2021年6月19日更新会社・事業を売る

合併の意味とは?種類、メリット・デメリット、事例や会計処理も紹介

合併とは複数の法人を統合する手法であり、吸収合併と新設合併に分けられます。合併の手続きは登記を含めて煩雑であるため、申請時の必要書類についても入念に把握しておきましょう。今回は、合併の意味や種類、メリット・デメリット、事例や会計処理など幅広く紹介します。

目次
  1. 合併とは
  2. 合併の種類
  3. 合併のメリット・デメリット
  4. 合併を行う際の手順・流れ
  5. 合併における登記申請と必要書類
  6. 合併における会計処理
  7. 合併における税務
  8. 合併時の会計・法務に関する注意ポイント
  9. 合併比率における株主構成と存続会社の資本金額の決め方
  10. 合併・組織再編をした企業事例
  11. 合併のまとめ
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合併とは

合併とは

まずは、合併の意味および、買収M&Aとの相違点を順番に取り上げます。

合併の意味は?

合併とは、複数の会社が経営統合によって1つの会社になる行為のことです。合併は、吸収合併と新設合併の2種類に分かれます。このうち吸収合併では、会社として存続し事業を継続する「存続会社」と消滅する「消滅会社」の2つに分けることが可能です。

なお、合併は組織再編の手法の1つでもあります。また、適格要件を満たせば適格合併に、特定の条件を満たせば簡易合併や略式合併などに該当する仕組みです。

買収・M&Aとの相違点

買収とは、他社の事業あるいは会社の経営権を取得する行為をさします。具体的には、株式譲渡事業譲渡・会社分割などの手法により実施されるケースが多いです。

合併と買収の相違点としては、「消滅会社の有無」が挙げられます。もともと買収では経営権や事業などは買い手企業に譲渡しますが、売り手企業の法人格はその後も存続します。これに対して、合併では、売り手企業を解散させたうえで、権利や義務などを買い手企業が引き継ぐため、法人格の消滅が伴うのです。

また、M&Aとは、企業・事業の合併や買収の総称です。簡単にいうと、ビジネスの売買(買収)および、複数のビジネスを1つに統合するための手法をさします。

M&Aと合併の相違点としては、「さし示す範囲」が挙げられます。つまり、合併は複数企業を統合する手法のみをさす限定的な概念です。これに対して、M&Aは合併のみでなく株式や事業の譲渡・株式交換や株式移転・第三者割当増資・会社分割なども含んだ包括的な概念だとされています。

【関連】合併と株式交換の違いとは?メリット・デメリットや事例を紹介

合併の種類

合併の種類

本章では、合併の種類を改めて把握しておきましょう。合併には、吸収合併と新設合併の2種類が存在します。吸収合併とは、2つ以上の会社が経営統合によって1つの会社になる手法であり、新設合併と比べて実施されるケースが多いです。

上記に対して、新設合併とは、新しく会社を設立したうえで、その会社に当事者である複数の会社を合併させる手法のことです。いずれの手法においても、「2つ以上の会社が当事者となる点」や「消滅する会社が存在する点」などは共通しています。

しかし、存続会社となる会社が「既存の会社」あるいは「新しく設立される会社」なのか、という点で違いが見られます。ここからは、両者の相違点をより詳しくまとめました。

吸収合併と新設合併の相違点

吸収合併と新設合併の間に見られる相違点としては、「手続きにかかる手間」も挙げられます。つまり、新設合併では、新たに会社を設立するために、会社設立の手続き・許認可の申請・上場申請などを行わなければなりません。

これに対して、吸収合併では、権利などを既存の会社がそのまま引き継ぐため、こうした手続きは不要です。加えて、新設合併では、吸収合併と比較すると登録免許税として課される金額が高い傾向にあります。

いずれの手法で合併を行うのかは当事会社の都合により変動しますが、新設合併では手続きが煩雑なうえに多くの費用がかかることから、吸収合併が採用されるケースが多いです。とはいえ、新設合併を採用すると良いケースもあるため、合併を行う際は専門家に判断を仰ぐと良いでしょう。

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合併のメリット・デメリット

合併のメリット・デメリット

本性では、合併のメリット・デメリットを順番に取り上げます。

合併のメリット

合併のメリットは、主に以下の5つです。

  1. 組織のコントロールが容易になる
  2. 組織をシンプルにできる
  3. 従業員の士気向上
  4. 対等な立場でM&Aを行える
  5. シナジー効果を獲得できる可能性が高い

それぞれのメリットを順番に詳しく紹介します。

①組織のコントロールが容易になる

すでに取引を行っている会社同士が合併すると、それまで手間がかかっていた情報共有などの連携が一体化するために組織のコントロールが容易になります。また、競争していた同業他社が合併すれば、価格交渉による会社間格差がなくなり利益を確保しやすくなるため、安定した経営が望めるのです。

