2021年6月15日更新会社・事業を売る

会社・企業譲渡とは?手続き、メリット・デメリット、注意点を解説【事例あり】

会社・企業譲渡とは、株式譲渡などの手法を用いて会社の経営権を他の会社や個人に譲り渡す行為のことです。本記事では、会社・企業譲渡の手続き・メリット/デメリット・実施時の注意点・成功させるコツのほか、実際に行われた事例などを取り上げます。

目次
  1. 会社・企業譲渡とは
  2. 会社・企業譲渡が増えている理由
  3. 会社・企業譲渡を行う手順・流れ
  4. 会社・企業譲渡に必要な手続きの方法
  5. 会社・企業譲渡の手続きに求められる書類
  6. 会社・企業譲渡のメリット・デメリット
  7. 会社・企業譲渡の注意点
  8. 会社・企業譲渡の相場と算出方法
  9. 会社・企業譲渡が行われた事例
  10. 会社・企業譲渡をスムーズに成功させるコツ
  11. 会社・企業譲渡の相談におすすめの仲介会社
  12. 会社・企業譲渡のまとめ
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会社・企業譲渡とは

会社・企業譲渡とは

会社・企業譲渡とは、自社を除いた他の会社・個人に対して、自社の株式を譲り渡して経営権を移す行為のことです。主として、会社の経営から退いたり、後継者不在に悩んでいたりする際に採用されます。

ここからは、会社・企業譲渡と、株式譲渡(経営権を他社に移す行為)および事業譲渡(事業に関する資産などを譲る取引)との関係性や違いを紹介します。

株式譲渡との関係性

株式譲渡とは、会社・企業譲渡を行う際に用いられる手法です。とはいえ、議決権の保有割合が過半数に達する譲渡でなければ経営権の移行は生じないため、「会社・企業譲渡とは、経営権の譲渡が伴う株式譲渡」であると把握しておきましょう。

特に中小企業が行う会社・企業譲渡は自社の全株式を譲り渡すケースが大半であるため、中小企業による株式譲渡のほとんどは会社・企業譲渡に該当すると認識されています。

【関連】株式譲渡の方法

事業譲渡との違い

会社・企業譲渡はすべての株式を譲り渡して会社自体を売却する行為であるため、事業に関わる資産などを譲る事業譲渡とは大きく手法が異なります。会社譲渡は譲渡益を株主が得るのに対し、事業譲渡では対価を会社が受け取ります。

また、会社・企業譲渡では経営権の所在に変更が生じる一方で、事業譲渡では対象事業の経営主体のみに変更が生じる点に相違が見られます。事業譲渡では、仮にすべての事業に関わる資産などを譲渡対象に指定しても、各種契約などは引き継がれないため、会社・企業譲渡には該当しない点を把握しておきましょう。

会社・企業譲渡が増えている理由

会社・企業譲渡が増えている理由

会社・企業譲渡の件数は増加傾向にありますが、その理由は主に以下のとおりです。

  1. 後継者問題に悩む経営者が増えた
  2. 経営者の高齢化
  3. 人手不足により仕事が回らない
  4. 大手企業による業界参入
  5. 会社・企業譲渡をイグジットに選ぶ経営者が増えた

それぞれの項目を順番に詳しく紹介します。

①後継者問題に悩む経営者が増えた

従来では経営者の子供などの親族が次期経営者に据えられて経営の引き継ぎが行われるケースが多く見られましたが、近年では少子化による後継者不足や子どもの意向を尊重する親の増加などを受けて、周囲に適切な後継者を見つけられない会社が増加しています。

つまり、次の経営者が見つけられず、親族・関係者を除いた第三者の会社に事業承継を行うために会社・企業譲渡の件数が増加しています。

②経営者の高齢化

中小企業庁の「2018年版中小企業白書」によると、中小企業の経営者のうち最も年齢分布が多い年代は65〜69歳の間です。また、60歳以上の経営者が全体の7割以上を占めており、経営者の年齢が年々高まっています。

年齢が高まると、若い世代よりも身体的な問題の発生・病気の発症・持病の悪化などのリスクが高まるため、経営を継続できなくなった会社では、会社・企業譲渡を選択するケースが増えています。

