M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年2月9日更新会社・事業を売る
M&A失敗の要因・事例22選!大手企業が失敗した事例や対策方法を解説【日本・海外企業】
M&Aが失敗に終わってしまう要因には、どのようなものがあるのでしょうか。この記事では、M&Aが失敗してしまう原因を大手企業が失敗した事例から学びます。
目次
M&Aにおける失敗とは?定義を紹介
M&Aの成功・失敗は、観点により判断が分かれる場合があります。そこで本記事では、一般的に考えてM&Aの失敗と断定できる事態として、以下の4つを定義とすることにしました。
- 粉飾決算の露呈
- のれんの減損損失を行う
- 買収金額を回収できない
- 企業イメージの低下
粉飾決算の露呈
M&Aの買い手は、売り手企業の業績に着目します。業績を示すのが決算書です。しかし、M&A後、売り手企業が粉飾決算をしており、実際には赤字企業であったことが明るみになった場合、買い手は大打撃を受けます。赤字の度合いによっては、買い手も経営危機に追い込まれかねません。
これは、デューデリジェンス(買収監査)が不十分であったと考えられます。しかし、売り手側が意図して行った粉飾決算であり、資料や情報を隠されてしまうと簡単には見抜けないかもしれません。
のれんの減損損失を行う
のれんとは、売り手企業の無形資産に対する評価額をさします。無形資産とは、特許・商標・著作権などの知的財産、ノウハウ、ブランド力、営業・販売ネットワーク、顧客・取引先リストなどです。別の表現をすれば、M&Aでの買収価額と売り手企業の純資産額との差額が該当します。
のれんは、買い手企業の連結財務諸表に計上し減価償却していくものです。ただし、M&A後、売り手企業の業績悪化により評価が下がる場合、のれんの価値を修正しなければなりません。つまり、のれんの金額を下げることになり、これが減損処理です。減損損失が生じれば、買い手企業の決算には悪影響となります。
買収金額を回収できない
M&Aの買い手側が、売り手企業の有望さなどに過度の期待を抱いてしまった場合などに起こるのが、高額での買収です。しかし、M&A後、2~3年程度で買収金額を回収できなかった場合、それは過大評価による高額買収をしてしまった=M&Aの失敗といえるでしょう。
企業イメージに悪影響を与える
売り手企業が非上場の中小企業の場合、上場企業のようなリスクマネジメントを行っていないため、以下のような問題を潜在的に抱えている可能性があります。
- 各種ハラスメント問題
- コンプライアンス問題
- 労使問題
- 環境汚染
- 訴訟リスク
M&A実施後、上記のいずれかが発生・発覚した場合、買い手企業のイメージ低下は避けられず、M&Aの失敗と位置付けられます。文化や慣習、宗教などが異なる海外企業とのM&Aでも、この問題は起きやすいので注意が必要です。
M&Aの失敗・成功割合とは?
