2022年9月28日更新会社・事業を売る

合併を行う際の登記とは?必要書類、手続き、登録免許税を解説

合併には登記のプロセスが必要であり、手続きが煩雑になりやすい手法です。そこで本記事では、合併における登記手続きの理解を深められるよう、合併の登記申請に必要な書類・登録免許税・公告掲載料などを中心にわかりやすく解説します。

目次
  1. 合併とは
  2. 合併手続きの流れと登記のタイミング
  3. 吸収合併の法務局における登記手続き
  4. 合併の登記申請に必要な登記書類
  5. 合併における許認可の取り扱い
  6. 合併を行う際に発生する登録免許税と公告掲載料
  7. 合併を専門家に相談する際の登記報酬と費用
  8. 合併を行う際の登記まとめ

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合併とは

合併は、M&Aの中でも代表的な手法の1つです。M&Aを詳しく知らない経営者でも、合併を耳にしたことのある方は多くいます。合併は会社同士が統合する手法ですが、そのプロセスは煩雑であり膨大な手続きをすませなければなりません。

このプロセスの1つに登記が挙げられますが、合併の種類により内容が変わるため理解すべき事項が多いです。そこで本記事では、合併の手法をおさらいしつつ、合併に伴う登記について詳しく紹介します。

合併の種類

合併とは複数の会社を統合して1つの会社にする手法ですが、吸収合併と新設合併の2種類に大きく分かれます。それぞれの概要は、下記のとおりです。

吸収合併

吸収合併とは、2つ以上の既存の会社が統合して1つの会社になる手法をさします。合併手法の中でも、広く知れ渡っている方法です。吸収合併では、統合により消滅する会社を消滅会社と呼び、統合後も存続する会社を存続会社と呼びます。

消滅会社は解散しますが、自社株式を存続会社に譲渡する対価として受け取るのが存続会社の株式・社債、現金などです。吸収合併は合併の方法として一般的ですが、存続会社に吸収されることがネガティブなイメージにとらえられる場合もあります。

最近ではM&Aが認知されてきており、会社の売却はもはや珍しくありません。従来のように否定的なイメージも払拭されつつあります。合併は、会社の事業や従業員の雇用を守る手段として有効であり、解散よりも前向きに捉えられるケースが多い状況です。

ただし、合併はいずれかの会社が消滅する手法であるため、買い手と売り手のニーズが合致していなければなりません。

新設合併

新設合併とは、新たに設立した会社に既存の会社を統合させる手法です。既存の会社のみで合併しない点が、吸収合併とは大きく異なります。新設合併は新しい会社を設立した後で合併を行うため、会社を売り渡したネガティブなイメージが薄いのが特徴です。

新設合併は、既存会社間で行う吸収合併とは違って会社を新しく設立するため、手続きがより煩雑になります。登記の方法も吸収合併とは異なるうえに登録免許税も高額になるため、新設合併はそれほど採用されていません。

また、新設合併における消滅会社の対価は株式もしくは社債に限定されており、現金は得られません(新設会社には現金がない)。事業承継シーンのように経営者が引退時に今後の生活資金の獲得を狙うのならば、新設合併は不向きな手法だといえます。

合併のメリットとデメリット

次に、合併によるメリットとデメリットを簡単に紹介します。双方を把握しておくことで、合併に関するイメージを具体化させることが可能です。

合併のメリット

合併は2つ以上の会社が統合する手法であり、会社同士のノウハウ・資本・従業員などの融合に伴いシナジー効果を獲得できます。会社同士の統合により会社の規模が拡大すれば、財務における信用性の向上も期待可能です。

合併は事業規模の拡大だけでなく、組織再編の一環として実施されるケースもあります。一般的に複数の子会社の管理は非常に手間がかかりますが、合併により1つの会社に統合できれば、グループの構成がシンプルになり運営を円滑化させることが可能です。

