M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年8月24日更新会社・事業を売る
M&Aの費用と相場はどのくらい?仲介の手数料体系や計算方法を解説!
M&Aには、仲介会社の依頼報酬や各M&A手法で生じる税金などがかかるため、事前に費用相場や計算方法を知っておく慌てずに済みます。この記事では、M&Aにおける費用相場や計算方法、仲介会社の報酬体系やレーマン方式などを解説します。
費用名 | 内容 | 負担 |
---|---|---|
買収費用(取得対価) | 売却側への対価 | 買収側 |
仲介手数料 | M&A実施の際、専門家へ支援業務依頼する際の費用 | 売却側・買収側 |
税金 | 売却側は所得税や住民税、買収側は消費税など(スキームにより異なる) | 売却側・買収側 |
登記にともなう費用 | 商業登記や所有権移転登記などの手続き費用 | 買収側 |
株式発行費 | 株式譲渡時に株券発行会社で株券未発行の場合に株券発行にかかる費用 | 売却側 |
譲受側のM&A費用
譲受側は、譲渡側の経営権(株式)取得や事業取得を行うための必要が必要です。買収費用(取得対価)はM&Aに用いるスキームによって変わります。
買収費用(取得対価)
どのM&Aスキームを用いるとしてもその対価を譲受企業へ支払うかたちとなりますが、なにを対価とするかはスキームによって異なります。
中小M&Aで行われることが多い株式譲渡や事業譲渡における対価は一般的に現金となります。株式譲渡の場合は株式評価額に譲渡数をかけたものが取得費用です。
最終的なM&A価額は売り手企業と買い手企業の交渉によって決まりますが、厳密な企業価値評価が難しい中小企業の場合は年倍法を用いて「営業利益の3年から5年分に時価純資産額を足した額」とすることもあります。
交渉のベースとなるのは企業価値(株式価値)ですが、算出方法は複数あるため専門家へ依頼して自社に合った方法を用いることがポイントです。
また、合併の場合は、現金・株式・社債や新株予約権などを対価とすることが認められています。合併の対価については会社法で定められており、従来は存続会社の株式だけが求められていましたが、法改正により存続会社の親会社株式や現金が対価として認められるようになりました。
譲受側は使用スキームによって必要となる対価が変わりますが、M&A前に買収費用(買収対価)を用意しておく必要があります。
株式価値の計算方法
買収対価を決定するためには、まず譲渡側企業の価値を求める必要があります。というのは、非上場企業は株式を公開取引していないため、根拠となる株価が存在しないためです。
株式価値はインカムアプローチ・コストアプローチ・マーケットアプローチのうち、自社に合ったいずれかの算出方法で求めます。それぞれの算出方法は違う特徴があり、計算結果も違ってくるので専門家に算出を依頼するとよいでしょう。
1つ目のインカムアプローチは対象企業の収益性をもとに株式価値を求める方法です。将来の収益性を加味できるメリットがある一方で、それらの根拠となるメインは事業計画などであるため恣意性が含まれやすいという面も持ち合わせています。
2つ目のコストアプローチは対象企業の現時点における純資産(資産と負債の差)をもとに株式価値を求める方法です。実際に計上された数字をもとに算出するため客観性が高い一方で、事業あるいは企業の将来の収益性を加味することができません。また、計上された数字に誤りがある場合は正しい評価ができない点もデメリットとして挙げられます。
