2021年4月22日更新会社・事業を売る

合併の手続きについて解説します

合併の手続きは、吸収合併・新設合併など合併の種類により異なります。また簡易合併のように、手続きを簡略化できる方法も存在します。合併の手続きを実施するときは、予期せぬトラブルの引き継ぎや、シナジー効果が発揮できないといったリスクに注意することが大切です。

目次
  1. 合併とは
  2. 合併の手続きを把握しておくメリット
  3. 合併の手続きの流れ
  4. 合併の手続きを実施するときの注意点
  5. まとめ
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合併とは

合併とは

合併は、会社が他の会社と事業を統合するときに取られる手法の1つです、ひとことに合併といっても、複数種類の方法が存在します。代表的な合併には2種類あって、それぞれ「吸収合併」と「新設合併」と呼ばれています。

吸収合併とは、複数の会社が合併することで、合併を実施する当事会社の1つを存続させつつ、それ以外の会社を消滅させる合併方法です。吸収合併では、消滅する会社の権利義務が存続する会社に引き継がれます。

対する新設合併とは、合併を実施する当事会社とは別に新しく会社を設立することで、合併に参加するすべての会社を消滅させる合併方法です。新設合併では、もともと存在していたすべての当事会社の有する資産や負債が新設会社に引き継がれます。

なお、新設合併は多くの手間や費用が発生する手続きであり、実際のM&Aケースでは吸収合併が採用されることが多いです。

簡易合併や略式合併では吸収合併の手続きを簡略化できる

簡易合併や略式合併は、吸収合併の手続きを簡略化して済ませられる合併方法です。合併を実施する当事会社では、合併契約が実施される効力発生日までに株主総会を開いて決議を取る手続きが基本的に必要ですが、簡易合併や略式合併を活用すれば不要となります。

簡易合併は、消滅会社の純資産総額の割合が、存続会社の5分の1以下であるときに活用可能です。つまり規模の差が大きく、合併しても存続する企業や株主に与える影響が少ないと判断される合併では、株主総会の手続きを省略できます。

また合併を実施するときは、合併に反対する株主に株式買取請求権を与えることが基本ですが、簡易合併の場合では株式買取請求権が発生しません。そして略式合併は、存続会社が消滅会社の議決権や支配権を高い割合で有している(90%以上の議決権など)ときに活用される方法です。

つまり、すでに支配権が確定している合併では、株主総会の手続きが必要ないと判断されて省略できます。

簡易合併や略式合併を実施できないケースもある

簡易合併・略式合併ともに、合併によって会社や株主に損を与えてしまう状況では実施できません。合併は、買い手と売り手の条件が合致していることが重要といえます。

合併に最適な条件のお相手をお探しの際は、ぜひM&A総合研究所にお任せください。M&A総合研究所では、経験豊富なアドバイザーがご相談からクロージングまでフルサポートいたします。

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相談料は無料となっておりますので、合併をはじめとするM&Aの実施を検討したら、お気軽にご相談ください。

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合併の手続きを把握しておくメリット

合併の手続きを把握しておくメリット

M&Aを実施する方法の1つとして、合併は広く活用されています。しかし前述のとおり、合併にはさまざまな種類が存在しており、手続き方法は合併の種類によって多少異なっているのです。加えて、合併の手続きは複雑であり、多くの手間や時間がかかることも特徴といえます。

そのため合併の実施前には、あらかじめ手続きの流れを把握しておくとスムーズなプロセス進行につながります。ここからは、合併の手続き方法について詳しく解説していきます。

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合併の種類

合併の手続きの流れ

合併の手続きの流れ

ケースによって一部手続きが異なるものの、合併の手続きは煩雑であるだけでなく、必要書類も多いです。ここからは吸収合併をベースに、合併を実施するときに基本的に取られている手続きの流れを紹介します。