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの「2020年M&Aの実態調査」によると、年間売上高300億円以上の国内企業277社に行ったアンケートでは、まず、国内企業との間で過去5年間に行ったM&Aの成果について以下のような結果でした。
- 期待を上回る成果:9%
- 期待どおりの成果:63%
- 期待した成果は得られていない:24%
- かなり期待を下回っている:4%
次に、海外企業との間で過去5年間に行ったM&Aの成果は以下のような結果です。
- 期待を上回る成果:7%
- 期待どおりの成果:54%
- 期待した成果は得られていない:36%
- かなり期待を下回っている:3%
年間売上高300億円以上の大企業のM&A成果なので、それよりも規模の小さい企業の場合は数値が変動するかもしれませんが、この調査では、国内企業とのM&Aは成功率が約7割・失敗率が約3割、海外企業とのM&Aは成功率が約6割・失敗率が約4割となっています。
以前は、もっと成功率が低く失敗率が高いものとされてきており、この数値は改善傾向にあることも示しているといえるでしょう。海外企業とのM&Aは難易度が高いこともわかりました。いずれにしろ、M&Aの成功率が上がっている1つの要因として、自社に適したM&A仲介会社の起用があります。
自社が目指すM&Aの内容・目的をよく理解し、M&Aの知識だけでなく当該業界への知見も持つM&A仲介会社選びがポイントです。そのようなM&A仲介会社をお探しでしたら、一度、M&A総合研所までご連絡ください。
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M&A失敗の要因・パターン・事例
M&Aの失敗には、いくつかの要因やパターンがあります。
- 買収先との関係悪化
- M&A仲介会社の選定失敗
- 事前の確認・調査不足
- クロージング後の対応
- M&Aの目的が不明瞭
- 現実味のない価格・条件設定
- 社員の流出
- 経営統合(PMI)の遅れ
- FA・仲介会社に任せきり
- 情報漏えいによる取引停止
- 相手先企業のいうがまま
- 株主と役員の意思不一致
①買収先との関係悪化
買収先が顧客や取引先を失い、新たな顧客や取引先の確保ができず、経営にダメージが生じる失敗例です。具体的には、以下の3つの理由があります。
- M&A進行中に買収先の業績が悪化
- コンプライアンス違反
- チェンジオブコントロール条項に抵触
M&A進行中に買収先の業績が悪化
一般的に、M&Aの検討からクロージングまで約半年から1年かかるとされています。その間に、買収予定先の業績が悪化する可能性は、ゼロではありません。業績が悪化した場合、M&Aを実行する価値や意味合いが大きく変化します。このような事態を避けるためにも、買収予定会社の慎重な選定がポイントです。
コンプライアンス違反
コンプライアンスとは、法令を遵守することを意味します。コンプライアンス違反は、提訴や行政処分の対象です。コンプライアンス違反によって信頼を失うだけでなく、結果的に顧客や取引先まで離れていってしまい、その結果、M&Aは失敗に終わります。
チェンジオブコントロール条項に抵触
チェンジオブコントロール条項とは、取引先との契約において、一方の企業にM&Aなどによる経営権の移動が生じた場合、もう一方は契約内容の制限や解除ができることを定めたものです。
取引相手が売却側企業にとって事業の根幹であった場合、チェンジオブコントロール条項により、M&Aでその関係がなくなるかもしれないのは、買収側にとって大きなリスクになります。その懸念が大きい場合、M&Aは成約しづらく失敗に終わる可能性が高いでしょう。
②M&A仲介会社の選定失敗
M&Aは、仲介会社の選び方によっても、成否が分かれることがあります。全てのM&A仲介会社が全業種に対応できるわけではありませんし、M&Aの規模に対する得意・不得意などもあるのが実情です。仲介契約に、M&A仲介会社にとって都合がいい条項を設けるケースもあります。
代表的なものとしては、そのM&A仲介会社のみに業務を委託することを定める「専任条項」や、実質的にクライアントの利益よりもM&Aの成立を優先することを決めてしまう「双方代理条項」などです。これらのような条項には十分に注意するようにしましょう。