②組織をシンプルにできる

合併により人員過多になった人事・総務・経理などの部署を整理すると、組織がシンプルになります。これにより、経営や意思決定を合理的かつ円滑に進めることが可能です。

③従業員の士気向上

合併は異なる会社同士が完全に統合する手法であり、異なる企業文化の融合が従業員の士気向上に刺激を与えます。これまで取引関係にあった会社同士であれば効果は大きく、一体感がさらに強まる可能性が高いです。

そもそも合併により会社の規模が拡大すれば、従業員の士気が向上するために今後の経営に良い影響を与えます。また、ノウハウの融合によって、新事業の開発やそれに伴う業績の向上が望めるため、従業員のモチベーション向上につなげることが可能です。

④対等な立場でM&Aを行える

数ある手法の中でも、合併は「対等な立場でM&Aを実施する」旨のイメージを周囲に与えやすいです。仮に、株式譲渡や事業譲渡を採用すると、相手企業から事業や経営権を買収するために従来は身売りと呼ばれるケースも多く、ネガティブな印象を抱かれる傾向にありました。

上記の傾向は依然として消滅しておらず、「売り手企業の立場は弱い」と考える人は多いです。これに対して、合併では、対等な立場で取引を行い、複数の会社を1つに統合できます。そのため、実務上は、「対等合併」の文言を用いて当事者会が対等である旨をアピールするケースも少なくありません。

⑤シナジー効果を獲得できる可能性が高い

シナジー効果とは、複数の企業や企業内の異なる事業部門が協働して得られる相乗効果のことです。合併では、主に以下項目の獲得が期待されます。

  • 売上シナジー(例:両社のブランドイメージの融合による売上増加)
  • コストシナジー(例:企業規模の拡大による生産機能の統合がもたらすコスト削減)
  • 財務シナジー:(例:余剰資金の活用および節税効果の獲得)

合併では、迅速かつ円滑に方針や制度などを統合できます。そのため、M&A後も当事会社が個々に経営を続けていく他の手法と比較すると、シナジー効果が発揮される可能性が高いです。

そのほか、合併では自社の株式を対価に設定できるため、金融機関から資金を調達する手間・労力をかけずに済みます。また、買い手側からすれば、資金力が不足していても取引を遂行できる点がメリットです。

合併のデメリット

合併には複数のメリットがありますが、デメリットも少なくありません。合併のデメリットには、主に以下の4項目が挙げられます。

  1. 手続きの手間とコストがかかる
  2. 経営統合に時間がかかる
  3. 従業員の流出を招くおそれがある
  4. 株価が下がる可能性がある

それぞれのデメリットを順番に詳しく紹介します。

①手続きの手間とコストがかかる

合併における最大のデメリットは、手続きの手間とコストがかかる点にあります。合併は登記が必要であるほか、会社同士の組織のすり合わせや株主総会の開催も求められるなどプロセスが多いです。

そのため、全体的に手間がかかるだけでなく、登記の際には登録免許税が発生するなど手続きにコストも発生します。とりわけ新設合併の場合は、吸収合併以上に手間がかかる点を覚悟しておかなければなりません。

②経営統合に時間がかかる

シンプルに売り手側を子会社化する株式譲渡とは違い、合併は2つ以上の会社を統合するプロセスです。そのため、重複しているバックオフィス部門の削減や業務のすり合わせ・給与水準の見直し・組織の改編など、経営統合には必要な作業が多いため、これに比例して多くの時間が要求されます。

また、このプロセスで浪費されるのは時間だけではありません。経営統合の作業に時間がかかるほど、従業員の負担も増えます。加えて、合併の当事会社ごとに業務のやり方・スタンスが異なっていれば、そのすり合わせで従業員は多くのストレスを抱えるのです。

さらに、もしも円滑に作業が進まなければ、業務が停滞します。このように、経営統合では、事前に進め方を十分に協議しておかないと、余計な手間がかかるだけでなく想定していたシナジー効果が得られずにかえって業績を悪化させるおそれもあるため注意しておきましょう。

③従業員の流出を招くおそれがある

合併では、価値観や仕事に対する考え方が異なる者同士を同じ環境に入れて業務を行わせる取引でもあります。つまり、うまくいけばシナジー効果が期待できますが、うまくいかなければ価値観や考え方の違いで対立を生み出してしまうおそれがあるのです。

場合によっては従業員同士がうまく連携を取れず、最終的に従業員の流出を招いてしまう可能性も考えられます。従業員の流出は、会社の人員が減少するだけでなく、情報の流出にもつながりかねません。

