資本コストとは、会社に求める期待値です。株主や銀行にとっては、どれほどのリターンが得られるのか、が鍵です。

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資本コストの計算方法

資本コストは、株主資本コストと負債コストの加重平均となります。資本コストを算出する際は、WACC(ワック)を利用します。WACCの計算式は以下です。

  • 資本コスト=D/(D+E)×rD(1−T)+E/(D+E)×rE

このときに1から実効税率を引いた数字を掛け算すると、利息が税務上では損金扱いとなるので、会社にとっては税金対策になります。

資本コストを計算式にすると複雑に見えますが、株主資本コストと負債コストを足して平均値を求めた式が、資本コストです。WACCの計算式に必要な基礎知識は、以下になります。

  1. D:有利子の負債額
  2. E:株主資本の時価
  3. rD:負債資本コスト
  4. T:実効税率
  5. rE:株主資本コスト

①D:有利子の負債額

利子が付いている負債額のことです。基本的には時価で計算をする必要がありますが、負債は時価で計算するのが難しいので、簿価で計算する場合もあります。

②E:株主資本の時価

株式保有にかかる時価総額のことです。株主資本の時価を求める際は、株価と発行している株式の数を乗算します。

③rD:負債資本コスト

前項で解説した負債コストのことです。銀行融資や債権者からの借り入れに対し、支払う利息のことをさします。この利息は会社によって異なるため、当然利率の低い融資を選択すれば、資本コスト自体も高額になりません。

④T:実効税率

税金の負担額のことです。損金として算入される税金を考慮し、基本的には40%で計算します。

⑤rE:株主資本コスト

前項で解説した株主資本コストのことですが、金額そのものを計算式に当てはめられません。WACCでは、株主に対する期待収益率として考えます。

株主資本コスト単体の利率を求めるためには、リスクフリーレート、自社株式のβ値、株式市場全体の期待収益率の計3つの要素を用います。

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資本コストを下げる方法

経営者であれば、資本コストをできるだけ少なくしたいと考えるのが自然です。資本コストを下げるための方法として、その会社のリスクを開示する方法があります。基本的に投資家や銀行は、会社に対して利益を求めてお金を出すので、会社の情報開示は投資の判断材料として有力です。

リスクを開示すれば、リスクに見合ったリターンを要求してもらえます。「私の会社は◯億円の赤字が出ました」などと投資に対するリスクを公表すると、投資家が会社に持つ期待値も低くなるでしょう。その結果、投資家が求めるリターンも低くなり、それに伴い資本コストも低くなります。

銀行や債権者からの借り入れに対する資本コストを下げるには、各金融機関で、できるだけ低金利で借りるのが有効です。一般的には、信頼があり返済能力があるとみなされた会社であれば、低金利でお金を借りられる可能性が高まります。

借り入れ期間が短い、他の借り入れ機関からの乗り換えなどでも、低金利で融資を受けられる場合があるでしょう。融資の金利には変動制と固定制があるため、どちらの金利を選択するかを社内で検討する必要があります。

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資本コスト(WACC)のまとめ

資本コストは、資金調達に必要なコストのことで、その会社に対する期待値が明確に現れます。会社はその期待に応える必要があります。

一方で、資本コストのために経営が思うように回らないケースもあるでしょう。そうしたリスクを避けるため、できるだけ資本コストは低いほうが好ましいです。会社は、常に資本コストを意識して経営する必要があります。

資本コストは、未来に対して発生するコストでもあるため予測するのは難しいですが、資本コスト以上の利益を獲得することは、会社にとって必要不可欠です。

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