M&Aとは?最新の動向やメリット・手法から成功のポイントまで専門家が徹底解説
2026年2月24日更新資金調達
M&Aの資金調達手法を徹底解説|最新の融資・出資・LBOの仕組みと選び方
2026年現在のM&A市場では、戦略的な事業拡大のための資金確保が不可欠です。本記事では最新の金融情勢を踏まえ、M&Aの資金調達について直接金融や間接金融、LBO等の特徴を詳しく解説します。最適な手段を選び、成約後の経営を安定させましょう。
目次
企業成長に不可欠な資金調達の定義
資金調達とは、事業を推進していくために必要な資金を主に外部から調達する行為をいいます。企業・事業の成長には潤沢な資金が欠かせないため、内部留保しているお金が不足している場合には資金調達を行い、必要な金額を補填するのが一般的です。
M&Aを含めた資金調達が必要となる代表的なシーン
資金調達が必要となる場面は多岐にわたりますが、現在のビジネス環境では特に積極的な投資姿勢が求められています。本記事では、M&Aによる買収にあたってM&Aの資金調達を行うケースを中心に、その重要性をみていきましょう。
- 安定的な経営継続のための運転資金を確保したいとき
- 独創的なアイデアによる会社の創業・新規事業の立ち上げを行いたいとき
- DX(デジタルトランスフォーメーション)推進に向けた設備投資を実行したいとき
- 迅速な市場シェア拡大を目指し、M&Aによる買収を行いたいとき
手元に十分な買収資金がない場合、外部からの資金調達が必要になります。買収契約では、資金調達の完了をクロージング実行の前提条件とすることが一般的です。買い手は、買収交渉と同時に資金調達も進める必要があり、これによりM&Aの複雑さが増します。
さらに、デューデリジェンス費用や仲介手数料など専門家への支払いも必要です。これらの費用に対しても資金調達を検討する必要があるのです。
M&Aで多額の資金調達が求められる背景
M&Aで資金調達が必要な理由は、資金を豊富に持っていてもM&Aを実施する資金は想像以上に膨大で、実施後にも今後の経営における資金が必要になるためです。大手企業でも、現時点の資金だけでは不足するケースがほとんどです。ではなぜ、膨大な費用がかかるのでしょうか。
まずは、何のためにM&Aを実行するのか、どれくらいの費用が必要なのかを明確化しましょう。そうすることで、資金調達の方法が見えてきます。M&Aに必要な費用の多くは、以下の4種類に分類されます。
- 買収費用
- 専門家への依頼費用
- 税金
- その他諸経費
M&Aを実施する際はさまざまな費用がかかるため、資金に不安があるなら調達が必要です。それぞれの費用を順番に説明します。
①買収費用の調達
M&Aを用いて会社を買収する場合、ほとんどのケースで買収資金が必要です。場合によっては現金ではなく株式で対価を支払うケースもありますが、多くのケースでは現金支払いです。
買収に必要な費用は数百万円から数十億にまで上り、比較的高額になりやすいので気をつけなければなりません。したがって、現時点で買収費用が手元にない場合は、他機関から資金調達する必要があります。
②専門家への依頼費用の調達
M&Aを行う場合は、専門家への依頼費用も必要です。基本的に、M&Aは仲介会社をとおして実施します。通常のケースでは、M&Aを検討する段階でM&Aを専門とした仲介会社に依頼します。M&A仲介会社に相談して、マッチングから実務的な手続きなどのサポートを受けながら進めるほうが、自社のみで行うよりもM&Aの成功率を高められるのです。
実際に、近年実施されたM&Aの多くで専門の仲介会社やアドバイザーが起用されています。特に、財務・法務・ビジネス面での精緻な事前調査(デューデリジェンス)は、リスク回避の観点から専門家の協力が不可欠です。
2026年現在、専門家への依頼費用は透明化が進んでいるものの、高度な分析が求められるため依然として一定のコストがかかります。小規模な案件でも最低100万円から300万円程度の予算を見込むのが一般的となっており、会社のキャッシュフローを圧迫しないよう、M&Aの資金調達を計画的に行う必要があります。
また、専門家に支払う料金はデューデリジェンスの報酬だけではありません。M&A候補先会社の紹介に伴う手数料や、M&Aが成立した後の成功報酬などもかかります。成功報酬は、一般的に買取金額の5%から10%程度となるため、買収金額に上乗せした金額が要るのです。専門家の依頼にかかる費用は各料金体系によって異なるため、事前によく確認しましょう。