参考:中小企業庁「2018(平成30)年版 中小企業白書」

③人手不足により仕事が回らない

日本では人口減少が進行しており、多くの企業が思うように人材を集められない状況に陥っています。一般的に、都市部では人口が増加傾向にある一方で、地方部では人口が減少しているため、地方の中小企業では事業に従事する社員の確保が喫緊の課題です。

一定数の人材を集められないと事業運営が継続できないため、地方では会社・企業譲渡の増加傾向が大きく目立っています。

④大手企業による業界参入

一般的に、法改正・新制度の確立・トレンド/人口割合の変化などが起きると、その業界に再編の動きが見られます。既存の形態では今後の売り上げに影響が及ぶため、大手企業は会社・企業買収による事業基盤の確保を図るのです。

その一方で、異業種への転換・参入に目を付ける大手企業も存在します。大手企業が新規進出すると、顧客の流出・売り上げ減少などが生じて、事業運営の継続が難しくなることから、中小企業の会社・企業譲渡の件数が増加しやすいです。

⑤会社・企業譲渡をイグジットに選ぶ経営者が増えた

これまで経営者の多くは会社経営を続けて後継者へ引き継がせる選択肢を採用する傾向にありましたが、現在は早い段階でのリタイア・新しい事業の開始・会社譲渡を目的とした経営を望む経営者の方も多く存在します。

つまり、自身の子供などの関係者には会社を任せず、他の会社に売り渡して売却の対価を得ることを選ぶ経営者も多く見られるため、会社譲渡の件数が増加しています。

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会社・企業譲渡を行う手順・流れ

会社・企業譲渡を行う手順・流れ

本章では、会社・企業譲渡を行う大まかな手順・流れを、以下の6ステップに分けて取り上げます。

  1. M&A仲介会社への依頼
  2. 企業価値評価の実施
  3. 相手先企業とのマッチング
  4. 会社・企業譲渡に必要な手続きの実行
  5. 会社・企業譲渡の成立・公表
  6. 会社の引き継ぎプロセスの実施

それぞれの項目を順番に詳しく紹介します。

①M&A仲介会社への依頼

会社・企業譲渡の実施を考えている場合、実際に手続きを進めていく前にM&A仲介会社に相談・依頼すると良いでしょう。M&A仲介会社は、会社・企業譲渡を含むM&A取引の実務をサポートする専門家です。

そもそも会社・企業譲渡の手続きをスムーズに進めていくには、財務・税務・法務など多方面にわたる専門知識が求められます。そのため、自社のみでM&Aを進めることは非常に困難であるうえに、失敗のリスクが高いです。

そこでM&Aに関する知識・ノウハウ・実績を豊富に持つ仲介会社にサポートを依頼すると、会社・企業譲渡を安心して進められます。

②企業価値評価の実施

会社・企業譲渡を成功させるうえで、自社の価値および譲渡金額の相場の把握は必要不可欠です。もしもこれらを把握しておかないと、一般的な相場よりも安い価格で会社・企業譲渡を進めてしまうおそれがあります。

とはいえ、自社の価値・譲渡相場金額などの算定は専門的に高度な知識が求められるため、企業価値評価のサービスを提供するM&A仲介会社に算定を依頼すると良いでしょう。

③相手先企業とのマッチング

企業価値評価のプロセスを済ませたら、会社・企業譲渡を行う相手先とのマッチングを図ります。最近では後継者不在などの影響を受けて、会社譲渡・企業譲渡を行う相手を見つけられない会社も少なくありません。

とはいえ、幅広いネットワークを有しているM&A仲介会社に依頼すると、自社にふさわしい相手先候補探しをスムーズに進められます。自社のみで適切な相手を見つけるのは非常に困難であるため、なるべく早期のタイミングで会社・企業譲渡についてM&A仲介会社に相談を持ちかけましょう。

④会社・企業譲渡に必要な手続きの実行

相手先企業とのマッチングに成功したら、次は会社・企業譲渡に必要な手続きを行いましょう。ここではさまざまな手続きが求められるため、次章で詳しく取り上げます。

⑤会社・企業譲渡の成立・公表

会社・企業譲渡の手続きが終了すると、取引が成立を迎えます。このタイミングで、譲渡金額の受け渡しなどが行われる段取りです。合わせて、会社・企業譲渡の実施を公表しなければなりません。中小企業のケースでは従業員・取締役に対する説明を、大企業の場合はマスコミへの発表などをそれぞれ行いましょう。

