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2021年5月20日更新会社・事業を売る
株式移転計画書とは?作成方法や注意点をご紹介
「株式移転」とは、完全親会社を新たに設立するM&Aの手法の一つです。株式移転を実施する際には、まず株式移転計画書を作成しなければなりません。今回は、株式移転計画書の概要や作成方法、注意点などについて詳しく説明していきます。
株式移転計画書とは?
株式移転とは、複数社間の関係を完全親会社と完全子会社にするM&A手法の一つで、実際にも頻繁に活用されています。株式移転を実施する際の最初の手続きは「株式移転計画書」の作成です。ただし株式移転計画書は会社法にて制定されているとおり、株式移転を行う会社によって適正に作成される必要があります。
今回の記事では、株式移転計画書の概要や作成方法、注意点などについて詳しく説明していきます。まずは株式移転の意味も踏まえ、株式移転計画書の意味や特徴を説明していきます。
そもそも株式移転とは何か?
そもそも「株式移転」とは、1社または2社以上の株式会社が、発行する全株式を新たに設立する株式会社に取得させることをいいます。簡単に説明すると、A社とB社の株式を合わせた全株式を、新しく設立されたC社が取得するという流れになります。
「株式移転」のポイントは大きくわけて2つです。まず「新しく会社が設立されること」、そして、その会社が1社または2社以上の株式会社の「株式のすべてを取得する」という点です。上記の例で言えば、新しく設立されたC社は、A社とB社の全株式を取得することで2社を完全子会社化します。
また、株式移転では1社のみを完全子会社化することもできます。A社の全株式を新たに設立されたC社が取得する方法です。この場合であれば、完全子会社となるのはA社1社のみです。そして、いずれの場合であっても、C社が完全親会社になるという点は同じです。
このように、株式移転は、完全親会社と完全子会社の関係を構築する手法であり、かつ、新しく設立された会社が完全親会社となる点に特徴があります。
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株式移転と株式交換の違い
株式移転と似たM&Aの手法に「株式交換」があります。株式交換とは、ある会社の発行する株式のすべてを他の会社(株式会社または合同会社)が取得することを言います。
株式交換では、株式移転と同じように、すべての株式を他の会社が取得することによって完全親会社と完全子会社の関係が生まれます。しかし、株式交換は、すでに存在する会社において行われる手法です。株式移転のように、新しく会社を設立するわけではありません。
たとえば、株式交換によって、A社が発行する全株式をB社が取得する場合、完全親会社がB社、完全子会社がA社という関係が構築されます。したがって、新しく設立された会社が存在しない点が株式移転と異なり、すでに存在しているA社とB社において行われるものをさします。
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株式移転計画の特徴
先述したように、株式移転は「新しく会社が設立される」点が特徴です。そのため、株式移転を計画する段階で存在している会社は、将来的に完全子会社となる会社のみです。完全子会社化するその会社が株式移転計画を作成する「計画」であって「契約」ではありません。
たとえば、株式交換の場合、完全子会社となる会社と完全親会社となる会社の間で、「株式交換契約」を締結することになります。その際、将来的に完全親会社となる会社がすでに存在しているため、その会社との間で「契約」を締結するという形になります。
一方、株式移転の場合には、将来的に完全親会社となる会社はまだ存在していません。つまり、相手企業と契約を締結することができません。そのため、将来的に完全子会社となる会社だけで株式移転の内容を決めることになります。その際、作成される株式移転計画を証明する文書が「株式移転計画書」となります。
株式移転計画書の作成方法
次に、株式移転計画書の作成方法についてご紹介していきます。
株式移転の主な手続き
株式移転の主な手続きは以下の流れで行ないます。
- 株式移転計画書を作成する
- 計画に関する書面を一定期間本店に備え置く
- 株主総会の特別決議によって承認を得る
- 登記の手続きを実施する
株式移転を実施する際には、はじめに株式移転計画書を作成し、一定期間本店に備え置きます。また、株式移転をする会社は、原則として株主総会の特別決議によって株式移転計画の承認を受ける必要があります。
こうした一連の手続きを経た後、株式移転において必要な登記手続きを行います。株式移転によって新しく完全親会社を設立するには、きちんとした手続きを経て株式移転計画が作成されたことを証明するため、株式移転計画書を添付した上で、設立登記を申請する必要があります。
正確な株式移転計画書を作成するために
上記でご紹介した手続きからもわかるように、株式移転計画書というのは、株式移転計画を証明するものとして非常に重要な意味を持ちます。そのため、株式移転計画書を作成する際には、会社法上適切な株式移転計画になっているかどうかを踏まえ、一つ一つのポイントを確認しながら作成を進める必要があります。
作成にあたっては、ひな形などを参考にしつつ細かく確認する一方で、を法律家など専門家のサポートを受けつつ進めることをオススメします。
ひな形はインターネットなどで簡単に入手できますし、項目を照合しながら自社で作成することも不可能ではありません。しかし会社法の手続きは複雑で、記載する内容も煩雑です。自社だけで作成し、計画書として不備が発生するケースも少なくありません。
株式移転は、&Aでも活用される手法の一つですので、専門家サポート下で進めることをおすすめします。
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株式移転計画書作成の注意事項
ここでは、株式移転計画書を作成する際の注意事項について解説していきます。主な注意点は以下の2点です。
- 必要な記載事項をあらかじめ確認しておく
- 共同して計画を作成する必要がある
①必要な記載事項をあらかじめ確認しておく
まず、株式移転計画で定めなければならない事項は会社法で規定されています。そのため、株式移転計画書には、会社法で規定されている必要事項をすべて記載する必要があります。