また、事業の中核を担う従業員が流出すれば、事業の価値が大幅に下がってしまうだけでなく、事業自体が立ち行かなくなるおそれもあります。従業員の流出は、合併のみならずM&Aで得られるシナジー効果そのものにも影響を及ぼすため、細心の注意を払いましょう。

④株価が下がる可能性がある

合併の実施に伴い、株価が下がる可能性がある点も把握しておくべきです。合併の対価として買い手が新株を発行・交付する場合、合併比率によっては買い手株主の持分が希薄化するおそれがあります。

希薄化(もしくは希釈化)とは、株式会社の発行する株式数が増えたために1株が表す株式の権利内容が小さくなる現象です。こうした現象に伴い、基本的に株価は下落します。また、合併に際して、投資家が収益の向上などを見込めないと判断すれば、株価のさらなる下落を招く可能性が高いです。

株価の下落を回避するには、外部の利害関係者に合併によるメリットを理解してもらう必要があります。

【関連】合併のメリット

合併を行う際の手順・流れ

合併を行う際の手順・流れ

ここまでで合併の基礎知識を把握したところで、本性では合併を行う際の手順・流れを以下の項目に分けて取り上げます。

  1. 合併契約書を締結する
  2. 事前開示事項を備え置く
  3. 株主総会を招集し、承認を受ける
  4. 債権者保護手続きを行う
  5. 反対株主の買取請求手続きを行う
  6. 効力発生後に登記を行う
  7. 事後開示事項を備え置く

それぞれの項目を順番に詳しく紹介します。

①合併契約書を締結する

まずは、相手企業の選定(マッチング)・トップ面談・条件交渉・デューデリジェンス(買収監査)などの手続きを済ませたうえで、合併の実施を正式に決めます。合併契約書は、合併の実施を双方が合意した時点で締結しましょう。ここからは、具体的な記載事項や注意点などを紹介します。

吸収合併契約書に記載する事項

吸収合併契約書には、以下の事項を記載する必要があります。

  • 存続会社と消滅会社の商号と住所
  • 効力発生日
  • 株式の数と算定方法(合併の対価が存続会社の株式の場合)
  • 存続会社の資本金と準備金の金額(合併の対価が存続会社の株式の場合)
  • 財産の内容と数、あるいは金額(合併の対価が株式以外の財産の場合)
  • 消滅会社の株主に対する対価の割当について(合併の対価が存続会社の株式、または株式以外の財産の場合)
  • 新株予約権の内容と数、あるいは算定方法(消滅会社が新株予約権を発行している場合)
  • 存続会社が社債の債務承継を承認すること、および社債の種類と合計額もしくは算定方法(消滅会社が新株予約権付社債を発行している場合)
  • 新株予約権もしくは金銭の割当について(消滅会社が新株予約権または新株予約権付社債を発行している場合)

新設合併契約書に記載する事項

新設合併の場合は、以下の事項を契約書に記載する必要があります。

  • 消滅会社の商号と住所
  • 新設会社の商号と本店所在地、目的、発行可能株式総数
  • 新設会社の定款で定めた事項
  • 新設会社設立時の取締役の氏名
  • 新設会社設立時の役員の氏名と名称
  • 新設会社の株式の数もしくは算定方法、資本金、準備金の金額
  • 株式の割当について
  • 社債の種類と金額、算定方法(新設会社の社債を対価とする場合)
  • 社債の割当について(新設会社が社債を対価とする場合)
  • 新株予約権の内容と数、あるいは算定方法(消滅会社が新株予約権を発行している場合)
  • 新株予約権の割り当てについて

合併契約書の注意点

合併契約書に記載すべき事項は会社法で決まっているため、ルールを守らずに作成すると無効になってしまうおそれがあります。最近では合併契約書のひな型がインターネットで出回っており、それを活用する経営者の方が多いです。

実際にひな型を使うこと自体は問題ありませんが、作成途中で必要な事項が抜けてしまったり、ひな形の書式そのものが正しくなかったりするおそれがあります。合併契約書はケースによって記載する内容が異なるため、契約書を作成する際は専門家のチェックやアドバイスを受けると良いでしょう。

②事前開示事項を備え置く

合併契約書の締結後は、契約の内容・その他法務省令で定める事項を記載(記録)した書面を、効力発生日から6カ月経過する日(消滅会社は効力発生日)までの間、本店に備え置かなければなりません。
なお、備置開始日は、次のうち最も早い日です。