  1. 取締役会決議を実施する
  2. 合併契約を締結する
  3. 株主総会の招集通知を送付する
  4. 反対株主に株式買取請求通知・公告を実施する
  5. 官報公告への申込み・債権者保護の手続きを実施する
  6. 関連書類を備え置く
  7. 株主総会の特別決議を実施する
  8. 合併による登記変更を申請する
それぞれの手続きの流れを順番に詳しく見ていきます。

1.取締役会決議を実施する

吸収合併・新設合併ともに、合併を実施する当事会社では取締役会の承認を得る決議を実施します。もしも会社に取締役会が設置されていない場合には、取締役のうち過半数の合意を取り付けることが必要です。

2.合併契約を締結する

合併する会社の間で、合併契約を締結します。合併契約を締結するときは合併契約書が作成されることとなります。合併契約書には、記載が抜けていると無効になってしまう法定記載事項があるため、注意が必要です。吸収合併における法定記載事項には、以下の8つがあります(※の事項については、なければ記載不要)。

  1. 存続会社と消滅会社のそれぞれの商号と住所 
  2. 消滅会社の株主や社員に対して、株式・持ち分に代わる存続会社の株式や金銭などを交付する内容など(※)
  3. 増加する資本金・資本準備金の額の定め(※)
  4. 増加する資本準備金の額の定め(※)
  5. 当該金銭の割り当てに対する事項(※)
  6. 消滅会社が新株予約権を発行する場合、存続会社が新株予約権者に向けて交付する予定の当該新株予約権に代わる存続株式会社の新株予約権、または金銭の内容など(※) 
  7. 当該新株予約権、または金銭の割当てに関する事項(⑥に該当する場合。※)
  8. 効力発生日 

ちなみに法定記載事項の他に、記載しなくても効力が発生する任意の記載事項も存在しています。とはいえ、株主や債権者保護の観点から鑑みて、必要性があると判断できる事項については記載しておくと良いです。

新設合併における契約書の法定記載事項

その一方で新設合併における法定記載事項としては、以下の11項目が定められています(※の事項については、なければ記載不要)。

  1. 消滅会社の商号・住所
  2. 新設会社の目的、商号、本店所在地及び発行可能株式総数
  3. その他の新設会社の定款で定める事項
  4. 新設会社の設立時取締役の氏名
  5. 新設会社の期間設計に応じた設立時役員等の氏名・名称
  6. 新設会社が消滅会社の株主に対して交付する新設会社の株式の数、またはその算定方法並びに新会社の資本金・準備金の額に関する事項(※)
  7. 株式の割当に関する事項(⑥に該当する場合。※)
  8. 社債等に関する事項(消滅会社の株主に対価として新設会社の社債等を交付する場合)
  9. 社債等の割当に関する事項(⑧に該当する場合。※)
  10. 消滅会社が新株予約権を発行しているときは所定の事項(※)
  11. 当該割当に関する事項(⑩に該当する場合。※)

3.株主総会の招集通知を送付する

吸収合併・新設合併ともに、当事会社では合併の効力発生日までに株主から承認を得る必要があります。株主に株主総会への招集通知を送付したうえで、株主総会決議で承認を得る手続きを取ります。

招集通知は、公開会社では株主総会開催の2週間前まで、非公開会社では株主総会開催の1週間前までに送付します。

簡易合併や略式合併に該当する場合、株主総会で承認を得る必要はありませんが、各合併の要件を満たしていることを証明する書面の用意が求められます。

さらに簡易合併に反対する株主がいるときは、その株主の所持する株数が会社法で規定された株数より少ないことを証明する書類も必要です。

4.反対株主に株式買取請求通知・公告を実施する

吸収合併・新設合併は会社を消滅させる手続きであり、株主に大きな影響を与える行為です。そのため、反対株主に対して、株式買取請求権を与える必要があります。具体的には、以下の株主に対して、株式買取請求に関する通知・公告を実施します。