3つ目のマーケットアプローチは、対象企業と事業内容や規模が類似した上場企業の市場価値をもとに、株式価値を相対的に求める方法です。実際の市場価格をもとにするので客観性は高くなりますが、対象企業と類似した上場企業の選出基準が難しく、個々の事業が評価に反映しづらいというデメリットもあります。
取得対価の決め方
譲受側が譲渡側へ支払う取得対価は、個別交渉方式(相対取引方式)た入札方式のどちらを用いるかによって変わります。譲渡側と個別にM&A交渉を行う場合は、事前に算出した株式価値をベースとして交渉を進め、最終的に買収価格を決定するかたちです。
その一方で入札方式では、複数の譲受候補先渉がそれぞれ取得希望価格を提示し、そのなかで最も高い額を提示した企業が譲受先となり、提示した金額が取得対価となります。
仲介手数料
多くの中小企業はM&A実施時に仲介会社・FA・コンサルタントなどへ支援業務を依頼するため、アドバイザリー業務に対する報酬(手数料)支払が発生します。
仲介会社の場合は譲渡側・譲受側と仲介契約を結び、FAの場合は譲渡側・譲受側のどちらか一方と契約を結ぶため、仲介会社のほうがFAよりも手数料が安く抑えられるケースが大半です。また、仲介会社などの専門家に支援業務を依頼した場合、以下のような費用がかかります。
手数料 | 内容 | 相場 |
---|---|---|
事前相談料 | 仲介会社にM&Aの相談をする際に支払う料金 | 0〜1万円 |
着手金 | M&A仲介会社に業務を依頼した時点で発生する手数料 | 50万〜200万円 |
中間金 | 中間金は基本合意契約を結んだ際に支払う料金 | 50万〜200万円 |
成功報酬費用 | M&Aが実際に成立した際に支払う費用 | 数百万円〜数千万円 |
リテイナーフィー | 仲介会社に支払う毎月の報酬(定額顧問料) | 30万~200万円/月 |
デューデリジェンス費用 | 企業調査費用 | 0~200万円 |
実務実行に伴う費用 | 出張費や弁護士相談費など、業務実行に付加して生じる費用 | 実費 |
事前相談料
事前相談料とは、仲介会社にM&Aの相談をする際に支払う料金です。昨今は、事前相談料を支払わなくても良い仲介会社が増えています。
M&A総合研究所では無料相談を随時受け付けており、M&Aの際は、実務経験の豊富なM&Aアドバイザーが、丁寧に案件をフルサポートいたします。
成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」の料金体系です。(※譲渡企業さまのみ。譲受企業様は中間金がかかります。)M&Aをご検討の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
着手金
着手金とは、M&A仲介会社に業務を依頼した時点で発生する手数料です。M&Aを行う際、ノンネームシートをはじめとするさまざまな資料作成や相手会社の選定などにおける費用がかかります。
中間金
中間金は基本合意契約を結んだ際に支払う料金です。中間金の相場は、M&A成功報酬額の10%~20%程度になります。この手数料は、交渉が破断になりM&Aが白紙となっても戻りません。慎重に検討したうえで支払いましょう。
成功報酬費用
仲介手数料の中で、最も重要な費用が成功報酬です。成功報酬とは、M&Aが実際に成立した際に支払う費用です。成功報酬の相場は、数百万円〜数千万円単位の費用となります。
何も注意を払わずにM&Aを実施してしまうと、必要以上に莫大な費用がかかるので、成功報酬に関しては特に注意を払ってください。
レーマン方式とは?
