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2021年5月5日更新資金調達
債務免除とは?貸倒損失の要件や法人税への影響を解説
債務免除とは、債権者が無償で債権を消滅させる行為です。債務者側から債務免除を見ると、自身の持つ債権を放棄する事となる為、「債権放棄」と呼びます。この記事では、債務免除とはどのようなものか、貸倒損失の要件や法人税への影響を解説します。
目次
債務免除
経営資源が乏しい中小企業の多くが、不況に陥っています。経営不振を打破する方法は様々あり、状況に適した手法を用いる必要があります。
経営不振を打破する手法の一つに、「債務免除」があります。債務免除を用いると、財務状況を大幅に改善できる可能性があります。
この記事では、債務免除について分かりやすく解説します。
債務免除とは?債務免除の意味
まず、債務免除について分かりやすく解説します。
⑴債務免除とは
債務免除とは、債権者が無償で債権を消滅させる行為です。簡単に言うと、借金の返済をしなくて良いとする行為です。
債務者側から債務免除を見ると、自身の持つ債権を放棄する事となる為、「債権放棄」と呼びます。一般的な取引において、負債の返済を免除する事は滅多にありません。
貸した側からすると、当然債務免除に応じてくれません。裁判所が命じる際や倒産、債務免除により債権者にとってメリットが生じるケースでは、債務免除が実施されます。
債務免除をむやみやたらに許すと、最初から返済見込みがないにもかかわらず借り入れを行う事業者が出てくる恐れがあります。債務免除を受け入れる側は、その妥当性について慎重に考える必要があります。
経営不振を理由に、債権の回収見込みが無い場合に初めて、債務免除(債権放棄)の実行を考えます。一度債務免除に応じると、貸したお金は返ってこない為十分な注意が必要です。
以上が債務免除の基本的な説明となりますが、上記はあくまで第三者同士の話です。経営者自身が会社にお金を貸している状況では、債務免除の実行に躊躇は不要でしょう。
⑵債務免除の手続き
債務免除の手続きは、債務者が債権者に債務免除に合意してもらう所から始まります。債権者が債務免除に合意したら、書面にて「債権放棄を実行する旨」を会社に通知します。
基本的には、一方的な通知のみで債務免除(債権放棄)の手続きは完了します。後の税務申告を考慮し、通知する際は「内容証明郵便」にすることがオススメです。
経営者と会社は三位一体の関係にある為、状況に応じて債務免除を実行するケースもあります。しかし、M&Aにおいて債務免除が発覚した場合は交渉に影響することがあるので、専門家のサポートを得ながら進めた方がいいでしょう。
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債務免除のメリット
この項では、債務免除のメリットについて解説します。
利益を出すことができる
上述のように、債務免除は企業の利益になります。
つまり、「返すべき資金の返済義務がなくなったということで、その分得をしている」という考え方です。利益がでると、純資産が増加するので、自己資本比率が良くなります。
また、「自己資本比率の増加というより、債務超過による負担を少しでも減らす目的で債務免除をする」というケースがよく見られます。
また、債務超過は企業の負債総額が資産総額より高いことです。すべての資産を手放したとしても債務が返済不可能であるため、倒産する可能性が高いと判断されます。
社長の財産を減らすことができる
債務免除をすると、社長の財産を減らして、相続税を減らすことができます。
上述したように借入金は社長から見たら貸付金となります。言い換えると、社長は「企業から返済されるべきお金を持っている」ということになります。
そのため、社長の貸付金が仮に1,000万円ある時、社長が不慮の事故や病気などで亡くなると、社長の財産として1,000万円ぶんの相続税がかかってしまいます。
