2022年6月7日更新業種別M&A

メガソーラーのM&Aの動向は?M&A事例や買い手・売り手の注意点を解説

最近はメガソーラーを買収するM&Aが活発化しており、異業種企業による太陽光発電業界への参入が目立ちます。多くの企業が、メガソーラーの利回りの良さに注目している状況です。一方、太陽光発電業界では倒産件数が増加しており、この点もM&A件数増加に拍車をかけています。

目次
  1. メガソーラーのM&A
  2. メガソーラーの基本情報
  3. メガソーラーのM&Aの最新動向
  4. メガソーラーのM&Aの相場・費用
  5. メガソーラーのM&Aで買収するときの注意点
  6. メガソーラーのM&Aで売却するときの注意点
  7. メガソーラーのM&Aの事例
  8. まとめ
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メガソーラーのM&A

環境問題が叫ばれる昨今において、メガソーラーは強い存在感を示す発電技術とされています。FIT制度が実施されて電力会社がエネルギーを固定価格で買い取るようになってからは、日本においてメガソーラーを対象とするM&Aが盛んに実施されています。

M&Aによる買収でメガソーラーを取得したことをきっかけに、太陽光発電業界に参入する企業も増加中です。

ただし太陽光発電業界の現状は深刻化しており、最近では倒産件数の増加も見られます。このような事情を十分に知っておかないと、メガソーラーを活用して利益を得ることは困難だといえます。

今回は、メガソーラーや太陽光発電業界の概要・M&Aの最新動向などを幅広く解説します。

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メガソーラーの基本情報

メガソーラーを対象とするM&Aを検討する場合には、事前にメガソーラーの基本情報を把握しておくと良いです。ここからは、メガソーラーの概要や関連する太陽光発電業界の現状などについてわかりやすく解説します。

メガソーラーの概要

この記事で取り上げるメガソーラーとは、「大規模な太陽光発電」を意味します。詳しく説明すると、メガソーラーは、1メガワット(1,000キロワット)以上の出力を持つ発電施設のことです。

これほどの出力を持つ大規模な施設を建設するには莫大な建設費用のほかに広大な用地も求められますが、メガソーラーは再生可能エネルギーの供給源として強く期待されています。2011年の東日本大震災以降は、代替のエネルギーとしてさらに注目が集まるようになりました。

それに加えてFIT制度が実施されるようになったことでメガソーラーのニーズは急激に拡大し、現在では日本全国に6,000件以上のメガソーラーが存在しています。

メガソーラーによって生まれた電力の売電価格は、2012年時点では1キロワットにつき42円と設定されていました(2019年時点では1キロワット14円、経済産業省 資源エネルギー庁による)。

この売電価格は地熱や風力など他の再生可能エネルギーよりもはるかに高く設定されていたことから、さまざまな業種の企業がメガソーラーの買収に乗り出したのです。FIT制度によって買取期間が20年に設定されたこともあり、長期的な運用がしやすい点も魅力的だと捉えられていました。

太陽光発電業界の現状

もともとメガソーラーの導入が普及したことで、太陽光発電業界は拡大しました。メガソーラー発電による利益に期待した企業が続々と太陽光発電業界に参入したことで、業界の拡大はますます加速しています。

メガソーラーへの投資による利回りは年間で15%以上となる場合が多く、中には20%以上の利回りを誇るメガソーラーも存在します。この点において、不動産投資よりも利回りが良いと判断されるケースが多いです。メガソーラーへの投資には、災害などが起きない限り安定的な利回りが期待できるという利点もあります。

上記の特徴があることから現在の太陽光発電業界には、電力会社を中心にIT会社・商社・電機メーカーなどさまざまな企業が参入しているのです。

売電価格の低下・事業者負担の増加による影響

メガソーラーによる獲得利益を大きく左右する売電価格は、年々低下する傾向にあります。2012年には1キロワット42円だった売電価格が2019年時点では1キロワット14円にまで低下しており、経済産業省の発表によるといずれは1キロワット11円にまで低下する見込みです。

それに加えてFIT制度の改正により、事業者にはメガソーラーのメンテナンスを含めた事業計画を提出する義務が課せられました。改正された制度では、継続的に事業許可を受ける事業者に対してメガソーラーの設備工事を実施する義務も課すようになっており、従来よりも事業者の負担が大幅に増えたといえます。

ただしその一方で、メガソーラーへの参入に必要な費用も変動しています。従来よりもメガソーラー建設に必要な費用が低下したことを受けて、太陽光発電業界への参入を図る企業は依然として多いです。以上のことから、太陽光発電業界の拡大そのものは続いている現状にあります。