必要事項が一つでも漏れていれば、会社法に基づいて株式移転計画を作成したことになりません。したがって、株式移転計画で記載する事項を事前に確認しておく必要があります。
②共同して計画を作成する必要がある
株式移転は、1社または2社以上の株式会社が実施するものです。株式移転を実施する会社が1社だけであれば、当然その1社が株式移転計画を作成することになります。一方、2社以上の株式会社が株式移転を行う場合は、その2社以上の株式会社が共同して株式移転計画を作成しなければなりません。
つまり、当事者となる会社のうち、1社だけが計画を作成するということはできないのです。元来、2社以上の株式会社が株式移転を実施することは、共同して株式移転をすることを意味します。そのため、株式移転を計画する段階でも、当然共同して計画を作成しなければなりません。
当事者が1社でも抜けた状態で株式移転計画を作成しても、その計画は認められません。当事者が知らないところで計画を決めることはできないため、共同して株式移転計画を作成する必要があります。
株式移転計画書の記載事項
次に、株式移転計画書の記載事項についてご紹介します。株式移転計画書は、会社法によって記載する事項が決められています。そのため、一つ一つのポイントを確認しながら、漏れがないように作成を進める必要があります。
株式移転計画で定める主な内容
株式移転計画で定める必要のある内容をまとめると次のようになります。
- 株式移転によって設立する完全親会社の目的・商号・本店の所在地・発行可能株式総数
- 完全親会社の定款で定める事項
- 完全親会社の設立時取締役などの役員の氏名
- 完全親会社の資本金・準備金に関する事項
- 株式移転の際に完全子会社の株主に対して交付する完全親会社の株式に関する事項
- 株式移転の際に完全子会社の株主に対して交付する完全親会社の社債に関する事項
- 株式移転の際に完全子会社の新株予約権者に対して交付する完全親会社の新株予約権に関する事項
①~➃「完全親会社に関する事項」
株式移転では、完全親会社となる会社を新しく設立します。そのため、株式移転計画の段階で、新しく設立する会社の名前や所在地、役員などを決めておく必要があるのです。
具体的には、設立する会社の目的・会社名・本店の所在地・発行可能株式総数(上記①)のほか、その会社の定款で定める事項(上記②)や、その会社の取締役や監査役などの役員の氏名(上記③)、そしてその会社の資本金や準備金について(上記➃)、それぞれ株式移転計画で決めておく必要があります。
⑤~⑦「完全子会社に交付する対価に関する事項」
記載事項の⑤から⑦までは「完全子会社に交付する対価に関する事項」に該当します。株式移転において、完全子会社の株主から株式をすべて取得して完全親会社となる以上、完全親会社は完全子会社の株主に対し、対価を交付しなければなりません。
株式移転では、対価としては完全親会社の株式や社債を交付しますが、これらに関する内容を株式移転計画で決めておく必要があります(上記⑤と⑥)。
たとえば、完全親会社の株式を交付する場合であれば、その株式の数や算定方法、割当てに関する事項などを決めておかなければなりません。また、完全親会社の社債を交付する場合は、社債の種類や金額、算定方法、割当てに関する事項などを定めることになります。
さらに、株式移転にあたって、完全親会社が完全子会社の新株予約権者に対し、完全親会社の新株予約権を交付するケースもあります。こちらは株主に交付する対価とは異なりますが、完全子会社の新株予約権者に交付する新株予約権として、株式移転計画で決めておく必要があります(上記⑦)。
具体的には、交付する新株予約権の内容や算定方法、割当てに関する事項などを定め、これらの株式、社債、新株予約権に関して定めた事項を株式移転計画書に記載します。
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株式移転計画書の印紙税
印紙税とは、経済取引などで作成される文書に課される税金のことをさし、その文書の作成者が収入印紙を貼り付けることで印紙税を納めています。しかし、株式移転計画書の場合は、基本的に印紙税は不課税となります。これは、他の組織再編と比較するとわかりやすいでしょう。
たとえば、合併と会社分割の場合、合併契約書、吸収分割契約書、新設分割計画書においては、1通または1冊につき印紙税額が4万円となっています。一方で、株式交換契約書や株式移転計画書は、印紙税額の一覧表に文書として記載されていないので、印紙税は不課税となります。
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まとめ
株式移転は、1社または2社以上の株式会社が、発行する全株式を、新たに設立する株式会社に取得させるという手法であり、会社間で完全親会社と完全子会社の関係が生まれます。
そのため、株式移転では、契約ではなく株式移転計画書を作成する形で内容を決めることになります。株式移転計画書の記載内容は、会社法により決められているため、法律家などの専門家のサポートを受けつつ、一つ一つのポイントを確認しながら作成することが重要です。
要点をまとめると下記の通りです。
・株式移転計画書とは?
→株式移転を行う会社が作成する計画書で、記載事項は会社法で定められている
・株式移転とは?
→1社または2社以上の株式会社が、発行する株式のすべてを、新たに設立する株式会社に取得させること
・株式移転と株式交換の違い
→株式移転は会社が統合して新しい会社を設立すること、株式交換はすでに存在している会社に統合されること
・株式移転計画の特徴
→新しく会社が設立されるため、「契約」ではなく「計画」であること
・株式移転の主な手続き
→株式移転計画を作成する、関連書類を備え置く、株主総会の特別決議を得る、登記の手続きを実施する
・株式移転計画書作成の注意点
→必要な記載事項をあらかじめ確認しておく、複数社による計画の場合はすべての会社が共同して計画を作成する必要がある
・株式移転計画書の記載事項
→完全親会社に関する事項、完全子会社に交付する対価に関する事項
・株式移転計画書の印紙税
→株式移転計画書の場合は、基本的に印紙税は不課税
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。