  • 株主総会2週間前
  • 株主への株主買取請求の催告もしくは公告のいずれかの早い日
  • 債権者保護の手続きに関する通知もしくは公告のいずれかの早い日

③株主総会を招集し、承認を受ける

存続会社および消滅会社は、効力発生日の前日までに株主総会の特別決議によって合併契約に関する承認を受けなければなりません。招集通知は、原則として株式公開会社では株主総会開催の2週間前までに、非公開会社では1週間前までにそれぞれ実施する必要があります。

ちなみに、特別決議では、議決権の過半数を有する株主が出席したうえで、その株主の議決権3分の2以上に当たる賛成を得なければなりません。

④債権者保護手続きを行う

会社法の規定にもとづき、存続会社および消滅会社の債権者は、合併に対して異議を述べる権利を有しています。これを受けて、合併の当事会社では、債権者に対して以下の項目を官報に公告したうえで、知れている(会社が認識しているすべての)債権者に対する個別の催告が必要です。

  • 合併を実施する旨
  • 存続・消滅会社の商号および住所
  • 存続・消滅会社の計算書類に関わる事項
  • 債権者が一定期間内(1カ月を下回らない期間)に異議を述べられる旨

なお、官報への公告と同時に定款に規定している「日刊新聞」もしくは「電子公告」に掲げて実施する場合は、個別の催告は省略が可能です。

また、もしも債権者が異議を述べたならば、債務の履行によって債権を消滅させる弁済・相当の担保の提供・信託のいずれかを実施しなければなりません。とはいえ、債権者を侵害するおそれがないと判断される場合、手続きは不要です。

⑤反対株主の買取請求手続きを行う

合併に反対する株主は、保有する株式を公正な価格により買い取る旨を請求する権利を有しています。これを受けて、合併の当事会社では、反対する株主が行う請求に応じる手続きを遂行しなければなりません。

簡単にいうと、合併する旨を記した通知・公告を、効力が発生する20日前までに行います。加えて、株価の決定や買取の対価を支払う手続きなどの遂行も必要不可欠です。

⑥効力発生後に登記を行う

ここまでに紹介した手続きをすべて済ませた状態で合併の効力発生日が訪れると、合併が正式に成立します。ちなみに、吸収合併では「合併契約書に記載された日付」、新設合併では「新しく設立した会社の登記申請日」が、それぞれ効力発生日にあたる仕組みです。

吸収合併では、効力発生日から2週間以内に、本店所在地において消滅会社の解散登記および存続会社の変更登記を実施しなければなりません。これに対して、新設合併を選択するケースでは、消滅会社の解散登記および新設会社の設立登記の申請が求められます。

⑦事後開示事項を備え置く

合併における存続会社では、効力発生日後に遅滞することなく、消滅会社から承継した権利義務・その他の事項を記載した書面もしくは電磁的記録を作成しなければなりません。加えて、効力発生日から6カ月間にわたり、作成した書面を本店に備え置く必要があります。

【関連】合併の手続きについて解説します

合併における登記申請と必要書類

合併における登記申請と必要書類

合併の際は登記が必要ですが、これに伴い登録免許税が発生します。また、登記申請は司法書士に依頼するケースが一般的ですが、このときに司法書士へ報酬を支払わなければなりません。そこで本章では、合併における登記申請時の登録免許税・司法書士への報酬・必要書類などを取り上げます。

合併の登録免許税と司法書士への報酬

まずは、合併の登記を行った際に発生する登録免許税および司法書士への報酬をお伝えします。登録免許税は、存続会社と消滅会社によって税額が異なるため注意が必要です。

存続会社の登録免許税

存続会社の登録免許税額は、増額した資本金の1,000分の1.5で計算します。ただし、増額後の資本金が合併する直前の消滅会社の資本金を超える場合は、超えた分に対して1,000分の7で計算した登録免許税が発生する決まりです。なお、算出された登録免許税の額が3万円未満である場合は、一律で3万円とされます。

消滅会社の登録免許税

消滅会社の登録免許税は、一律3万円です。しかし、合併時に不動産の移転を行う場合は不動産登記を行う必要があるため、固定資産税評価額✕1,000分の4の登録免許税が別途発生します。

司法書士への報酬

司法書士に登記を依頼した場合の報酬は、司法書士事務所ごとに異なります。そのため、一概に報酬額は述べられませんが、安価なケースでは2万円前後です。司法書士へ登記申請の依頼をする際は、必ず費用を確認しましょう。

登記申請に必要な書類

合併の登記申請の際に必要となる書類は、存続会社と消滅会社ごとに異なります。それぞれで必要な書類は、以下のとおりです。

存続会社の登記申請で必要となる書類

存続会社が登記申請を行う際は、以下の書類が必要です。

  • 登記申請書
  • 合併契約書
  • 合併契約の承認に関する議事録、あるいは証明書
  • 債権者保護手続を証する公告と催告証明書(必要に応じて合併に意義を述べた債権者の弁済金受領書あるいは債権者を害するおそれがないことを証明する書面)
  • 資本金計上証明書