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メガソーラーのM&Aの最新動向

メガソーラーの基本情報を踏まえて、ここからはメガソーラーを対象とするM&Aの最新動向を、以下の項目に分けて解説します。

  1. 異業種企業によるメガソーラー買収のM&Aが積極的に実施されている
  2. 倒産を避けるためにM&Aでメガソーラーを売却する事例も多い
それぞれの項目を順番に見ていきます。

①異業種企業によるメガソーラー買収のM&Aが積極的に実施されている

高い利回りが期待できるメガソーラーが注目され、さまざまな異業種企業が太陽光発電業界に参入するようになったことで、M&Aシーンにおいても異業種の企業がメガソーラーを買収する事例が増加しています。

建設費用の低下によってゼロの状態からメガソーラーを建設する企業も少なくありませんが、M&Aでメガソーラーを買収すれば事業者ごと引き継げるため、メガソーラーをスムーズに稼働させられるメリットがあります。

なおインフラファンド市場の創設以降は、インフラファンドが売電事業への参入を図るためにM&Aでメガソーラーを買収するといったケースも増加しています。

以上のことから、メガソーラーを対象とするM&Aは非常に盛んですが、優良案件はすでにM&Aによって売却済みとなっているケースも多く、利回りの良いメガソーラーを見つけることは容易ではありません。

②倒産を避けるためにM&Aでメガソーラーを売却する事例も多い

メガソーラーを対象とするM&Aは、売り手側にとっても現状を打破する上で有効的な手段となります。FIT制度の改正により事業者の負担が増えたことで、既存の事業者が資金面などで限界に行き当たるケースは珍しくありません。

上記の現状に「特別償却制度」廃止による税負担の増加も相まって、事業者にかかる負担は深刻化しています。もともとメガソーラーは、売電事業・施工事業・O&M事業など複数分野の事業者が共同で管理するケースが一般的であるため、いずれかの事業者が倒産すれば連鎖的な倒産を招くリスクが大きいです。

実際に太陽光発電事業を手掛ける会社の負債総額は上昇しており、倒産件数も増加が続いていました。帝国データバンクの「太陽光関連業者の倒産動向調査」によると、2018年時点の倒産件数が過去最高数を記録するなど、太陽光発電業界は深刻的な状況になりつつあります。

こうした状況を受けて、売り手側においても、大手の資本を利用して経営基盤の強化を図る目的のもとM&Aが積極的に実施されています。M&Aを利用して倒産を回避できるようになった影響もあり、2019年時点の倒産件数は前年比から22.1%減少の74件と報告されています。

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メガソーラーのM&Aの相場・費用

メガソーラーは小規模であれば数百万円程度で取得できるため、たとえ個人であってもM&Aが実施できるようなケースも大いに見受けられます。とはいえ、当然メガソーラーの規模によっては数千万円〜数億円程度の費用が発生することもあります。

規模のほかには利益率も、メガソーラーの譲渡価格に影響を及ぼす要素です。もともと利回りを目的としてメガソーラーを買収する企業が多いため、メガソーラーに期待できる利益率については大きく注目されます。

メガソーラーの利益率に関しては、プレミアム価格と呼ばれる価格帯で売電取引できるメガソーラーに注目が集まりやすいです。プレミアム価格で売電取引を実施できるケースでは、1キロワット32円〜36円程度の利益率が多く見られますが、中には1キロワット40円を超えるメガソーラーも存在します。

利益率に長けたメガソーラーを対象とするM&Aでは、相場以上の価格で譲渡されるケースが多いです。

規模・利益率以外にM&Aの相場に影響を与える要素

メガソーラーのM&Aの相場を把握するためには、規模・利益率以外の要素も考慮しておく必要があります。はじめに、土地の価格についてです。メガソーラーのみを買い取るケースよりも設置されている土地もセットで買い取るケースの方が、M&Aで発生する費用は高額になりやすいです。

仮に土地を含めてメガソーラーを買収するときには、土地の権利関係の確認などを実施する必要もあるため、通常以上に手間がかかることを認識しておくと良いです。ちなみに、現在はグリーン投資減税の利用が不可能となっている点にも留意しておく必要があります。

かつてメガソーラーをM&Aで買収するときには、グリーン投資減税を利用して100%即時償却済みのメガソーラーを買収することで、税金の還元を受けられました。現在はグリーン投資減税が廃止されており、税金の還元を受けられないために費用が比較的多く発生する点を考慮する必要があります。

