2022年10月19日更新会社・事業を売る

経営改善のポイント、計画の策定方法を解説

中小企業庁では経営改善支援事業を実施しており、利用することで財務のみならず経営戦略なども改善できます。財務上の問題を抱える前の段階から経営改善に取り組むことも可能です。本記事では、中小企業庁が実施する支援事業の内容やメリットなどを解説します。

目次
  1. 経営改善とは
  2. 経営改善の方法・流れ
  3. 経営改善を行う際の注意ポイント
  4. 経営改善の手法
  5. 経営改善支援の重要性
  6. 中小企業庁の経営改善支援
  7. 経営改善支援を利用できる会社
  8. 経営改善支援を利用するメリット
  9. 経営改善のポイントまとめ

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経営改善とは

経営改善を言い換えれば業績改善です。業績改善とは、売上高と利益額を向上させることを意味します。これは、会社を経営していれば当たり前の目標に思えますが、いざ現実に目をやると、それとは異なる実態のまま経営がなされているケースも少なくありません。

非上場の中小企業でありがちなのが、目先の資金繰りばかり考えてしまいキャッシュフローだけを追いかけてしまっているケースと、節税を意識し過ぎて決算で利益を少なく見せようとする(無駄な経費を計上する)ケースなどです。

それらのようなスタンスで経営を行っている場合、いくら経営改善を目指そうと思っても実現は難しいでしょう。経営者自身の経営の考え方を変えなければ、経営改善はできません。つまり、経営改善とは、まず、経営者が自身の考え方を変えることから始まるものです。

経営改善の方法・流れ

経営者が自身の考え方を改め、経営改善に向けて踏み出そうと決心したならば、以下の流れで経営改善の現実化を進めます。

  1. 経営改善の方向性の策定:自社の理想の将来像を思い描く
  2. 課題点の見極め:理想の将来像と現実を比較し弱点・不足部分・改善すべき点を把握する
  3. 課題点の対策決め:それぞれの課題の解決策を考える
  4. 対策のプライオリティ設定:解決策を実行する順番を決める
  5. 対策開始:決定したプライオリティに沿って経営改善への行動を始める

課題点の対策決めで注意したいのは、一見して実現が困難な対策は設定しないことです。できそうもないことにチャレンジして失敗しては、経営改善の遠回りになります。実現が可能と思える対策を設定することです。

プライオリティの設定では、単に優先順位を決めるのではなく、効果は小さくても実現しやすいものから着手するように決めるとよいでしょう。また、全体をとおしては、利益を向上させることをテーマにするのがポイントです。

経営改善を行う際の注意ポイント

経営改善を進めていくうえで状況を見直す際に、着目すべきポイントがあります。以下のポイントを絶えず点検しながら経営改善を進めましょう。

  • 経営に関する知識を向上させる努力をしていいるか
  • 決算書のディテール(売上高・利益以外の各勘定科目)にも目を配っているか
  • 現在、進めている経営改善の対策がふさわしい内容かどうか
  • 現在の経営改善対策の成果は出ているか
  • 経営改善の意識が社内に浸透しているか
  • 社員全員が経営改善対策を実践しているか
  • 業界や競合他社の分析を行っているか

経営改善の手法

ここでは、経営改善で考えられる手法の概要を以下の3つの観点に分けて掲示します。

  • 戦略面の手法
  • 財務面の手法
  • 財務面の手法

戦略面の手法

経営戦略の面で経営改善を図るのであれば、各種の分析手法があります。一般的によく用いられる代表的な手法は、SWOT分析です。SWOT分析とは、以下の4つの観点で会社を分析しますが、それぞれの頭文字をとってSWOT分析と呼ばれています。

  • Strength(強み):会社の長所は何かを考える
  • Weakness(弱み):会社の弱点は何かを考える
  • Opportunity(機会):市場や社会環境が変化した場合に会社にとって利点となるのは何かを考える
  • Threat(脅威):会社にとって脅威となる外部の環境は何かを考える

SWOT分析では、StrengthとWeaknessで会社の内部状況を分析し、OpportunityとThreatと会社を取り巻く外部環境の分析をします。その4つの分析結果を組み合わせて考え、具体的な経営改善対策に落とし込んでいくものです。