レーマン方式とは、M&A仲介会社に支払う費用の計算方法です。多くのM&A仲介会社は、レーマン方式を使って成功報酬を算出し、売り手側に請求します。
レーマン方式を知っておくと、ある程度の成功報酬費用を予測することが可能です。M&Aの取引金額に対し一定の報酬料率を掛けて手数料額を算出します。掛け合わせる報酬料率は以下のとおりです。
取引金額 | 報酬料率 |
5億円以下の部分 | 5% |
5億円〜10億円以下の部分 | 4% |
10億円〜50億円以下の部分 | 3% |
50億円〜100億円以下の部分 | 2% |
100億円超の部分 | 1% |
レーマン方式による計算方法の例
では、実際に「取引金額(譲渡金額)が25億円のケース」で支払う費用を計算してみましょう。レーマン方式によって算出される成功報酬は以下です。
- 5億円(5億円以下の部分)×5%=2,500万円
- 5億円(5億円~10億円以下の部分)×4%=2,000万円
- 15億円(10億円~50億円以下の部分)×3%=4,500万円
- ①+②+③=支払額総計9,000万円
よって、この場合は、成功報酬として9,000万円を支払います。
レーマン方式の注意すべきポイント
レーマン方式は取引金額によって支払う費用が変動するため注意が必要です。場合によっては、数百万円単位で費用が変動する可能性もあります。取引金額に用いられる要素は、以下の三種類です。
- 譲渡金額:M&Aで譲渡される株価総額
- 企業価値:株価総額・有利子負債総額の合計
- 移動総資産:株価総額と負債総額の合計
M&Aの取引金額に②企業価値と③移動総資産を用いる場合、①譲渡金額の場合と比べてM&A仲介会社の成功報酬は多くなります。株価総額に有利子負債や負債総額の総額が加算されるからです。
M&Aの費用を抑えたい場合は、取引金額が①譲渡金額となっている仲介会社を選ぶことをおすすめします。
最低手数料
「M&Aの取引規模」と「仲介会社が実施する業務内容」に大きな違いはありません。そのため、成功報酬を得られない案件が発生すると仲介会社は採算が合わなくなってしまいます。
最低手数料は、企業が利益の採算を採るために導入されているものです。しかし、最近は最低手数料を設定していないM&A仲介会社も少なくありません。
リテイナーフィー
仲介会社に支払う毎月の報酬(定額顧問料)が、「リテイナーフィー」です。仲介会社は、「リテイナーフィー」によって、M&A実務の実施に必要な経費をまかないます。
リテイナーフィーは、「M&Aの交渉などに要する費用」と「仲介会社の利用手数料」で構成され、各会社によって金額に差があります。毎月固定で支払うので、M&Aの交渉が長引くほど高額の支払いが必要です。
リテイナーフィーを無料とするM&A仲介会社も存在しますので、そういった会社を選ぶとM&Aの費用を安く抑えられる可能性があります。
ただし、リテイナーフィーが不要のM&A仲介会社の中には、成功報酬の利率が高いところもあるので注意が必要です。リテイナーフィーが無料だからといって、一概にM&Aの費用を抑えられるとは限りません。
リテイナーフィーがない仲介会社は、M&Aが成立しないと報酬が貰えません。できるだけ早くM&Aが成立するよう急かしてくる可能性があるため、慎重にM&Aを検討したい場合はリテイナーフィーが必要な会社の方が良いケースもあります。
デューデリジェンス費用
デューデリジェンスとは、M&Aを実行する相手企業の財務面やビジネス面など、さまざまな角度から詳細に調査する手続きのことです。デューデリジェンスで調査する主な分野は以下となります。
- 財務
- 法務
- ビジネス
- 税務
- 人事
- IT
デューデリジェンスの手続きを実施するときも、仲介手数料を支払うケースがあります。これは主に買い手側が支払うM&Aの費用です。
調査をするだけで多額の費用がかかるので、実施したくないかもしれません。しかし、デューデリジェンスを怠ると、後々重大な問題が発覚し、更に高額な費用がかかる可能性があります。そのため、M&Aを実施する際はできる限りデューデリジェンスを実施する必要があるのです。
全分野のデューデリジェンスを実施すると、莫大な費用がかかってしまうため、調査したい分野をあらかじめ決めたうえで実施するとよいでしょう。特に、M&Aの成功可否に直結する財務と法務を重点的に調査するのがおすすめです。
