減損処理とは?メリット・デメリットや計算方法をわかりやすく解説
2020年1月30日更新会社・事業を売る
事業譲渡における挨拶状
事業譲渡後には、事業運営の会社が変わる挨拶状を関係者に送付します。事業譲渡の挨拶状について、テンプレート(雛形)を示しつつ、送付の適切な時期、注意点などについて解説します。
事業譲渡について
まずはじめに事業譲渡の概要とメリット・デメリットをご説明します。
事業譲渡とは
事業譲渡とは、会社の中から一部事業に関係する資産を切り分け、第三者に売却するM&A手法です。一見すると、会社の財産を売却するのと同様に感じられますが、事業譲渡と単なる資産の売却は異なります。
事業譲渡は、「一定の営利目的のために組織化された事業単位」を売却する行為であって、売り手側は競業避止義務を負うのが一般的です。つまり引き継いだ資産のノウハウなどを活用し、引き継いだ事業と同一の事業を実施することはできません。この点は、単なる資産の売却とは異なります。
事業譲渡と株式譲渡と会社分割
事業譲渡を実行するためには、株式譲渡よりも面倒な手続きを経る必要があります。買い手側は、雇用契約や債権・債務に係る契約を、一つずつ再度締結する必要があります。事業の全部譲渡もしくは重要な一部譲渡に該当する場合には、株主総会での特別決議も必須となります。
契約を包括的に引き継ぎたいのであれば、会社分割と呼ばれる手法を利用することがオススメです。組織再編手法において、会社分割は事業の売買にも活用可能です。会社分割を利用することで、雇用契約等を包括的に引き継ぐことができます。会社分割では、事業譲渡とは違い債権者保護手続きが必須です。
手続きの関係上、M&Aの実行までに1ヶ月は最低必要となります。事業譲渡と会社分割は、一長一短の手法です。様々な面を総合的に考えた上で、利用する手法を決定することが重要です。もしどちらの手法を選ぶか判断に迷った際にはM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所では、M&Aに豊富な知識と経験を持つプロがM&Aをフルサポートいたします。相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
競業避止義務
事業譲渡を実施すると、売り手企業は譲渡日から20年間の競業避止義務を負います。競業避止義務とは、同一市町村とその隣接市町村にて、売却した事業と同一の事業を営まない義務です。他のM&A手法とは違い、事業譲渡のみ法律で明確に義務づけられています。
ではどうして、事業譲渡では競業避止義務が必須となるのでしょうか?事業譲渡後、売り手企業が再度同一事業を行なった場合、ノウハウや販路を保有している売り手企業は、買い手企業にとって強力な競合相手になり、買い手企業が十分な利益を得られなくなります。
買い手企業の利益を保護するために、事業譲渡では競業避止義務が設定されるのが一般的です。当事会社同士で別段の定めをすれば、事業譲渡の競業避止義務期間を変更できます。事業譲渡以外の手法に関しては、競業避止義務の設定は任意です。
M&Aの現場では、トラブルを避けるために競業避止義務を設定するケースが一般的です。
事業譲渡のメリットとデメリット
ここでは、事業譲渡に関するメリット・デメリットを、買い手側の視点から紹介します。
①メリット
事業譲渡では買収する資産や契約を、当事者間の話し合いにより決定できます。つまり買い手側は、好きな資産のみ買収可能なため、無駄なコストをかけずにM&Aを実行できます。
株式譲渡では、不要な資産や偶発債務等も自動的に引き継いでしまいますが、事業譲渡においては、その心配は不要です。ただし、すべての債務を引き継がずにすむというわけではなく、営業上の債務については引き継ぐのが通例です。
②デメリット
原則事業譲渡は、一部の事業のみ買収する手法です。つまり会社ごと買収したい場合には、事業譲渡は活用できません。会社ごと買収したいのであれば、株式譲渡が最も適しています。
事業譲渡では、雇用契約を再度締結します。優秀な従業員を100%引き継ぐことができる保証はありません。優秀な人材を引き継ぐことができなければ、事業譲渡のメリットを享受できません。