会社・企業譲渡を公表する時期を見誤ると、従業員や取引先などに不信感を与えるおそれがあります。会社・企業譲渡の実施が確実に決定した後で、丁寧に公表するよう心がけましょう。

⑥会社の引き継ぎプロセスの実施

会社・企業譲渡における最終的なプロセスは、会社の引き継ぎ作業です。このプロセスをおろそかにすると従業員の退職やその後の会社経営の失敗などにつながるおそれがあり、相手先企業に大きな迷惑をかけてしまいかねません。焦ることなく、丁寧にプロセスを遂行しましょう。

【関連】M&Aの手法・形態を徹底比較!特徴、検討方法、流れを紹介

会社・企業譲渡に必要な手続きの方法

会社・企業譲渡に必要な手続きの方法

ここでは、前章で取り上げた「会社・企業譲渡に必要な手続き」の方法を、以下の5項目に分けて取り上げます。

  1. 株式譲渡の承認請求
  2. 取締役会または株主総会の招集
  3. 株式譲渡契約の締結
  4. 株主名簿の書き換え請求
  5. 株主名簿記載事項証明書の交付請求

それぞれの項目を順番に詳しく紹介します。

①株式譲渡の承認請求

はじめに、会社・企業譲渡を行う際の手法である株式譲渡の承認請求を行いましょう。もしも譲渡制限株式を譲渡するならば、それを行う者は「株式譲渡承認請求書」を準備したうえで、譲渡の承認請求を実施する必要があります。

とはいえ、中小企業における会社・企業譲渡では、経営者と株式を譲渡する者が同一人物であるケースが多いため、譲渡承認請求手続きの前のタイミングで合意を取り付けられる場合もある点を認識しておきましょう。

②取締役会または株主総会の招集

株式譲渡に関する承認請求を行った後は、その承認決議を取る目的のもと、取締役会または株主総会を招集しましょう。もしも承認請求を受けた会社が取締役会設置会社ならば、原則として取締役会が承認機関に該当します。

これに対して、非取締役会設置会社であるならば、臨時株主総会を開催したうえで承認決議を進めなければなりません。このときは、招集通知を株主総会の1週間前までに送る必要があります。

③株式譲渡契約の締結

承認決議の結果として株式譲渡請求が承認されて「承認通知」を受け取った後は、株式譲渡契約を締結しましょう。ここでは、取引の当事者双方によって「株式譲渡契約書」と呼ばれる契約書の作成が求められます。

④株主名簿の書き換え請求

株式譲渡契約の締結後は、「株主名簿の書き換え請求」を実施しましょう。もともと会社・企業譲渡は株式の単純な譲渡のみでは成立せずに、会社の保有する「株主名簿」の書き換えによって初めて効力を発します(その譲渡を第三者に対抗できるようになります)。

こうした事情から、株式譲渡取引の当事者は、会社に対して「株主名簿書き換え請求」を実施したうえで、株主の名簿を変更してもらわなければなりません。

⑤株主名簿記載事項証明書の交付請求

最後に、株主名簿記載事項証明書の交付請求を受けましょう。株式譲渡により誕生した新たな株主は、株主名簿に自身の名前が記載されていることを確認する目的で、会社に対して株主名簿記載事項証明書を請求します。そこで、この請求を受けた会社は、交付に応じる段取りです。

以上のプロセスが終了すると、会社・企業譲渡に必要な手続きが完了します。ここまで紹介したように、会社・企業譲渡では複雑かつ膨大な手続きが求められます。

不備なく実施するには専門的に高度な知識が求められるため、M&A仲介会社などの専門家にサポートを依頼すると良いでしょう。

M&A総合研究所は中小・中堅規模のM&Aを得意としており、支援実績を豊富に持つアドバイザーによる専任フルサポートを行っています。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。

無料相談をお受けしておりますので、M&Aによる会社・企業譲渡をご検討の際はどうぞお気軽にお問い合わせください。

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会社・企業譲渡の手続きに求められる書類

会社・企業譲渡の手続きに求められる書類

会社・企業譲渡では、大まかに以下のような書類の準備・提出が求められます。

  • 株式譲渡承認請求書
  • 株主総会招集に関する取締役の決定書
  • 臨時株主総会招集通知
  • 臨時株主総会議事録
  • 株式譲渡承認通知書
  • 株式譲渡契約書
  • 株式名義書換請求書
  • 株主名簿
  • 株主名簿記載事項証明書交付請求書
  • 株主名簿記載事項証明書