実務実行に伴う費用
業務実行にかかる費用は、実費で請求されるケースもあります。実費がかかる主なものは、企業価値の算出費用、工場や店舗視察が必要な場合の費用、交通費、最終契約書や秘密保持契約書などの書類作成費用などです。
また、これらの実費は着手金や成功報酬へ含まれている手数料体系もあるため、M&A仲介会社などの専門家に相談する場合はよく確認しておきましょう。
税金
中小企業が行うM&Aで多く用いられるスキームは株式譲渡か事業譲渡ですが、まず株式譲渡の場合、株式の売買は非課税扱いであるため消費税はかかりません。
一方で事業譲渡の場合は、取引対象に含まれる課税資産に対して消費税がかかり、不動産が含まれている場合は不動産取得税や登録免許税なども課されます。
登記にともなう費用
登記とは権利関係など一定の事柄を公示するため、その内容を登記簿に記載することです。登記簿は法務局に備えられており、内容に変更が生じた場合は登記変更手続きを行うことが法律で義務付けられています。
M&Aでは、使用スキームによっては商業登記や所有権移転登記などの手続きが必要です。手続きに際しては登録免許税などがかかるため、その費用(数万円程度)も用意しておく必要があります。
事業譲渡の場合、商業登記は不要ですが、M&Aに伴い商号変更などを行う場合はあらためて登記をし直さなければなりません。
譲渡側のM&A費用
譲渡側のM&A費用は主に以下があり、M&A仲介会社への報酬のほか、譲渡によって得た利益には税金がかかります。
仲介手数料
M&A仲介会社に仲介業務を依頼した場合、仲介手数料が発生します。内訳やレーマン方式の計算方法などは、前述した譲受側と同じです。
デューデリジェンス費用
デューデリジェンスは買収リスクの有無(程度)を把握するために行われるため、その費用も譲受企業が負担するケースが一般的です。ですが、入札方式によるM&Aなどでは譲渡側にも費用負担が生じる場合もあります。
税金
M&Aを実行すると、所得税や消費税など税金の支払い義務が生じます。税金は仲介手数料とは違い、M&Aの際には必ず必要となる費用です。したがって、M&Aを実施する際は、詳しく知っておかないといけません。
M&Aには、株式譲渡や事業譲渡などさまざまな手法があります。どのM&A手法を用いるかによって、支払う税金の種類や額が異なります。
それぞれの違いを知らずにM&Aを実行すると、後になって予想外な負担を強いられる可能性があるため、事前にしっかりと対策を立てることが大切です。
株式譲渡で課される税金
株式譲渡とは、売り手側が所有する株式を第三者に売却し、会社の経営権を譲渡する方法です。株主と経営者が変わるだけなので、従業員・取引先・顧客との関係は変化しません。手続きが簡便なので、中小企業が活用しやすいM&Aです。
株式譲渡を用いて会社を売却した場合は、譲渡所得に対して税金が課税されます。譲渡所得とは、「売買した際の金額から会社設立時に要した費用や仲介会社に支払う費用を差し引いたもの」です。
このとき、売るのが法人か個人かによって、費用として支払う税金の種類が異なります。個人のケースでは、15.315%の所得税と5%の住民税が費用として必要です。法人のM&Aでは、会社側に法人税など(約30%)が課税されます。
事業譲渡で課される税金
事業譲渡とは、会社の一部もしくは全ての事業を売買するM&Aの手法です。株式譲渡とは違い、一部の事業のみを売却できるメリットがあります。
このM&A手法では、課税される税金は法人税と消費税です。法人税は、譲渡する事業資産と負債との差額分を超えた売却金額に課税されます。
消費税は、課税資産に対して課税されます。消費税が課税される課税資産は「有形固定資産(土地を除く)」「無形固定資産 」「営業権」「棚卸資産」の4つです。
事業譲渡を用いてM&Aを実施する場合は、税金が高額にならないよう以下の点に注意しましょう。
①消費税率の変動
今後、現行の消費税率から変化する可能性も否定できません。消費税が上がると同時に、事業譲渡を活用する際の費用も多くなるので注意してください。
②営業権の金額
事業譲渡で売却する際、のれん代(営業権)が高額である場合は消費税の負担が重くなるので注意が必要です。のれん代が高ければ高いほど、それに伴い支払う消費税の額も多くなります。