事業譲渡を確実に成功させたいのであれば、相手企業の従業員ともしっかりとコミュニケーションを取りましょう。また、事業譲渡は売り手の条件が買い手の条件とマッチしているかどうかも重要なポイントです。
条件の合う売り手を見つける際にはM&A総合研究所のM&Aプラットフォームを活用してください。M&A総合研究所のM&Aプラットフォームは独自のAIを用い、買収ニーズを登録するだけで条件の合う売り手をマッチングします。
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事業譲渡の挨拶状とは
いよいよ本題の「事業譲渡の挨拶状」です。事業譲渡の挨拶状とは、事業譲渡後に事業運営の会社が変わる旨を関係者に告知する案内文のことを指します。事業譲渡を実行すると、その事業を運営する会社が変更されます。買い手企業は、事業に関係する取引先に対して、今後も贔屓にしてもらうために挨拶状を出します。
関係者の混乱を防ぐためにも、売り手企業側も挨拶状を取引先に送付することが一般的です。事業譲渡の挨拶状は義務ではありませんが、マナーとして送付する方が無難です。
この項では、挨拶状の作成方法(テンプレート/雛形)、送付のタイミングや押さえるべきポイント・注意点をお伝えします。経営者や個人事業主の方はぜひご参考にしてください。
挨拶状の適切な送付時期
事業譲渡の契約締結完了後、1週間以内に挨拶状の書面送付を行うのが一般的です。書面送付が遅れる可能性がある場合には、先にメールを出しておきましょう。取引先や顧客の不要な不安・混乱を招くのを防ぐためにも、時期を逸さないようにすることが大切です。
自社で印刷するか印刷所に発注するかによっても送付可能なタイミングが変わってきます。まずは送り先と印刷部数の確認をして自社印刷か外部発注かを決めてから、文面の作成にとりかかります。
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事業譲渡の挨拶状テンプレート
事業譲渡の挨拶状には、必ず記載すべきことが定められているわけではありません。記載事項に義務がないため、挨拶状の内容に悩む方が多いようです。事業譲渡後の取引先や顧客の無用な混乱を防ぐためには、以下内容を最低限押さえるとよいでしょう。
- 挨拶文
- 事業譲渡日
- 事業の引き継ぎ先
- 送り主の所在
- 譲渡後の注文・問い合わせ先
以下は、売り手側が出すテンプレートの例です。
事業譲渡のお知らせ
拝啓 貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。 平素は格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。
さて、この度当社株式会社佐藤商事の◯◯事業は、令和◯◯年◯◯月◯◯日(以降事業譲渡日という)付けで、タナカ株式会社に譲渡することと相成りました。 事業譲渡日をもちまして弊社◯◯事業は廃業致します。
永きにわたり、弊社◯◯事業へご芳情を賜りましたこと、心よりお礼申し上げます。 今後はタナカ株式会社においてより一層のご愛顧を賜りますよう、宜しくお願い致します。
まずは略儀ながら書面をもってご挨拶申し上げます。
敬具
令和◯◯年◯月◯日
株式会社 佐藤商事 代表取締役社長 〇〇〇〇 タナカ株式会社 代表取締役社長 〇〇〇〇
従前の〇〇事業〇〇サービスに関するお引き合いご注文は、令和◯◯年◯◯月◯◯日以降、タナカ株式会社にて承りますので、下記までご連絡の程宜しくお願い申し上げます。
記
【事業譲受会社】 タナカ株式会社 (所在地) 〒○○○‐○○○○ 埼玉県所沢市〇丁目○○‐○ (電話番号) ○○‐○○○○‐○○○○ (FAX番号)○○‐○○○○‐○○○○
【事業譲渡会社】 株式会社佐藤商事 本社総務部 (所在地) 〒○○○‐○○○○ 東京都千代田区〇丁目○○‐○ (電話番号) ○○‐○○○○‐○○○○ (FAX番号)○○‐○○○○‐○○○○
本件に関するお問い合わせは、タナカ株式会社までお願い申し上げ致します。 |
以上が挨拶状のテンプレートとなります。あくまで一例ですので、実際に挨拶状を作成する際は、アレンジを加えても問題ありません。