会社法の規定により求められる書類が多く存在するため、法務に精通する専門家からサポートを受けつつ、不備および漏れのないようにそろえましょう。

【関連】株式譲渡後の確定申告方法とは?添付書類と書き方、税金の計算を解説

会社・企業譲渡のメリット・デメリット

会社・企業譲渡のメリット・デメリット

本章では、会社・企業譲渡により株式を譲り渡して経営権を他の会社に移した場合に生じるメリット・デメリットを順番に取り上げます。

会社・企業譲渡のメリット

会社・企業譲渡を行うと、以下のようなメリットを享受できます。

  1. 後継者問題への悩みが解決する
  2. 従業員の雇用が確保できる
  3. 譲渡益を獲得できる
  4. 個人担保や債務からの解放

それぞれの項目を順番に詳しく紹介します。

①後継者問題への悩みが解決する

会社譲渡を用いると、他の会社が事業を引き継いでくれるため、自社の関係者などから後継者を探さずに済みます。買い手となる会社は「自社事業の規模拡大」「新規の参入」などを目的に会社・企業を譲受するため、事業承継による後継者問題の解決が可能です。

その一方で、後継者問題が解決しないまま経営者の体調が急激に悪化すると、後継者探しが非常に困難です。また、たとえ後継者候補がいたとしても経営を任せられるまでに長い期間を要する状況が想定されるため、突然の状況変化が起きた際にも、会社・企業譲渡の採用には利点があります。

②従業員の雇用が確保できる

廃業を行うと、従業員の勤務先が失われます。また、事業譲渡を行う場合には、買い手が自社従業員と雇用契約を再び結んでくれるとはいい切れません。その一方で、会社・企業譲渡であれば、会社自体を譲り渡すため、従業員の雇用契約も買い手に引き継がれます。

また、会社・企業譲渡では、株主が買い手に変わるのみで会社の形態には変更が生じないため、新たな雇用先を探すことなく経営権を譲り渡せます。

③譲渡益を獲得できる

会社・企業譲渡は株式の取引を伴う手法であるため、売り手の株主は譲渡益を獲得できます。譲渡益を獲得できれば、引退後の生活費や興味を持った分野で会社を興す際の費用などに充てられるため、経営から手を引きやすいです。

④個人担保や債務からの解放

個人担保・債務は、会社・企業譲渡に伴い自然に解除されるわけではありません。とはいえ、買い手が金融機関と交渉して借入金を肩代わりする・融資の保証を肩代わりする場合には、売り手側は個人担保・債務から解放されます。

つまり、会社譲渡の交渉を進める際に、買い手に対して個人担保・債務の肩代わりを受け入れる旨の承諾を得るとメリットを享受できます。

会社・企業譲渡のデメリット

会社譲渡を行う際に問題となりやすいデメリットは、以下のとおりです。

  1. 新規事業開始への拘束が発生する可能性
  2. 希望どおりの譲渡ができない可能性
  3. 譲渡後に簿外債務などが発覚する可能性

それぞれの項目を順番に詳しく紹介します。

①新規事業開始への拘束が発生する可能性

会社・企業譲渡を行うと、売り手の経営者は、買い手への引き継ぎのために一定期間の拘束を受ける可能性があります。なぜなら、同じ事業の運営経験があっても、会社ごとに運営の仕方は異なるためです。このように、これまでと同様のレベルで事業を運営する目的のもとで拘束が生じる点を把握しておきましょう。

また、会社・企業譲渡では事業譲渡に存在する競業避止義務は定められていないものの、ほとんどの会社・企業譲渡/株式譲渡契約では同一(近隣)の市町村で一定期間にわたり経営権を譲った事業を営んではならない協業避止義務が加えられるため留意しましょう。

【関連】競業避止義務とは?意味や判例、M&Aでの活用方法を解説

②希望どおりの譲渡ができない可能性

もともと売り手は希望する期間を定めて、期間内で会社・企業譲渡を実施しようと考えます。そのため、期間内に条件に合致する相手が現れなければ条件を下げざるを得なくなり、希望どおりの譲渡ができない可能性があるのです。希望のとおる会社・企業譲渡を目指すなら、交渉に掛ける期間を長めに設定しましょう。