さらに注意しておきたいのは、M&A後に欠陥工事が発覚する可能性です。メガソーラーの中には欠陥工事で建設された施設も存在しており、このようなメガソーラーには安定的な運転は望めません。基本的にメガソーラーのM&Aでは欠陥工事が発覚したときの責任を明示するため、損害賠償責任などを契約に盛り込みます。

契約段階で上記のプロセスを怠ると、買い手が欠陥工事の修繕費を負担することになるため注意が必要です。

費用を抑えてメガソーラーのM&Aを済ませるポイント

これまで見てきたように、メガソーラーのM&Aでは多くの費用が発生します。さまざまな要因が重なることで想定外の費用が発生してしまうと、M&Aやその後の事業運営に支障が出るケースも珍しくないことから、自社に最適なM&A案件を見つける必要があります。

豊富なネットワークを持つM&A仲介業者に依頼すれば、自社に最適なM&A案件をスピーディーに見つけられます。

とはいえ、仲介業者のサポートを受けると、相談料・着手金・中間金・成功報酬などの手数料が発生します。譲渡価格が高くなるほど費用も高額になりますが、一般的に譲渡価格の3〜5%程度が求められます。

以上のことから、メガソーラーを対象とするM&Aでは予算の範囲内で依頼できる仲介業者を選ぶのが良いでしょう。

M&A総合研究所には、専門的な知識や経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、培ったノウハウを活かしM&Aをサポートいたします。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)相談料は無料ですので、メガソーラーのM&Aを検討する場合にはお気軽にご相談ください。

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M&A・事業承継ならM&A総合研究所

メガソーラーのM&Aで買収するときの注意点

メガソーラーを買収するときには、徹底したデューデリジェンスの実施が必要となります。M&Aにおけるデューデリジェンスとは、買い手が売り手となる会社・事業が持つリスクを洗い出す作業です。

M&Aでは、基本的に法務・税務・財務・人事などの分野でデューデリジェンスを実施するケースが多いです。その一方でメガソーラーを対象とするM&Aでは、特に技術・環境の分野が重要視されます。

技術デューデリジェンスを実施すれば、主に欠陥工事の対策として機能します。メガソーラーを安定的に運転していく上で、適切な技術が使用されているかチェックする作業は必要不可欠なプロセスです。

環境分野のデューデリジェンスについても、技術分野と同様に重要です。もともとメガソーラーは、太陽電池が発する反射光が原因となって地元住民から苦情が寄せられることが多く、環境トラブルの温床となりやすい性質を持っています。

もちろんM&Aによってメガソーラーを買収して運転を実施するのであれば、地元住民の苦情はすべて買い手企業に降りかかることになります。ここでもしも苦情の対応方法を間違えるようなことがあれば、訴訟などのトラブルに発展してしまいかねません。

このような事態を未然に防ぐためにも、環境デューデリジェンスの実施も徹底すると良いです。

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メガソーラーのM&Aで売却するときの注意点

売り手側が意識しておくべき注意点は、売却するタイミングです。メガソーラーの売電価格は年々減少傾向にあり、前述の発表によればいずれは1キロワットあたり11円にまで低下する見込みです。

今後もFIT制度の改正をはじめとして、太陽光発電業界における経営環境は変化を続けます。メガソーラーを対象とするM&Aが活発なうちにM&Aを実施しないと、条件の良い買い手が見つからなくなるおそれがあります。

太陽光以外の再生可能エネルギーも徐々に発展しつつあり、今後その分野に注目が集まることになれば、メガソーラーを取り巻くニーズが急激に収まってしまうこともあり得ます。こうした点を踏まえて、売り手側ではメガソーラーを売却するタイミングについて注意が必要です。

最近はインフラファンド市場の創設もあり、依然としてメガソーラーを対象とするM&Aは盛んに実施されています。仲介業者をはじめとする専門家からアドバイスを受けながら、状況に応じてインフラファンド事業を手掛ける会社と協力するなどして、M&A方針を柔軟に検討すると良いでしょう。

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メガソーラーのM&Aの事例

最後に、メガソーラーを対象としたM&Aの中から代表的な事例を時系列順に紹介します。

  1. ジー・スリーHD×志布志メガソーラー発電
  2. SBエナジー+MULエナジーインベストメント×とまこまい勇払メガソーラー
  3. ソーラーフロンティアアメリカズ×リカレント社
  4. レノバ×四日市ソーラー匿名組合事業
それぞれの事例を順番に見ていきます。

