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2021年4月29日更新資金調達
新規事業立ち上げにおける融資の活用
新規事業立ち上げには資金が必要です。創業のための融資制度を持つ自治体や金融機関を活用することができます。新規事業立ち上げに使える融資とメリット・デメリット、審査について解説します。
目次
新規事業立ち上げにおける融資の活用
新規事業立ち上げの際の経営者の悩みの種が資金繰りです。新規事業が軌道に乗るまで金融機関からの融資は受けにくいものであり、資金調達の方法も限られているため、なかなか資金の確保はできないものです。
しかし今では創業のための融資制度を持つ自治体や金融機関もあり、それらを活用すれば資金調達の目途を立てることができます。今回は新規事業立ち上げの際に役立つ融資についてお伝えしていきます。
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新規事業立ち上げの際に使える融資
新規事業立ち上げの際に使える融資には大きく分けて2種類あります。日本政策金融公庫の創業融資と、自治体が信用保証協会や金融機関と連携して提供する制度融資です。通常、新規事業は実績がないため社会的な信用が得られず、金融機関の融資をなかなか受けられないことが多いかと思います。
しかし創業融資や制度融資はそれぞれ新規事業を立ち上げる創業者向けに融資を行っており、新規事業の経営者は安い金利や長い返済期間を設けてもらったうえで融資を受けることができます。創業融資や制度融資の特徴はそれぞれ以下の通りです。
①日本政策金融公庫の融資
日本政策金融公庫とは日本が100%出資している公的な金融機関であり、中小企業や新規事業向けの融資を行ってくれます。日本政策金融公庫は民間の金融機関で融資を断られたという企業でも融資を受けやすい金融機関であり、また固定の低金利で融資を受けられることが大きなメリットです。
融資の種類によっては1%を切る金利を受けられることもあり、また3,000万円を限度に貸し出してくれます。さらにただでさえ金利が低めに設定されているにも関わらず、連帯保証人を用意するなど様々な条件を満たすことで金利をさらに下げることも可能です。
創業融資
日本政策金融公庫の創業融資は、適切な書類や要件を満たして実行される融資であるため、その実績を以て民間の金融機関からも融資を受けやすくなります。加えて日本政策金融公庫は経営に関するアドバイスも行っており、新規事業を立ち上げたばかりの経営者にとって非常に役に立ちます。
日本政策金融公庫のメリットは返済面でもあります。日本政策金融公庫の創業融資は無保証・無担保であり、担保を必要としません。さらに経営者個人に責任が及ばないため、万が一経営している企業が潰れてしまった際に返済の必要がなくなります。その意味では万が一企業が潰れてしまった際のリスクが下がります。
さらに企業が潰れるほどでなくても、返済が難しい事態に陥ったときでも日本政策金融公庫の創業融資は減額申請が可能であり、返済する金額を圧縮し返済期間を延ばすことが可能です。そのため創業融資は借り入れ、返済の両方の点を鑑みて運用しやすい融資だといえるでしょう。
新規事業融資
日本政策金融公庫には創業融資のほかにもう一つ、新規事業向けの融資があります。それは新規開業資金です。
新規開業資金は「雇用の創出を伴う事業を始める人」「現在勤めている企業と同じ業種の事業を始める人」「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める人」「民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める人」という条件を持っていれば受けられる融資です。
新規開業資金は最大で7,200万円まで融資することが可能であり、新規事業の立ち上げを行う経営者にとって心強い資金源になります。
新規開業資金も創業融資同様、様々な条件で利率が変わります。中には保証人や担保をどう設定するかによって利率が変わることもあるので、その点も考慮しておく必要があります。それでも利率は約0.7%~2.3%以内になりますので、新規事業の経営者にとっては有利な融資だといえます。
返済期間も設備資金なら20年以内、運転資金であれば7年以内であり、据置期間が2年以内とある程度ゆとりをもって返済できるようになっています。(2020年2月現在)
②自治体の制度融資
新規事業を立ち上げた経営者にとって自治体の制度融資も役に立つ融資の一つです。自治体の制度融資は日本政策金融公庫の創業融資同様金利が低く審査が通りやすいため、融資を受けやすいというメリットがあります。