③譲渡後に簿外債務などが発覚する可能性

会社・企業譲渡では、隠れた簿外債務なども買い手に丸ごと引き継がれます。そのため、会社・企業譲渡を済ませた後で簿外債務などの存在が明らかになると、契約違反と指摘されて賠償請求を受ける可能性があるのです。

【関連】簿外債務

会社・企業譲渡の注意点

会社・企業譲渡の注意点

会社譲渡を行う際に注意を払う必要がある点は、以下のとおりです。

  1. 譲渡後に従業員・役員の待遇に変化が生じることがある
  2. 取引先との関係が悪化するおそれがある
  3. 譲渡後に会社名が変わる可能性がある
  4. 連帯保証人の書き換えが必要なケースがある
  5. 会社・企業譲渡による税金

それぞれの項目を順番に詳しく紹介します。

①譲渡後に従業員・役員の待遇に変化が生じることがある

会社・企業譲渡では雇用契約もそのまま引き継がれるため、譲渡を終えた時点では変化は見られません。しかし、会社譲渡の完了以降は買い手が経営権を握るため、買い手の経営方針により待遇を変えられてしまう可能性があります。

②取引先との関係が悪化するおそれがある

場合によっては、会社・企業譲渡に反対する取引先が現れる可能性があります。これにより、会社・企業譲渡後の取引に支障をきたすおそれがあるのです。取引先からの反発を避けるためにも、取引の実施が確定したら丁寧な説明を心がけましょう。

③譲渡後に会社名が変わる可能性がある

多くの会社・企業譲渡では、取引先・利用者に与える影響を考慮して売り手の会社名も引き継がれます。とはいえ、売り手事業の持つブランド名の価値が低いとみなされた場合、買い手グループの社名を加えた新しい名称に変更される可能性があるため要注意です。

④連帯保証人の書き換えが必要なケースがある

会社・企業譲渡によって経営者が変更した場合でも、現在の債務者である売り手企業の経営者と債権者の関係に変更は生じません。ただし、現在の経営者が会社の連帯保証人となっているケースにおいては、新たな経営者に連帯保証人を書き換える手続きが求められます。

連帯保証人の書き換えを行うには多くの時間が発生するため、会社・企業譲渡がスムーズに済ませられないおそれがあります。こうした事情を受けて、連帯保証人の書き換えは行わずに、会社・企業譲渡のタイミングで銀行に一括返済するケースも少なくありません。

債権者に影響が及ぶことはないものの、現在の経営者が連帯保証人となっている場合には要注意です。

⑤会社・企業譲渡による税金

会社・企業譲渡を行うと、株式を売り渡す主体に対して税金が課されます。個人株主が株式を売り渡すと、住民税・復興特別所得税・所得税として、譲渡所得に対して20.315%が課せられる決まりです。

また、法人株主が株式を売り渡すと、住民税・法人事業税・法人税の支払い義務が生じ、譲渡所得に対して約31%が課せられます。

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会社・企業譲渡の相場と算出方法

会社・企業譲渡の相場と算出方法

会社・企業譲渡を行う経営者の方からすると、取引価格の相場は意識すべき要素のひとつです。そこで本章では、会社・企業譲渡を行う際の大まかな相場および算出方法を順番に取り上げます。

大まかな相場

会社・企業譲渡の大まかな相場を求める際は、簡易的な方法である年買法を用いると良いでしょう。年買法の計算式は以下のとおりです。

  • 修正純資産+営業利益✕3~5年

会社・企業譲渡における修正純資産が2億円・営業利益が2,000万円であるケースを想定すると、取引価格の目安は「2億円+2,000万円✕3~5年=2億6,000万円~3億円」と算出されます。

譲渡価格の算出方法

会社・企業譲渡の相場をより詳しく算出するには、「時価純資産法」「DCF法」「類似会社法」などの計算方法が採用されます。時価純資産法とは、評価時点において会社が保有している資産の時価合計額から負債の総額を控除した額を企業価値(取引価格)とする計算方法のことです。

また、DCF法とは、会社が将来的に生み出す価値を、フリーキャッシュフローをベースに割り引いて現在価値に換算する計算方法をさします。そして、類似会社法とは、対象会社と事業内容や規模などが類似する上場会社の財務指標や株価から対象会社の株価を計算する計算方法のことです。