いずれにしろ、M&A仲介会社の良し悪しや自社への適性を見極めるコツは、会社の実績や評価がどうなっているかを丹念に調べることです。公認会計士のような財務の専門家が在籍しているのかどうかも、M&A仲介会社の力量を知るうえでの指針になるでしょう。
M&A仲介会社をお探しであれば、ぜひ一度、M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所には、M&Aの知識・経験豊富なアドバイザーが多数、在籍しており、専任となってM&Aをフルサポートいたします。
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③事前の確認・調査不足
事前の確認不足や調査不足により、相手企業からの信頼を失ってしまう失敗例です。2つの企業が統合すると、得るものと同時に失うものも出てきます。社内での確認や相手企業の調査を怠ると、後に大きな問題として浮上してしまうのです。その結果、M&A自体が失敗する可能性が高まります。
具体的な確認・調査不足の例としては、以下の3つです。
- 双方の意思の確認不足
- 社内資料の整備不足
- デューデリジェンス不足
双方の意思の確認不足
双方の意思の確認不足のせいで、M&Aがうまくいかないことは珍しくありません。企業同士は合意していても、役員や株主がM&Aに反対するケースがあり、このような場合にはM&Aの交渉が頓挫する可能性があるのです。M&A手法の中には、取締役会や株主総会の決議などが必要なものもあります。
役員が反対すれば取締役会の決議が危うくなり、株主が反対すれば株主総会の決議にとおりません。株主総会の決議が得られなければ、その時点でM&Aは失敗となります。
社内資料の整備不足
中小企業にありがちなのが、社内資料の整備不足で株主・株券の名簿がきちんと管理されておらず、経営者のみが株主を把握しているといった失敗例です。最低でも直近3年分の株主総会議事録と、直近3ヶ月分の取締役会議議事録は保管しておく必要があります。
株主総会議事録と取締役会議議事録が整備されていないと、会議に重きを置かない企業だと認識されてしまうので、気をつけなければなりません。簿外債務が過剰に存在する場合にも、会社としての信用が一気に低下してしまい、M&Aの交渉が決裂する可能性が跳ね上がってしまいます。
このような失敗を回避するためにも、事前に社内で確認して不安要素を取り除いておきましょう。
デューデリジェンス不足
デューデリジェンスが不足しているせいで失敗する例も多いです。デューデリジェンスとは、買収先企業の健全性や将来性を調査する手続きのことであり、買収先の財務や税務などの問題を見落とすと、後の経営に悪影響が出るおそれがあります。
最も注視すべきは、人材の調査です。特に海外企業とのM&Aを実施する際は、評価基準を細かく設定したうえで、慎重に調査する必要があります。簿外債務があるかどうかもチェックしておかなければ、後々トラブルになりかねません。
買収先が簿外債務について言及していない場合でも、デューデリジェンスの際にくわしく確認しておくべきです。M&Aの失敗を避けるためには、入念なデューデリジェンスは不可欠だといえます。
④クロージング後の対応
M&A成約後の不誠実な対応によって、M&A自体が中止になったり、経営が悪化したりする失敗例もあります。M&A後にシナジー効果を生み出すためには、双方が気持ち良くM&Aを進行できるように心がける必要があり、クロージング後も誠実な対応は必須です。
M&Aを実施できても、結果的に経営が悪化してしまってはM&Aは失敗となります。不誠実な対応の例としては、以下の2つです。
- 合理性のない条件変更
- クロージング後の買い手企業の雑な対応
合理性のない条件変更
合理性のない条件変更とは、具体的には下記のようなものになります。
- ある程度、契約に合意しておきながら直前で譲渡価額を下げて欲しいと要求 (買い手側)
- 今後、買収に興味を示す企業が現れるかもしれない理由で価額アップを要求 (売り手側)
このように、自社の都合のみで条件を変更しては、円滑にM&Aを実施できません。条件が飲めないのを理由に情報提供を渋るなどの行為も、相手企業に不快な印象を与えます。誠実な対応を心がけることで、お互いに利益を出せるM&Aにできるでしょう。