加えて自治体の制度融資は措置期間(元本を返済せずに金利だけを支払う機関)が長めに設定されており、大体1年ほどの期間で設定されているため、返済の負担も軽めです。自治体の制度融資の詳細は自治体によって異なっていますが、自治体の中には保証料や利子を負担してくれるように設定されているものもあり、より経営者の負担が少なくなっている点も魅力的です。
ただ自治体の制度融資は日本政策金融公庫の創業融資と比べ、地方自治体の承認や信用保証協会の承認を受ける必要があるため、融資が実行されるタイミングが2ヶ月ばかり遅くなります。そのため制度融資はスピーディーな資金調達に向いていない融資です。
さらに創業融資と違って企業が潰れた際に経営者個人に責任が発生するため、借入の返済義務は残ります。そのため企業が潰れても負担は変わらず残ってしまうため、注意しておく必要があります。
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新規事業立ち上げの際に使える融資のメリット・デメリット
新規事業立ち上げの際に使える融資は一見メリットが多いだけに見えますが、デメリットも存在しています。
メリットばかりでなくデメリットも把握しておかなければ、いくら新規事業に有利な融資だからといっても失敗につながってしまう恐れがあります。
さきほどから触れている部分と一部重複しますが、ここで改めてメリットとデメリットをお伝えしていきます。ここでは、創業融資と制度融資それぞれに分けてお伝えします。
①創業融資のメリットとデメリット
創業融資は低金利であり、審査が通りやすいうえに無担保・無保証で返済の際の負担も少ないと言う点がメリットです。
金利に関しては条件を満たせばさらに下げることができますし、返済が危うくなった際にも交渉して負担を減らすことができます(経営状態の変化に合わせて返済交渉を行うことが多いようです)。最悪会社が潰れてしまっても返済の必要がなくなるため、経営者にかかるリスクが少ないことが多いでしょう。
また、創業融資は審査に1か月~2ヶ月程度の期間しかかからないため、他の融資と比べて比較的スピーディーに融資を得られる点も大きなメリットだといえるでしょう。
しかし審査に時間がとられる以上、一刻も早く資金調達をしたいという経営者にはあまり向いていないといえます。融資の中では早くても、資金調達の様々な方法と比べると創業融資はどうしても時間を要してしまいます。
また金利に関しては融資の内容によっては制度融資より金利が高くなる可能性があるので気を付けた方がいいでしょう。これらの点は創業融資のデメリットだといえます。
②制度融資のメリットとデメリット
自治体の制度融資も、創業融資同様審査に通りやすく、金利も低めに設定されていることがメリットだといえます。さらに自治体によっては自治体が保証料を一部あるいは全額を負担してくれたり、利子(借入金の利息)を負担してくれる利子補給制度もあるため、より負担を減らしてくれるのも魅力的です。
ただ制度融資の内容は自治体によって異なるため、自治体によってはそこまで条件が有利でないケースも考えられます。また制度融資は自己資金要件が厳しい傾向があり、自治体の多くでは自己資金要件が2分の1になっています。そのため自己資金を確保できない経営者だと制度融資が使えないリスクがあります。
加えて保証人が必要ない創業融資と異なり制度融資では連帯保証人のサインが必要で、会社が潰れた後も経営者個人への責任は残るため、創業融資と比べるとややリスクが高くなっています。これらのデメリットはしっかり把握しておいた方がいいでしょう。
加えてさきほどもお伝えしたように制度融資は自治体や信用保証協会の承認が必要なため、融資が開始されるまでの期間が日本政策金融公庫の創業融資より長くなっています。そのためスピーディーな資金調達には向いていません。この点も注意しておいた方がいいでしょう。
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新規事業立ち上げの際の融資の審査
さきほどから創業融資や制度融資は審査が通りやすいとお伝えしてきましたが、これらのような新規事業立ち上げの際の融資の審査は実際的にはどれだけ難しいのでしょうか?先にお伝えしてしまうと、創業融資と制度融資の審査のどちらの方が受かりやすいという断言はできません。
「地方の方が新規事業の立ち上げの数が少ないため審査が受かりやすい」とか「個人事業主と比べて法人の方が資産を明確に管理しているため審査が受かりやすい」といった傾向などはありますが、それでも絶対的にどちらかが受かりやすいということはないようです。
ただ、創業融資と制度融資はそれぞれ審査を通過しやすいポイントがあり、創業融資にせよ制度融資にせよ共通している点としてはこれから新規事業を立ち上げる起業家に向けて設定された融資であるため、審査において過去の実績はさほど注目されないという点が挙げられます。
