2024年5月21日更新会社・事業を売る

株式交換契約書の記載事項とは?注意点や手続きの流れ・実際に交わされた契約書などを徹底解説【テンプレート有】

株式交換契約書の記載事項とは、どのようなものでしょうか。この記事では、株式交換の法務や手続き、注意点などについて解説します。インターネットで株式交換契約書のひな型などが無料でありますが、弁護士やコンサルタントに相談しましょう。また、実際のM&Aで交わされた株式交換契約書をご紹介します。

目次
  1. 株式交換の手続き・流れ
  2. 株式交換契約書とは
  3. 株式交換契約書の記載事項・書き方
  4. 株式交換契約書の作成に関する注意点
  5. 株式交換契約書の理解に役立つ事例
  6. 株式交換契約書の記載事項まとめ
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株式交換の手続き・流れ

まずは、株式交換における一連の流れを紹介します。株式交換は取得している株式総数によって株主総会がスキップできますが、行う必要のあるプロセスはいくつかあるのでしっかり把握しましょう。

①株式交換契約の締結

株式交換を行う会社同士で株式交換契約を締結します。お互いの会社が適切なシナジー効果を得られる契約にすることはもちろん、株主に損失が発生しないよう考慮しましょう。

作成した株式交換契約は、締結前に各会社における取締役会の承認を得なければならないので注意してください。

②事前開示

事前開示しなければならない内容は株式交換契約の内容および法務省令で定められている事項と決まっています。

その際、それらが記載されている書面や電磁的記録を事前開示しますが、事前開示は株式交換の効力が発揮してから6ヶ月を経過するまで本店に備えましょう。

③株主総会の承認

株式の取得率が低い場合は、株式交換契約について株主総会の承認を得る必要があります。

ただし、株式交換を行う会社が対象会社の株式における3分の2以上を取得し議決権を持つ場合や、対象会社の株式90%以上を取得している特別支配会社の場合は株主総会を省略することが可能です。

株式の大半を持つ場合は会社の意向どおりになるため、株主総会を開催するメリットがないからです。株式交換を行っても承継される純資産の総額が少なく、株主への影響が小さい状態の組織再編に留まる場合なども株主総会を省略できます。

完全子会社・完全親会社の手続き

まずは、子会社になる企業の株式交換手続きを簡単に紹介します。子会社になる会社は、効果が発生する日の前日までに、株主の多数決で株式交換の契約を承認しなければなりません。

もし、この子会社が株式を公に売買していて、株式交換の対価の一部が特定の条件の株式の場合、株主の特別な決議が必要です。さらに、もし子会社が特定の種類の株式を持っていて、交換の対価の一部が特定の条件の株式の場合、その種類の株式を持つ株主の特別な承認も求められます。

次に、親会社になる企業の株式交換手続きを紹介します。親会社になる会社も、効果が発生する日の前日までに、株主の多数決で株式交換の契約を承認しなければなりません。もし親会社が子会社の株主に支払う金額が、子会社の株式の合計金額を法で定められた金額を超える場合、取締役はその理由を株主に説明しなければなりません。

そして、親会社が特定の種類の株式を持ち、子会社の株主にその特定の株式を交付する場合、その種類の株式を持つ株主の特別な承認が求められます。

④反対株主などの株式買取請求など

株式交換では、反対株主に株式買取請求権が認められています。株式買取請求権とは、株主が持つ株式を公正な価格で買い取るよう請求できる権利をさします。

反対株主から株式の買い取り請求がなされた場合、企業と株主との間で協議がまとまったときは、再編行為の効力発生日より60日以内に企業は支払をしなければなりません。

また、買取価格について組織再編の効力発生日より30日以内に協議がまとまらなかったときは、企業および株主は一定の期間内であれば裁判所に対して公正な価格の決定を求める申立てができます。

⑤債権者異議手続き

次は、債権者異議手続きを行います。ただし、株式交換では当時会社の財産に動きがないため、債権者異議手続きは基本的に不要です。

⑥株式交換の効力発生

株式交換契約で決めた効力発生日に、完全子会社における発行済株式のすべてを取得します。

なお、完全子会社の譲渡制限株式を得る場合は、取得承認を効力発生日に行ったものとみなします。

⑦登記申請

株式数・資本金に動きがなければ登記申請は不要ですが、現金・新株予約権を対価とする際は、完全親会社と完全子会社が同時に申請を行わなければなりません。また、申請手続きは、効力発生日から2週間以内に済ませる必要があります。