クロージング後の買い手企業の雑な対応
クロージング後、買い手企業が雑に対応してM&Aが失敗してしまう例もあります。買い手企業は、特に人材や資産の扱いに注意が必要です。M&Aでは異なる企業同士が1つに統合されます。多少の溝があったり、解釈の違いが出たりするのは当然のことです。そのため、M&A後は互いに誠実な対応を心がける必要があります。
不誠実な対応をとってしまうと、下記のような失敗につながる可能性が高くなるので十分に注意しましょう。
- 優秀な人材の流出
- 従業員同士の連携不足による経営悪化
このようなことになってしまっては、M&Aは実現できても結果としては失敗したという状況になってしまいます。
⑤M&Aの目的が不明瞭
本来、買い手としてM&Aの実施により何を目指すのか、明確な目的があるはずです。しかし、なかにはM&Aをすれば業績が上がるだろう、などの思惑でM&Aを実施しようとしているケースがあります、つまり、M&Aをすることが目的になってしまっているのです。
このような場合、M&Aの目的が不明瞭であるために売却側企業への的確な評価ができず、成約へとつながらないでしょう。成約できたとしても、その後の経営統合なので苦労してしまい、成功しない場合がほとんどです。
⑥現実味のない価格・条件設定
複数の買収候補がいるような売却側に対し、買い手側としてM&Aの成約を焦るあまり、買収価額を無駄に上乗せするケースがあります。いくら有望な売却側であったとしても、のれん分として評価する金額は、M&A仲介会社のアドバイスを聞いて適切に判断しましょう。
上乗せし過ぎた買収価額にしてしまうと、成約後、その回収に時間がかかったり、評価損により減損処理が発生したりなど、M&Aが成功したとはいえない事態になります。
⑦社員の流出
売却側の従業員は、どうしてもM&Aへの不安感や反発心を覚えがちです。そのような精神状態のときに、経営統合で買い手側が高圧的に接したりすると、離職する従業員も出てきます。それが、売却側の事業でキーマンであった場合や、大量の離職者が出た場合、事業にとって大きなダメージです。
場合によっては、M&Aの目的が達成できない可能性すらあります。したがって、このような社員の流出は極力、起こらないよう、細心の注意が必要です。
⑧経営統合(PMI)の遅れ
経営統合(PMI=Post Merger Integration)は、買い手にとってM&Aの最も重要なプロセスです。経営統合では、以下のそれぞれについて買収側と売却側の統合を行います。
- 管理制度
- 経理システム
- ITシステム
- 業務システム
- 就業規則などの社内規定
- 人事評価制度などの給与規定
- 組織再編・再配置
- 企業風土
上に挙げたものをスムーズに統合を行っていくには、デューデリジェンスの段階から経営統合計画を立てスケジューリングしておく必要があります。その計画に必要な売却側の情報を得る意味でも、デューデリジェンスは重要です。
このように、周到に経営統合計画を準備しておかなかった場合、経営統合がなかなか進まず、想定していたような業績向上が見られないでしょう。
⑨FA・仲介会社に任せきり
FA(ファイナンシャルアドバイザー)・M&A仲介会社に任せきりで進めるのも、M&Aでの失敗要因となりうる一つです。FAやM&A仲介会社に任せたままM&Aを実施してしまうと、失敗をしてしまう可能性があります。
例えば信頼できないFAやM&A仲介会社に依頼をしてしまうと、事業の強みや重要視している部分を理解せずに案件を持ち出してくるケースがあります。新規事業への参入の場合は、異業種になるため専門家へ任せきりにしてしまうことも多いでしょう。
失敗のリスクを避けるためにも自社のM&A戦略を事前にしっかりと立て、FA・仲介会社とともに相談をしながら進めるのがおすすめです。
⑩情報漏えいによる取引停止
M&Aでは、特に売却側は情報漏えいに関して厳重に管理する必要があります。M&Aは周囲に知られることなく進めたほうがよいケースが多いでしょう。
情報漏えいが起こると、経営資源の流出、取引停止、ブランドの失墜、顧客離れなどが発生する可能性があります。M&A自体に悪影響を及ぼす可能性もあるため、情報漏えいに対する徹底した体制が必要です。
⑪相手先企業のいうがまま