特に中小企業などは経営がうまく立ち行かず、社長の貸付金が大きくなってしまうというケースが数多く見受けられます。
経営がうまく立ち行かないということは、ほとんどの場合、貸付金が返済されないということです。そして、その返済されないお金に対して、本来払う必要のない相続税がかかってしまう危険性があります。
そのような状況を防ぐためにも、企業が債務免除を受けて(社長が債権放棄をして)、相続税を減らすことが重要となります。
債権者から債務免除を受ける場合の税務上の問題
この項では、債権者から債務免除を受ける場合の税務上の問題について解説します。
⑴基本的な税務処理
債務者が債務免除を受けた場合、債務免除の金額分は「債務免除益」として税務上の益金に算入します。
例えば1億円の債務免除を受けた際は、1億円の債務免除益が発生し、この金額に応じた税負担が生じます。
経営不振を打破する為に債務免除しても、多額の税負担が生じる為、十分な効果が得られません。
この点は、債務免除における税務上の大きな問題であり、対処を講じなくてはいけません。
⑵債務免除で生じる税務上の問題への対処法
債務免除で生じる多額の税負担を軽減する為には、繰越欠損金の利用が有効です。
繰越欠損金とは、過去に発生した税務上の赤字であり、翌期以降に持ち越しているものです。
繰越欠損金は黒字所得と相殺できる為、大幅な税負担の軽減を実現可能です。
債務免除で発生した益金を繰越欠損金と相殺すれば、税負担を軽減もしくは消滅させることが可能です。
⑶期限切れ欠損金に関する特例
債務免除における税務上の問題を解決する上で、繰越欠損金の利用は非常に有用です。
有用な繰越欠損金ですが、法律上使用期限が定められており、期限切れの繰越欠損金は原則使用できません。
繰越欠損金の期限は、平成29年度までに生じたものは9年、それ以降に生じたものは10年と設定されています。
原則的には使用不可ですが、法的再生や私的再生を目的とした債務免除の場合、例外的に期限切れ欠損金を損金算入できます。
例えば1億円の期限切れ欠損金があれば、1億円までの債務免除益を相殺可能です。
債務免除の際は、諦めずに今回ご紹介した特例を活用しましょう。
社長借入金の債務免除が法人税に与える影響
この項では、社長借入金の債務免除が法人税に与える影響について解説します。
⑴社長借入金とは
社長借入金とは、社長が自身の経営する会社に貸し出しているお金です。従業員が社長一人であったり小規模な零細企業では、社長借入金の存在は珍しくありません。
本来会社経営は、資本金や金融機関からの借入金を基に行います。仮に経営不振に陥った際、小規模な会社では手軽さやリスク面を考慮して、社長が会社に資金を貸す形で資金繰りを実施します。
非常に手軽である上に返済スケジュールや利息の心配が不要なので、一見すると使い勝手の良い手法に見えますが、注意点もあります。法律上は他人同士の資金の融通である為、会社の自己資本比率は悪化します。
つまり外部から見た会社の財務状況が悪化します。万が一社長が亡くなった際には、社長借入金が相続財産に含まれます。
本来不必要な税負担が課される為、相続人の間でトラブルの元になり得ます。社長借入金の利用には十分注意しましょう。
⑵法人税への影響
社長借入金の債務免除を実施すると、法人税にはどの様な影響を与えるのでしょうか?
①社長が会社に対して債務免除を実施するケース
社長借入金であっても、税務上は通常の債務と同様に取り扱います。会社側に「債務免除益」が発生し、法人税等が課税されます。
つまり社長借入金の債務免除により、法人税が増加する訳です。一方で債務免除を認める社長側には、特段の問題は生じません。
②会社が社長に対して債務免除を実施するケース
①とは逆のケース(会社が社長にお金を貸している)では、債務免除によりどの様な影響が生じるのでしょうか?
