2023年9月22日更新会社・事業を売る

シナジー効果の意味とは?M&A成功事例や多角化戦略、使い方をわかりやすく解説

M&Aや業務提携のような複数の企業が合同で事業に取り組む、あるいは経営統合を行った際に発生する相乗効果をシナジー効果と呼びます。シナジー効果を活用したソフトバンクや楽天といったM&A成功事例、シナジー効果による多角化戦略、使い方や注意点を解説します。

目次
  1. シナジー効果
  2. シナジー効果とは?シナジー効果の意味
  3. シナジー効果の種類
  4. M&Aを活用した経営統合によるシナジー効果
  5. シナジー効果を活用したM&A成功事例
  6. 多角化戦略
  7. シナジー効果の有効的な使い方と注意点
  8. まとめ

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シナジー効果

シナジー効果といえばM&Aでよく使われる用語ですが、種類や成功事例について知っている方は少ないのではないでしょうか。シナジー効果は単純に「相乗効果」という意味だけでなく、種類も複数あるために、全てを正確に理解することは簡単なことではありません。

今回はシナジー効果の意味や種類をわかりやすく説明するだけでなく、実際にシナジー効果を発揮したM&Aの成功事例などについてお伝えしていきます。

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シナジー効果とは?シナジー効果の意味

そもそもシナジー効果とは、どういった意味があるのでしょうか?シナジー効果は基本的に「相乗効果」という言葉で解釈されます。M&Aや業務提携のような複数の企業が合同で事業に取り組む、あるいは経営統合を行った際に発生する相乗効果をシナジー効果と呼びます。

基本的に定義に該当すれば、シナジー効果は「相乗効果」とひとくくりに解釈しても構わないものですが、実際には後述するようにシナジー効果にはさまざまな種類があります。

シナジー効果の種類

冒頭でもお伝えした通り、シナジー効果にはさまざまな種類があります。いずれも何らかの形で発揮された相乗効果ですが、単純に「売り上げ」という形だけで現れるわけではありません。ここでは、以下の4つの種類のシナジー効果についてお伝えしていきます。

  1. 売上シナジー
  2. コストシナジー
  3. 経営シナジー
  4. 投資シナジー

①売上シナジー

シナジー効果という言葉を聞いてイメージする代表例が売上シナジーです。売上シナジーは、単純に売上に発揮されるシナジー効果のことをさします。M&Aの場合は、経営統合することによってそれぞれの企業の売上が合わさることでトータルの売上が大きくなります。

M&Aだけでなく業務提携などで販売チャンネル、顧客、流通網などが合わさることでさらに売上を向上することができます。統合・提携する相手によっては、ブランドイメージの向上にもつながります。統合・提携をきっかけに企業の知名度が上がることもあるため、それもまた売上につながるものといえるでしょう。

②コストシナジー

コストシナジーは、経営の際に発生するコストの削減に関わるシナジー効果です。コストシナジーは、生産設備の稼働率の向上やM&Aを機にした営業拠点の統廃合、物流コストや重複している間接部門費などの削減といった形で実現されるものです。

③経営シナジー

異なる企業同士が統合、あるいは提携して互いの企業のノウハウが合わさると経営シナジーの発揮につながります。それぞれの企業が持つノウハウや経験値は互いの事業にとって生かせるものであり、異業種同士の統合・提携であれば、両社の得意分野が組み合わさることでより良い成果が期待できるようになります。

④投資シナジー

統合・提携したそれぞれの企業の投資力や人員、研究開発に関わる知識や生産設備などが合わされば、投資シナジーが発揮できる可能性が高まります。技術基盤や資材調達を共同化できるため、より良い製品・サービスを提供するための研究開発が促進されるようになるでしょう。

M&Aを活用した経営統合によるシナジー効果

昨今はM&Aが経営戦略として一般化されており、大企業から中小企業、ベンチャー企業までがM&Aを実施することで経営統合によるシナジー効果の獲得に成功しています。これらの企業がM&Aを実施するには、以下のような理由があります。

  • 事業規模拡大によるさらなる成長を図る
  • 経営不振から脱却するための事業再建の一手
  • 後継者不在による解散を避けるための事業承継の一環

M&Aは、複数の企業同士が経営統合を行うことにより、上述したようなシナジー効果を上げることが期待できるものです。実際M&Aを行うことによって成長を実現した企業は数え切れないほどあり、経営再建や事業承継をより良い形で実践した企業もあります。

経営戦略におけるM&A

かつては、M&Aというとネガティブなイメージが伴うものでしたが、最近では経営者の価値観も大きく変わっており、むしろM&Aを積極的に行うことでシナジー効果を獲得し、さらなる企業の成長を実現することが戦略として一般的なものになっています。