M&Aを行う際に、買収側が自信満々に乗り込んでくる可能性もあるでしょう。しかし、相手先企業のいうがままにM&Aを実行してしまうと、条件交渉の際も高圧的になるためM&Aが失敗に終わるおそれがあります。経営者双方がきちんと話し合いができず、結果的に従業員の離反や反発などの問題が起きるケースも多いでしょう。
⑫株主と役員の意思不一致
M&Aの失敗事例で一番多いのが株主と役員との意思不一致です。株主と役員の意思の不一致はM&Aを検討している段階、スタート前に判明していれば大きな問題にはならないでしょう。しかし、交渉の途中段階で判明してしまうケースもあります。
この場合、スムーズ交渉が進められず、相手先候補が見つかっているのにもかかわらずM&Aが実行できずに失敗してしまうのです。M&Aの時期を逃すことで、経営破綻が起きてしまう可能性もあるでしょう。
大企業のM&A失敗事例
ここからは、それぞれの業界における大企業のM&A失敗事例をご紹介します。
【飲料食品】キリンホールディングス株式会社のM&A失敗事例
2011年11月、キリンホールディングスはスキンカリオールに対し3,000億円での買収を実施しました。
当時、スキンカリオールが所在しているブラジルは年間10%もの成長が見込める市場でしたが景気悪化の影響を大きく受けてしまいました。2015年12月期決算で、1,100億円の減損を計上しています。
【IT/WEB】DeNaのM&A失敗事例
2014年、DeNaはキュレーションサイトを運営するiemoとペロリを買収しました。
計10サイトを運営開始したDeNaでしたが、ヘルスケア・医療関連の情報を取り扱うサイト「WELQ」において根拠が不明瞭・コピーコンテンツが使われていると大炎上。さらには、クラウドソーシングサイトを通じて低単価でライターを採用しようとしていたなど、いろいろな問題点が発覚し、M&Aは失敗に終わりました。
【住宅】LIXILのM&A失敗事例
2014年、LIXILはグローエドーンウォーターテック・ジョウユウ(子会社)を約4,000億円で買収しました。
しかし、2015年4月にジョウユウ(子会社)の不正会計が発覚し、減損損失・債務補償関連損失を含め608億円の損害を出してしまいました。また、グローエは2009年からLIXILより出資を受けていましたが、様々な問題が発覚しておりM&Aは失敗に終わっています。
【電機メーカー】東芝のM&A失敗事例
2006年、東芝はアメリカ原子力会社ウエスチングハウスを6,600億円で買収しました。
しかし、2011年に起こった東日本大震災による福島第一原発事故により原子力の安全性が問われる事態に。また、ウエスチングハウスとのPMIにも失敗しており、M&Aは失敗したと言えるでしょう。
【商社】丸紅のM&A失敗事例
2012年、総合商社大手の丸紅は約2,800億円でアメリカ穀物会社ガビロンを買収しました。
しかし、買収後に想定していたスケジュール通りにシナジーを発揮することができず、500億円もの減損損失を出してしまいました。大きな失敗ではありませんが、累計で減損損失を出しているためM&Aは失敗しています。
【家電】パナソニックのM&A失敗事例
2009年、家電製造大手のパナソニックは、6,600億円を投資して同業の三洋電機を買収しました。その投資の中で5,180億円は、企業価値に見合わないと判断された部分(のれん代)への支払いに使われています。
しかし、買収からわずか2年後、三洋電機の企業価値は半分近くにまで下がってしまいました。その結果、のれん代のうち2,500億円を損失として認識する必要が出てきました。
パナソニックの財務責任者によると、三洋電機の企業価値が下落した主な原因は、「三洋電機が力を入れていた家庭用リチウムイオン電池の事業価値が、円高などの厳しい経済環境の影響で大幅に減少してしまった」からだとのことです
【IT】富士通のM&A失敗事例
富士通は、電子製品の製造を主力とする大企業です。欧州市場における自社の影響力を強めるため、1990年にイギリスのIT企業LCLと手を組みました。富士通は、すでにビジネスのパートナーであったLCLの株式の80%を1,890億円で購入しました。そして、8年後の1998年にはLCLを完全子会社化しています。