状況によっては、株式譲渡を活用した方が費用を安くできるケースもあるので、M&Aを活用する際は、状況に応じて他のM&A手法を検討することが必要です。
しかし、M&A手法にはさまざまな方法があるため、どれが良いのか判断するのは簡単ではありません。M&Aの選択に悩んだときは、専門家へ相談しましょう。
③棚卸資産の不確実性
棚卸資産の額は日々変動しています。そのため、M&Aが成立するまで棚卸資産の額を確定できません。棚卸資産も課税資産なので、消費税の額も最後までわかりません。棚卸資産の所有量によっては、最終的に支払うM&Aの費用も大幅に変動する恐れがあるので注意が必要です。
会社分割で課される税金
会社分割は、会社の一部のみを売却できる点で事業譲渡とよく似ているM&Aの手法です。税金や事務手続き、買収対価の面で違いがあります。
会社分割は、消費税を課税されない点がメリットです。会社分割は売買の対価を現金以外で支払えるため、相対的にM&Aの費用を安くできる可能性があります。
ただし、自社が非上場会社の場合は株式の現金化が難しいため、株式を対価として支払うのは困難です。買い手側が対価として現金を要求する場合は、対価の面でM&Aの費用を抑えられません。
株式発行費
中小企業には定款で株券発行会社と定められているにもかかわらず、株券が発行されていない企業があります。そのような中小企業が株式を譲渡する場合は、事前に株券の発行手続きが必要です。株券を発行する際は、印刷所に対して印刷費用など10万円程度の支払いが生じます。
なお、株式会社には株式発行会社と株式不発行会社とがあり、前者の場合は株式譲渡時に株券(現物)が必要ですが、後者であれば当然不要です。
定款を変更すれば株式不発行会社とすることができるので、選択肢のひとつとして検討するのもよいでしょう。
M&A費用を抑えるためのポイント
M&Aにはさまざまな費用がかかり、その額は決して安いものではないため少しでも抑えたいと考えるのは自然なことでしょう。ここではM&A費用を抑えるためのポイントを紹介します。
M&A仲介会社各社を比較
M&A仲介会社へ支払う仲介手数料は、M&A費用のうちで大きな割合を占めます。ですが、M&A仲介会社の手数料体系は各社異なるため、支援業務を依頼する前に比較検討することがポイントです。
また、自社にはどの範囲の支援が必要かを検討して、業務範囲を絞ることでも費用を抑えることができます。その際に注意したいのは、費用を抑えることばかりに意識が向いてしまうと、かえってM&Aのリスクが大きくなるなどデメリットもあることです。
費用を抑えて十分なサポートを受けたい場合、完全成功報酬制のM&A仲介会社を選ぶとよいでしょう。完全成功報酬制はM&Aが成立しなければ費用が発生しないので、費用面の心配が少ない状態でM&Aを行えるのが大きなメリットです。
株式価値の算出
譲受企業のM&A費用で最も高額になるのは買収金額であるため、よい会社(事業)を少しでも安く取得できれば投資回収までの期間も短くなります。
ですが、どうしても取得したい会社(事業)であれば他社より高い金額を提示しなければならず、さらに買収後の事業計画に甘さがあれば「高値掴み」となってしまい、投資回収が難しくなり自社の既存事業へも影響を与えかねません。
譲渡企業の株式価値を算出する際は、事業計画を慎重に検討したうえで評価を行い、妥当な額であるかを専門家を交えて決定することが大切です。
デューデリジェンス
デューデリジェンスは買収リスクの有無や程度を把握するために行いますが、その分野は多岐に渡るためすべて行うとなれば高額の費用が発生します。
買収の可否を慎重に判断するのはよいことですが、あまりにもデューデリジェンスの範囲を広げてしまうと費用負担ばかりが大きくなるので、必要な範囲に絞って実施することも必要です。
スキームの検討
譲渡企業そのものを取得する(株式譲渡)と特定事業のみを取得する(事業譲渡)とでは、前者のほうが買収費用は高くなり、課される税金も違うため納税額にも差が生じます。
買収目的によっては、使用スキームを変えることでM&A費用を抑えることも可能です。ただし、本来の目的が達成できなければ意味がないため、スキームの検討は慎重に行う必要があります。
M&A費用の会計処理
株式譲渡
