M&Aとは?手法ごとの特徴、目的・メリット、手続きの方法・流れも解説【図解】
2021年5月10日更新会社・事業を売る
マレーシアのM&Aとは?M&A件数・金額、メリットをご紹介
マレーシアは「ビジョン2020」として先進国入りを目指すなど経済的な発展を目指しており、現在は日本の高度成長期のような状態であるため、今後はより一層経済の動きが活発になるでしょう。今回は、マレーシアのM&Aの現状や成功させる方法について詳しく解説します。
マレーシアにおけるM&A市場の現状
まずは、マレーシアにおけるM&A市場の現状、日本との関係について説明していきます。
マレーシアの概要
マレーシアは、イギリス連邦に加盟する連立憲君主制国家でASEAN(東南アジア諸国連合)にも加盟している東南アジアの国です。マレーシアの人口は、外務省の「マレーシア基礎データ」によると約3,200万人(2017年)であり、このうち生産年齢人口割合(15歳以上64歳以下)は69.6%と高いです。
人口は今後も伸びる傾向にあり、2040年まで生産年齢人口割合が高い数値を推移すると予測されています。また、失業率は3.1%と低く、経済成長率はおよそ5%と近年の経済成長は安定を保持しています。
マレーシアは、イギリス植民地時代からゴムの大規模工場生産や錫(すず)の採掘、天然ガスの掘削などが盛んな地域です。従来の農作物や鉱産物の輸出、観光業に依存している傾向がありましたが、2020年には先進国入りを目標に他の産業も発達してきています。
※参考:外務省「マレーシア基礎データ」
マレーシアのM&A
東南アジア諸国のM&A件数は年々増加しており、2010年は50件に満たない件数でしたが、2015年には100件を超えています。当然、その中にはマレーシアでのM&Aも含まれていますが、他国と比較すると水準は低いです。
しかし、近年では先進国入りを目指した政策や規制の緩和などによりM&Aは増加傾向にあり、2015年に発足したASEAN経済共同体(AEC)によって経済的な発展や再整備が実施されたことでASEAN全体を統一市場と見る動きがあります。
それに伴い、マレーシアの企業が海外の企業とのM&Aを進める動きを活発にすることが予測でき、M&Aはさらに増加していくでしょう。
マレーシアと日本の関係とM&A
マレーシアでは、日本を手本に工業化を進めて経済成長の達成を目指しており、マレーシアの主要都市では公共交通機関や水道、電話、インターネットなどが安定し、外資に対する規制もないため海外企業とのM&Aを積極的に受け入れようとしています。
このような中で、特に日本とは友好的な関係が築けていることから日本企業とマレーシアの企業はM&Aを実行しやすい傾向があります。しかし、マレーシアは中国やタイと比べて人件費が高いことを懸念して進出をためらう日本企業もあるようです。
マレーシアのM&A件数と取引金額の推移
ここでは、マレーシアにおけるM&A件数と取引金額の推移をご紹介していきます。
M&A件数の推移
マレーシアにおけるM&A件数は、シンガポールやベトナムなど他の東南アジア諸国に比べると低い水準であり、2005年から2009年では27件、2010年から2014年では67件と増加していますが、2015年単年を見ると11件にとどまっています。
ASEAN諸国でのM&A件数が2005年から2009年では158件、2010年から2014年では411件、2015年の単年で110件ということから見ても、マレーシアが占めるM&A件数は比較的少なく、2015年単年だけ見るとASEAN諸国の中で最下位です。
M&A取引金額の推移
日本とのM&A取引金額ではASEAN諸国全体では、2005年から2009年は136億2,500万円、20010年から2014年は185億9,800万円と高水準となっていますが、2015年の単年では41億2,600万円と全体的に落ち込んでいます。
マレーシアだけの金額を見ると、2005年から209年は30億8,600万円、2010年から2014年は21億7,900万円、2015年の単年では1億6,100万円とこちらも落ち込んでいます。マレーシアにおけるM&Aは、企業そのものが成長途中であるために取引金額が高額になりにくい特徴があるといえます。