その後も、富士通は欧州市場への進出を続け、ドイツなどの地元企業を次々と買収しました。これらの取引による投資総額は、3,500億円を超えました。しかしながら、期待に反して業績は段々と下降し、2007年の決算では2,900億円の損失を記録する結果となりました。
【不動産】三菱地所のM&A失敗事例
1989年、三菱地所は、アメリカのマンハッタンに位置する名高い建物「ロックフェラーセンター」を約2,200億円で購入しました。しかし、想定外の事態が発生します。
この時期はバブル経済が崩壊し、不動産市場が急速に冷え込む時期でした。これにより、ロックフェラーセンターの価値が急激に下落し、三菱地所は大量の負債を背負いました。結果として、三菱地所は1,500億円の損失を記録し、ロックフェラーセンターの大部分を再びアメリカへと売却せざるを得なくなりました。
【通信】NTTコミュニケーションズのM&A失敗事例
2000年5月、NTTコミュニケーションズはアメリカのインターネットサービス提供会社、ベリオ社を買収しました。これは、世界の情報流通市場に進出し、特にアメリカ市場への入り口を確保する戦略的な動きでした。
しかし、買収後ベリオ社の業績は振るわず、株価も大きく下落しました。その結果、NTTコミュニケーションズは2001年にベリオ社を含む投資の評価損として7,870億円の特別損失を記録しています。
【金融】新生銀行のM&A失敗事例
2004年に新生銀行は、経営再建中の信販会社アプラスに対して約350億円の資金を提供し、筆頭株主となりました。この投資は、アプラスを支援し、その成長を促すことを目的としていました。
しかし、その後アプラスは過払金訴訟が増加する中で業績が振るわず、2007年には無形資産の価値減少などにより1,010億円の特別損失を計上し、上場以来初めての赤字を記録しました。この状況を受け、新生銀行は2010年に減損リスクを避けるため、アプラスの株式を子会社に譲渡しました。
M&Aに失敗する確率
M&A(企業の合併や買収)市場は2010年代にはかなり大きくなり、数兆円ものお金が動いていると言われています。しかし、成功するケースは決して多くありません。特に、日本の企業が海外で買収をする場合、約8割から9割がうまくいかないとされています。
それでも、日本国内で行われるM&Aに目を向けると、半分程度は成功しています。失敗するケースもあるけれど、いくつかの企業はこの方法を使ってしっかりと成長している状況です。経済が世界中でつながっている今、M&Aはリスクはあるものの、企業が成長するための有力な手段と言えます。
M&Aの失敗を防ぐ方法と対策
M&Aを成功させるうえでは、まず失敗を避けるという考え方が最重要です。M&Aを失敗に終わらせないためには、下記のような対策があります。
- M&Aの目的に応じた戦略策定
- 自社にふさわしい相手先選び
- 適切なバリエーションの実施
- デューデリジェンスの徹底
- 経営統合の綿密な準備
①M&Aの目的に応じた戦略策定
経営戦略であるM&Aは、会社の成長戦略を実現する手段です。したがって、買収側としては、会社の将来における成長戦略に沿ったM&A戦略を練る必要があります。
M&Aに慣れていないという場合は、M&Aの戦略策定のタイミングからM&A仲介会社などの専門家に相談して進めるのが得策です。
主なM&A成長の類型と内容は下表のようになっています。自社のM&A目的を考慮して応じた戦略をたてることが成功するためには重要です。
M&A戦略の類型 | 主な戦略の内容 |
既存事業分野 |
事業規模拡大戦略(同じ業界を買収あるいは経営統合で事業を拡大し、経営効率を高める) エリア拡大戦略(他地域の同業者を買収する戦略で、新規エリア拡大や海外M&Aも含まれる) ロールアップ戦略(小規模の買収で、経営資源の共有や収益改善を目的とする) |
関連事業分野 |
バリューチェーン拡大戦略(技術や顧客を共有し、開発力向上や収益拡大を目指す) 製品のラインナップ拡充(商品特性の異なる企業の買収により、ラインアップ拡充を図る) |
新規事業分野 |
コングロマリット化戦略(業種の異なる企業同士のM&Aにより、新規事業への進出を図る) 事業ポートフォリオ転換戦略(M&Aを活用して事業構成を組み替える戦略) |
②自社にふさわしい相手先選び
