2024年4月24日更新事業承継

中小企業の事業承継とは?事業承継税制や課題、事業承継の方法を解説

中小企業の事業承継問題は、後継者不足や高齢化によって深刻化しています。また事業承継のタイミングを逃して、廃業する中小企業も増えています。失敗するリスクを減らすため、そして事業のさらなる発展を実現するためにも早めに事業承継の対策を行いましょう。

目次
  1. 中小企業の事業承継
  2. 事業承継の意味
  3. 中小企業の事業承継の種類とメリット・デメリット
  4. 中小企業の事業承継を取り巻く3つの現状
  5. 中小企業における事業承継の問題と課題
  6. 中小企業が行うべき事業承継の準備
  7. 中小企業が行うべき事業承継の対策3選
  8. 中小企業における事業承継税制と事業承継支援
  9. 中小企業における事業承継ガイドラインと事業承継マニュアル
  10. まとめ
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中小企業の事業承継

中小企業は、雇用の担い手や多様な技術、技能の担い手として、日本経済や社会の中で重要な役割を果たしています。今後、その役割を果たすためにも、円滑な事業承継により事業価値を次世代に引き継ぐ必要があります。

しかし、中小企業経営者の高齢化が進んでいるうえ、後継者不足により事業承継を実行できない中小企業も多いのが現状です。今回は、そのような中小企業の事業承継の現状や課題、事業承継税制について詳しく解説していきます。

事業承継の意味

事業承継とは、経営者の引退や死亡に際して事業を後継者に引き継ぐことをいいます。単に事業を引き継ぐといっても株式、理念、従業員、資産、設備など、事業承継では会社を構成するあらゆるものを引き継ぐため、複雑で単純な作業ではありません。

加えて、後継者の選定や育成、会社に関するあらゆる要素の承継、経営者が亡くなった場合は相続の手続きなど、事業承継で行うための作業は多くあります。そのため、事業承継は長期にわたって行われることが多く、中には10年近い歳月をかけて事業承継を行うというケースもあります。

事業承継を無事に完了させるには経営者が長期的な目線に立ち、計画的に行わなければなりません。また、税務・財務・法務などさまざまな知識が必要となる場面もあり、専門家のフォローも必要となるため、事業承継を行う際には入念な準備をしてから臨むようにしましょう。

※関連記事
事業承継とは?方法や事業承継税制・補助金、M&Aでの活用について解説

中小企業の事業承継の種類とメリット・デメリット

事業承継は誰に引き継ぐかにより、「親族内承継」「親族外承継」「M&A」の3種類の方法に大別できます。この項では、各事業承継方法の特徴や、メリット・デメリットについて解説します。

①親族内承継

親族内承継とは、経営者自身の息子や兄弟姉妹などに事業承継する方法です。中小企業に見られる「家業を継ぐ」行為が当てはまる方法で、約20年前まではこの方法で事業承継する中小企業が大半でした。

メリット

最も大きなメリットは、後継者教育に多くの時間を費やせる点です。後継者が経営者としての能力を習得するまでには約10年間を要しますが、ほかの事業承継方法を用いる場合は時間を確保するのが中々困難です。

親族内承継では後継者が小さい頃から教育を実施できるうえ、必要に応じて他社で経験を積むのも可能です。加えて後継者となる人物が、従業員や取引先などに受け入れられやすい点もメリットです。

なぜなら、現代表の子供が事業承継する方が、全くの他人が来るよりも信頼できるからです。また、子供に事業承継するケースでは、その中小企業に対する権限も残せます。

デメリット

親族内承継は子供などを後継者にする方法ですが、その後継者に経営者としての質が備わっていない場合があります。仕事面に関する技能やノウハウは早い段階から習得可能ですが、経営者には本質的な能力やカリスマ性も必要です。

この質が備わっていないために、事業承継後に経営が悪化する中小企業も少なくありません。また中小企業を事業承継した後継者側にも、経営方針の変更ができない可能性があるデメリットが発生します。

なぜならば、長年培ってきた組織文化や戦略の変化を、中小企業で働いている従業員が嫌がる可能性があるからです。つまり、親が経営する中小企業を事業承継しても、自分の考えは反映できない可能性があります。