自社に適した計算方法を選択し、必要に応じて組み合わせながら、会社・企業譲渡の相場を算出します。

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会社・企業譲渡が行われた事例

会社・企業譲渡が行われた事例

本章では、実際に会社・企業譲渡が行われた事例を10件取り上げます。

  1. オルトプラスの会社・企業譲渡
  2. 崇徳有限公司の会社・企業譲渡
  3. エージーワイの会社・企業譲渡
  4. かんこうの会社・企業譲渡
  5. ゼロ・コーポレーションの会社・企業譲渡
  6. 紘永工業の会社・企業譲渡
  7. オランダ・ヘニングセンの会社・企業譲渡
  8. 運送業の会社・企業譲渡
  9. 飲食店の会社・企業譲渡
  10. 学習塾の会社・企業譲渡

それぞれの事例からポイントをつかんで、自社の会社・企業譲渡に役立てましょう。

①オルトプラスの会社・企業譲渡

オルトプラス

オルトプラス

出典:https://www.altplus.co.jp/

2020年4月、ソーシャルゲーム・ITサービスの開発・運営などを手掛けるオルトプラスは、自社が持っている関連会社「エクスラボ」の株式すべてを「エクストリーム」に譲り渡す会社・企業譲渡を済ませています。

オルトプラスは市場で優位な立場に立つために対象会社とともに合弁会社を新しく興していましたが、今回の会社・企業譲渡により合弁を解消しています。オルトプラスが会社・企業譲渡を行った目的は、経営資源の集中です。

  売却側 買収側
業種 ITサービス・ゲーム ITサービス
会社・企業譲渡の理由     経営資源の集中 海外におけるシステム開発事業の強化

②崇徳有限公司の会社・企業譲渡

アキレス

アキレス

出典:https://www.achilles.jp/

2020年4月、アキレスは、連結子会社「崇徳有限公司」の株式すべてを第三者に譲り渡す会社・企業譲渡を済ませています。崇徳有限公司は出資先の「広州崇徳鞋業有限公司」が製造するシューズを輸入する事業を営んでいましたが、出資先の事業環境が悪化したために営業活動を中止していました。

事業転換を図ったものの大きな効果を得られなかったことから、アキレスは崇徳有限公司の会社・企業譲渡に踏み切っています。

  売却側 買収側
業種 輸出入 非公開
会社・企業譲渡の理由 事業の継続不可 非公開

③エージーワイの会社・企業譲渡

ありがとうサービス

ありがとうサービス

出典:http://www.arigatou-s.com/

2020年2月、愛媛県に拠点を構えて飲食事業を営んでいた「エージーワイ」は、リユース・飲食業などを展開する「ありがとうサービス」に対して、自社の株式を保有する「今治デパート」がすべての株式を譲り渡したことで会社・企業譲渡を完了させています。

売り手は福岡・大分県にも飲食店を構えており、当該エリアへの出店を果たしていない買い手が興味を持ったために取引が成立しています。

  売却側 買収側
業種 飲食 飲食・リユース
会社・企業譲渡の理由 非公開 事業の拡大

④かんこうの会社・企業譲渡

かんこう

かんこう

出典:https://www.kanko.cityis.co.jp/

2018年2月、京阪ホールディングスの子会社で建設向けのコンサル事業を営む「かんこう」は、「文化財サービス」の株式すべてを、建設コンサルや地質調査事業などを展開する「復建調査設計」に譲り渡す会社・企業譲渡を完了させています。

親会社の京阪ホールディングスは、今回の会社・企業譲渡を通じて、経営資源を他の事業に注いて企業グループ内で生み出すシナジーを増やすと発表しています。

  売却側 買収側
業種 発掘調査 発掘調査・建設コンサル
会社・企業譲渡の理由 経営資源の有効活用
グループ内のシナジーの増大
非公開

⑤ゼロ・コーポレーションの会社・企業譲渡

ゼロ・コーポレーション

ゼロ・コーポレーション

出典:https://www.zero-corp.co.jp/

2017年7月、建設施工・注文住宅・不動産事業を展開する「ゼロ・コーポレーション」は、「京阪ホールディングス」に株式すべてを譲り渡す会社・企業譲渡を済ませました。対象会社は、市街地の多面的な形成を目指しています。

京阪ホールディングスは、ゼロ・コーポレーションの開発ノウハウを取得すると、規模の大きな市街地の開発に加えてすでに形成されている市街地を対象とした開発事業が加えられるために会社・企業譲渡に応じています。