③M&A実行後に伴う納税資金の確保
M&Aを実施すれば、会社の規模が大きくなるため、今まで以上の税金が発生する可能性があります。そのため、M&Aを実施した段階で、税金にも注意しましょう。税金は会社の価値に比例して金額も上がります。つまり、規模の大きい会社になればなるほど高額になるのです。
会社の規模を大きくして売上が急速に伸びても、税金を納められないと問題になります。税金対策をしっかりと考えなければ、今後の経営にも影響が出るおそれがあります。高額になる税金を支払うためにも、M&Aの際には資金調達をしておくと安心です。
④その他諸経費の調達
M&Aを実行するプロセスでは、実務を担当する従業員の人件費に加え、現地調査に伴う宿泊費や交通費などの諸経費が発生します。また、事業承継を目的とした組織再編では株主総会の招集が必要となり、会場設営や運営に伴うコストも無視できません。M&Aは検討開始からクロージングまで半年から1年以上を要する長期プロジェクトであるため、継続的なM&Aの資金調達が求められます。
一方で、近年はM&Aプラットフォームの活用が一般化しています。オンラインでの面談や電子契約、データルームによる資料共有が普及したことで、従来の物理的な移動コストや事務手数料を大幅に削減することが可能になっています。
M&Aに向けた資金調達の種類
2026年の金融環境において、M&Aの資金を自己資本のみで全てまかなう手法はリスクが高いとされています。たとえ業績が堅調で内部留保が豊富な企業であっても、買収後のPMI(ポスト・マージ・インテグレーション)や不測の事態に備え、手元資金を残しておく必要があるためです。そのため、戦略的に外部からM&Aの資金調達を行うことが経営の常識となっています。
現在の市場動向では、単なる借入だけでなく、多様なファイナンス手法を組み合わせた高度な資金繰りが一般的です。自社のキャッシュフローを最大化しつつ、外部機関を効果的に活用することが成功の鍵となります。資金調達の手法は、大きく以下の4つのカテゴリーに分類されます。
- 直接金融
- 間接金融
- 資産の現金化
- 補助金・助成金の活用
ここでは、4種類の資金調達方法を解説します。
直接金融(増資)
通常、資金調達したい場合、株式会社の経営者は株主に頼るのが一般的です。資金調達には定期的な返済が必要な融資だけではなく、会社を直接支えてくれる株主からの出資も該当します。ここでは、下記の3つを解説します。
- 公募増資
- 株主割当増資
- 第三者割当増資
直接金融とは、簡単にいえば資金調達を株主に頼る方法です。直接お金が入るので、金融からの借り入れとは違い、金利返済の心配はありません。配当を分配する義務はありますが、「借りている」意識は薄くなるでしょう。資金調達を考えたときは、まず直接金融をご検討ください。
①公募増資
公募増資とは、既存株主や特定の第三者だけでなく、一般的に投資家へ新株を発行して資金調達をする方法をさします。上場会社の新しい成長資金のため、財政基盤を強めるためなどに多く用いられる方法です。
払込金額の決定方法は、ブックビルディング方式といった投資家の需要により株価が変動する方法です。投資家からの需要が強ければ株価は高くなり、弱ければ安く調整されます。
②株主割当増資
株主割当増資とは、すでに株式を保有している株主に対してさらに出資を募ることをいいます。株主がさらに株式を購入してくれることで、資金調達につながるのです。既存株主のシェアが希薄化せず、株主構成に変化がありません。
③第三者割当増資
第三者割当増資とは、新たに株主を増やして出資してもらう方法です。市場内で株式を購入してくれる株主を募集し、それに応じてくれた株主に出資してもらい、資金調達をします。第三者は、取引先などビジネスにおいて関係のある会社も第三者割当増資に該当します。この方法は、会社再建・資本業務提携・M&A・スタートアップの成長資金注入など、幅広く利用されているのです。
間接金融(融資)
直接金融に対して、銀行や他の機関からお金を借りて資金調達する方法が間接金融です。M&Aのために実施する資金調達では、大半の場合で間接金融が活用されています。