②親族外承継

親族外承継とは、親族ではない従業員や役員に事業承継する方法です。親族内で事業承継できない場合に、その中小企業に長年在籍している優秀な従業員や、役員、工場長などが事業承継する方法です。

メリット

親族内承継と同様に、周囲の関係者から後継者が歓迎されやすいことは大きなメリットです。加えて、業務を熟知している従業員などが後継者になるため、比較的スムーズに事業承継を実施できます。

さらに、従業員から各中小企業のトップになるため、事業承継後のモチベーションも向上します。また、外部から優秀な経営者を招く場合も業績が大幅に良くなる可能性があり、閉鎖的な観念にとらわれがちな中小企業にとって、新たな視野を取り入れられることもメリットです。

デメリット

親族外承継の、最も大きなデメリットは資金力不足です。中小企業の従業員にとって全株式を買い取るのは金銭的に困難なため、その理由から従業員や役員への事業承継は実現しにくいです。

また、ほとんどの中小企業では社内に債務などが存在します。事業承継することで後継者はすべて引き継ぐことになるため、債務がある中小企業の従業員は後継者になりたがらない恐れがあります。

③M&A

M&Aは、親族や関係者以外の第三者に対して事業承継する方法です。従来、M&Aによる会社売却にはマイナスなイメージが持たれていましたが、後継者不足に悩む中小企業の増加に伴い、M&Aを活用した事業承継の件数も増加しています。

加えて、支援制度や事業承継税制などが充実したことで、中小企業にとってM&Aは活用しやすくなりました。M&Aを実施する際には、中小企業の事業承継に特化した仲介会社を選ぶのがおすすめです。

メリット

最も大きなメリットは、後継者を外部から広く探せる点です。一般的に後継者候補を探せる範囲は親族か従業員、取引先までですが、M&Aを活用することで全国各地から後継者候補となる企業(個人)を探せます。

M&Aによって事業承継すると売却による利益を獲得できるため、中小企業経営者はリタイア後に悠々自適な生活を送れたり、新規事業の資金にできます。さらに、廃業する代わりにM&Aによって事業承継すれば、従業員の雇用も守れます。

デメリット

M&Aを用いて事業承継する場合、仲介手数料や税金などの多額な費用が中小企業にとって大きなデメリットとなります。最終的に売却資金が入るものの、M&Aの初期段階で必要となる費用もあります。

しかし、近年はM&Aや事業承継のための資金調達手段が充実しているため、支援制度を探してみることをおすすめします。またM&Aを開始しても成功するとは限らないため、M&Aを実施する際は専門家のアドバイスを取り入れて慎重に進める必要があります。

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事業承継とM&Aの違いとは?メリット・デメリット、件数を解説

中小企業の事業承継を取り巻く3つの現状

現在日本では中小企業経営者の高齢化が進んでいて、今後ますます深刻化していくことが問題視されています。多くの中小企業が事業承継のタイミングを迎えているにもかかわらず、後継者未定の企業も多いのが現状です。

この項では、そのような中小企業の事業承継を取り巻く現状について紹介していきます。事業承継について具体的な検討をする前に、中小企業の事業承継に関する現状の把握も大切です。

①日本の経済を支える中小企業

中小企業は日本の企業数の約99%を占めているうえ、全企業の従業員数の約70%が中小企業に所属しています。日本経済にとって中小企業は欠かせない存在であり、地域経済や社会を支える存在として、また雇用の受け皿として極めて重要な役割を担っています。

参考URL:中小企業庁「最近の中小企業の景況について」

中小企業の中には、時代の先駆けとして新たな技術を生み出し、アイディアや技術・サービスなどを武器として、大企業と渡り合っている企業も多いです。加えて、新市場の開拓に成功する中小企業も存在します。

また小規模事業者は、地域での商品・サービスの提供主体として重要な役割を担っています。その点から見ても、中小企業は日本経済を活性化させているといっても過言ではありません。