消滅会社の登記申請で必要となる書類

消滅会社が登記申請を行う際は、以下の書類が必要です。

  • 登記申請書
  • 合併契約書
  • 消滅会社の登記事項証明書
  • 合併契約の承認に関する議事録、あるいは証明書
  • 債権者保護手続関係書面
  • 株券発行会社については株券提供公告を証明する書類
  • 新株予約権発行会社は新株予約権提供公告を証明する書類

ケースによって必要となる書類

ケースによっては、上記書類のほかにも以下の書類が必要となる場合があります。

  • 主務官庁の認可書
  • 簡易合併、あるいは略式合併の場合は要件を証明する書類
  • 登録免許税の算定根拠を明らかにする書類
  • 役員変更関係書類
  • 司法書士に代理を依頼するための委任状

このように、合併時の登記申請では多くの書類が必要となるうえに、ケースによってさらに増える可能性があります。司法書士への登記申請の依頼は必要書類の不備をなくす意義もあるため、報酬は発生するものの司法書士に依頼すると良いでしょう。

【関連】合併を行う際の登記とは?合併の登記書類、登記手続き、登録免許税を解説します

合併における会計処理

合併における会計処理

合併における存続会社では、状況に応じて適した会計処理(仕訳))を実施します。とはいえ、会計の専門家である公認会計士でも理解に苦戦するほど難しい分野であるうえに、例外的なケースもあることから、経営者の方が合併の会計処理を完璧に理解するのは非常に困難です。

本章では、合併における基本的な3つの会計処理に絞って、仕訳方法を簡単に取り上げます。

のれんの概要

のれんとは、M&Aの取引価格の中で、売り手側から得た資産および負債の時価を上回る部分の金額のことです。簡単にいうと、時価純資産額と買収金額の差額に当たります。ちなみに、時価純資産額を買収金額が下回った場合は、「負ののれん」が計上される決まりです。

のれんは資産・負ののれんは、負債としてそれぞれ貸借対照表に計上します。計上したのれんは、20年以内に定額法などにより算定した金額を規則的に償却していく決まりです。また、当初想定していた収益力を見込めない場合は、回収可能価額までのれんを減額する「減損処理」を実施しなければなりません。

合併により計上されるのれんは、売り手側が保有する無形資産を金銭により見積もった指標です。つまり、売り手の無形資産が高く見積もられるほど、計上するのれんの額が大きくなります。

通常取得時の仕訳

通常取得では、存続会社は消滅会社の資産と負債を時価に変換しつつ、買収価格と時価純資産の差額分をのれんとして計上する決まりです。例えば、買収金額が100百万円・受入資産が80百万円・受入負債が10百万円のケースを想定すると、以下のとおり仕訳を行えます。

借方 貸方
受入資産 80 受入負債 10
のれん 30 資本金 40
    資本準備金 60

上記のように、買収金額と時価純資産の差額に当たる30百万円は、のれんとして資産の部に計上されます。そして、買収金額(取得原価)は、資本の部(資本金や資本準備金)に計上される仕組みです。

負ののれん発生時の仕訳

負ののれんが発生した場合は、買収金額と時価純資産の差額分を負債の部に計上します。例えば、買収金額が40百万円・受入資産が80百万円・受入負債が10百万円のケースを想定すると、以下のとおり仕訳を行うことが可能です。

借方 貸方
受入資産 80 受入負債 10
    資本金 40
    負ののれん 30

上記のケースでは、70百万円の時価純資産を40百万円で取得しています。そのため、差額の30百万円は、負ののれんとして負債に計上しなければなりません。また、買収金額の40百万円は資本の部に計上します。

親会社が完全子会社を吸収合併する際の仕訳

親会社が完全子会社の吸収合併を行うケースでは、取得を目的とした合併とは異なる会計処理を実施しなければなりません。主な相違点を以下にまとめました。

  • 消滅会社の資産と負債を、時価ではなく簿価で承継
  • 消滅会社の純資産と存続会社の子会社株式との差額を、抱合株式消滅差損益として計上

例えば、受入資産が80百万円・受入負債が20百万円・親会社の子会社株式が40百万円のケースを想定すると、親会社に求められる会計処理は、以下のとおりです。

借方 貸方
受入資産 80 受入負債 20
    子会社株式 40
    抱合株式消滅差益 20

以上、合併における会計処理を簡単に紹介しました。このように、合併ではケースに応じて複雑かつ手間の大きい仕訳が求められます。これを処理するには専門的に高度な知識が必要とされるため、合併時には会計の専門家からサポートを受けることがおすすめです。