社長側が経済的な利益を受けると見なされ、税務上は社長が役員賞与を受け取ったと判断します。
債務免除による貸倒損失の要件
次に、債務免除による貸倒損失の要件について解説します。
債務免除による貸倒損失の要件は複雑である為、今回はざっくりと解説します。
債務免除による貸倒損失を計上する為には、下記2つの要件をクリアする必要があります。
⑴債務免除の有効性
債務免除による貸倒損失が認められる為には、債務免除の意思表示がなされる事が要件となります。
債権者が「債務免除」を認める旨を意思表示すれば、債務免除の効力が発生します。
意思表示の相手がその場所にいない場合は、債務免除を認める通知が相手に到達した時点で効力が発生します。
繰り返しになりますが、債務免除の証拠を残す上でも「内容証明郵便」の利用をオススメします。
⑵債権の回収不能性
債務免除による貸倒損失が認められる為には、「債権の回収不能性」も要件となります。貸倒損失は、債権が社会通念上回収できない時点で計上します。
具体的には、「債務超過状態が相当期間継続し、金銭債権の弁済を受けることが出来ないと認められる」場合に、債務免除による貸倒損失が認められます。「相当期間」とは、「債権者が債務者の経営状態を基に、回収不能かどうかを判断するために必要な期間」を指します。
つまりケースごとに、要件となる「相当期間」は異なります。以上が債務免除による貸倒損失が認められる2つの要件です。
上記要件を見て分かる通り、むやみやたらに債務免除による貸倒損失を計上できる訳ではありません。債務免除を実施する際は、「貸倒損失」として計上できるかを十分ご確認下さい。
債務免除の注意点
債務免除を実施するに際しては、いくつか注意点があります。
この項では、債務免除の注意点を分かりやすく解説します。
債務免除を実行する際は、是非ともご参考ください。
⑴重い法人税の負担が生じるリスク
債務免除を受ける側は、法人税の負担に十分注意しなくてはいけません。「債務免除益」は益金となり、他の利益に合算されます。
債務免除の金額次第では、法人税が大幅に増加し、かえって経営難が悪化する恐れもあります。債務免除を実行する際は、益金と相殺可能な繰越欠損金の額を事前に確認しておきましょう。
繰越欠損金の額が少ない場合は、債務免除を見送る必要があります。
⑵株主に贈与税が生じるリスク
会社内に他の株主が存在する際は、贈与税のリスクも注意点となります。債務免除を実行すると、財務状況の改善により株価が上昇する事が一般的です。
税務上株価の上昇分は、債務免除の実行者からの贈与と見なされます。債務免除者と株主が同一であれば問題ないものの、異なる場合には大きな問題となります。
債務免除に関係ない株主に、贈与税が課税されてしまうからです。自身の行動とは無関係に贈与税が生じる為、株主とトラブルに発展するリスクがあります。
どの程度株価が上昇するかはケースバイケースですが、非課税額(110万円)を超えると贈与税が課税されます。債務免除を行う時は、他の株主への影響も十二分に考慮しなくてはいけません。
株価上昇分の算定には高度な専門知識が必要である為、あらかじめ税理士に相談する事を強くオススメします。
⑶お金を取り戻す事が不可能となる
最後に、債務免除を認める側(債権放棄する側)の注意点をお伝えします。こちらも繰り返しになりますが、債務免除とは債権を自ら放棄する事を意味します。
数年待っていれば取り戻せるはずの金銭を、債務放棄を実行する事で取り戻せなくなります。債務放棄を認めるメリットが他にあれば良いですが、無い場合には慎重に検討する必要があります。
子会社への債務免除をした場合は?
親会社が子会社に資金を貸し付けている状況で、子会社の経営が芳しくなく、返済が見込めないというケースがあります。子会社の経営を改善するため、親会社が貸付金を放棄するという選択肢をとる場合もあります。
しかし、この場合、親会社には必ずしも税法上の損金というわけではありません。
子会社が倒産に追い込まれた際は、倒産に近い場合なら貸し倒れとして損金に参入できます。
また「経済的利益を供与する側からみて、再建支援等を行わないとさらなる損失が発生することが明らかな場合や子会社等の倒産を防ぐために仕方なく行うもので、合理的な再建計画に基づく場合など、その再建支援等を行うに足りる理由が認められる場合」には全額を損金に算入することが認められます。
しかし、倒産間近という状況など、条件に当てはまる範囲が狭いので、専門家と相談した上で、入念な準備のもと債務免除を行う必要があります。
税務署が貸し倒れや経営の立て直しと認められない場合、債務免除したお金は寄付金として扱われることになります。
1事業年度に損金とみなされる寄付金には限りがあるので、上限に達した金額は損金に損金としては扱われず、想定外の課税を受ける可能性があります。
まとめ
債務免除とは、債権者が無償で債権を消滅させる行為です。
債権者から債務免除を受ける場合の税務上の問題や、社長借入金の債務免除が法人税に与える影響といった、税務面での問題も多くあるため、しっかり注意点を踏まえ活用しましょう。
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