財務面の手法

税務面の経営改善とは、収益性の向上化です。利益構造を見直す分析が必要になるので、手法としては損益分岐点分析を行います。損益分岐点とは、原価と売上高が同額で赤字でも黒字でもない状態のことです。、損益分析点を超えれば黒字が生じます。

その際に原価の計算で注意が必要なのは、原価には変動費と固定費があることです。変動費とは商品の製造費などが該当し、売上高の変化(商品の製造数の変化など)に応じて金額が上下します。固定費は人件費や家賃などが該当し、売上高に関係なく必ず一定額が発生するものです。

損益分析点分析では、変動費と固定費をきちんと分けて計算・分析をしないと結果を見誤ります。そのうえで以下のような観点で利益向上の対策を考えなくてはいけません。

  • 売上高を高める対策が利益向上に直結することか
  • 変動費を下げる工夫をすることで利益向上を図るべきか
  • 根本的に固定費の削減が利益向上の第一歩かどうか

管理面の手法

経営改善を人材管理面で実施する手法の代表例としては、KPI(Key Performance Indicator=重要業績評価指標)があります。KPIは、企業の経営目標達成に向けて、従業員個人や属する部門に落とし込んで設定した目標の達成度を測るものです。

指標を何にするかは各社・各人によりさまざまあり、自由に設定できます。ただし、最終的な経営改善目標である売上高・利益の向上につながる内容の指標になっていないと意味をなしません。たとえば、営業部員であれば、「商談数」や「受注率」などがKPIになります。

各営業部員の商談数や受注率が、どれだけ積み上がると営業部としての受注数目標が達成されるかを判定することで、会社としての最終的な目標売上高達成への度合いを測るものです。

【関連】経営改善の手法とは?損益分岐点分析やKPI管理の活用| M&A・事業承継の理解を深める

経営改善支援の重要性

会社経営において、全て思ったように売上・利益を伸ばしていくのは難しいものがあります。また、中小企業の多くは、借入による資金調達がネックとなり、その返済によって資金繰りが圧迫しているケースも少なくありません。

そのような場合に、経営改善を行って財務状況をよくしていく必要があるのですが、経営者だけで計画を立てることやそれを実行することは難しく、専門家に頼りたくても資金繰りが困窮している状況では費用負担に耐えられない場合もあります。

そこで利用したいのが、中小企業庁が実施する経営改善支援です。次章から、中小企業庁が実施する経営改善支援の概要や利用の流れ、メリットなどを紹介していきます。

中小企業庁の経営改善支援

ここでは、中小企業庁が行っている経営改善支援の概要と支援を受ける際の流れを紹介します。

経営改善支援の概要

中小企業庁は、中小企業に対してさまざまな支援事業を行っています。経営改善向けに行っている支援事業は以下の2つです。

  • 経営改善計画策定支援事業
  • 早期経営改善計画策定支援事業

経営改善計画策定支援事業の概要

経営改善計画策定支援事業とは、借入金返済などにより財務上に問題がある企業に対し、認定支援機関による改善計画の策定支援などを通じて、企業の経営改善を促進する事業です。

経営改善計画策定支援事業では、計画策定などにかかる費用に対し、上限を200万円として3分の2の補助が受けられます。これにより、資金力に問題がある会社でも、負担を気にすることなく経営改善に取り組んでいくことが可能です。

具体的な支援では、売上増加や経費削減につながる経営戦略の策定や借入金返済の条件緩和のためのサポートが受けられます。

早期経営改善計画策定支援事業

財務上の問題を抱えるのは、その前の段階から予兆が現れていることが多く、本来であれば、その段階で対策しておくことが望ましいです。しかし、対策の仕方がわからないなどの理由で、そのままにしているケースも少なくありません。

そのため、財務が悪化する前に対策ができるよう支援をするのが早期経営改善計画策定支援事業であり、資金繰りや採算などの基本的な部分の改善に取り組めるよう、認定支援機関や金融機関と連携して経営の見直しや改善を行うものです。

早期経営改善計画策定支援事業では、計画策定などの費用について上限を20万円とした3分の2の補助が受けられ、事業における収益の仕組みなどを俯瞰図にすることや資金繰り計画の策定、浮き彫りになった課題を解決するための方法などのサポートが受けられます。