間接金融は、一般的には借り入れとも呼ばれ、間接金融には自社内や相手の会社以外における第三者の機関からの借入が該当します。しかし、金融機関によっては、高い金利や返済不可能な返済期間を要求してくる場合があるので注意しましょう。基本的に、銀行や地域の商工会などを頼るのが一般的です。
上記のとおり、M&Aの資金調達には直接金融と間接金融の方法があります。どちらもメリットやデメリットがあるので、専門家のもとで会社にとって適切な資金調達方法を選択しましょう。
間接金融の代表例
間接金融の代表的なものには、以下があります。それぞれ違った特徴があるので、覚えておくとよいでしょう。
- プロパー融資:金融機関が事業融資を行う場合において、信用保証協会の保証などがなく直接自身の責任100%で実行するもののこと
- 公的融資:国・地方公共団体またはこれらに準ずる者から資金調達を行うこと
- ビジネスローン:事業資金専用のローン商品のこと。申し込めるのは法人経営者および個人事業主のみ。
- コマーシャルペーパー:企業が短期資金調達の目的で、公開市場で割引形式で発行する無担保の約束手形のこと。
資産の現金化
資産の現金化とは、アセットファイナンスとも呼ばれており、企業が有している有形・無形資産を売却し、資金調達を行う方法をさします。迅速に資金調達できる点にメリットがあり、買い手が見つかれば即座に資金調達を行うことが可能です。
しかし、アセットファイナンスは企業イメージの悪化につながるおそれもあります。また、そもそも売却できる資産を保有していない企業では、アセットファイナンスを実施できません。
アセットファイナンスの代表例
アセットファイナンスの代表的なものには、以下があります。なかでも不動産の売却は一般的に行われている方法です。
- 不動産の売却:使用していない土地や建物を売却して資金とする方法のこと。
- 商標権の売却:すでにブランドが確立された商品・サービスなどの商標権を売却すること。
- ファクタリング:売掛金をファクタリング会社へ売却し、手数料を差し引かれた代金を受け取って資金調達する手法。
補助金・助成金の活用
国や一部の地方自治体などでは、事業者向けの補助金・助成金によって、中小企業の資金調達をサポートしています。
企業規模・事業内容・資金の利用目的などに細かな条件が設けられているものの、補助金・助成金は原則的に返済の必要がない点に大きなメリットがあります。具体的な補助金・助成金の代表例は以下のとおりです。
- ものづくり補助金:中小企業等による生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援する補助金。
- 小規模事業者持続化補助金:小規模事業者等が販路開拓等に取り組む費用の一部を補助する制度。
2026年におけるM&Aの資金調達トレンドと注意点
サステナビリティ・リンク・ローンの活用
最新の動向として、M&Aの資金調達において「サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)」を採用する企業が増えています。これは、借り手が設定したESG目標(温室効果ガスの削減やダイバーシティの推進など)の達成状況に応じて金利が変動する融資制度です。社会的責任を果たしながら、低コストで資金を確保できるため、ブランド価値向上を目指す買い手企業に選ばれています。
金利上昇局面におけるデットファイナンスの検討
現在の国内金利は上昇傾向にあるため、変動金利による融資だけでなく、固定金利による長期借入を組み合わせたリスクヘッジが不可欠です。M&Aにおける資金調達を検討する際は、将来的な支払利息の増加をシミュレーションし、買収後の収益性を厳格に評価しなければなりません。金融機関との交渉では、事業計画の具体性と返済能力の証明がこれまで以上に重視されています。
投資ファンドとの協調による資金確保の広がり
自社単独での資金調達が難しい場合、プライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)と共同で買収を行う手法も注目されています。ファンドから資本を受け入れることで、財務基盤を強化しつつ、ファンドが持つ経営ノウハウを享受できるメリットがあります。ただし、出口戦略(イグジット)を見据えた長期的なパートナーシップの構築が、成功の前提条件となります。