M&Aを実施するうえで、自社に適した相手を選ぶことは、買収側・売却側どちらにとっても重要です。特に買収側は、M&A成約後の業績向上が達成できる相手を選ばなければなりません。その選択の際に主なポイントになるのは以下の点です。
- シナジー効果の親和性の高さ
- 財務の健全性
- 新規事業の獲得の場合、その事業に知見のある人物や機関のアドバイスを受ける
- 相手先の売却ニーズを評価する
- 財務データによる収益性・安全性を分析する
- 買収が実現可能かを判断
③適切なバリエーションの実施
バリエーションとは、企業価値評価のことです。M&Aにおける企業価値評価とは、売却側企業が持っている資産や負債、現在の業績などから換算し、買収額交渉のもとになる金額を算出することをさします。バリュエーションは、以下の3系統に分類されるさまざまな専門的算定方法を駆使するものです。
- コストアプローチ(純資産額を基準に対象企業の企業価値を算定する方法)
- インカムアプローチ(将来の収益やキャッシュフローの予測を基に対象企業の企業価値を算定する方法)
- マーケットアプローチ(市場取引の観点から対象企業を評価する方法)
複数の算定方法を組み合わせるケースも多いので、いずれにしろM&A仲介会社などの専門家に依頼するのがベストでしょう。
④デューデリジェンスの徹底
デューデリジェンスとは、買収側が行う売却側に対する精密監査です。財務・税務・法務・労務・IT・ビジネス(事業)などの分野ごとに、士業などの専門家を起用し1~2カ月程度の時間をかけて調査が行われます。デューデリジェンスの目的は以下の3点です。
- 的確なバリュエーションを行うための経営情報の入手と内容の確認
- 偶発債務などの簿外債務、訴訟リスクなどM&A後の経営にダメージをもたらすものが潜んでいないかどうかの調査
- PMIの計画策定に必要な売却側企業の情報収集
デューデリジェンスの調査の途中経過で、各チームから中間報告を受けるでしょう。M&Aのリスクが報告された場合は、必要に応じて追加調査を実施します。最終報告では、追加調査の内容も盛り込んだ報告が提示されます。
デューデリジェンスをおろそかにすると、大体のケースでM&A後、問題が起きる可能性が高いでしょう。手間と時間を惜しまず、徹底したデューデリジェンスが必須です。
⑤経営統合の綿密な準備
買収側にとって、M&A成約がゴールではありません。成約はスタートであり、経営統合が問題なく果たせるかどうかがM&Aの成否を分けます。そのためには、デューデリジェンスで得た情報を有効に使い、買収側・売却側のどちらにも支障が出ない経営統合計画策定がキーです。
M&Aが成約しクロージング(契約内容の履行)が終了したら、すぐに経営統合を始めなければなりません。したがって、経営統合計画策定のためのプロジェクトを組み、デューデリジェンス~クロージングまでの間に計画策定が終わっている必要があります。
M&Aを失敗したくないなら仲介会社に相談を
M&Aを失敗させたくないのであれば、仲介会社に相談するのがよいでしょう。自社だけでM&Aを失敗せずに行おうとすると、あらゆることに留意しなければなりません。M&A仲介会社であれば、多くの失敗事例も理解したうえで各種プロセスを進めるので安心です。
M&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所にお任せください。M&A総合研究所では、M&Aに関する専門の知識を持つ経験豊富なアドバイザーが専任となり、M&Aの相談時からクロージングまでフルサポートいたします。
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M&A失敗の要因・事例まとめ
本記事で取り上げた調査では、M&Aの成功確率は60~70%でした。逆にいえば、半年~1年程度の時間や手間をかけ、買収側としては高額な資金も投入するM&Aは、30~40%の確率で失敗しているのです。
M&Aが失敗する背景には、業績悪化やデューデリジェンス不足などさまざまです。対策を怠らなければ未然に防げることもわかっています。本記事で取り上げている内容を把握したうえで、頼れるM&A仲介会社を起用するのが、M&Aを失敗しないための得策です。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。