M&Aとは?手法ごとの特徴、目的・メリット、手続きの方法・流れも解説【図解】
2021年5月27日更新会社・事業を売る
事業譲渡における挨拶状の作成方法とは?記載内容、テンプレートも紹介
事業譲渡後、事業運営の会社が変わる挨拶状を取引先など関係者宛てに送付しますが、どのような内容を盛り込めばよいでしょうか。本記事では事業譲渡の挨拶状についてテンプレート(雛形)を示しつつ、送付の適切な時期、注意点などを解説します。
事業譲渡について
はじめに、事業譲渡の概要とメリット・デメリットを確認しておきましょう。
事業譲渡とは
事業譲渡とは、当該会社の事業とそれに関わる資産、権利義務などを選別して売却するもので、M&Aスキーム(手法)の中の一つです。選別は売り手と買い手の交渉次第なので一部の事業の場合もあれば、全ての事業の場合もあります。
ただし、全ての事業を譲渡したとしても株式譲渡のように会社の経営権を譲渡するわけではないので、会社組織は経営者の手元に残る点が特徴です。なお、事業譲渡を実施した企業は、会社法第21条の規定により、競業避止義務を負うことになっています。
競業避止義務とは、譲渡した事業と同一の事業を20年間、同一区市町村および隣接する区市町村で行えない法令です。
事業譲渡のメリットとデメリット
ここでは、事業譲渡に関するメリット・デメリットを、買い手側の視点から紹介します。まず、主なメリットは以下のとおりです。
- 買収する事業や資産を選別して必要なものだけに絞れるので、会社を丸ごと買収する株式譲渡より低予算で済む。
- 株式譲渡では、簿外債務や偶発債務を引き継いでしまうリスクがあるが、その心配がない。
一方、以下の点が主なデメリットとして考えられます。
- 取引先との契約や事業の許認可は引き継げないので、契約は締結し直し、許認可は取り直しが必要。
- 従業員を引き継ぐ場合には雇用契約を新たに締結する必要があり、総じて手続き面が煩雑で面倒。
- 雇用契約を新たに締結するプロセスがあるため、必要な人材が流出してしまう可能性がある。
M&Aの各スキームには、上述したようにメリットもあればデメリットもあります。自社にとって最適なスキームを選択するには、専門家のアドバイスが欠かせません。ご相談は、全国の中小企業のM&A・事業譲渡に数多く携わっているM&A総合研究所にお任せください。
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事業譲渡の挨拶状とは
事業譲渡の挨拶状とは、事業譲渡後に事業の運営会社が変わる旨を関係者に告知する案内文のことです。事業譲受側が挨拶状を出すのは当然ですが、関係者の混乱を防ぐためにも、事業譲渡側も挨拶状を取引先に送付するのが一般的になっています。
事業譲渡の挨拶状の必要性
事業譲受側企業としては、事業に関連する債権・債務の移転について、すでに関係取引先には同意を得ているタイミングですが、ビジネスマナーとしてあらためて挨拶状を出すことには大いに意味があります。
取引先や顧客などの関係者は、事業譲受側企業とは初めての取引・関係となるわけですから、少なからず何らかの不安感はあるでしょう。それを和らげ、今後も円満な関係を維持するために挨拶状の送付は効果がある行為です。
また、事業譲渡側企業も、残った事業で経営を継続する場合と、事業を整理して廃業する場合の2とおりが考えられますが、節目となるタイミングに礼儀を欠かさず挨拶状を送ることは、その後において意味をなす行為といえます。
事業譲渡の挨拶状に記載する内容
事業譲渡の挨拶状において、記載すべき項目は以下の4点です。それぞれの概要を個別に説明します。
- 文頭の挨拶
- 事業譲渡の実施日
- 事業譲渡の相手先
- 送り主の所在
①文頭の挨拶
文頭には定型文が用いられます。ビジネス文書である事業譲渡の場合、以下の例文から選んで記載するとよいでしょう。
- 拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
- 拝啓 貴社におかれましてはご盛栄のこととお慶び申し上げます。
- 拝啓 貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。
- 拝啓 貴社ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます。
- 拝啓 貴店ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます。
そして、上記のいずれかの文に加えて下記の定型文を添えます。
- 平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
②事業譲渡の実施日
事業譲渡の挨拶状ですから、そのメインテーマである事業譲渡完了日の記載は欠かせません。
③事業譲渡の相手先
事業譲渡の完了日同様に、誰が事業を引き継いだのか記載することも挨拶状の主題です。
④送り主の所在
挨拶状はビジネス文書であり、まして事業譲渡の挨拶状ですから、単に挨拶状の送り主の住所を記載するだけでは足りません。最低限、以下の内容を合わせて記載しましょう。
- 事業譲渡者の住所・電話番号、FAX番号
- 事業譲受者の住所・電話番号、FAX番号(専門の問い合わせ先がある場合には、それも記載する)
事業譲渡の挨拶状の適切な送付時期
事業譲渡の契約締結完了後、1週間以内に挨拶状送付を行うのが一般的です。書面送付が遅れる可能性がある場合には、先にメールを出しておきましょう。取引先や顧客に無用な不安・混乱を招くのを防ぐためにも、時期を逸さないようにすることが大切です。
自社で印刷するか印刷所に発注するかによっても送付可能なタイミングが変わってきます。まずは、送り先と印刷部数の確認をして自社印刷か外部発注かを決め、日程感を持って文面作成に取りかかりましょう。