株式譲渡を行った場合、譲渡企業側は売却損益やM&Aに付随した費用などの計上が必要です。具体的には、売却損益・帳簿価額と受け取り対価との差額・売却に付随する費用(M&A会社への報酬等)や現預金に関して仕訳を行います。
一方、譲受企業側は株式取得にかかった費用の計上が必要となり、取得株式は時価で計算し譲受に付随する費用を含めて取得原価とします。また、株式を現預金により取得した仕訳も必要です。
株式交換
株式交換を行った場合に関与するのは、株式交換によって完全親会社と企業・完全子会社となる企業・完全子会社となる企業の3者がです。
完全親会社となる企業は課税が生じないため、税務処理は必要ありません。ただし、株式交換が適格要件を満たすか否かで、完全子会社株式の受け入れ額についての処理が変わります。
一方で、完全子会社となる企業側の税務処理は適格要件を満たすか否かで異なり、適格要件を満たす場合の課税はありませんが非適格の場合は資産の含み損益の計上が必要です。
完全子会社となる企業の株主については、適格・非適格を問わず親会社の株式以外を交付されたかどうかで異なります。
株式のみを交付された場合は帳簿価額による譲渡とみなして譲渡損益の計上を繰り延べ、それ以外の場合は譲渡損益の計上が必要です。
事業譲渡
事業譲渡を行った場合、譲渡企業側では譲渡対象となる資産および負債は簿価、譲渡対価は時価で処理をし、その差額を売買損益として計上します。
それに対して、譲受企業側では譲受対象の資産および負債を時価で計上しますが、事業譲渡の譲渡価額には将来の収益期待値が含まれているため、譲受資産の時価合計額とに差が生じるケースがほとんどです。そのため、この差額がプラスの場合は「正ののれん」としての計上します。
のれんは会計上では最大20年以内の定額法、税務上では5年間償却が完了するまで(ただし一定条件を満たした場合)償却費の計上が必要です。
なお、マイナスとなる「負ののれん」が生じるケースもあり、その際は上記とは異なる処理が必要となります。事業譲渡の税務処理はのれんの扱いなど複雑な部分もあり、正しく処理しなければ税額が大きくなる可能性もあるため、専門家に相談しながら進めていくようにしましょう。
合併
合併には新設合併と吸収合併の2つがあり、多く用いられているのは吸収合併です。吸収合併を行った場合、税制適格要件を満たすか否かで、税務上の処理が異なります。
まず、税制適格要件を満たす場合は、資産および負債を帳簿価格で引き継ぐので売却損益は発生しません。一方で税制非適格となる場合は、時価で資産および負債を引き継ぐため、生じた譲渡損益の税務処理が必要となります。
また、吸収合併は、正ののれんが生じるケース・負ののれんが生じるケース・受け入れた純資産と増加資本金とが等しいケースがあり、それぞれ違った処理が必要です。
合併に関する税務処理は非常に複雑なので、専門家に相談しながら正しく処理を行うようにしましょう。
税務に関する注意点
M&Aの税負担をおさえることは、M&Aで得られる利益増加につながります。そのため、M&A費用を考える際は、税負担も念頭に置くことが重要です。
特に組織再編(合併・分割・株式交付・株式交換・株式移転)の場合、適格要件を満たしているか否かで節税効果が変わります。
適格組織再編と認められれば節税効果が見込めるため、要件を満たすかどうかの判断が大きなポイントといえるでしょう。
M&A仲介会社を利用する際の基礎知識
M&A仲介会社は、成功報酬を中心とした仲介手数料を受け取ることで、仲介方式によるM&Aサポート業務を提供します。以下では、M&A仲介会社を利用してM&Aを行う場合に、あらかじめ押さえておくべき知識をみていきましょう。
M&A仲介会社の必要性
M&Aを進める上で、プロジェクトをうまく管理することはかなり大切です。
M&A仲介会社はプロジェクト管理やその他手続きをスムーズに進行するために必要不可欠です。スケジューリングをせずにM&Aを進めることは非常にリスキーですし、法律面・その他手続きで専門的な知識が必要になってきますのでM&A仲介会社に依頼をしたほうが良いと言えるでしょう。
M&A仲介会社は以下のような支援をしています。
- 全体スケジュールの策定
- 相手先の選定
- 条件交渉の支援
- 専門家の紹介
M&A仲介会社がいなければ当事者同士で全ての手続きを進めなければなりません。
M&A仲介会社が担う業務内容