①ジー・スリーHD×志布志メガソーラー発電

2016年、ジー・スリーHDは、志布志メガソーラー発電の未着工太陽光発電所である「出水大久保メガソーラー発電所」を買収しました。買収はジー・スリーHDの子会社であるジー・スリーエコエナジー合同会社によって実施されており、2016年12月上旬が譲受け契約日に設定されました。

本件M&Aによって、ジー・スリーHDでは、事業基盤の強化が図られています。子会社における太陽光発電関連事業の推進も図られており、環境関連事業による社会貢献が目指されています。

②SBエナジー+MULエナジーインベストメント×とまこまい勇払メガソーラー

2017年、SBエナジーとMULエナジーインベストメントは、とまこまい勇払メガソーラーを買収しました。買収スキームは株式譲渡と定められ、取得価格は非公開とされています。

本件M&AによってSBエナジーとMULエナジーインベストメントの両会社では、再生可能エネルギーの普及と事業の拡大が図られています。実際に2018年末には、SBエナジーが苫小牧市において3.1メガワットのメガソーラーの運転を開始しており、太陽光発電業界における事業の拡大を実現しています。

こうした施策を実施する企業は多く、丸紅・シャープ・大阪ガス・三菱商事などさまざまな業界の大手企業がメガソーラーを買収しています。国内だけでなく、国外のメガソーラーを買収するM&A事例も今後増えていく見込みです。

③ソーラーフロンティアアメリカズ×リカレント社

2018年、ソーラーフロンティアアメリカズは、リカレント社のメガソーラー建設計画を買収しました。これはメガソーラーそのものではなく、今後建設されるメガソーラーを買収した珍しい事例です。買収側のソーラーフロンティアアメリカズは、昭和シェル石油の連結子会社のアメリカ法人です。

メガソーラー自体ではなく建設計画を買収したことで、稼働後の利益獲得が期待されています。建設予定のメガソーラーは2020年を目途に稼働が開始される予定であり、210メガワットの電力を生み出して約3万7000世帯の電力を賄える大規模な施設となる見込みです。

④レノバ×四日市ソーラー匿名組合事業

2019年、レノバは、四日市ソーラー匿名組合事業を買収しました。本件M&Aでは株式譲渡のスキームが活用され、四日市ソーラー匿名組合事業の株式62%を芙蓉総合リースより取得しています。これにより株式を100%取得したことで、四日市ソーラー匿名組合事業を子会社化させています。

買収側のレノバは、再生可能エネルギー発電施設の開発・運営だけでなく、売電事業も手掛ける会社です。本件M&A以前から、四日市ソーラー発電所の建設にも着手していました。

なお、四日市ソーラー発電所は出力およそ21.6メガワットを誇るメガソーラーであり、2019年3月1日に営業運転を開始しています。本件M&Aによって、レノバでは収益規模の拡大が図られており、発電事業者として今後も地域発展に貢献していく姿勢が取られています。

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まとめ

最近はメガソーラーを対象とするM&Aが活発化しており、異業種企業が太陽光発電業界に続々と参入しています。利回りの良いメガソーラーに注目する企業は多いですが、M&A増加の背景には太陽光発電事業を取り巻く環境の変化も関係しています。実際に、業界全体において倒産件数が増えている現状も見られます。

こうした事情を鑑みると、今後もメガソーラーを対象とするM&Aは盛んに実施される見込みです。ただし優良案件から優先的に成約していくため、利回りの良いメガソーラーを見つけることは容易ではありません。買い手・売り手問わず、自社に最適なM&A案件を見つけるためにも、仲介業者の活用をおすすめします。

要点をまとめると、以下のとおりです。

・メガソーラーとは
→大規模な太陽光発電であり、1メガワット(1,000キロワット)以上の出力を持つ発電施設のこと

・太陽光発電業界の現状
→拡大傾向が続いており、さまざまな異業種の企業が参入を果たしている

・メガソーラーのM&Aの最新動向
→異業種企業によるメガソーラー買収のM&Aが積極的に実施されている、倒産を避けるためにM&Aでメガソーラーを売却する事例も多い

・メガソーラーのM&Aの相場・費用
→小規模であれば数百万円程度、規模が大きくなれば数千万円〜数億円程度にも及ぶ、土地もセットで買い取るケースの方がM&Aで発生する費用は高額になりやすい

・メガソーラーのM&Aで買収するときの注意点
→技術・環境分野を中心にデューデリジェンスの実施を徹底する

・メガソーラーのM&Aで売却するときの注意点
→M&Aが活発化しているタイミングでM&Aを実施する

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