  • 吸収合併・新設合併に反対する旨を通知している株主
  • 株主総会で議決権を行使できない株主
  • 株主総会での決議を要しない場合、すべての株主

上記に当てはまる株主には、合併の効力が発生する20日前までに株式買取請求の通知・公告を実施します。

新設合併では消滅会社の株券などの提出通知・公告も実施する

新設合併の当事会社で株券などを発行している場合には、株主に対して「株券などを提出してもらい対価を受け渡す」旨の通知・公告を実施する必要があります。新設合併によって、新会社の株式発行手続きを取ることになるためです。

このときの通知・公告は、効力発生の1ヶ月以上前までに実施することが求められます。ただし株券発行会社の株主数が少ない場合には、株券不所持の申し出を株主全員に実施してもらうことで、公告・通知をする義務を免れます。

5.官報公告への申込み・債権者保護の手続きを実施する

吸収合併・新設合併ともに、当事会社では官報公告に申込みをして債権者に告知する必要があります。このときに債権者からの異議申し立てを受け付ける旨も知らせます。債権者への個別告知は省略できるものの、大企業が合併を実施する場合には、官報公告と個別告知をあわせて実施するケースが多いです。

なお、定款で定めた公告方法が官報による公告となっているケースでは、個別通知を省略できないので注意が必要となります。債権者異議の期間は1ヶ月以上に設定します。もしも債権者が異議を述べたときは、債務の弁済・相当の担保の提供・信託のいずれかで対応します。

しかし、意義を述べた債権者を侵害するおそれがないと判断される場合には、上記の手続きは不要です。

6.関連書類を備え置く

合併の当事会社では、債権者保護の観点から合併に関する情報を記載した書類を備え置く必要があります。備え置く書類の内容は会社法で定められています。具体的には、合併契約の内容や株主への対価に関する書類などを当事会社の本店所在地に備え置き、いつでも閲覧できる状態にします。

備え置く開始の日にちは、以下のうち最も早く到来する日です。

  • 株主総会開催の2週間前
  • 株主への株主買取請求の催告、もしくは公告のうち早く到来する日
  • 債権者保護の手続きに関する通知、もしくは公告のうち早く到来する日

7.株主総会の特別決議を実施する

株主総会決議は、合併の効力が発生する前日までに実施します。もしも種類株式を発行している場合には、それぞれ決議が必要な場合もあるため注意が必要です。ここで実施する株主総会では、特別決議による承認を得なければなりません。

株主総会の特殊決議では、議決権の過半数を有する株主に出席してもらったうえで、出席株主の議決権数の3分の2以上の賛成を得ることで承認されます。無事に株主総会で承認を得られたら、合併契約書に定められた日より合併の効力が実際に発生することとなります。

ちなみにこの株主総会で作成された議事録は、登記申請後に事後開示書類として備え置くものなので大切に保管しておく必要があります。

8.合併による登記変更を申請する

存続会社(新設会社)では、合併の効力発生から2週間以内に、登記の変更申請をします。ここでは、消滅会社側からの書類提出は求められません。あわせて効力発生後には、遅滞なく事後開示書類の備置手続きも必要です。効力が発生した日から6ヶ月が経過するまでは本店に備え置きます。

一方で消滅会社側では、効力発生から2週間以内に解散登記を申請します。以上が済めば、合併の手続きは完了です。ちなみに合併手続きには以下のような書類も必要となるので、手続きを実施する前にあらかじめ目を通しておくと良いです。

  • 資本金計上証明書 
  • 株券提供公告を証明する書面(株券を発行する会社の場合)
  • 新株予約権提供公告を証明する書面(新株予約権を発行する会社の場合)
  • 主務官庁の認可書(合併に主務官庁の認可が必要になる場合)
  • 登録免許税を算定した根拠を明らかにする書面
  • 役員変更関係書類(合併によって役員が変わる場合)
  • 債権者保護手続関係書面 
  • 合併契約の承認の証明書