合併のデメリット

合併のデメリットは、必要となる手続きやコストが多い点です。M&A手法の1つである株式譲渡は会社同士の契約や交渉のみで完結できますが、合併では公的機関を介する必要があるため書類作成や登記など必要なプロセスが増加します。

特に新設合併では、定款作成を含めて吸収合併以上に手続きが膨大です。さらには、複数の会社が統合するために、価値観の違う従業員間で摩擦が発生したり、派閥が生じて対立が起きたりするおそれも懸念されます。

合併は包括承継であるため、消滅会社の抱える不要な資産・契約・簿外債務を含む負債などの承継を避けられません。承継する内容次第では、経営に支障をきたすおそれもあるため、注意しましょう。

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合併手続きの流れと登記のタイミング

登記のタイミングを把握するには、合併の流れを理解しておく必要があります。吸収合併を例にすると、合併の主な流れは以下のとおりです。

  1. 存続会社と消滅会社の間で交渉を行い、契約を締結する
  2. 各社において株主総会の特別決議により合併契約を承認する
  3. 官報公告を行う
  4. 株主や債権者における利益の保護手続きを行う
  5. 吸収合併の効力発生後に登記手続きを行う
  6. 事後開示書類を備え置く

上記のとおり、登記手続きは、合併の最終段階で実施します。登記手続きには手数料が発生したり、複数の資料をそろえる必要があったりするため、専門家のサポートを得るとよいでしょう。最終段階のプロセスでつまずかないよう、事前に手続き内容を確認しておくことが大切です。

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吸収合併の法務局における登記手続き

ここでは、合併のうち吸収合併を実施する場合における登記手続きを確認します。登記手続きは法務局で行いますが、存続会社と消滅会社では登記手続きの内容が異なるため、注意が必要です。存続会社の登記手続きと消滅会社の登記手続きを、それぞれ分けて説明します。

存続会社の登記手続き

まずは、吸収合併における存続会社の登記手続きです。登記手続きを行う場所と変更登記申請書の記載事項を説明します。

登記手続きを行う場所

吸収合併における存続会社の登記手続きは、登記簿に記載されている会社所在地の管轄法務局で行います。法務局は法務省の下部組織ですが、ホームページで管轄が調べられるのですぐわかるでしょう。登記手続きの期限は、吸収合併の効力発生日から2週間以内に行わねばなりません。

変更登記申請書を用意し登録免許税に相当する収入印紙を貼り付け、その他の必要書類とともに提出します(登録免許税や必要書類の詳細は後述)。なお、登録免許税は現金納付・電子納付も可能です。

変更登記申請書の記載事項

変更登記申請書に記載する具体内容は、以下のとおりです。

  • 会社法人番号
  • 商号(会社名)
  • 本店(住所)
  • 変更登記の理由(吸収合併)
  • 吸収合併の効力発生日
  • 発行済株式の総数ならびに種類および数
  • 発行済株式の変更総数と変更期日
  • 資本金の変更額と変更期日
  • 吸収合併した消滅会社の名称・所在地
  • 登録免許税の額面

消滅会社の登記手続き

続いて、吸収合併における消滅会社の登記手続きです。登記手続きを行う場所と解散登記申請書の記載事項を説明します。

登記手続きを行う場所

吸収合併における消滅会社の登記手続きは、存続会社と同じく、吸収合併の効力発生日から2週間以内に管轄の法務局で行います。存続会社との違いは、提出する申請書が解散登記申請書であることです。登録免許税や必要書類の詳細は後述します。

解散登記申請書の記載事項

解散登記申請書に記載する具体内容は、以下のとおりです。

  • 会社法人番号
  • 商号(会社名)
  • 本店(住所)
  • 登記の事由(吸収合併による解散)
  • 解散する期日
  • 登録免許税額
  • 添付書類リスト

登記事項証明書とは

登記事項証明書とは、法人登記の内容を公的に確認・証明できる書類です。法務局の事務が電子化される以前は、登記簿謄本と呼ばれていました。登記事項証明書は、該当法人の関係者だけでなく誰でも申請し、取得が可能です。