そのため、昔と比べるとどの企業も何らかの形でM&Aに関わる可能性は上がっているといっても過言ではないでしょう。ただM&Aはさまざまなスキームがあり、成功するには専門家の協力がおすすめです。

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シナジー効果を活用したM&A成功事例

M&Aを成功させ、シナジー効果を獲得した企業は数多くあります。ここでは、多様な企業がM&Aに成功した以下の5つの事例をご紹介します。

  1. ソフトバンク
  2. 楽天
  3. サントリー
  4. ロート製薬
  5. JT

①ソフトバンク

日本でも有数の大企業であるソフトバンクですが、その発展にはM&Aが大きく影響しています。ソフトバンクは2004年に日本テレコム、ホークス球団、2006年にボーダフォンを買収しました。

そして、新たな顧客の取り込みや新しい事業分野への新規参入、買収した企業が持つ設備を利用したコスト削減などに成功し、現在の規模にまで発展しました。

ソフトバンクは、売上シナジーやコストシナジーが発揮された典型的な事例といえます。ソフトバンクは現在も海外の企業とのM&Aを行うなどさらなる新事業の進出も積極的に実施しており、グループの発展を実現しています。

②楽天

ソフトバンクと並び、日本でトップクラスの大企業である楽天もまた、M&Aを利用して発展を実現しました。2003年にマイトリップ・ネット、2004年にディーエルディレクト・エスエフジー、あおぞらカードなど多種多様な企業を買収してきました。

さまざまな事業を持つ企業を買収することで、楽天はグループ内の事業を多角化し、楽天のユーザーに消費と金融の両方からサービスを提供しています。この戦略を楽天は「楽天経済圏」と呼んでいます。

これは一種の売上シナジーを発揮しているといえますが、楽天が発揮しているシナジー効果についてはグループシナジーと呼称されます。

③サントリー

2014年にサントリーホールディングスがアメリカの大手ウィスキーメーカーのジムビームを買収しました。これによってサントリーは蒸留酒で世界第3位にまでのぼりつめ、さらにジムビームを通じて自社のブランドのウィスキーを販売するルートを確保しました。

サントリーはこのM&Aによって更なる販売ルートを拡充できるだけのシナジー効果を獲得しています。

④ロート製薬

2016年にロート製薬が行った南アフリカのAJ North社(歯ブラシメーカー)を完全子会社化したM&Aでは、南アフリカ唯一の歯ブラシメーカーを買収することで、南アフリカでの市場を独占し、さらにアフリカ進出のきっかけを作りました。

このM&Aでは、歯ブラシのみならずビューティーヘルスなどの分野の市場も獲得しています。このようにM&Aは、新たな国や地域に市場を開拓する際に使われることもあります。

⑤JT

日本たばこ産業ことJTは、1999年にアメリカのRJRナビスコの海外たばこ事業と、2007年にはイギリスの大手たばこ産業のギャラハーとのM&Aを行いました。JTはこれらのM&Aを通じて積極的なブランディングを行っただけでなく、さらにコスト削減を実現しています。

さらに大手の会社とM&Aをすることで従業員への給与・賞与体系を統一することによって、従業員へのインセンティブを充実させ、モチベーションの向上にも成功しています。JTのM&Aは、単純な売上シナジーだけでなくコストシナジーや経営シナジーといった面でも、シナジー効果を発揮しています。

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多角化戦略

M&Aや業務提携によって発揮されるシナジー効果は、企業の多角化戦略に貢献するものです。M&Aの成功事例として挙げた楽天やロート製薬が良い例ですが、M&Aや提携は自身の企業のサービスを多角化・拡充したり、新たな国や地域の市場へ進出したりという形でシナジー効果を活用することができます。

M&Aや提携といった経営戦略は、多角化戦略において非常に有効的なものです。M&Aや提携によって統合・提携する企業同士のノウハウや設備、従業員、資金、販路などを使えるようになります。

そのため、新事業や新しい市場への進出をゼロベースで行うよりも投資コストが削減できるようになり、事業に必要な許認可の獲得の手間も省けるため、スピーディーに展開していくことができます。

シナジー効果による多角化戦略

多角化戦略は成功率が高いものではなく、多大な投資と時間を費やしたとしても失敗に終わる可能性は決して低くありません。しかし、M&Aや提携で得られるシナジー効果を活用すれば、多角化戦略を成功させやすくなるでしょう。