⑧事後開示

株式交換を終えた後は、株式交換を行った完全親会社・完全子会社それぞれが法務省令で定められた事項を記載した書面を株式交換の効力発生日から本店に備えおきます。6ヶ月が経過するまで開示しましょう。

【関連】株式交換のスケジュール・手続き!期間、株主総会の手順も解説
【関連】合併と株式交換の違いとは?メリット・デメリットや事例を紹介

株式交換契約書とは

株式交換契約書とは、株式交換を実行していくプロセスで締結するものです。株式交換契約はM&A手法の一つである合併を行う際に締結する合併契約と同じ内容の必須記載事項を記載するよう会社法で定められています。

会社法で定められている以上、株式交換契約はルールに乗っ取って作成しなければなりません。

契約書にどのような事項を記載するのかわからない場合は、あらかじめ株式交換を行う段階から税理士事務所や会計士事務所、コンサルティング会社などの専門家がいる機関の協力を得ましょう。

株式交換などM&Aに関してお悩みの際は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、豊富な知識と経験を持つM&Aアドバイザーが、親身になって案件をフルサポートいたします。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります。)無料相談を行っておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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株式交換契約とは

株式交換契約は文字どおり、株式交換を行う際に当事者となる会社同士が締結する契約をさします。株式交換契約では、株式交換によって親会社・子会社の関係になる以上、あらかじめ決めた方がよい事柄がいくつかあり、それらは以下です。

  • 完全子会社となった会社の新株予約権が行使された場合、持株の比率が100%にならなくなるため、新株予約権を親会社へ承継する、あるいは取得条項の利用や新株予約権を放棄する措置など
  • 完全子会社となった会社が元々あった自分の株式を保有している場合、完全子会社にも完全親会社の株式が割り当てられることを踏まえ、株式交換の効力が発生する前に自分の株式を消却するなどの処理
  • 株式交換は合併と違ってお互いの会社が存続するため、株式交換が完了し、効力が発生した後の事柄もあらかじめ決めておく

株式交換で親会社・子会社の関係になることは、異なる企業同士が連結し、お互いにかかわり合うことでシナジー効果を発揮することでもあるため、親会社・子会社として足並みをそろえて経営することを何よりも念頭に置かなければなりません。

株式のやり取りで経営権が揺らいだり株主の損失を招いたりすると、シナジー効果が弱まってしまい、最悪の場合、親会社・子会社の関係が破綻するきっかけになります。

理想的なシナジー効果を得るためにも、株式交換契約の段階で今後の足枷になり得る要素は極力排除しましょう。株式交換契約の段階でお互いの企業がどれくらい効力発生後の将来を想定しているかが、株式交換契約において重要です。

株式交換契約書の重要性

株式交換はM&Aでも使用される手法で、株式を全て取得して対象の会社を完全子会社化します。株式交換は場合によっては株主総会を開く必要がないため、手間がかからない手法として重宝されているのです。

しかし、株式交換は株式交換契約を結ぶ必要があり、その際にしっかり契約書を作成する必要があります。会社同士の契約書である以上、その書式や内容に注意しなければなりません。

株式交換契約書の記載事項・書き方

株式交換契約書の書き方は、従来の契約書と同じ書式で問題ありません。

最近はインターネットで株式交換契約における契約書のひな型や書式が無料で公開され、ダウンロードできるのでそれを転用するのもよいでしょう。いずれも弁護士やコンサルタントなど専門家が監修して作成しているものなので、安心して使えます。

数字を記入するだけでそのまま使えるものもあるので、契約書作成の手間を大きく短縮できるでしょう。株式交換契約の契約書に書かなければならない事柄は主に以下です。

  • 株式交換の目的
  • 当事者の会社同士が交換する株式の数
  • 変更される定款
  • 資本金・資本準備金の増加
  • 株式の割り当て
  • 利益の配当
  • 株式交換の効力発生日
  • 善管注意義務

上記以外に、会社によっては株主総会に関する取り決めや株式交付金などを記載することもあります。会社によって株主総会を行っていないなど、業態の差異があるので株式交換契約は会社に併せて設定しましょう。

契約書を作成する際は、株式交換を行う当事者の基本情報、交換する株式比率など、会社法768条に則って明記します。そのため、書類作成には十分な注意が必要です。

株式交換の後は完全支配関係が生じるので、経営に問題が起きないよう法令の知識を持ち、慎重に交渉を進めなければなりません。契約締結の証拠として、本書は親会社と子会社が各2通作り、各1通を所持します。

株式交換契約書のおすすめテンプレート・雛形

上述のとおり、株式交換契約書のひな型やテンプレートはインターネット上で公開されており、無料でダウンロードして使用できます。

インターネット上で公開されている株式交換の契約書は大枠こそ大差はありませんが、記載されている項目が微妙に違っています。いずれも規定をクリアしており、専門家が監修している場合はそのまま使用しても問題ありません。