  売却側 買収側
業種 建設施工・注文住宅・不動産事業 運輸・不動産・流通業など
会社・企業譲渡の理由 非公開 事業領域の拡大

⑥紘永工業の会社・企業譲渡

紘永工業

紘永工業

出典:https://www.koei-kogyo.com/

2014年3月、防災・空調・衛生設備のトータルサービスを提供する「紘永工業」は、「アサヒホールディングス」の子会社「インターセントラル」にすべての株式を譲り渡す会社・企業譲渡を完了させました。

紘永工業は買い手に空調設備事業を評価されており、買収によって自社の空調設備事業の補完・強化が行えると捉えられたために会社・企業譲渡を実現させています。

  売却側 買収側
業種 防災・空調・衛生設備の施工 電気ヒーター・放射冷暖房の販売
会社・企業譲渡の理由 非公開 事業の補完と強化

⑦オランダ・ヘニングセンの会社・企業譲渡

アリアケジャパン

アリアケジャパン

出典:https://www.ariakejapan.com/ja/index.html

2013年11月、「Henningsen Nederland Holding B.V.」は、ベルギーに拠点を構える買い手側の子会社を介して、オランダの食肉加工会社「ヘニングセン」の株式をすべて「アリアケジャパン」に譲り渡す会社・企業譲渡を済ませました。

ヘニングセンの会社・企業譲渡を完了できた理由は、事業を展開するヨーロッパ市場における実績にあります。買い手は自社の技術と売り手が確保する市場を組み合わせることで相乗効果が得られると考えて、会社・企業譲渡を受け入れました。

  売却側 買収側
業種 食肉加工 調味料などの製造・販売・加工
会社・企業譲渡の理由 非公開 シナジーの獲得

⑧運送業の会社・企業譲渡

精密機器などの輸送を手掛けている運送会社Aは、赤字による資金不足を理由に、通信・電子機器メーカーへの会社・企業譲渡を済ませました。

売り手の運送会社Aは赤字を計上していましたが、買い手は製造品の運送を自社で手掛けることを目指していたほか、運送業に関する経営ノウハウと真面目に働く社員を評価したために会社・企業譲渡を受け入れています。

  売却側 買収側
業種 運送 通信・電子機器メーカー
会社・企業譲渡の目的 赤字の計上 運送の内製化

⑨飲食店の会社・企業譲渡

長期にわたる営業で多くの固定客を抱えていた飲食店Bは、後継者がいないことから異業種への参入を図る予備校の運営会社に会社・企業譲渡を済ませました。買い手は飲食業の経営ノウハウと店舗不動産を取得して、人口減少による少子化の影響が現れにくい飲食業への進出を果たしています。

なお、売り手は、異業種からの参入で経営を引き継ぐ買い手からの要望に応えて、営業権・経営のノウハウ・従業員の引き継ぎに応じました。

  売却側 買収側
業種 飲食 教育
会社・企業譲渡の理由 事業承継 異業種への参入
不動産の獲得

⑩学習塾の会社・企業譲渡

県内で有名な学習塾を運営していたC社は、経営者が雑務に追われる日々を送るうえに後継者も見つけられないために大手の学習塾に会社・企業譲渡を行いました。買い手も地元の地盤・進学コースの補強を望んでいたため、意見が合致したことで成約に至っています。

会社・企業譲渡に際して、社員の離職を避けるために面談を繰り返したことで、売り手の社員の雇用が無事に買い手に引き継がれています。

  売却側 買収側
業種 学習塾 学習塾
会社・企業譲渡の理由 事業承継 事業基盤の強化
ウィークポイントの補完

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会社・企業譲渡をスムーズに成功させるコツ

会社・企業譲渡をスムーズに成功させるコツ

会社・企業譲渡を進めて成功に導くためには、以下の点を押さえて実践しましょう。

  1. 譲渡検討・交渉までに企業価値を上げる
  2. 会計や税務に不備がないか確認する
  3. 譲渡先への正確な情報開示を行う
  4. 情報漏えいに注意する
  5. 会社・企業譲渡の専門家に相談する