一方、むやみな多角化戦略は限られた経済資源を浪費してしまうことにつながり、かえって企業の成長を妨げてしまうことがあります。

M&Aや提携は確かに多角化戦略を促進させるものですが、自社の事業ドメインを適切に設定し、そこから多角化の道筋をきちんと見つけていくことが重要です。

M&A総合研究所では、M&Aに豊富な知識と経験を持つプロがM&Aをフルサポートいたします。

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シナジー効果の有効的な使い方と注意点

シナジー効果は多種多様であるため、M&Aや業務提携を行う際にどの部分にシナジー効果を活用するかを決めておく必要があります。

シナジー効果をどこで発揮させるかをあらかじめ入念に予測しておけば、経営統合をスムーズに進められるようになりますし、統合を行う際の優先順位も決定しやすくなります。ただM&Aに関しては、想定していたシナジー効果を得ることは決して簡単なことではありません。

成功率が30%程度といわれているM&Aを成功させること自体もそうですが、M&Aが成功したとしてもシナジー効果が発揮できないというケースは少なくありません。シナジー効果が発揮できない理由としては、主に以下の2つが挙げられます。

  1. M&Aの成約に体力を使ってしまう
  2. 人員の流出

①M&Aの成約に体力を使ってしまう

M&Aは成功率が低いこともあって、買い手側も売り手側もそのプロセスで相当体力を使ってしまいます。そのためM&Aの成約に全力を費やしてしまい、その後の経営統合が十分になされていないということは珍しくありません。

M&Aのシナジー効果が最大限発揮されるのは成約した後に行う経営統合にかかっているといっても過言ではなく、しっかり企業同士の生産ラインや業務などを統合させていかなければ予想していたシナジー効果は得られません。

M&Aの後に経営統合を行うプロセスを「アフターM&A」や「PMI」と呼びますが、このプロセスは重要であるにもかかわらずおざなりにされやすい傾向があります。M&Aを行う際には成約に満足せず、しっかり経営統合を行っておくようにしましょう。

②人員の流出

M&Aを行ううえでのリスクとしてよく挙げられるのが人員の流出です。M&Aは異なる企業同士が経営統合を行うものであるため文化や価値観、風土、理念などが異なっていることは珍しくありません。そのため、相手の企業と考えが合わずに従業員が離れてしまうことが発生する可能性があります。

加えて、M&Aのような経営統合は買い手となった企業と売り手となった企業の従業員の間で意味のない上下関係が生まれやすく、売り手となった企業の従業員が肩身の狭い思いをすることも少なくありません。当然ながら、そのような人間関係ができれば、従業員が離職する要因になってしまいます。

また、M&Aそれ自体に反発した従業員が離職してしまうリスクはあります。売り手となる企業にありがちですが、どうしても「会社を売る」ということに抵抗感を覚えてしまう従業員は少なくありません。万が一離職する従業員が事業の中核を担っていた場合は、シナジー効果への影響は計り知れないことになります。

M&Aは、良くも悪くも当事者である企業それぞれに影響を与えるものです。従って、どのタイミングでM&Aを行うことを公表するか、どのように理解してもらうかも慎重に考えておく必要があります。

M&Aによるシナジー効果を発揮するうえで従業員は欠かせない存在であるため、一人でも多くの離職を抑えられるようにはしておくべきでしょう。

まとめ

シナジー効果は、単純に「相乗効果」と理解されていることが多いですが、実際にシナジー効果が発揮される場面は多様であり、経営統合により発生したあらゆる「付加価値」のことをさします。

どのシナジー効果を狙うかということがM&Aや業務提携を行う判断を左右するといっても過言ではありません。ただシナジー効果を十分に発揮するには、さまざまなファクターに注意する必要があります。

些細な事柄がシナジー効果の発揮を妨げることも珍しくないので留意しておきましょう。今回の要点をまとめると以下になります。

【シナジー効果】

  • 経営統合を行った際に発生するあらゆる相乗効果、付加価値のこと

【シナジー効果の種類】

  • 売上シナジー、コストシナジー、経営シナジー、投資シナジーの4種類がある

【M&Aを活用した経営統合】

  • 経営戦略におけるM&Aによってシナジー効果を獲得することが一般的となっている

【多角化戦略】

  • 自社の事業ドメインを適切に設定しそこから多角化の道筋をきちんと見つけていきシナジー効果を活用することが重要

【シナジー効果の使い方】

  • M&Aや業務提携を行う際にどの部分にシナジー効果を活用するかをあらかじめ入念に決めておく

【シナジー効果の注意点】

  • M&Aの成約に体力を使ってしまい、後の経営統合が不十分になったり、何らかの理由で人員の流出が発生したりすることでシナジー効果を発揮できないケースがある

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