②経営者の高齢化が進む中小企業

中小企業庁のデータによると、今後5年間で30万以上の経営者が70歳になると予想されています。一般的に経営者の高齢化が進むと、企業の業績が停滞する可能性が高くなる傾向にあります。

参考URL:中小企業庁「事業承継5ヶ年計画」

業績停滞の問題に加え、中小企業の事業承継問題も今後さらに深刻化するといわれています。経営者が高齢になると必然的に事業承継を検討することになりますが、70代の中小企業の経営者でも事業承継に向けた準備を実施している経営者は半数ほどにとどまっているのが現状です。

③中小企業の事業承継における近年の傾向

近年は息子や娘など親族が事業を継がないケースが増加しているため、親族外承継やM&Aによって事業承継する中小企業が増加しています。また、親族の間で事業承継できない場合は廃業の選択肢があります。

しかし、従業員が職を失ったり、培ってきたノウハウや技術が失われるなど廃業はデメリットが大きいです。よって近年は、廃業を選択するよりも、第三者に事業承継した方がメリットがあると考える中小企業が増えています。

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中小企業の後継者不足問題は深刻化している?解決策を紹介

中小企業における事業承継の問題と課題

日本の経済を担っている存在でもある中小企業ですが、中小企業庁のデータによるとその数は1999年から2015年までの15年間に約100万社も減少しています。そしてリーマンショック後も、緩やかにですが中小企業数は減少しています。

そして、前述したとおり中小企業の経営者は高齢化も進行していているうえ、経営者の交代率も約10年間の平均では3.5%に低下、2011年には2.46%まで下がっています。つまり現在、中小企業は事業承継に対して消極的な傾向にあります。

参考URL:中小企業庁「事業承継に関する現状と課題」

それでは、なぜ中小企業は事業承継を実行できないのでしょうか。この項では、中小企業における事業承継の問題と課題について解説していきます。

中小企業における事業承継の3つの問題

それでは、中小企業における事業承継における問題点を以下に挙げていきます。

  • 後継者不足
  • 税金がかかる
  • 時間が必要

後継者不足

日本政策金融公庫総合研究所が2016年に公表した調査によると、調査対象企業約4,000社のうち、60歳以上の経営者の約半数が「廃業を予定している」と回答しています。また、事業承継をせずに廃業を考える理由には以下のものがあります。

参考URL:日本政策金融公庫「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」

  • 初めから自分の代限りで辞めようと考えていた
  • 事業に将来性がないという
  • 子供に継ぐ意志がない
  • 子供がいない
  • 適当な後継者が見つからない

上記からもわかるように、後継者不足を理由に事業承継できない中小企業が増加しています。これまで自分の子供などの親族に事業承継するケースがほとんどでしたが、少子化や職業選択の多様化によって「会社は子供に引き継がせる」という価値観の変化も大きな原因です。

昨今は中小企業をめぐる経営環境の変化もあり、経営者になることで大きな責任を負う必要もあります。そのため、後継者に重荷を背負わせたくないと考える経営者も増えていることが、後継者不在に影響しています。

税金がかかる

実際に事業承継する際には、下記のような税金がかかります。2018年に改正された事業譲渡税制の特別措置を利用すると条件つきで納税が猶予されることがありますが、事業承継を実施する際には後継者のために税金対策も行う必要があります。

  • 贈与税:株式などを生前贈与された場合にかかる税金
  • 相続税:相続によりかかる税金
  • 所得税:株式売却によって得た利益にかかる税金

時間が必要

事業承継には後継者選びや教育、株式移転の準備など、数年単位の時間が必要になってきます。後継者を十分に育成できていない状態で事業承継をした場合、経営が傾いてしまうことも考えられます。

しかし前述したとおり、実際には事業承継へ向けた準備に着手できていない企業が多いことがわかっています。事業承継を見据えた後継者育成や、リスクを負わない事業承継を行うための時間確保も必要です。

中小企業における事業承継問題を解決するには

会社が黒字にもかかわらず、後継者不在によって会社が廃業してしまうというケースもある中小企業における事業承継ですが、後継者不足などさまざまな問題を抱えています。このような問題を解決するためには、できるだけ早くから準備を始めておくことが必要です。