合併で消滅する会社が解散登記をした場合、閉鎖された登記として記録は残ります。法務局で閉鎖事項証明書を申請することで、消滅(解散)した履歴を確認可能です。

合併の登記申請に必要な登記書類

吸収合併と新設合併は、いずれも登記手続きが必要です。ただし、吸収合併と新設合併では、同じ合併であっても登記も含めた手続きの内容がそれぞれ異なるため注意しましょう。吸収合併と新設合併の登記申請に必要な書類について、順番に紹介します。

吸収合併に必要な登記書類

吸収合併の登記手続きは、契約書に記載された効力発生日から2週間以内に実施しなければなりません。具体的な手続きは、存続会社における変更登記と消滅会社における解散登記です。消滅会社が所有している不動産が存続会社に移るため、所有権移転登記も求められます。

それぞれの登記は、同時に行う必要があるため注意してください。吸収合併の登記において、存続会社と消滅会社ではそれぞれ異なる書類を用意する必要があります。存続会社が用意する書類は以下のとおりです。

  • 吸収合併証明書(吸収合併契約書)
  • 吸収合併契約の承認に関する株主総会議事録、あるいは取締役会議事録
  • 債権者保護手続きに関係する書面
  • 登録免許税法施行規則第12条第5項の規定に関する証明書
  • 委任状(代行の場合)

これに対して、消滅会社では、以下の書類を用意する必要があります。

  • 消滅会社の登記事項証明書
  • 吸収合併契約の承認に関する株主総会議事録、あるいは取締役会議事録
  • 債権者保護手続きに関係する書面
  • 委任状(代行の場合)

新設合併に必要な登記書類

新設合併は、吸収合併とは違って会社を新たに設立するため登記の種類が変わります。消滅会社の登記は解散登記である一方、新設合併では新たに設立した会社が存続会社になるため設立登記が必要です。これに伴い、存続会社の登記における必要書類は吸収合併と異なります。

新設合併は、効力発生日も吸収合併とは異なるものです。吸収合併は契約に定められた日が効力発生日であるのに対し、新設合併の場合は設立登記の完了日が効力発生日となります。新設合併の登記において存続会社に必要な書類は以下のとおりです。

  • 定款
  • 設立における取締役の就任承諾を証明する書面
  • 資本金の額の計上に関する証明書
  • 登録免許税法施行規則第12条第5項の規定に関する証明書
  • 委任状(代行の場合)

これに対して、消滅会社で求める書類は、以下のとおりです。

  • 消滅会社の登記事項証明書
  • 合併契約の承認に関する株主総会議事録、あるいは取締役会議事録
  • 債権者保護手続き関係書面
  • 委任状(代行の場合)

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合併における許認可の取り扱い

合併に際して、それぞれの当事会社が持つ許認可について気になる経営者の方は少なくありません。まず、吸収合併では、許認可の種類ごとに監督官庁・法律の定めのもとで承継の有無が異なります

存続会社ですでに許認可を持っている場合は新たに取り直す必要はありませんが、許認可の種類によっては、合併による役員の変更に際して変更手続きが求められるケースもあるため注意が必要です。

新設合併では、消滅会社が有していた許認可は承継できず、基本的に新たに取得する必要があります。

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合併を行う際に発生する登録免許税と公告掲載料

合併を行う際に考慮すべき事項として、登録免許税・公告掲載料が挙げられます。ここでは、合併で発生する登録免許税と公告掲載料を確認しましょう。

合併を行う際に発生する登録免許税

登録免許税とは登記の際に発生する税金であり、存続会社と消滅会社でそれぞれ税額が異なります。存続会社と消滅会社の登録免許税は、それぞれ以下のとおりです。

  • 存続会社の登録免許税=増加した資本金の金額×1.5÷1,000
  • 消滅会社の登録免許税=3万円

存続会社では資本金の増加額により登録免許税が変わるのに対して、消滅会社は一律で3万円です。なお、存続会社でも、上記の計算を行った結果として3万円に満たない金額であれば一律3万円が課されます。