また、「春陽の候、貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。」というように、冒頭に「季語」を加えるとより丁寧な挨拶文となります。季語は月ごとに変わりますので、月別の代表的な季語を以下まとめました。挨拶文書式のご参考にしてみてください。
- 1月:新春の候/2月:向春の候/3月:春陽の候/4月:桜花の候/5月:薫風の候/6月:入梅の候/7月:盛夏の候/8月:晩夏の候/9月:初秋の候/10月:爽秋の候/11月:深秋の候/12月:初冬の候
事業譲渡の挨拶状作成・送付における注意点
挨拶状を作成・送付する際は下記二点を注意しないと、事業譲渡後に大損する恐れがあります。しっかり要点を押さえておきましょう。
①債務引受公告
事業譲渡で引き継ぐ債務は、あくまで営業上生じた債務に限られます。しかし挨拶状の内容によっては、本業と関係のない債務を引き継ぐ義務が生じます。当事者間で譲渡対象の債務から外しても、債務引受の公告を挨拶状で実施した場合、対象外の債務を引き継ぐ義務が発生します。
最高裁の判断では、「(挨拶状に)債務を引き受ける旨の文言がなくとも、事業譲受人が債務を引き受けたものと認められる内容であれば、債務引受の公告に該当する」としています。
例えば挨拶状にて「責任を持って債務を引き継ぐ」と記載してしまうと、営業に関係ない保証債務等を引き継ぐ義務も生じ得ます。事業譲渡後に挨拶状を作成する際は、債務引受公告に該当しないよう注意しましょう。
②詐害行為取消権
詐害行為取消権とは、債権者を害することを知りつつ行った行為(詐害行為)について、債務者がその詐害行為をを取り消せる権利です。事業譲渡を実施すると、少なからず会社から財産が失われます。
失われた資産の額が多額になると、債権者の権利が阻害され、詐害行為とみなされる可能性があります。詐害行為取消権を行使されると、事業譲渡の効力が取り消されてしまいます。
例えば、事業譲渡の対価が不当に低い場合には、詐害行為と認定される可能性が高いです。事業譲渡の対価が実際に支払われないと、詐害行為となります。詐害行為だと判断されると、事業譲渡の効力が取り消されるだけでなく、役員は損害賠償を請求されるケースもあります。
挨拶状を出したあとに事業譲渡の効力が失われると、取引先や顧客からの信用を失います。一度信用が失われると、会社の存続が困難となる恐れがあります。挨拶状を送付する際には、事前に当該事業譲渡が詐害行為に該当しないかどうか、専門家の弁護士に確認してもらいましょう。
確認した上で挨拶状を交付すれば、事業譲渡後も円滑に事業を始められます。
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まとめ
今回は、事業譲渡における挨拶状に関して解説しました。会社の一部事業を売買する上で、事業譲渡は非常に便利なM&A手法です。事業譲渡を実施すると事業の運営会社が変わるため、マナーとして挨拶状を作成・送付します。今回ご紹介したテンプレートを基に、事業譲渡の挨拶状を作成しましょう。
また事業譲渡の挨拶状を送付する際には、二点注意する必要があります。念には念を入れて、事業譲渡の挨拶状は作成しましょう。
- ①保証債務等事業とは無関係な債務を引き受けないために、挨拶状の内容には注意しなくてはならない。
②挨拶状を取引先や顧客に渡す前に、詐害行為に該当しないかを弁護士に確認しておく。
要点をまとめると下記になります。
・事業譲渡とは
→会社の一部事業に関係する資産等を切り分け、第三者に売却するM&A手法
・競業避止義務
→売り手企業は、譲渡日から20年間の競業避止義務を負う
・事業譲渡のメリット
→好きな資産のみ買収可能
・事業譲渡のデメリット
→会社ごと買収する場合には不向き
・事業譲渡の挨拶状とは
→廃業及び事業譲受先を明記した案内文
・挨拶状送付の適切な時期
→事業譲渡の契約締結完了後、数日の間から1週間以内
・事業譲渡の挨拶状における注意点
→債務引受広告、詐害行為取消権に注意
事業譲渡に限らず、M&Aの際には信頼できる専門家のアドバイスを受けることが必要不可欠ですので、検討している段階でまずは相談することをおすすめします。M&A総合研究所なら事業譲渡後の挨拶状のみならず、知識・経験豊富なスタッフが最後までフルサポートいたします。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。