後継者不足の問題を抱えている場合は、M&Aを行うことも有効的な事業承継の手段です。また事業承継を実施するにあたり、実際には何から始めていいのかわからないときは、専門家に相談することも事業承継への第一歩となります。

M&Aによる事業承継をご検討の際は、ぜひM&A総合研究所までご相談ください。経験豊富なアドバイザーが多数在籍するM&A総合研究所では、アドバイザーによる専任サポートを行っています。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。ぜひ事業承継を検討している際には、M&A総合研究所までお気軽にお問合せください。

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中小企業が行うべき事業承継の準備

事業承継をするにあたり、中小企業経営者の方に参考にして欲しいのが「事業承継ガイドライン」です。事業承継ガイドラインとは、中小企業が事業承継を円滑に実行する際に役立つ資料です。

事業承継ガイドラインの詳細は別の項で説明しますので、この項ではガイドラインに記載されている事業承継の手順を以下に紹介します。

①経営状況や課題の把握

事業承継を始めるうえで、まずは自社の現状や経営課題を把握する必要があります。ここで大事なのは、把握した情報を可視化することです。

可視化する対象は、以下の2点です。これらを可視化することにより、その後の事業承継を円滑に進められます。

  • 事業承継課題:後継者の有無、役員や株主が事業承継に賛成しているかどうか
  • 会社経営:貸借対照表に計上されている資産、自社の看板商品や強み、顧客とのネットワークや知的財産

②経営改善(磨き上げ)

次に、把握した課題の改善や自社の企業価値向上を実施します。なぜなら親族に引き継ぐにしても、M&Aで売却するにしても、魅力的な会社でないと誰も引き継ぎたいと思わないからです。

事業承継ガイドラインには、下記の3点が実施すべき項目として紹介されています。

  • 本業の競争力強化:強みを伸ばし弱みを改善する
  • 経営体制の総点検:社内の風通しやマニュアルの改善の実施
  • 経営強化に資する取り組み:自社の現状を改めて把握し、それを利害関係者に公表する

上記によって、企業価値を向上できます。加えて業績が悪化している場合は、法的整理や私的整理の実施によって、後継者の負担を軽減する必要もあります。

③事業承継計画の策定またはM&Aの実施

こちらの内容に関しては、「親族内・親族外承継」と「M&A」に分けて説明していきます。

親族内・親族外承継

親族や従業員に事業承継する場合には、次に事業承継計画を作成します。事業承継計画とは、会社の10年後を見据えたうえで、いつ・誰に・何を・どのように承継するのかを具体的に計画するものです。

事業承継計画では、以下の5点を記載します。

  • 自社の現状分析
  • 具体的な目標設定
  • 事業承継の時期を盛り込んだ方向性の検討
  • 円滑な事業承継に向けた課題整理
  • 今後の環境変化の予測と対応策や課題の検討

この計画は、取引先や金融機関からの協力を得やすくするために作成します。自社の魅力をアピールしつつ、今後の予測や対応策についてしっかり分析しながら作成することが大切です。

M&Aによる売却

第三者に事業承継する場合には、仲介会社を利用したうえでM&Aを実施します。仲介会社ごとに得意とするM&Aの種類や手数料体系が異なるため、「仲介会社の選定」と「売却条件の検討」が大切になってきます。

M&Aの費用や自社との相性を検討したうえで、仲介会社を選びましょう。また、事業承継する際には売却価格や従業員の待遇など明確にして、その条件を仲介会社に伝えたうえでM&Aを実施すると成功確率が高まります。

中小企業が行うべき事業承継の対策3選

事業承継をするにあたり、それぞれの方法ごとに中小企業が実施すべき対策は異なります。この項では、「親族内承継」「親族外承継」「M&A」ごとに対策を解説します。

①親族内承継

株式が分散しているとスムーズに事業承継できない恐れがあるため、親族内承継を実施する際は後継者に株式を集中させることが最も大事です。したがって、事業承継を検討し始めた段階で、分散した株式の買取を買い取る必要があります。