また既存事業と同じ種類の新規事業でもそこまでネックにはなりません。そのため新規事業立ち上げの際の融資は民間の金融機関の審査とは違う基準で行われていることを踏まえておく必要があります。
創業融資の審査を通りやすくするポイント
創業資金の審査は日本政策金融公庫の支店に行き審査担当者との面談を受けなければなりません。その際に審査担当者は、企業の維持力と返済力を確認します。そして審査担当者が日本政策金融公庫の上司に伝えて最終的に融資の可否が決定します。
そのためこの面談は融資を決めるために非常に重要です。また、審査は申込書類を提出したら終了ではありません。ということでここでは、審査を通りやすくするポイントをご紹介していきます。
①面談で自社の売りと熱意を伝える
審査担当者に今の状況を理解してもらうために、自分の企業の売りについてしっかりと把握して説明できるように準備することが大切です。
たとえば社員の経験や知識あるいは技術力や販売力または他の企業に負けないという熱意など、業種や業態に応じて要素が異なるので、企業の売りとなるものをきちんと把握しておきましょう。
また、面談を受ける際には担当者にどれだけ熱意を伝えられたかも審査が通過させるために重要な分水嶺だといえます。
面談の担当者は面談を通じて経営者がどういった考えで融資を望んでいるかを確かめてきます。加えて新規事業に対してどれだけ情熱をもって取り組んでいるか、そのためにどれだけ現実的な認識で融資を望んでいるかも確かめてきます。
そのため担当者にしっかり自身の熱意や誠意が伝わるように経営者は面談に臨む必要があります。どれだけ自己資金が用意できたり、事業計画を作成できたとしても面談で担当者に見透かされたら審査の通過は難しくなってしまいます。
②必要な借入金額と自己資金の考えを明確にする
借入金をなるべくたくさん借入して余れば保管しておこうと考える人もいるはずです。しかし、銀行や金融機関からの借入金には毎月の決まった返済や利息があります。そのため、借入金は少ないほうが良いと言えます。
また、使いみちと借入額は明確にかつ具体的に説明する必要があります。そうでなければ審査担当者が納得してくれません。日本政策金融公庫からの借入金の使いみちは事業に使う資金のみで事業主の生計費に使用はできません。
創業資金にかかる借入額の式は「創業にかかる全ての金額-自己資金のうち事業に投入できる金額=必要借入額」なので試してみてください。
自己資金はなるべく多い方が借入金を少なく抑えたり創業への真剣さを表したりできるので審査が通りやすくなると言えます。また、親族から受けた借入は返済義務がないものは自己資金としてみなしてくれることが多いので、これらのことを踏まえて自己資金の考え方について再認識してみましょう。
③取引先確保の確認と開業計画書
取引先を確保することも融資を受けるときに重要になります。例を見ていきましょう。
美容師Aさんは円満退職をして近隣で独立することにしました。
一方、美容師Bさんは自分の顧客リストはもらえましたが店主と仲違いとなり独立となったため元勤務先から離れたところに店舗を構えなければなりません。
この2人のケースでは審査の優位性がかなり違います。Aさんは取引先の確保ができているため融資を受けるときに優勢となります。
また日本政策金融公庫は多くの個人法人に創業資金を融資していて、創業後の売上もアンケートを行って各状況を入手しています。
そのため当公庫の持つデータとあまりにも異なる数値で開業計画書を作成すると、審査担当者は納得させるのは難しくなります。日本公庫の公式サイトでデータは一部公開されているのでぜひチェックしてみてください。
いかに綿密に実現可能性が高い事業計画を立てているかによって審査の結果は大きく変わってきます。事業計画を作成する際にはキャッシュフローなどできるだけ細かい数字を算定して記入しておけば信頼度がより高まります。
実現可能性の高い事業計画は、融資を受ける際のみならず、その後の企業業績ひいては存続可能性を左右するものといえます。新規事業は、M&Aを活用して取り組むことも可能です。
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まとめ
新規事業を立ち上げる際に使える融資はいずれも経営者にとって有利な内容になっており、資金調達の際にぜひ活用するべきものだといえます。しかしいくら条件がいい融資とはいえ、デメリットは踏まえておかなければなりませんし、何より審査がある以上通過するために経営者は尽力しなければなりません。
そもそも日本政策金融公庫の創業融資と自治体の制度融資はそれぞれ違いもあるため、どちらを利用するかをちゃんと検討しておく必要があります。この点も留意しておくようにしましょう。
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