もしもM&Aによる合併の実施をご検討中でしたら、M&A総合研究所にお任せください。M&A総合研究所には、知識・経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、これまでに培ってきたノウハウを生かしてM&Aによる合併手続きをフルサポートしております。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。M&Aおよび合併に関して無料相談をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。

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【関連】合併と仕訳

合併における税務

合併における税務

本章では、合併に関する税務を取り上げます。税務の取り扱いは適格合併と非適格合併により異なるため、それぞれで求められるプロセスを順番にまとめました。

適格合併と非適格合併の相違点

合併の税務を把握するうえで、両者の相違点は知っておくべき基礎知識です。適格合併とは、合併当事会社の関係性が法人税法の定める要件に対して適格である合併をさします。

簡単にいうと、相手企業を一方的に買収するのではなく、共同事業や組織再編などを目的に掲げて合併を実行する場合は、基本的に適格合併だとみなされます。これに対して、法人税法の定める要件に対して適格でない合併は、非適格合併です。

適格合併における税務

法人税法の定めにもとづき、適格合併では資産および負債を帳簿価額で引き継ぐ決まりです。これにより、消滅会社では譲渡損益を認識せずに済むため、追加で新たな税金が課されることはありません。

また、株式のみが対価となることから、消滅会社の株主に対して「みなし配当」への課税も発生しません。つまり、消滅会社およびその株主からすると、税負担の軽減が期待できます。

これに対して、存続会社では、原則的に消滅会社の繰越欠損金を引き継げるメリットがあります。詳しく説明すると、平成13年度の税制改正以降、合併をはじめとする組織再編を行った際に、その取引が適格であれば繰越欠損金を引き継げるようになりました。

繰越欠損金とは、税法上の赤字について一定条件のもとで以後の事業年度で生じる所得から控除できる制度です。ただし、適格合併のうちグループ内再編に該当する場合、合併を行う会社がグループ化して5年経過しているかどうかで条件が変わる点に注意しましょう。

グループ化して5年経過している会社であれば繰越欠損金の引き継ぎを原則どおり行えますが、グループ化して5年未満だった場合は「みなし共同事業再編」の要件を追加で満たさなければなりません。

みなし共同事業再編の要件

ここでは、みなし共同事業再編に該当するための要件をまとめました。

  • 適格合併の当事者である消滅会社の事業と存続会社の事業がそれぞれ相互に関連していること
  • 消滅会社と存続会社それぞれの売上金額、従業員の数、あるいはこれらに準ずるものの規模の割合が5倍を超えていないこと
  • 消滅会社と存続会社それぞれの事業がグループ化した後も継続して営まれており、グループ化した時点と合併する直前の時点における事業規模が2倍を超えていないこと
  • 存続会社、消滅会社それぞれの特定役員が合併した後の会社の特定役員になっていること

上記4つの要件を満たしていれば、グループ化して5年未満の会社でも繰越欠損金を引き継げます。なお、上記の4つの要件を満たしていなくても、グループ化した事業年度の前事業年度での消滅会社の含み益が繰越欠損金を上回っている場合は、消滅会社の繰越欠損金を引き継ぐことが可能です。

また、処理されていない欠損金額が含み益を上回っていても、含み益の範囲で消滅会社の欠損金額を引き継げます。

非適格合併における税務

非適格合併では、資産および負債を合併の時点における時価で譲渡しなければなりません。そのため、消滅会社では、譲渡損益に対して税金が課されます。これに対して、存続会社側では、適格合併とは違って繰越欠損金の引き継ぎが認められていません。

以上のことから、税務を見ると、適格合併で得られるメリットの方が比較的大きいです。該当するための条件は厳しいですが、できる限り適格合併でのM&Aを目指すことをおすすめします。

【関連】適格組織再編とは?適格要件と適格組織再編の種類

合併時の会計・法務に関する注意ポイント

合併時の会計・法務に関する注意ポイント

これまで紹介したとおり、合併は非常に複雑な手法であるため、実施に際してさまざまな注意ポイントが存在します。そこで本章では、会計・法務に関する注意ポイントを3つのケースに分けてまとめました。

簡易合併・略式合併でも株主総会決議が必要となるケース

簡易合併もしくは略式合併では、株主総会の決議が求められません。これにより、手続きが簡易化されるため、より円滑に合併を進められます。とはいえ、たとえ簡易合併や略式合併であっても、例外的に株主総会の決議を省略できない可能性がある点に注意しましょう。