事業譲渡の挨拶状テンプレート
先述した挨拶状の記載内容を網羅した事業譲渡の挨拶状テンプレートを以下に例示します。このテンプレートは、送り主を事業譲渡側として作成したものです。
事業譲渡のお知らせ
拝啓 貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。 平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、この度当社株式会社佐藤商事の◯◯事業は、令和◯◯年◯◯月◯◯日(以降事業譲渡日という)付けで、タナカ株式会社に譲渡することと相成りました。 事業譲渡日をもちまして弊社◯◯事業は廃業いたします。
永きにわたり、弊社◯◯事業へご芳情を賜りましたこと、心より御礼申し上げます。 今後はタナカ株式会社においてより一層のご愛顧を賜りますよう、宜しくお願いいたします。
まずは略儀ながら書面をもってご挨拶申し上げます。
敬具
令和◯◯年◯月◯日
株式会社 佐藤商事 代表取締役社長 〇〇〇〇 タナカ株式会社 代表取締役社長 〇〇〇〇
従前の〇〇事業〇〇サービスに関するお引き合いご注文は、令和◯◯年◯◯月◯◯日以降、タナカ株式会社で承りますので、下記までご連絡の程宜しくお願い申し上げます。
記
【事業譲受会社】 タナカ株式会社 (所在地) 〒○○○‐○○○○ 埼玉県所沢市〇丁目○○‐○ (電話番号) ○○‐○○○○‐○○○○ (FAX番号)○○‐○○○○‐○○○○
【事業譲渡会社】 株式会社佐藤商事 本社総務部 (所在地) 〒○○○‐○○○○ 東京都千代田区〇丁目○○‐○ (電話番号) ○○‐○○○○‐○○○○ (FAX番号)○○‐○○○○‐○○○○
本件に関するお問い合わせは、タナカ株式会社までお願い申し上げます。 |
以上が挨拶状のテンプレートとなります。あくまで一例ですので、実際に挨拶状を作成する際は、アレンジを加えても問題ありません。
また、「春陽の候、貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます」というように、冒頭に「季語」を加えるとより丁寧な挨拶文となります。季語は月ごとに変わりますので、月別の代表的な季語を以下にまとめました。挨拶文書式のご参考にしてみてください。
- 1月:新春の候
- 2月:向春の候
- 3月:春陽の候
- 4月:桜花の候
- 5月:薫風の候
- 6月:入梅の候
- 7月:盛夏の候
- 8月:晩夏の候
- 9月:初秋の候
- 10月:爽秋の候
- 11月:深秋の候
- 12月:初冬の候
事業譲渡の挨拶状作成・送付における注意点
事業譲渡の挨拶状を作成・送付する際は、下記の2点に注意しないと事業譲渡後に大損する恐れがあります。しっかり要点を押さえておきましょう。
- 債務引受公告
- 詐害行為取消権
①債務引受公告
事業譲渡で引き継ぐ債務は、あくまで営業上で生じた債務に限られます。しかし、挨拶状の文面によっては、本業と関係のない債務を引き継ぐ義務が生じてしまいかねないので注意が必要です。
事業譲渡の当事者間で譲渡対象から外した債務であっても、債務引受の公告を挨拶状で実施した場合、本来、対象外であった債務を引き継ぐ義務が発生してしまいます。
最高裁の判例では、「(挨拶状に)債務を引き受ける旨の文言がなくとも、事業譲受人が債務を引き受けたものと認められる内容であれば、債務引受の公告に該当する」という判断が出ているのです。
例えば、挨拶状で「責任を持って債務を引き継ぐ」などと記載してしまうと、営業に関係ない保証債務等を引き継ぐ義務も生じ得ます。事業譲渡後に挨拶状を作成する際は、債務引受公告に該当しないよう注意しましょう。
②詐害行為取消権
詐害行為取消権とは、債権者を害することを知りつつ行った行為(詐害行為)について、債務者がその詐害行為を取り消せる権利です。事業譲渡を実施すると、少なからず会社から財産が失われます。
失われた資産の額が多額になると債権者の権利が阻害され、詐害行為とみなされる可能性があるのです。詐害行為取消権を行使されると、事業譲渡の効力が取り消されます。例えば、事業譲渡の対価が不当に低い場合などは、詐害行為と認定されるかもしれません。
また、事業譲渡の対価が実際に支払われないと詐害行為です。詐害行為と判断されると事業譲渡の効力が取り消されるだけでなく、役員は損害賠償を請求されるケースもあります。挨拶状を出した後に事業譲渡の効力が失われると、取引先や顧客の信用も失うでしょう。
一度、信用が失われると、会社の存続が困難となる恐れがあります。挨拶状を送付する際には、事前に当該事業譲渡が詐害行為に該当しないかどうか、専門家の弁護士に確認してもらいましょう。その上で挨拶状を交付すれば、事業譲渡後も円滑に事業を始められます。
事業譲渡の挨拶状まとめ
会社の一部の事業を売買する上で事業譲渡は非常に便利なM&A手法ですが、事業譲渡実施により事業の運営会社が変わるので、ビジネスマナーとして挨拶状の送付が必要です。テンプレートや注意事項を参考に、事業譲渡の挨拶状を作成してください。
本記事の概要は、以下のとおりです。
〇事業譲渡とは
→会社の事業とそれに関わる資産、権利義務などを選別して売却するM&A手法
〇競業避止義務
→売り手企業は、譲渡日から20年間の競業避止義務を負う
〇事業譲渡のメリット
→好きな資産のみ買収可能
〇事業譲渡のデメリット
→手続きが煩雑
〇事業譲渡の挨拶状とは
→廃業および事業譲受先を明記した案内文
〇挨拶状送付の適切な時期
→事業譲渡の契約締結完了後、数日から1週間以内
〇事業譲渡の挨拶状における注意点
→債務引受広告、詐害行為取消権に注意
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。