M&A仲介会社が担う主な業務内容は、M&Aプロセスの管理とM&A条件の交渉に分けられます。M&Aプロセスとは、M&Aスケジュールの検討、必要資料の整理、契約書調整、外部専門家との調整などです。
M&Aは売り手企業、買い手企業だけでなく、弁護士や公認会計士など外部専門家における協力のもとで実施します。M&A仲介会社は、それらの取りまとめ役として、スケジュール管理・調整を行い、迅速にM&Aプロセスを進めます。
M&A条件とは、M&A相手先企業の選定、絞り込み、従業員の処遇、買収価格の決定などのことです。これらの事項は、買い手企業と売り手企業における交渉のもとで決まりますが、M&A仲介会社が間に立つことで円滑な調整ができます。
M&A仲介会社に相談・依頼するメリット
M&A仲介会社を利用する第一のメリットは、経営資源を無駄に費やす必要がない点です。M&Aは、検討から成約まで3ヵ月から1年かかるといわれ、それだけの期間経営者が本業に専念できれば、企業価値向上にもつながります。
第二のメリットは、取引の適正さを確保できる点です。買い手企業と売り手企業のやり取りでは、どちらかに有利な条件になりがちですが、第三者である仲介会社を利用することで、適正な条件でM&Aを行えます。
第三のメリットは、トラブルの事前防止です。買収後にM&A相手企業の嘘が発覚しても、契約を締結した以上後の祭りになる可能性が高いです。知識と経験が豊富な仲介会社を利用することで、トラブルの防止につながります。
M&A仲介会社に相談・依頼するデメリット
まず、M&A仲介会社は、アドバイスの提供で利益相反が生じます。仲介会社は売り手企業と買い手企業の双方から手数料を得るため、一方の利益を重視すれば他方が損をする関係だからです。一般的に、仲介会社は買い手企業のために取引価格を下げる傾向があります。
次に、不明確な報酬体系です。顧客の無知を利用して、相場よりも高い着手金、中間金を得ている悪質な会社も存在します。一度着手金、中間金を支払うと、その後取引が中止されても原則返金されません。
何のための報酬なのかわからないケースも多いため、必ず料金体系を事前に確認し、不明な点は明確にしましょう。
M&A仲介会社選びを成功させるポイント
適したM&A仲介会社を選ぶためには、仲介会社の特徴に着目すると良いでしょう。例えば、仲介会社は、仲介型とアドバイザリー型に大別されます。スピードを求めるなら前者を、M&A条件にこだわるなら後者を選択するのがおすすめです。
次に、仲介会社における過去の実績、特定の業界に対する知識の有無を調査すれば、自社が検討するM&Aに適しているか判断できます。報酬体系も重要な特徴の一つです。少なくとも明確な料金体系が示されていない場合は、注意してください。
M&Aの費用まとめ
M&Aを実施する過程で、費用やコストの存在は無視できません。M&Aの実施時には、仲介手数料や税金を支払う必要があります。その費用は数千円〜数万円程度では済みません。多くの場合は数百万円〜数千万円もの莫大な費用が必要です。
費用に対して理解のないままM&Aを実施してしまうと、後々身動きが取れなくなる可能性があります。M&Aにかかる費用を事前に知ることで、計画的かつ効率的にM&Aを実行しましょう。
M&A・事業承継のご相談なら24時間対応のM&A総合研究所
M&A・事業承継のご相談は成約するまで無料の「譲渡企業様完全成功報酬制」のM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴
- 譲渡企業様完全成功報酬!
- 最短49日、平均6.6ヶ月のスピード成約(2022年9月期実績)
- 上場の信頼感と豊富な実績
- 譲受企業専門部署による強いマッチング力
M&A総合研究所は、M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによって、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
また、独自のAIマッチングシステムおよび企業データベースを保有しており、オンライン上でのマッチングを活用しながら、圧倒的スピード感のあるM&Aを実現しています。
相談も無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。