上記の判断には専門的に高度な知見が求められるため、M&Aの専門家にサポートを求めることをおすすめします。

不適当な合併等に該当するケース

上場企業が自社よりも大きい事業規模を持つ非上場企業を相手に合併を行う場合、「不適当な合併等」に当てはまる可能性があります。これは、上場会社が実質的な存続会社とは認められないケースのことです。詳しく述べると、不適当な合併等とは、以下のいずれかに該当する行為をさします。

  • 非上場企業が自身より規模の小さい、または経営不振状態の上場企業を買収して上場企業を存続会社とした合併
  • 上場企業と株式移転・事業譲渡・会社分割などを実施して、実質的に非上場企業の経営に取り込まれた状態でありながら上場審査を経ずに上場を維持する行為

つまり、合併後に実質的な存続性が見られないまま、一定期間内に新規上場の審査に準じた審査に適合しない場合、上場企業の上場が廃止されてしまいます。現在、経営不振企業を利用した裏口上場はかえってコストが高くなっており、検討する価値は著しく減少しているものの、該当の有無を確認しておきましょう。

逆取得として通常と異なる会計処理が求められるケース

合併では、逆取得に該当して、通常と異なる会計処理が求められるケースが存在します。逆取得とは、存続会社が消滅会社の株主に対して株式を交付した結果、消滅会社の株主の議決権総数が存続会社の株主総会で過半数に達した状態のことです。つまり、存続企業とは異なる方の会社が取得企業とされます。

例えば、消滅会社の株主が合併後に存続会社の支配株主に入れ替わるケースなどが代表的です。これを回避するには、株式譲渡によって対象企業を買収し子会社化したうえで吸収合併する施策の検討をおすすめします。

以上、会計・法務を中心に注意ポイントを取り上げました。紹介したとおり、合併には注意すべきポイントが膨大にあるため、経営者自身のみで判断せずに、M&Aの専門家に相談を持ちかけたうえでサポートを求めると良いでしょう。

【関連】逆取得とは?事例やM&Aでの活用をわかりやすく解説

合併比率における株主構成と存続会社の資本金額の決め方

合併比率における株主構成と存続会社の資本金額の決め方

本章では、合併比率の決め方と株主構成、存続会社の資本金額の決定方法を取り上げます。

合併比率とは

合併比率とは、存続会社と消滅会社における株式比率のことです。基本的に株価は会社ごとに異なっており、1:1の対等合併になるケースはそれほど見られません。例えば、存続会社Xの株式1株に対して、消滅会社Yの株式は3株といったように差が生じるのが一般的です。

合併比率を決定する際は、注意しておくべき点があります。そもそも合併比率は各会社の株式を時価で計算して対比させると算出できますが、これはあくまでも仮決定です。厳密には、お互いの株主構成の変化や株主財産の変動の発生有無など、さまざまな観点から話し合ったうえで合併比率が決定されます。

合併比率により株主が所有する株式の総数が変化すると、株主構成が大きく変わってしまう可能性があります。また、株式数が変われば当然ながら財産も変わってしまうため、結果的に株主が損失を被るおそれがあります。そのため、合併比率は株主が納得できる形で決定しなければなりません。

合併を行う際の存続会社の資本金の額の決め方

合併によって存続会社の資本金の額は大きく変わりますが、ここでは単純に存続会社の資本金に消滅会社の資本金をプラスすれば良いわけではありません。合併実施時の資本金の額を決める方法は会社法で定められており、この規定に従う必要があります。

また、合併対価が株式の場合は消滅会社の資本金・資本剰余金・利益剰余金の額をそのまま引き継げます。しかし、支配取得の合併なのか共通支配の合併なのかによって資本金の計算が変わるうえに、「節税したい」「資本金の額を大きくしたい」など経営者の意向によって資本金の額の決め方も変動するのです。

以上のことから、合併を行う際の資本金の額は、税理士や公認会計士など専門家の力を借りて決めると良いでしょう。

【関連】合併における資本金の決定

合併・組織再編をした企業事例

合併・組織再編をした企業事例

最後に、合併や組織再編を行った企業の事例として、以下の7社を取り上げます。

  1. 三菱UFJリース
  2. USEN
  3. サイバーリンクス
  4. 凸版印刷
  5. 日本ビクター
  6. 三菱UFJフィナンシャル・グループ
  7. ソフトバンク

それぞれの事例を順番に詳しく紹介します。

①三菱UFJリース

三菱HCキャピタル

三菱HCキャピタル

出典:https://www.mitsubishi-hc-capital.com/

2020年9月、三菱UFJリースは、日立キャピタルを吸収合併することで経営統合を行うと発表しました。本件合併の効力発生日は2021年4月1日であり、三菱UFJリースが存続会社・日立キャピタルが消滅会社です(統合後に「三菱HCキャピタル」に商号変更)。