M&A手法としての第三者割当増資の特徴
この章では、M&A手法としての第三者割当増資における特徴を解説します。
メリット
まずは、M&A手法としての第三者割当増資におけるメリットを紹介します。メリットは下記の2つです。
- 資本業務提携によりシナジー効果を高められる
- 会計上の「のれん金額」を抑えられる
①資本業務提携によりシナジー効果を高められる
資本業務提携とは、第三者割当増資と同時に業務提携を行うことです。資本業務提携を実施すれば、通常の業務提携と比べてより深い付き合いができ、シナジー効果を高められます。A社とB社が資本業務提携を行うと仮定すると、両社が第三者割当増資を行って株主になるだけでなく、詳細な情報交換ができ親密な提携の話し合いが可能です。
②会計上の「のれん金額」を抑えられる
「投資金額-(取得比率×対象会社の時価純資産)」によって、会計上ののれんは計算できます。第三者割当増資でM&Aを実施すると、買収側による対象会社への資金注入により対象会社の時価純資産が増えるため、のれんの金額を株式譲渡のケースよりも低く抑えられ、のれんの償却負担を少なくできるのです。
デメリット
次に、M&A手法としての第三者割当増資におけるデメリットを紹介します。デメリットは下記の4つです。
- 目標の取得比率があると株式譲渡よりも多くの投資資金が必要
- 売却側が過半数の株式を手放す理由が少ない
- 完全子会社化を行えない
- 既存株主に不利益を及ぼす
①目標の取得比率があると株式譲渡よりも多くの投資資金が必要
目標の取得比率が50%で、対象会社の100%バリュエーションを1億円としたケースを仮定します。株式譲渡では、売却側から5,000万円の株式譲渡を譲受すれば、取得比率50%を達成できます。
しかし、第三者割当増資のケースでは、買収側が50%の取得比率を達成するには、1億円の第三者割当増資が必要です。つまり、目標の取得比率があれば、第三者割当増資は株式譲渡よりも多くの投資資金が必要です。
②売却側が過半数の株式を手放す理由が少ない
売却側が100%の株式を有する会社に第三者割当増資を行うケースでは、売却側は1円も手にすることなく、会社に第三者割当増資分の資金が入ります。
第三者割当増資により買い手が50%超を得たい場合は、既存の大株主はただでは会社の経営権を譲渡する気がありません。第三者割当増資と株式譲渡を合わせて、既存株主の売り手に一部エグジットさせて金銭的リターンを与えれば、交渉が進むこともあります。
③完全子会社化を行えない
第三者割当増資では、既存株主がいる中で対象会社が新しく買収側へ新株発行を行うので、既存株主がいるため完全子会社化ができません。完全子会社化したければ、第三者割当増資を行ってから、既存株主から買収側へ株式譲渡を行いましょう。
④既存株主に不利益を及ぼす
第三者割当増資では、発行済株式数が増えるので、1株あたりの価値が相対的に下がって議決権割合が低下する株式の希薄化などが起こります。株価などの条件により、既存の株主が不公平感などを持つこともあるので気を付けましょう。事前に既存の株主へ通知を行い、新株発行の差し止めにも応じる対応が必要なケースもあります。
間接金融の代表的な手法は金融機関からの借入
間接金融の代表的な手法は金融機関からの借入で、以下の金融機関が挙げられます。
- 銀行(メガバンク地方銀行など)
- 政府系金融機関(日本政策金融公庫など)
- 信用金庫や信用組合
- ノンバンク
金利・担保の有無・借入期間・そのほかの条件は金融機関によって違うので、状況に応じて適した金融機関を選んでください。ここからは、借り入れのメリットとデメリット、借入を成功させるためのポイントを解説します。
メリット
まずはメリットです。下記の3つが挙げられます。
- 持株比率を希薄化させずに済む
- 手元に資金がなくとも投資を実行できる
- 信用力次第では低コストで資金調達できる
①持株比率を希薄化させずに済む
増資による資金調達を行うと、経営者の持株比率が希薄化して会社への影響力が弱まります。50%未満の持株比率となれば、株主総会で、自らの議決権だけで役員を選任できません。他の株主から協力がなければ社長の地位を維持できないのです。