2015年にM&Aが落ち込んだ理由
2015年のM&A件数と取引金額が全体的に落ち込んでいるのは、ASEAN経済共同体(AEC)の発足が関係している可能性があり、ASEAN経済共同体の発足によって拠点展開や再整備などの動向を見るためにM&Aを実施する企業が少なくなったことが一つの理由です。
また、AECの発足によってシンガポールだけでなくASEAN諸国の統一市場を見越した動きであるとも言われています。
M&Aが増加傾向にある理由
マレーシアでは国政で「ワワサン(マレー語で「ビジョン」という意味)2020」を掲げ、2020年には先進国入りすることを目標としているため、国内の工業化やIT先進国政策、天然資源、リゾート開発などを進めています。
また、公共交通網や生活インフラの安定化などさまざまな政策を実施して、国全体の経済発展を進めていることから、海外企業が今後も経済活動が活発になることを予想してM&Aが増加しています。
さらに、新規参入企業に対して外資100%でも参入が可能になったこともM&Aが増加している理由です。マレーシアは観光業の発展にも期待でき、物流においてはASEAN諸国の中心に当たる位置にあるため、東南アジアの貿易などを考えている企業にとっては要の国となるでしょう。
このような理由から、日本企業においても積極的なクロスボーダーM&Aが行われていくと予想されています。
マレーシアのM&Aが遅れていた理由
ここでは、マレーシアにおいてM&Aが他の東南アジア諸国と比べて低い水準となっていた理由について解説していきます。
ブミプトラ政策による外資規制
マレーシアでは過去にブミプトラ政策によって外資規制を行っていました。ブミプトラ政策とは、華僑が経済的に有利になるのに対抗して、マレー人の地位を向上させようと1971年から始まった政策です。
マレーシアには中国やインドからの移民が多く、それに加えてイギリスの植民地であったことから多民族国家となり、経済的に豊かな中国系人ともともと住んでいたマレー人による対立が起こり、経済格差が起こりました。
これに対処するためにマレー人を経済的に優遇するブミプトラ政策がとられて経済の発展が遅れたとされおり、国民も海外の会社とのM&Aをしようという考えは少なく、これまで実行されることが少なかったのです。
また、会社同士のM&Aではなく、マレーシアの企業に直接投資をする投資家や企業が多いのもM&Aが進まない理由と言われており、M&Aを行わなくても直接投資によって得た資金で事業活動ができていたために、M&Aの必要性が低かったのではと予想されます。
人件費や規制などM&Aが実施しにくい環境
マレーシアのM&Aが遅れている理由には、中間層の人口が多く、中国やタイに比べると人件費が割高であることや物流、サービス業の参入禁止、金融分野におけるマレーシア中央銀行の事前承認などさまざまな規制があったことも挙げられます。
また、出資比率の上限が業種によって設けられていることで外資からの参入が難しいなど、M&Aを実施しにくい環境にありました。さらに、労働者不足も懸念材料となり、M&Aを実施しても生産性が低いと判断されていた部分もM&Aが遅れた理由と言えるでしょう。
マレーシアでM&Aをするメリット
日本国内の企業がマレーシアの企業とM&Aを実施するメリットは、ルックイースト政策の恩恵を受けられることです。ルックイースト政策とは、1981年当時のマハティール首相が掲げた政策であり、日本を手本とした集団主義と勤労倫理を学ぼうとするものです。
このルックイースト政策により、個人だけの収益を考えるのではなく、日本の考え方でもある集団での収益を優先させることを考える国民も少なくありません。また、親日国家でもあることから日本企業とのM&Aに対して友好的に交渉が進む可能性があることもメリットだと言えます。
今では外資系企業の受入態勢が整っている
現在のマレーシアには外資にかかわる規制が少なく、外資系企業を受け入れやすい体制が整っていることから、今ではM&Aが実施しやすい環境になっていることもメリットです。また、マレーシアは働き手が多くいる国でもあります。