なお、早期経営改善計画策定支援事業では、モニタリング費用についても5万円を上限として3分の2の補助が受けられますが、計画策定費用と合わせて上限が20万円となりますので注意が必要です。

経営改善支援センターについて

中小企業が、金融機関から新規融資やリスケジュールなどの金融支援を受けたい場合、経営改善計画を出すように金融機関から要求されることがあります。しかし、大半の中小企業は、独力でその計画を作ることは困難です。

そこで、税理士や公認会計士などの専門家によるサポートが必要になりますが、経済力に余力がない中小企業には、なかなか手が出せません。

そのような中小企業を手助けするため、中小企業庁は2012(平成24)年補正予算によって、独立行政法人中小企業基盤整備機構内に基金を設立し、全国に経営改善支援センターを設けました。

以下の条件を全て満たせば、経営改善計画策定支援事業が適用され、専門家への費用を一部負担してくれます。

  • 財務上に問題がある
  • 認定支援機関による経営改善計画策定の支援を受ければ、金融機関からの支援が見込める(また、結果として実際に支援がもらえた)
  • 中小企業・小規模事業者である

経営改善支援を受ける際の流れ

次に、経営改善支援を受ける際の流れを紹介します。上述したように経営改善支援には2つの事業がありますが、基本的な流れはほぼ変わりません。

利用申請

まずは、経営改善支援の利用申請を行います。利用申請は直接、経営改善支援センターに赴くのではなく弁護士や税理士、金融機関などの認定支援機関への相談です。

そこで自社の状況や経営改善を実施したい旨を伝えて承諾してもらい、利用者と認定支援機関の連名で申請書を経営改善支援センターへ提出します。この際に「中小企業・小規模事業者の概要」と「業務別見積明細書」が必要です。

経営改善計画策定支援事業の場合は、「履歴事項全部証明書」も添付して申請書を提出します。

経営改善計画

利用申請が経営改善支援センターで承認されると、認定支援機関などに通知されます。続いて、認定支援機関による改善計画書の策定支援を受けて金融機関と合意後、経営改善支援センターに「経営改善支援センター事業費用支払申請書」を連名で提出です。

なお、早期経営改善計画策定支援事業において金融機関以外に相談した場合、早期経営改善計画書を金融機関へ提出し、間違いなく提出したことを確認できる書面も経営改善支援センターに提出しなくてはなりません。

また、「業務別請求明細」「振込受付書」「払込取扱票」などの書類も添付する必要があります。

支払いの確定

事業費用支払い申請書と添付書類に基づき、経営改善支援センターでは申請結果や支払額、支払日を認定支援機関に通知します。なお、ここでの補助は、経営改善計画策定にかかる費用です。

モニタリング

モニタリングとは、経営改善計画策定支援事業において、経営改善の経過を確認することです。認定支援機関は、対象企業が計画書の実施内容の経過や結果を経営改善支援センターに報告します。モニタリング費用も補助の対象です。

以上が、中小企業庁が実施する経営改善支援を利用するための基本的な流れになります。利用する会社が単独で行うプロセスはほぼありません。すべては、認定支援機関の指示にしたがって進めます。

経営改善支援を利用できる会社

ここでは、経営改善支援を利用できる会社について見ていきます。

資金繰りが困窮または不安定な会社

資金繰りは簡単に言うと現金や預貯金の流れであり、資金繰りが悪い会社は事業に必要な支出や借入金の返済が困難になります。資金繰りが悪化してしまうと簡単には正常に戻せず、そのまま倒産に追い込まれてしまうかもしれません。

経営改善計画策定支援事業では、借入金の返済額を減らすことや資金繰りを回復させるためのアドバイスが受けられます。資金繰りが困窮している状況に陥っている会社はもちろん、不安がある場合も実施することが望ましいです。

売上が低迷している会社

売上が低迷する原因にはさまざまありますが、なかには商品やサービスの質が悪くなっていないのに減少するケースもあります。この場合、売上を増加させることはもちろんですが、経費削減についても取り組むことが必要です。

