M&Aとは?目的・メリットから手法、最新動向までわかりやすく解説
2025年11月17日更新会社・事業を売る
会社分割とは?メリット・デメリットや手続き、事業譲渡との違いをわかりやすく解説
会社分割は、事業の一部または全部を切り離して別会社に移すM&A手法です。売り手・買い手双方にメリットがある一方、手続きが複雑な側面もあります。本記事では、会社分割のメリット・デメリットや手続きの流れ、事業譲渡との違いをわかりやすく解説します。
会社分割のメリット
M&Aには株式譲渡や事業譲渡のイメージが強いため、会社分割の馴染みがないかもしれません。
最近はスピーディーな経営戦略の実施策、企業再生の手法として、会社分割を活用したM&Aが注目されています。今回は、会社分割にどのようなメリットがあるのかご紹介していきます。
会社分割が売り手にもたらす3つのメリット
まずは売り手のメリットについて見ていきましょう。
コア事業への集中とノンコア事業の売却
株式譲渡では会社を丸ごと承継しますが、会社分割では特定の事業だけを切り離して承継させることが可能です。これにより、売り手はノンコア事業を売却して得た資金を、成長が見込まれるコア事業に集中投下できます。いわゆる「選択と集中」を実現し、企業価値の向上を図れる点が大きなメリットです。
また、優良事業を分社化(スピンオフ)する際にも活用できます。独立させることで、その事業に適した経営判断を迅速に行えるようになり、運営の効率化や専門性の向上が期待できます。
消費税が課税されない
類似の手法である事業譲渡では、土地を除く有形固定資産や営業権などの課税対象資産の譲渡に対して消費税が課されます。一方、会社分割は資産や負債を包括的に承継する「組織再編行為」であり、資産の「譲渡」には該当しないため、原則として消費税は課税されません。多額の設備投資が必要な事業を移転する場合、税負担を抑えられる会社分割は極めて有効な選択肢となります。
中小企業の再スタートで有利
経営難に陥った企業が再生を目指す際、民事再生は半年以上の期間を要し、公表による信用の低下を招く恐れがあります。一方、会社分割を活用した事業再生(第二会社方式)は、1〜3ヶ月程度と迅速に進められ、非公開での手続きも可能です。収益性の高い事業を新会社に移すことで、過去の負債から切り離し、スムーズな再スタートを図れます。
2024年現在、国は中小企業の事業承継や再編を後押ししており、事業承継・引継ぎ支援センターなどを通じた専門家によるサポートも充実しています。こうした公的支援を活用することも有効な手段です。
会社分割が買い手にもたらす3つのメリット
次に買い手のメリットについて見ていきましょう。
自己資金がなくてもM&Aを実行できる
株式譲渡や事業譲渡では、原則として買収対価を現金で支払う必要があります。しかし、会社分割(特に吸収分割)では、承継会社(買い手)の株式を分割会社(売り手)に対価として交付できます。これにより、買い手は手元に多額の現金がなくてもM&Aを実行できるという大きなメリットがあります。ただし、売り手が非上場企業の株式を対価としても現金化が難しいため、対価の交渉は慎重に行う必要があります。
資産債務や契約を包括的に承継できる
事業譲渡では、資産・負債・契約などを個別に移転させるため、取引先や従業員との再契約、許認可の再取得など、多くの手続きが必要です。一方、会社分割では事業に関する権利義務をまとめて包括的に承継できます。これにより、取引先との契約や従業員の雇用契約などを個別に結び直す手間が省け、事業をスムーズに引き継げる点が大きなメリットです。ただし、一部の許認可は再申請が必要な場合があるため、事前の確認が欠かせません。
労働者を一括で承継できる
会社分割では、労働契約承継法に基づき、分割対象事業に主に従事する従業員の雇用契約は、原則として承継会社へ包括的に引き継がれます。事業譲渡のように従業員一人ひとりから個別の同意を得る必要がないため、優秀な人材の流出リスクを低減し、スムーズな組織統合が可能です。ただし、法律で定められた通知や協議など、適切な手続きを踏むことが重要です。
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会社分割のデメリットと注意点
会社分割には多くのメリットがある一方、実行する際にはいくつかのデメリットや注意点を理解しておく必要があります。
手続きが複雑で時間がかかる
会社分割は会社法に定められた組織再編行為であり、その手続きは厳格です。分割計画書の作成、株主総会の特別決議、債権者保護手続き、登記申請など、多くのステップを踏む必要があります。これらの手続きには専門的な知識が求められ、完了までに数ヶ月を要するため、専門家のサポートが不可欠です。
簿外債務を引き継ぐリスク
会社分割は事業に関する権利義務を包括的に承継する手法です。そのため、貸借対照表に記載されていない簿外債務や偶発債務、訴訟リスクなども意図せず引き継いでしまう可能性があります。このリスクを回避するためには、契約前の徹底したデューデリジェンス(企業調査)が極めて重要になります。
株主や債権者の同意が必要
会社分割の実行には、原則として株主総会で議決権の3分の2以上の賛成を得る「特別決議」が必要です。また、債権者保護手続きにおいて、債権者が異議を申し立てることも可能です。株主や債権者から十分な理解を得られない場合、計画が頓挫するリスクがあります。
会社分割の主な手法と手続きの流れ
会社分割には、事業を新しく設立する会社に承継させる「新設分割」と、既存の他社に承継させる「吸収分割」の2種類があります。どちらの手法を用いる場合でも、一般的には以下の流れで手続きを進めます。
- 分割計画書または分割契約書の作成
- 事前開示書類の備置
- 株主総会での特別決議
- 債権者保護手続き(官報公告・個別催告)
- (労働契約承継法に基づく従業員への通知・協議)
- 会社分割の効力発生
- 登記申請
- 事後開示書類の備置
これらの手続きは会社法で厳密に定められており、計画的に進める必要があります。また、事業に関する権利義務は包括的に承継されるため、簿外債務などの潜在的リスクも引き継ぐ点には注意が必要です。
※関連記事
会社分割と株主総会
まとめ
会社分割を活用すれば、買い手にも売り手にもさまざまなメリットがあることをお伝えしました。M&Aでは株式譲渡や事業譲渡のイメージが強いですが、独自のメリットを持つ会社分割を活用する選択肢も考えてみましょう。要点をまとめると下記のとおりです。
・売り手側のメリット
→一部の事業を切り離して売却できる、中小企業の再スタートで有効的に活用できる
・買い手側のメリット
→資金を用意しなくても会社分割を行える、資産債務や契約などを包括的に引き継げる
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。