仮にその中小企業にとって好ましくない人物が株式を相続した場合には、株式の売り渡し請求を行って買い戻すことも可能です。また、中小企業が円滑に事業承継を実施するうえで、種類株式の活用も有効です。

例えば、議決権制限株式の発行によって、後継者に議決権を集中させられます。つまり、中小企業が子供などの親族に事業承継する場合、議決権(株式)のコントロールが重要です。

②親族外承継

従業員や役員はマイナスの要素があると事業承継を引き受けない可能性が高いため、親族外承継では個人保証や担保の処理が重要です。したがって、前もって可能な限り対策を講じる必要があります。

例えば債務の圧縮を図ったり、後継者の債務保証を軽減するように金融機関と交渉することも有効的な対策です。しかし、どうしても個人保証や担保が処理しきれない場合もあります。

その際には、その負担に見合った報酬を後継者に対して支払いましょう。つまり、中小企業が従業員や役員に対して事業承継する際は、引き継ぐリスクを軽減するのが重要です。

③M&A

中小企業がM&Aを用いて事業承継する際には、前述した磨き上げが非常に重要です。しかしそれ以外にも、準備段階では役員や取引先などの関係者に、M&Aを検討していることを話さないことが大切です。

M&Aを検討していると聞くと、関係者は不安や不信感などのマイナスイメージを持つ可能性があるからです。また前述の通り、仲介会社ごとに特色が異なるため仲介会社の選定も非常に重要です。

M&Aを成功させるためには、自社に合った仲介会社を選ぶ必要があります。そのため、経験豊富なアドバイザーが在籍していて、中小企業の事業承継に特化した仲介会社を選ぶことがおすすめです。

※関連記事
事業承継対策のポイント

中小企業における事業承継税制と事業承継支援

中小企業が事業承継できずに廃業するのは、日本の経済にとっても好ましくない事態です。そこで近年、中小企業の事業承継円滑化のために、さまざまな支援策が実施されています。

今回は事業承継税制について説明したあと、中小企業にとって役立つ事業承継の支援策をご紹介します。

①事業承継税制

前述の通り、事業承継する際にかかる相続税や贈与税の負担が大きいために、事業承継の実行を渋っている中小企業も少なくありません。そのようなときに役立つ事業承継税制が、どのような制度なのか説明していきます。

中小企業における事業承継税制とは?

事業承継税制とは、事業承継をサポートするために設定された税制です。事業承継は株式や資産などの相続を伴うものですが、相続や相続税対策のために贈与を行うと贈与税が課税されます。

そのとき事業承継税制を使えば、相続税や贈与税の免除を受けることができるようになります。さらに事業承継税制は、平成30年に改正されてから100%免除されることになり、事業承継の際にかかる相続税や贈与税を実質的にゼロにすることができます。

当然ながら、相続税や贈与税の免除を受けるには要件が設定されています。その要件については、以下で大まかに説明していきます。

事業承継税制を受けるためには?

適用を受けるためには、「会社」「先代」「後継者」に関する3つの一定要件を満たさなければいけません。正式な要件は複雑なので説明を省きますが、要件の一部を以下に挙げます。

  • 先代が同族関係者内で筆頭株主であった
  • 後継者が先代の親族である
  • 非上場会社である
  • 経営承継円滑化法上の中小企業に該当する

事業承継税制は改正されたことにより、さらに中小企業が活用しやすい制度となりました。しかし要件が複雑なため、事業承継税制を活用する際は専門家の助力を得ることをおすすめします。

②事業承継補助金

事業承継補助金とは、中小企業が事業承継する際にかかる費用を援助する制度です。支給される金額は、事業承継を行う目的や形式によって異なりますが、大体100万円から500万円の範囲で補助金を受けられます。

貰った補助金は、原材料費や在庫処分費、設備費などに活用できるため中小企業の経営における大きな助力となります。ただし、この制度を活用するためには、厳正な審査を通らなければいけません。

この補助金の対象は、経営革新や事業転換のために事業承継を実施する中小企業限定です。よって、この補助金を活用するためには、早い段階から事業承継の準備を進めている必要があります。