経営改善計画策定支援事業では、売上が増加するための経営戦略や経費削減を行うためのアドバイスが受けられるため、事業を継続していくためのサポートを受けたい会社は実施するとよいでしょう。

状況把握ができていない会社

特に業績がよくない会社は、利益の獲得を念頭に置き過ぎてしまう傾向が強くなります。経営者の立場では客観的に自社を見ることが難しく、そのために現在の状況を把握しきれていない場合も少なくありません。

経営改善計画策定支援事業では、認定支援機関の専門家が会社を客観的に見て、それを経営者の目に見える形にします。同時に、業績が悪くなっている要因やその解決策のアドバイスも得られるので、状況把握ができていない会社は実施すべきです。

過去に支援を受けたことがある会社

過去に経営改善支援を利用した会社であっても、経営に悩みはつきものです。中小企業庁は小規模会社の存続を重視しているため、過去に経営改善支援の利用歴があった場合でも、再度利用できます。

業績が悪化する原因は1つではありませんので、別の原因を知って解決策を練るためにも経営改善を実施しましょう。

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経営改善支援を利用するメリット

経営改善支援を受けるメリットは、以下のものが挙げられます。

  1. 課題の発見
  2. 資金繰りの安定
  3. 金融機関からの信頼
  4. 自信につながる

①課題の発見

経営改善支援では、対象の会社の課題を見える形にしてくれます。すでに把握している課題から、まだ把握していない課題まで発見できるかもしれません。問題点の解決は課題を発見できなければ取り組めませんので、この点は非常にメリットだといえます。

また、その課題に対するアドバイスも受けられることから、その後の対策も専門家の指導のもと進めていくことが可能です。

②資金繰りの安定

経営改善支援を受けると、借入金返済の緩和や経費削減などで資金繰りの安定が図れます。資金繰りの悪化は、企業の存続に大きな影響を与えるものです。サポートを受けるための費用は補助金である程度賄えるため、利用することに負担を感じることは少ないでしょう。

③金融機関からの信頼

経営改善支援を利用するためには、金融機関との連携が必要となります。その際、金融機関に対して将来像を説明できるため、信頼を得られるでしょう。金融機関からの信頼は、会社を継続させていくうえで非常に重要です。

返済のリスケジュールを行えば一時的に関係は悪化するかもしれませんが、策定した計画書に基づいて事業を行っていれば、改善前よりも強固な信頼を築けるでしょう。

④自信につながる

経営改善支援の利用により会社が安定すると、経営者にとっては大きな自信となります。また、経営改善計画の策定に取り組むことで将来の経営に役立てられ、経営していくうえでの判断力向上にもつながるものです。

経営者の自信は一緒に働く従業員の活力にもなりますので、会社を発展させる動力源になっていくでしょう。

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経営改善のポイントまとめ

中小企業は日本経済を支える重要な存在であり、国としても可能な限り支援したいと考えています。また、経営者としても、せっかく立ち上げた会社を続けたいと思うのは当然のことであり、本来であれば経営改善が不要である状態が理想です。

しかし、経営を継続していると、ときに予想だにしないことが起こり、会社の経営を悪化させてしまうこともあります。それを経営者の手腕で乗り切れることもありますが、うまく乗り切れず困難な状況となることもあるでしょう。

その際に、中小企業庁が実施する経営改善計画策定支援事業を利用することで、立ち直れる可能性が高まります。

経営改善を外部と一緒に行うことに抵抗がある経営者もいるでしょうが、効率よく改善するためには、こうした事業や専門家を頼ることが得策です。本記事の要点をまとめると以下のようになります。

・中小企業庁が実施する経営改善支援
→経営改善計画策定支援事業、早期経営改善計画策定支援事業

・経営改善計画策定支援事業とは
→借入金返済などで財務上の問題を抱える会社を計画策定などで経営改善を促進する事業

・早期経営改善計画策定支援事業とは
→財務が悪化する前段階の対策を行うよう支援する事業

・経営改善を実施すべき会社
→資金繰りが困窮または不安定な会社、売上が低迷している会社、状況把握ができていない会社、過去に支援を受けたことがある会社

・経営改善支援センターを利用するメリット
→課題を発見できる、資金繰りが安定する、金融機関からの信頼獲得、自信につながる 

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