所有権移転登記を行った際は、上記とは別の計算で算出された登録免許税が発生します。所有権移転登記における登録免許税を求める計算式は以下のとおりです。

  • 固定資産税評価×4÷1,000

合併を行う際に発生する公告掲載料

合併は債権者保護の目的で官報に合併を行う旨を掲載する必要があり、このときに公告掲載料が発生します。合併の際に生じる公告掲載料は以下のとおりです。

  • 合併公告の官報掲載料:約4万円
  • 合併による株券提出公告の官報掲載料:約4万円
  • 会社債権者に対する公告の官報掲載料:6万円

公告掲載料は決算公告により変動するため、上記の金額はあくまでも目安です。金額の幅は約5万円~10万円と覚えておくとよいでしょう。また、債権者保護手続きでは、公告だけでなく債権者ごとに個別で催告する必要があるため注意してください。

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合併を専門家に相談する際の登記報酬と費用

合併は煩雑なプロセスが多く当事者である経営者のみで行うことは難しいため、外部の専門家のサポートを得るとよいでしょう。このときに発生する報酬費用は、登記の書類作成や手続きのみを専門家に依頼するか、合併全体のフォローを依頼するかにより異なります。

具体的な報酬額はそれぞれの専門家が提示する条件次第ですが、概要を把握しておきましょう。

登記などの書類作成や手続きを専門家に依頼する場合

登記の書類作成や手続きを専門家から協力を得たい場合は、司法書士に依頼するケースがほとんどです。司法書士の報酬は作成する書類により変わりますが、議事録作成であれば数千円程度、登記申請や契約書作成では数万円程度であり、ここに登録免許税などの費用が加算されます。

司法書士に書類作成を依頼する量により報酬は変わりますが、合併に必要な書類作成を全て依頼する場合は数十万円程度がだいたいの相場です。

合併全体を専門家にフォローしてもらう場合

合併全体のフォローを依頼する場合は、M&A仲介会社・経営コンサルティング会社・税理士・会計士・弁護士などの専門家への相談がおすすめです。これらの専門家は合併対象の紹介や交渉に応じてくれるため、合併の手間を軽減できます。

弁護士などの専門家であれば、契約書などの書類作成などにも有効でしょう。しかし、書類作成のみを依頼する司法書士とは違って、合併全体のフォローを受ける場合、司法書士とは報酬が大きく異なります。

報酬は合併案件の規模により変動し、小規模であれば数百万円、大規模であれば数千万円、大企業同士の合併であれば数億円程度の報酬が発生するケースが多いです。報酬の計算に関しては、レーマン方式を採用する専門家がほとんどです。

専門家によっては、相談料や着手金など成功報酬以外の料金が発生するケースもあるため、各専門家の報酬体系を十分にチェックしてから契約しましょう。

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合併を行う際の登記まとめ

合併は登記の存在によりプロセスが煩雑になりやすいです。合併のプロセスを誤ると、合併取引自体に成功したとしても無効になるケースもあるため注意しましょう。

登記手続きは正しい知識があれば誰でも行えますが、司法書士など外部の専門家に依頼した方が安心です。専門家に依頼する場合は、発生する報酬額を具体的に調べておくとよいでしょう。本記事の要点は、以下のとおりです。

・合併とは
→2つ以上の会社を1つの会社に統合する手法であり吸収合併と新設合併の2種類に分かれる

・合併のメリット
→経営統合によるシナジー効果の獲得、組織再編の実現

・合併のデメリット
→手続きが多くコストが発生する

・合併時の登記
→吸収合併と新設合併でそれぞれ方法が異なる

・合併時に発生する登録免許税
→存続会社と消滅会社で税額が違う

・合併時に発生する公告掲載料
→決算公告により異なるがおおむね5~10万円の範囲で推移

・合併における専門家の依頼費用
→書類作成のみ頼むか合併全体をフォローしてもらうかで金額が大きく変わる

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