しかし、実際に行っている株式交換の内容に則したものを選ぶほうがよいでしょう。株式交換契約書でおすすめのテンプレートを以下に列挙します。

・金子博人法律事務所

・朝日中央グループ

株式交換の契約書は会社同士で交わす厳密なものなので、内容に不備がある事態になれば株式交換そのものの正当性が疑われるため、お互いの会社において不利益になるリスクがあります。

株式交換契約書のテンプレートを使う際も内容をしっかりとチェックする必要がありますが、判断に迷う場合は専門家のサポートを得ましょう。

株式交換契約書の作成に関する注意点

株式交換契約書を取り扱う際は、複数の注意点があります。株式交換を適切に遂行できるよう事前に確認しましょう。

株式交換契約書の記載事項について

会社法では、組織再編にかかわる契約に定める事項に関し、組織再編行為の法的効果に当たるものだけになりました。そのため、旧商法上で記載するべき項目がなくなります。

  • 株式交換による完全親会社における定款変更の項目
  • 株式交換契約を承認するための株主総会期日
  • 利益や配当などの上限額に関する項目
  • 株式交換前に就任していた取締役や監査役の在職期間に関する項目

記載されなくなったので、株式交換契約を結ぶ際に、上記の事項などを決める問題がなくなりました。しかし、あくまで株式交換契約とは別なので、株主総会決議とは別に、定款変更決議などを行わなければなりません。

無対価の株式交換について

無対価の株式交換とは、株式交換で完全子会社の株主に対して、完全親会社における株式などの対価を交付しない株式交換のことです。普通の株式交換とは別で、無対価の株式交換はグループ企業上で再組織化するときに実行します。

しかし、無対価株式交換は、グループ内の完全子会社が債務超過だった場合、無対価とするときに、税制適格になるかならないかという選択があります。

例えば、株式交換の際に、完全親会社と完全子会社の株式100%を1人の者が保有しており、完全親会社と完全子会社の株式交換時、株主が所有する株式価値(完全親会社)は変わりません。そのため、無対価ですが税制適格となります。

無対価の組織再編は対価の交付を省略できるため、有効な手法です。また、税制適格でなくても、無対価の組織再編ができる可能性があります。

株式交換の印紙税

株式交換は、株式という資産のやり取りである以上、税金を支払わなければなりません。印紙税では課税物件に該当する課税文書に対して課税され、株式交換の場合も印紙税が発生します。

株式交換の際、印紙税は完全親会社の資本金・資本準備金における合計額発行済み株式数の総数で除してから得た額に券面あたりの株式数を乗じ、計算した金額に応じて印紙税が課税される形です。

気を付けたいのが、株式交換では印紙税が発生することに対し、同じ名前で同じ株式をやり取りするM&Aの手法である株式譲渡では印紙税が発生しない点です。

株式譲渡契約では、交わされる金額がいくらになっても印紙税は発生しないため、株式交換契約と混同しないよう注意してください。

【関連】株式交換における適格要件や税制改正後の法律に関して解説!

株主に株式交換を通知するタイミング

株式交換に際して、反対する株主には株式の買取りを請求する権利が与えられています。このため、当事会社は株式交換が効力を発生する20日前までに、自社の株主に対して株式交換の実施と相手方会社の情報(商号と住所)を通知する義務があります。

この通知は、株主総会の招集通知が同じ株主に送られる場合には、その招集通知で代替できます。また、完全親会社が上場企業である、または株式交換に関する株主総会の承認があった場合には、通知の代わりに公告を行うことが認められています。

会社は株式交換が効力を持つ日の20日前までに、通知または公告を行う必要があります。株式交換の承認は、株式交換契約で定められた効力発生日の前日までに実施されるべきです。実務上、関係する会社の株主総会が同日に開催されることが多いですが、これは必須ではありません。また、株式交換の承認決議前に通知や公告を行うことも可能です。

必要な手続きを踏まえたスケジュール策定

株式交換を行う際には、株主総会での決議、反対株主の株式買取請求、債権者保護手続きなど、さまざまな手続きが必要になることがあります。株式交換の効力発生日は、これらの手続きを無理なく完了できる時期に設定しましょう。

また、各手続きのスケジュールを事前に立て、計画的に進めることが重要です。

株式交換契約書の理解に役立つ事例

最近は株式交換を行った会社がインターネット上で株式交換契約を公開していることがあり、情報を共有しやすくなっています。しかし、非上場の中小企業が株式交換契約を公開することはほとんどありません。ここでは、実際に行われた株式交換契約の事例をいくつか紹介します。