生産年齢人口は今後の増えていく見込みであり、若い年齢層を中心とした人口増により所得の上昇にも期待が持て、市場の拡大や消費者の増加などでこれからも経済発展していく国と考えると、M&Aを実施すればシナジー効果も期待できますし、販路の拡大、事業拡大なども視野に入ってくるでしょう。
さらに、GDP(国内総生産)はフィリピンのおよそ3倍で高位中所得国とされており、公共交通機関や水道、電気などの生活インフラも整っていることからビジネスをする環境も整っているといえます。言葉の問題に対しても、マレー語以外に英語や中国語が堪能な人材が多く、親日国家ということで日本語を話せる人も多いようです。
マレーシアでM&Aを成功させる方法
マレーシアでM&Aを成功させるためには、以下のことに留意しましょう。
- 目的の明確化
- ターゲットの明確化
- 法律や国民性を知る
- 専門家の協力を得る
①目的の明確化
これはマレーシアのM&Aに限ったことではありませんが、M&Aを行う目的を明確化しなくてはなりません。単に海外進出するという目的だけでは、マレーシアでなければならない理由にはなりませんし、M&Aを行うこと自体が目的となる可能性もあります。
また、M&Aの実施が本当に目的を達成するための最適な方法なのかについても考えましょう。場合によっては、現地で新たに事業所を設立した方が良いかもしれません。M&Aの目的を明確にすることは、同時にM&Aの必要性を考えることでもあります。
②ターゲットの明確化
マレーシアの企業とM&Aを実行する時は、ターゲットを明確にすることがポイントです。相手企業の業務内容や強みを持つ地域など、交渉を始める前にどのような会社なのかをしっかりと調査しておく必要があります。
また、マレーシアにはすでに日本の子会社となっている企業も存在するので、買収しようとしている企業の現状をよく把握しておくと良いでしょう。
③法律や国民性を知る
国が変われば法律も変わります。マレーシアに限らず、日本企業が海外企業とのM&Aを実施する場合は対象の国の法律や企業のあり方などに合わせなければM&Aが破綻してしまいます。また、マレーシアの国民性を知ることも大切です。
マレーシアの国民は、ルックイースト政策によって日本をお手本に改革しようとした経緯もあることから日本人に似た気質を持つ人も多いのですが、日本人ほど仕事に熱心ではない一面もあります。事前に知っておけばM&A後に対処も可能ですので、法律のみならず国民性についても把握しておきましょう。
④専門家の協力を得る
国全体の市場調査や消費者の需要などは、M&Aを実施した後の売上高などに影響を与えますので、経済的な発展が見込めるのかということも重要であり、そのためにマーケティングも必要であれば専門のマーケティング会社に依頼しても良いでしょう。
また、M&A自体が非常に専門性の高い経営戦略であるため、実施には専門家の協力を得ることが大切なポイントです。
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※関連記事
クロスボーダーM&Aを成功させるには
まとめ
マレーシアは国政として「ビジョン2020」を掲げて先進国入りを目指すなど経済発展を目指している国であり、日本の高度成長期のような状態でこれからはさらに経済の動きは活発になるでしょう。
現在では外資系企業の受入態勢が整っており、首都のクアラルンプールも高層マンションやビルが立ち並び、交通インフラも整っています。また、水道や電気なども止まることが少なく、ビジネス環境も整いつつまります。
日本とマレーシアは友好的な関係が築けており、親日家も多いことから日本企業はM&Aの交渉を進めやすいメリットがありますので、東南アジアへの進出を検討している企業はマレーシアにおけるM&Aを検討するのも良いでしょう。
ただし、海外M&Aには留意しなければならない点も多く存在しますので、実施の際は専門家の協力を得ることをおすすめします。
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