両社は2016年に資本・業務提携を行っており、かねてから環境・エネルギーなど海外のインフラ投資により協業を進めてきました。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響によりリース事業は厳しさを増していることから、経営基盤の強化を目的として合併に踏み切っています。

②USEN

USEN

USEN

出典:https://usen.com/

2017年2月、音楽配信などを手掛けるUSENは、会社分割で独立した映像配信などを手掛けるU-NEXTとの再統合を発表しています。つまり、一度独立した会社と再び統合しましたが、これには事業管理体制の効率化・経営コストの削減・お互いの顧客を合わせた新規サービスの創出などの狙いがありました。

③サイバーリンクス

サイバーリンクス

サイバーリンクス

出典:https://www.cyber-l.co.jp/

2015年9月、基幹業務システムなどのクラウドサービスや移動体通信機器の販売を行っているサイバーリンクスは、流通小売業・流通卸売業・メーカー向けのインターネットEDIシステムの開発販売などを行っているニュートラルと合併しています。

これにより、サイバーリンクスは、既存事業の拡充を図るだけでなく、ニュートラルのノウハウを生かしてEDI分野への進出・新たな情報交換プラットフォームの構築なども目指しています。

④凸版印刷

凸版印刷

凸版印刷

出典:https://www.toppan.co.jp/

2014年2月、凸版印刷は、連結子会社であるトッパンシステムソリューションズを吸収合併しています。グループ内の組織再編といえる合併ですが、これにより凸版印刷はICTへの対応力や部門ごとの連携の向上を実現させました。

⑤日本ビクター

JVCケンウッド

JVCケンウッド

出典:https://www.jvckenwood.com/jp.html

2011年10月、日本ビクターは2011年にケンウッドとの合併により消滅しましたが、厳密にいうとケンウッドと株式移転を行って設立されたJVCケンウッドと合併を実施しています。2004年以降、日本ビクターは赤字が続いており、2007年よりケンウッドと経営統合を実施していました。

これは、赤字の継続により悪化した経営を立て直すための、会社再建を目的とした合併の典型例です。

⑥三菱UFJフィナンシャル・グループ

三菱UFJフィナンシャル・グループ

三菱UFJフィナンシャル・グループ

出典:https://www.mufg.jp/

かつて「三菱東京UFJ銀行」と呼ばれていた東京三菱銀行を擁する三菱UFJフィナンシャル・グループは、2005年~2006年の間に三菱東京フィナンシャル・グループとUFJホールディングスなどの企業(金融機関含め)が合併して誕生しました。

この事例では、勘定系システムの統合を確実に成功させるために合併日を3カ月ずらすなど、経営統合に十分に時間をかけていたことがわかります。

⑦ソフトバンク

ソフトバンク

ソフトバンク

出典:https://www.softbank.jp/

2006年4月、ソフトバンクは、ボーダフォンを当時の日本企業では最高額の約1兆9,000億円で合併しています。これはソフトバンクが携帯電話事業参入を計画して行った合併であり、新事業を行うための合併の典型例です。

【関連】M&A成功事例とは?大手・中小企業、スタートアップやベンチャー企業のM&A成功事例を解説

合併のまとめ

合併のまとめ

合併には吸収合併と新設合併の2種類があり、それぞれメリット・デメリットが存在します。しかし、合併には複雑な手続きや登記などが必要であるうえに、適格合併・簡易合併・略式合併などに関する専門知識も必要です。

また、合併比率や資本金の額の決め方などを当事者同士で決めるのは難しいです。そのため、合併ではM&A仲介会社などの専門家からサポートを得ると良いでしょう。本記事の要点は、以下のとおりです。

・合併とは
→複数の会社が経営統合によって1つの会社になる行為

・合併のメリット
→組織のコントロールが容易になる、組織をシンプルにできる、従業員の士気向上、対等な立場でM&Aを行える、シナジー効果を獲得できる可能性が高い

・合併のデメリット
→手続きの手間とコストがかかる、経営統合に時間がかかる、従業員の流出を招くおそれがある、株価が下がる可能性がある

・合併を行う際の手順・流れ
→合併契約書を締結する、事前開示事項を備え置く、株主総会を招集し承認を受ける、債権者保護手続きを行う、反対株主の買取請求手続きを行う、効力発生後に登記を行う、事後開示事項を備え置く

・合併時の会計・法務に関する注意ポイント
→簡易合併/略式合併でも株主総会決議が必要となるケースがある、不適当な合併等に該当するケースがある、逆取得として通常と異なる会計処理が求められるケースがある

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