しかし、借り入れによる資金調達であれば、持株比率を希薄化することなく資金調達が行えます。持株比率が50%超に近く、増資による資金調達をしたくないケースでは、このメリットは大きいです。
②手元に資金がなくとも投資を実行できる
一般的に、M&Aや新規事業を実行するときは、手元に資金がなければ投資を実行できません。しかし、借り入れにより資金調達すれば、手元の資金が貯まるまで待つことなく投資を実行できます。時間に投資して、自社の成長速度を早められるのです。
③信用力次第では低コストで資金調達できる
借り入れの金利や諸条件は、会社の信用力が高いほど有利です。会社の信用力は、社歴・経営者・従業員・会社規模・技術力・ブランド・財務状況・取引先・市場優位性など、さまざまな角度から判断されます。
財務状況は特に大切で、債務超過のケースなど財務状況がかなり悪化している場合は、銀行からの融資を断られることもあります。上場企業など、会社の規模が大きくて財務状況が良い場合は、より低金利で借り入れすることが可能です。つまり、自社の信用力が高ければ、それを生かして低金利で借り入れを行い、投資に回す成長サイクルが構築できます。
デメリット
次に、デメリットを解説します。デメリットは、下記の3つです。
- 返済義務を負う
- 信用力が悪化すれば追加融資を断られるおそれ
- 会社倒産時に経営者個人が借金の返済義務を負うリスク
①返済義務を負う
銀行などから借り入れたお金は、返済する必要があります。返済期限まで、毎月返済や一括返済など返済期限を考慮して資金繰りを考えなければなりません。M&Aを行うために借り入れた資金も同じです。M&Aで得るリターンによって、借入金を期限内に返済できるよう事前に返済プランを立てましょう。
②信用力が悪化すれば追加融資を断られるおそれ
特に運転資金を借り入れているケースでは、返済して借り入れが終わるわけではありません。返済と同時に、同額の新規融資を通じて再び借り入れるケースが多いです。
しかし、信用力が悪化すれば、銀行に追加融資を断られるおそれがあります。追加融資を受けられなければ、会社の資金繰りが悪化するので、別途資金を調達するか返済を延ばしてもらうことになります。いつでもお金を借りられるわけではない点は、借り入れのデメリットなので留意しましょう。
③会社倒産時に経営者個人が借金の返済義務を負うリスク
中小企業が借り入れを行う際、経営者個人の連帯保証を求められるケースは少なくありません。連帯保証が入った状態で、会社が倒産し返済できなくなれば、経営者が引き続き返済する必要があります。そのため、連帯保証に入る際は、自身の生活に影響をおよぼす高いリスクがある借り入れを行うべきではありません。
借入を成功させるためのポイント
ここまでさまざまなM&Aの資金調達方法を解説しましたが、その中でも一番利用しやすい資金調達方法は銀行融資です。M&Aに対して最もお金を貸してくれる機関が銀行であるためです。M&Aの際、多くの経営者は銀行で資金調達の相談をします。
銀行から融資を受けられないM&Aは、他の融資も活用できない可能性が高いです。銀行はどのような点に着目して、M&Aの融資を実施しているのでしょうか。銀行がM&Aの融資を行うポイントは、以下の項目です。
- 返済能力
- 価値
- 取引履歴
- 必要資料の準備
- 買収対象の社会的信用力・収益力
銀行は融資の際に以上の5つをチェックしています。それぞれのチェックポイントを解説します。
①返済能力
1つ目のポイントは返済能力です。銀行は融資の際、会社に返済能力があるかどうかを特に重視しています。収支は、会社の業績を数値として明確に表現したものです。銀行は以下の点を「借りたお金を返す能力(信用力)」として見ているので、自社の収支もチェックしてください。
- 損益はどうなっているのか
- どれほどのキャッシュフローを生み出しているか
収支に関する確認は、M&Aで買収する側・される側の双方が厳しく精査されます。M&Aを実施すると会社の一部またはすべてが統合されるからです。M&Aの実行後に、多くのキャッシュフローを生み出せる会社同士の取引でなければ、銀行は融資する意味がありません。つまり、M&Aを実施するために銀行から資金調達する場合は、最低限の経営力が求められます。
銀行には事前に「M&Aのために資金調達したい」旨を伝えておくと、精査も相応のレベルになります。銀行からどうしても融資を受けたいなら、専門家のサポートを受けながら手続きを進めるのが良いです。返済計画などを専門家と相談しながら決めて、銀行から融資を受けられる可能性を高めてください。