EduLabと教育デジタルソリューションズ間で交わされた株式交換

2020年2月20日に、EduLabと教育デジタルソリューションズが株式交換契約を締結しました。

この株式交換では、EduLabがメディア事業の強化・新たなサービスの創出を目的としています。EduLabは教育プラットフォーム事業の強化を成長戦略として掲げています。

簡易株式交換による株式会社教育デジタルソリューションズの完全子会社かに関するお知らせ

ヤマダ電機とベスト電器間で交わされた株式交換

2017年4月12日に、ヤマダ電機とベスト電器が株式交換契約を締結しました。

ヤマダ電機は家電業界での優位性を高めることが目的で、九州地区に基盤のあるベスト電器と株式交換を行いました。ヤマダ電機のスケールメリットを活かす目的もあり、意思疎通をスピーディーに行う狙いもあります。

株式会社ヤマダ電機による株式会社ベスト電器の簡易株式交換による完全子会社化に関するお知らせ

メルコホールディングスとアドバンスデザイン間で交わされた株式交換

2017年2月13日に、メルコホールディングスとアドバンスデザインが株式交換契約を締結しました。

メルコホールディングスはパソコン周辺機器の製造・販売・サービス事業の子会社を統括しています。法人向けのデータ復旧・消去サービス及び関連製品の製造販売を行っているアドバンスデザインと株式交換を行っています。

アドバンスデザイン株式会社の株式取得及び簡易株式交換による 完全子会社化に関するお知らせ

フェイスと日本コロムビアの株式交換

2017年、音楽データの商業配信事業を行う株式会社フェイスは、ミュージックソフトやゲームソフトなどの制作販売および音楽アーティストのマネジメントを手掛ける日本コロムビアと株式交換契約を締結しました。

この株式交換では、フェイスが完全親会社、日本コロムビアが完全子会社となり、契約の効力発生に先立つ2016年には日本コロムビアが上場廃止しています。

両社は2010年に戦略的パートナーシップの関係を構築しており、2014年にフェイスが日本コロムビアを連結子会社化したことで、より強固な関係を築いていました。

今回の株式交換は、事業環境の急速な変化に対応すべく資本面・事業面を一元化することが主な目的です。両社の技術や材を効率的に活用することで新たなサービス・新市場の創出をしていくとしています。

株式交換による日本コロムビア株式会社の完全子会社化完了のお知らせ

北洋銀行と上光証券の株式交換

2017年、株式会社北洋銀行と上光証券株式会社が株式交換契約を締結し、北洋銀行が完全親会社、上光証券が完全子会社となりました。(株式交換の効力発生日は2018年)

北洋銀行は、証券会社と連携による商品拡充や相談窓口のワンストップ化などを中期経営計画のひとつに挙げており、北海道の地域に密着した上光証券を子会社とすることで、多様な顧客ニーズに対応して最適なサービス提供が可能になるとしています。

また、両社が連携することで顧客基盤の拡大と経営基盤の強化が可能となるので、これらを効率的に活用することでシナジー効果の最大化を目指します。

株式会社北洋銀行と上光証券株式会社との株式交換契約締結(簡易株式交換)に関するお知らせ

株式交換比率とは

株式交換比率とは、完全親会社の株式一株に対し、完全子会社の株式がどれだけ割り当てられるかという比率のことです。会社によって一株ごとの株式価値、つまり株価は異なります。

完全親会社と完全子会社の関係にあれば、完全親会社より完全子会社の方が株式の価値は小さいことが多いです。この場合、やっかいなのは株式をどのように割り当てていくかです。

完全親会社と完全子会社における株価の差を意識しないでいると、株主(とりわけ完全子会社の株主)に思わぬ損失を招いてしまう恐れがあります。

株式会社であれば株主の利益を守らなければなりませんし、株主も自身に損失を被る恐れがあると察知した場合、株式交換そのものに反対することがあるでしょう。株式交換を行う際は、株主が損失を被ることがないよう注意を払う必要があります。

株式交換契約書の記載事項まとめ

株式交換は、上場している大企業同士では厳密に行われますが、非上場の中小企業同士の場合、株式交換契約などをしっかり作成しないケースもみられます。

しかし、会社の規模に関係なく、株式交換は会社法に則って行われるべきで、株式交換契約、そしてその契約書が正しく作成されなければ後のトラブルにもなりかねません。

株式交換を行う際は、トラブルが起きないよう契約書を正しく作成しましょう。

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