それぞれの項目を順番に詳しく紹介します。

①譲渡検討・交渉までに企業価値を上げる

買い手は売り手のリスクを意識するため、良い点を伸ばすだけでなく、短所を補うことも心がけましょう。利益率の向上を図れば買い手には魅力のある会社と映るため、譲渡先が現れやすいです。

なお、長期にわたる計画は会社譲渡までに完了できない可能性があるため、短期の計画に変更するか計画を中止させると良いです。これにより、会社・企業譲渡に取り掛かる前に決算を完了できるため、取り組んでいた計画の成果が現れて買い手への印象アップにつなげられます。

②会計や税務に不備がないか確認する

会社・企業譲渡では、提出した財務資料に不備が見られると、取引額などの条件が下げられたり、契約に反しているとして賠償請求を受けたりと不利益を被ります。そのため、未払いの給料や退職金がないか・隠れた簿外債務がないかなどを確かめておきましょう。

③譲渡先への正確な情報開示を行う

会社・企業譲渡では、条件の変更をおそれて会社の情報を隠しておくことは避けましょう。情報の隠蔽(いんぺい)が後で明らかになると、会社・企業譲渡が中止になるだけでなく、契約違反に問われるおそれがあります。たとえ会社・企業譲渡の前に不利益となる点を正せなくても、正直に打ち明けるようにしましょう。

④情報漏えいに注意する

会社・企業譲渡に取り組んでいる事実が関係者に伝わってしまうと、取引の見直し・社員の離職などを招いてしまいます。そのため、会社譲渡に取り掛かる際は、担当する者を限定したうえで、買い手の面談・監査・専門家との話し合いなどに関する情報漏えいを回避しましょう。

⑤会社・企業譲渡の専門家に相談する

これまで紹介したように、会社・企業譲渡はさまざまな点に注意を払って進めないと成功させることが難しいです。そのため、会社・企業譲渡を行う際は、専門家への相談がベストな選択肢といえます。

専門家にはM&A仲介会社をはじめ、公的機関・金融機関・地元の士業なども挙げられるため、自社の会社譲渡に適した相手を選びましょう。

【関連】M&A失敗の要因とは?失敗割合や失敗した会社の事例を解説

会社・企業譲渡の相談におすすめの仲介会社

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会社・企業譲渡のまとめ

会社・企業譲渡のまとめ

本記事では、株式を売り渡して会社の経営権を他の会社へ譲る会社・企業譲渡について、スキームの概要や会社・企業譲渡が増加している理由などを取り上げました。株式譲渡の手法を活用して行う会社・企業譲渡は、経営者の高齢化・事業環境の変化などから実施件数が増えています。

とはいえ、会社・企業譲渡はさまざまな点に注意を払って進めないと成功させることが難しいため、実際に行う際は専門家への相談がベストな選択肢といえます。本記事の要点は、以下のとおりです。

・会社/企業譲渡が増えている理由
→後継者問題に悩む経営者が増えた、経営者の高齢化、人手不足により仕事が回らない、大手企業による業界参入、会社/企業譲渡をイグジットに選ぶ経営者が増えた

・会社/企業譲渡を行う手順・流れ
→M&A仲介会社への依頼、企業価値評価の実施、相手先企業とのマッチング、会社/企業譲渡に必要な手続きの実行、会社/企業譲渡の成立/公表、会社の引き継ぎプロセスの実施

・会社/企業譲渡に必要な手続きの方法
→株式譲渡の承認請求、取締役会または株主総会の招集、株式譲渡契約の締結、株主名簿の書き換え請求、株主名簿記載事項証明書の交付請求

・会社/企業譲渡のメリット
→後継者問題への悩みが解決する、従業員の雇用が確保できる、譲渡益を獲得できる、個人担保や債務からの解放

・会社/企業譲渡のデメリット
→新規事業開始への拘束が発生する可能性、希望どおりの譲渡ができない可能性、譲渡後に簿外債務などが発覚する可能性

・会社/企業譲渡の注意点
→譲渡後に従業員/役員の待遇に変化が生じることがある、取引先との関係が悪化するおそれがある、譲渡後に会社名が変わる可能性がある、連帯保証人の書き換えが必要なケースがある、会社/企業譲渡による税金

・会社/企業譲渡をスムーズに成功させるコツ
→譲渡検討/交渉までに企業価値を上げる、会計や税務に不備がないか確認する、譲渡先への正確な情報開示を行う、情報漏えいに注意する、会社/企業譲渡の専門家に相談する

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