②価値
銀行は「会社の価値」を見ることも多いです。銀行はボランティアではありません。当然金利などの見返りを求めています。有名な大手企業や、業績が上がっている会社に融資すると、銀行のブランド力が向上することも珍しくありません。
つまり、業績が良く「融資する価値」がある会社には、喜んでお金を貸してくれます。もちろん、業績の悪い会社でも「銀行融資のおかげで業績が上がった」となれば、貸した価値があるため融資してくれるでしょう。
以上のとおり、銀行を利用して資金調達するには、信用力が必要です。その精査が厳しいために、銀行融資の金利は他の金融機関に比べて低く設定されています。財務状況を見て返済能力がなければ、お金を貸してくれません。
M&Aの際は、高金利な消費者金融で資金調達する経営者もいます。しかし、高金利な融資を受けて資金調達をするのはリスクが大きいのでおすすめできません。まずは、身近な銀行に足を運んで相談するのが良いでしょう。
③取引履歴
銀行との取引は、口座開設を行って多くの決済を行うことも挙げられます。メイン口座として給与の支払いや取引先への支払いなどを行えば、銀行へ手数料を支払っているので、手数料が大きいほど銀行は優良顧客と捉えるのです。借り入れしたい銀行との取引履歴を積めば、借り入れやすさが変わります。
④必要資料の準備
銀行から借り入れるときは、財務諸表・返済計画・投資資金用の場合は事業計画などが必要です。銀行の担当者からこれらの必要資料に関して質問されたときに、合理的でない回答をすると、信頼をなくして借り入れできなくなるおそれがあります。銀行に提出する必要資料は、しっかりと確認を行いましょう。必要であれば税理士やコンサルタントなどの専門家に相談して、適切な資料を提出してください。
⑤買収対象の社会的信用力・収益力
銀行からの借入を申し込む際、既にその銀行との取引実績がある企業は、審査を通過しやすくなる傾向があります。この理由は、銀行が企業の社会的信用力や収益力、経営状況、経営者の考え方などをよりよく理解しているからです。その結果、過去に借入実績がある企業は、借入時の金利も比較的低く設定されることが一般的です。
逆に、過去に借入実績のない銀行から新たに借入を申し込む場合、金利が高く設定されたり、審査に通る確率が低くなることもあり得ます。これは、銀行がその企業に関する十分な情報を持っていないため、より高いリスクを考慮しているからです。
日本政策金融公庫による支援制度
M&Aに必要な資金を調達する方法の一つとして、日本政策金融公庫の支援制度が利用できます。この制度の特徴としては、多くの場合、民間金融機関と比べて金利が低いことが挙げられます。さらに、融資金額を一度にまとめて調達することが可能です。ただし、利用する際には多くの資料を提出する必要があるため、手続きに時間がかかる点に注意が必要です。
間接金融としてのLBO・MBOの特徴
この章では、間接金融としてのLBO・MBOにおける特徴を解説します。
LBO(レバレッジド・バイアウト)
LBOとは、Leveraged Buyoutの略で、M&Aを実施したくても手元に資本金が少ないケースで多く使用されます。対象会社の資産や将来生み出されるキャッシュフローを担保に、金融機関や投資家から資金調達して買収する手法です。
LBOのメリット・デメリット
LBOのメリットは、少ない手元資金で大型の買収を仕掛けられる点です。また、買い手の信用力でなく、対象会社の信用力や資産を担保に資金調達できます。負債をうまく生かせば、自社グループの利益効率を高められる点もメリットです。
一方で、一般的な借り入れよりもハイリスクで、金利やその他における条件が悪いケースが多く見られます。また、LBOでM&Aを行った後に計画どおりにいかず失敗に終わると、手元資金を使ったM&Aよりも大きな損失となる可能性がある点もデメリットです。
LBOの代表的な事例
LBOの代表的な事例として、リップルウッドによる日本テレコムの買収を解説します。米国投資会社のリップルウッドは、2003年8月に、日本テレコムを2,613億円で買収することを決め、LBOの手法を用いています。リップルウッドは国内外の銀行から、資金調達を行いました。