③経営承継法による民法特例

中小企業が事業承継を行う際、子供や配偶者に最低限残しておく相続遺産である、「遺留分」に関するトラブルが発生する恐れがあります。事業承継では当然ながら株式も相続しますが、遺留分があるせいで経営を続行するために必要な株式を相続できない可能性があります。

そこで経営承継法では、「除外合意」と「固定合意」という中小企業の事業承継に限定して民法特例を定めています。それでは、それぞれの特徴を見ていきましょう。

  • 除外合意:株式を遺留分対象の財産から除外できる特例
  • 固定合意:株式価額を相続人全員の合意時の評価額で固定し、遺留分の対象財産とする特例

除外合意では、相続による株式の分散を防げるメリットがあります。一方で、固定合意は相続開始時までに価値が上昇しても遺留分の額は増大しないため、後継者は企業価値の向上を気にせずに経営に集中できるというメリットがあります。

ただしこの特例の適用は、3年以上事業を継続している中小企業に限られます。しかし、これらの特例を活用することで、中小企業の事業承継を円滑に実行できます。

④後継者人材バンク

事業承継したくても後継者不足を理由にできない中小企業を支援する制度が、後継者人材バンクです。後継者人材バンクとは、後継者不足に悩む中小企業に対して、後継者候補を紹介してくれる制度です。

この制度は、全国各地に存在する事業引き継ぎ支援センターで活用可能です。起業家志望や起業経験のある人材を紹介されるため、熱意のある人に事業承継できるというメリットがあります。

加えて、国の機関が運営している制度のため安心して利用できる点もメリットです。平成23年に開始したこの制度は知名度自体はそこまで高くありませんが、この制度を活用して事業承継に成功した中小企業は増加しています。

マッチングは運のため、適任となる後継者が見つからない可能性もあります。しかしその場合も、M&Aをすすめられるケースや、M&Aの一連の流れをサポートしてくれます。

※関連記事
後継者人材バンクについて解説します

中小企業における事業承継ガイドラインと事業承継マニュアル

それでは最後に、前述した事業承継ガイドラインと事業承継マニュアルを紹介していきます。事業承継の際に役立つ内容が書かれているため、ぜひ事業承継を検討されている方は一読することをおすすめします。

①事業承継ガイドライン

事業承継ガイドラインは中小企業庁が策定しているものであり、事業承継マニュアルのように事業承継について記載されているものです。こちらは事業承継の進め方や類型ごとの対応策、事業承継の手法などが記載されており、より実践的な内容になっています。

もちろん無料で公開されているので、自由に使うことができます。事業承継マニュアルと合わせて熟読しておけば、事業承継の備えは万全になるでしょう。

参考URL:中小企業庁「事業承継ガイドライン」

②事業承継マニュアル

事業承継マニュアルとは中小機構が提供しているガイドブックで、事業承継がよくわからないという人でもすぐに理解できる内容になっています。事業承継を行ううえで知っておきたい知識や、手法などが実際に合った事例とともに記載されています。

事業承継を考えるようになった際にチェックしておけば、事業承継の準備を進めやすくなるでしょう。こちらの事業承継マニュアルも無料で公開されているため、インターネット上で閲覧することもできれば、印刷やダウンロードも可能です。

参考URL:中小機構「事業承継支援マニュアル」

まとめ

中小企業にとって事業承継は大きな課題となっていますが、円滑に進めるためには早い段階からの準備が必要です。従来のように、自分の子供に会社を引き継いでもらえるとは限らない現状です。

子供に引き継げない場合には、廃業するのではなくM&Aの活用も検討しましょう。それでは今回の記事をまとめると、以下のようになります。

・事業承継とは
→経営者の引退や死亡に際して事業を後継者に引き継ぐこと

・中小企業の事業承継の種類
→親族内承継、親族外承継、M&A

・中小企業の事業承継を取り巻く現状
→経営者の高齢化、M&Aが増加傾向

・中小企業における事業承継の問題
→後継者不足、税金がかかる、時間が必要

・中小企業が行うべき事業承継の準備と対策
→経営状況や課題の把握、経営改善、事業承継計画の策定またはM&Aの実施

・事業承継税制とは
→事業承継をサポートするために設定された税制

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