以上、合併の基本的な手続きの流れを紹介しました。ここまで見てきたように、合併手続きは煩雑であるため、専門家に協力を求めながら実施すると良いです。数ある専門家のなかでも、おすすめなのはM&A総合研究所への相談です。

M&A総合研究所には、専門知識や経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、培ったノウハウを活かして合併・M&Aをサポートいたします。

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合併の手続きを実施するときの注意点

合併の手続きを実施するときの注意点

合併は事業規模の拡大といったさまざまなメリットを享受できる方法であるものの、いくつかの注意点もあります。そこで最後に、合併の手続きを実施するときの注意点として、以下の3つを紹介します。

  1. 実現しない可能性がある
  2. 予期せぬトラブルを受け継ぐことがある
  3. シナジー効果が得られないおそれがある
それぞれの注意点と対処法について、順番に見ていきます。

1.実現しない可能性がある

合併は当事会社が合意すれば、すぐに実現できるというものではなく、状況によっては実現しない可能性があります。

前述のとおり合併の承認を受ける株主総会では、反対する株主に株式買取請求権が与えられます。つまり、反対する株主が株式買取手続きを実行することで、議決結果が揺らぐおそれがあるのです。

また債権者側からも、官報公告・個別の催告・日刊紙・電子公告などで異議申し立ての手続きを実施するケースがあり得ます。このように合併手続きの過程では、反対者が意見を表明する機会が保証されているのです。

合併を交渉するときには、あらかじめ念入りに協議をしておかないと、合併手続き中に頓挫するおそれがあるため、注意が必要です。

2.予期せぬトラブルを受け継ぐことがある

合併では、良くも悪くも消滅する企業の権利義務を全て引き継ぎます。そのため予期せぬトラブルを受け継いでしまうおそれがあるのです。具体的には、簿外債務・取引先とのトラブル・不要な契約・改善されていない問題点などです。

合併では、こうした不要かつマイナスの資産まですべて引き継いでしまうのです。場合によっては、合併の手続き後にトラブルが発覚し、会社の運営に深刻な影響を及ぼすおそれもあります。このようなトラブルをあらかじめ回避するためにも、合併は慎重に検討する必要があります。

3.シナジー効果が得られないおそれがある

異なる企業同士の合併で最も期待されるのがシナジー効果です。ところが、期待していたシナジー効果が予想外に発揮されないといったケースもあり得ます。合併は異なる企業同士が統合する行為であり、組織内のルール・タスク・システムなどを一新する必要があります。

統合手続きが滞ることで、日常の業務にまで大きな支障が出てしまうおそれがあります。これにより、合併が従業員のモチベーションに悪い影響を与えるリスクも発生します。もちろん、必ずしも従業員のモチベーションが低下するわけではありません。

しかし、従業員はこれまで異なる企業文化で仕事してきており、摩擦が発生する可能性は決して低くありません。業務のスタイルや習慣にわずかな差異があるだけでも、ストレスを感じることがあります。従業員が合併を望んでいないなら、退職者が続出する事態につながりかねません。

したがって合併を検討するときは、従業員との情報の共有や心象の調整は事前に確認しておきましょう。退職者を出さないためには、合併する企業間で給料や待遇に差を作らないことがポイントです。合併を実施するときは、給料の低い会社が給料の高い会社に合わせるケースが多いです。

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まとめ

まとめ

合併は実施するメリットが多く魅力的である一方で、その手続きは複雑です。いかなる手続きが必要となるのか、手続きではいかなる点に注意すべきかをしっかりと把握しておくことが必要となります。この記事の要点をまとめると、以下のとおりです。

  • 合併の種類→吸収合併・新設合併・簡易合併・略式合併がある
  • 合併の手続き→煩雑であるだけでなく、必要書類が多い
  • 合併の注意点→合併が実現しない可能性・トラブルを受け継ぐリスク・シナジー効果が発揮できないおそれ

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