この買収から1年後、ソフトバンクグループが約3,400億円で日本テレコムを買収しました。リップルウッドは約800億円の投資利益を得たので、LBOに成功した事例です。
MBO(マネジメント・バイアウト)
次に、MBO(マネジメント・バイアウト)を解説します。MBOは、Management Buyoutの略で、経営陣が株主から株式を買い取り経営者として独立する手法をいいます。
経営陣は手元資金での買収もできますが、上場企業のMBOでは多額になるため、自己資金で足りない分はファンド、金融機関などのスポンサーをバックに対象企業の株主から株式を取得するのが一般的であり、LBOの形式を取ることがほとんどです。
MBOのメリット・デメリット
MBOのメリットとして、100%経営陣が株式を有すれば、所有と経営が一致して迅速な意思決定ができることが挙げられます。上場会社は決算開示などの対応が要りますが、非上場化により上場維持コストを削減できる点もメリットです。一度非上場化して、時価総額を上げてから再び上場もできます。
一方、100%化するには、通常の時価総額より高いプレミアを乗せた価格で買収しなければならないため、投資コストがかかります。MBOの後、企業価値を上げられず再上場などができなければ、経営陣は上場していたときよりエグジットの機会が少なくなる点もデメリットです。
MBOの代表的な事例
MBOの代表的な事例として、すかいらーくによるMBOの事例を解説します。すかいらーくは、2006年9月、MBOによって上場廃止となりました。この時点における時価総額は、2,944億円です。MBOから8年後、すかいらーくは再上場しました。しかし、時価総額は2,219億円で、MBOにより企業価値を高められませんでした。
M&Aの資金調達に関するその他の用語
M&Aの資金調達に関する用語について解説します。
デットファイナンス
デットファイナンスとは、銀行からの借入れや社債の発行などを通じて資金を獲得します。調達した資金は借入金として負債に計上されるため、期間内に返済を行わなければなりません。デットファイナンスによる資金調達は調達コストが低く、資金調達後も経営者が自由に経営を行える点が特徴的です。
デットファイナンスは、利子支払いが税務上の経費として扱われるなどもあるため、企業の資金調達の第一選択肢として活用されています。
エクイティファイナンス
エクイティファイナンスとは、資金調達のため株式を発行し、投資家から出資を受ける方法です。調達した資金は資本金となるため、月々の返済はなく、金利の支払いも生じません。
ただし、投資家に対して新たに配当金の支払いの義務が生じます。また、新しい株主が増えるため、企業の経営に対して一定の影響力を持ちます。注意点としては、既存の株主との対立が生まれたり、経営陣と対立したりするなどで経営の自由度を制限するリスクが生じる可能性があります。
アセットファイナンス
アセットファイナンスとは、企業の信用力ではなく、保有する資産を売却して資金調達を行う方法です。売掛債権や不動産や車両などを売却し、その対価を得ることで資金調達が行います。そのため基本的に誰でも調達が可能になるため、スタートアップ企業も活用できる手法です。
ただし、売掛債権を売却するファクタリングのように、資産価値が下がると、融資条件が厳しくなる可能性があります。
M&Aに向けた資金調達まとめ
M&Aには多額の費用を要するので、資金調達が必要です。M&Aの実行自体ももちろん大切ですが、本質的な目的はM&A実行後の経営にあります。
より多くの利益を生み出すためには、資金調達によって豊富に資金を得た段階でM&Aを実施しましょう。資金調達をせずにM&Aを実行すると、経営に負担が出てしまいます。M&Aの資金調達をする際は、「なぜ必要なのか」を再確認してから動きましょう。
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立命館大学卒業後、地方銀行にて中堅中小企業を担当。ファイナンス、ビジネスマッチング等に従事した後、本部専門部署にて事業承継支援を専門として実績を積む。
その後、大手M&A仲介会社において、事業承継や戦略的な成長を目的としたM&Aを業種・規模問わず、多数成約に導く。
M&A総合研究所では、製造業や建設業、不動産業など幅広い業種を担当。