M&Aとは?目的・メリットから手法、最新動向までわかりやすく解説
2025年9月23日更新会社・事業を売る
M&Aにおける株式譲渡承認請求書作成ガイド|必要性・記載例・手続きの流れを解説
M&Aプロセスにおいて、非上場株式の譲渡には株式譲渡承認請求書が必要となるケースがあります。本記事では、その必要性や作成方法、手続きの流れを分かりやすく解説します。スムーズなM&Aを実現するために、ぜひご活用ください。
目次
株式譲渡承認請求書とは?M&Aにおける役割を解説
株式譲渡承認請求書とは、非上場会社の株式を第三者に譲渡する際に、譲渡先の承認を得るために提出する書類です。M&Aにおいては、定款で株式の譲渡制限が設けられている場合に必要となります。この承認を得ずに譲渡を行うと、無効となる可能性があります。
上場株式と非上場株式
通常、株式は「上場株式」と「非上場株式」の2種類に分かれます。「上場株式」とは、一般の投資家を含めて自由に取引できるもので、取引が制限されません。「非上場株式」は、ほとんどの中小企業に見られる株式で、株主から許可を得ない限り、一般の投資家は取引できません。
株式は経営権を左右するため、発行する株式に譲渡制限を設けている会社がほとんどでしょう。譲渡制限を株式に設けることで、経営権を守れるからです。
しかし、株式に譲渡制限を設けている場合は、株主が亡くなった際に株式を相続し名義を変える必要が出てきます。また、名義変更に伴い、後継者に経営権を移譲するため、譲渡制限株式を譲渡しなければなりません。このときに必要な書類が「株式譲渡承認請求書」です。
株式譲渡承認請求書の効力
会社法の改正により、承認の可否を問う株主総会または取締役会の開催期限に関する規定は撤廃されました(2021年3月1日施行)。ただし、定款で別途期限が定められている場合は、その期限に従う必要があります。
ここまで聞くと、株式譲渡承認請求書は強力な書類のように思えるかもしれませんが、実際は、事前に株主と会社の経営陣との間で協議しているケースがほとんどです。そのため、あくまで株式譲渡承認請求書は形だけで、すでに株式譲渡自体は認可されている場合が多いでしょう。
会社にとって望ましくない人物に株式譲渡される場合、つまり会社が株式譲渡請求を不承認にする際は、会社側から取得する人物を指名できます。このようなケースでは、株式を買い取る必要があり、手続きが変わってくるため注意が必要です。
M&Aにおける株式譲渡承認請求書の必要性とは?
法律上、書面での請求が必須とされているわけではありません。しかし、書面で作成することで、後々のトラブル防止に繋がります。主なメリットは以下の通りです。
株式譲渡承認請求のときに株式譲渡承認請求書を用いらなければ、不承認のときの対応が記載できない、株式譲渡承認請求をしたことを証明できない、などの不都合が生じます。そのため、株式譲渡承認請求は書面で行うほうが良いでしょう。
株式譲渡承認請求の手続きの流れを解説
株式譲渡承認請求の流れを見ていきましょう。
最初に会社へ株主が株式譲渡承認請求をします。譲渡を否認するときは、会社か指定買取人による株式の買取を請求できるのです。譲渡の承認は定款にある機関が決めますが、機関が定まっていないケースでは取締役会、取締役会がなければ株主総会が承認するか否かを決めます。
株式譲渡承認請求を受けた会社は、請求された日から2週間以内に株主へ通知する流れです。期間内に通知しなければ、承認とみなされます。
株式譲渡承認請求書の作成ポイント|記載事項と押印について
ここでは、株式譲渡承認請求書を作成するうえでのポイントを解説します。
株式譲渡承認請求書の記載事項
株式譲渡承認請求書を作成する際に、不可欠な要素は以下の3点です。
- 譲渡する株式の種類と数
- 譲渡する側の株主の氏名・住所・印鑑
- 譲り受ける側の氏名・住所
実際に株式譲渡承認請求書を作成する際は、インターネット上に掲載されているテンプレートを参考に作成することをおすすめします。
譲渡する株式の種類と数
株式の種類は、普通株式、優先株式、劣後株式などです。普通株式がメインとして使われます。優先株式は配当や残余財産の分配などで普通株式より優先順位が高くなる株式、劣後株式は配当や残余財産の分配などで普通株式より優先順位が低くなる株式です。
株式の種類と数を記し、株式譲渡の契約書を確認して間違いのないよう注意してください。
譲渡する相手に関する情報
譲渡する相手に関する情報として、氏名、住所を記しましょう。株式譲渡の契約書を確認して、誤りがないよう記載してください。
実印の押印(場合によっては)
通常は認印で問題ありませんが、会社の定款で実印が必要とされている場合は実印を押印する必要があります。事前に定款を確認しておきましょう。
実印は印鑑証明書とセットで効力を生じ、本人が押印したことを証明するので、実印は慎重に使うことが多いです。
認印も実印も、同じ法的効力を持ちますが、認印は、自分が押していない、自分の印鑑ではないなどと主張されると、それを立証するのは簡単ではありません。
実印を求められても拒否できますが、トラブルが生じると実印ではなかったためにトラブルが悪化することもあるので、特別な理由がなければ実印を押しましょう。
不承認の際の対応
株式譲渡が不承認になると、会社か指定買取人が株式を買い取ります。不承認の際の対応に関して、株式譲渡承認請求書に明記してください。そうすれば、期限内に対応することを促すことが可能です。そして、株式譲渡が円滑に進むでしょう。
株式譲渡承認請求書の記入例
株式譲渡承認請求書の書き方を見ていきましょう。下記を参考にしてください。ただし、これはあくまで一例です。
単独で譲渡請求できる条件
株式譲渡は原則、譲渡する株主と譲渡される相手の共同で請求します。株式譲渡があくまで個人間のやり取りであっても、他の株主に影響を与え、最悪な場合は損害を発生させる恐れがあるからです。
ただし、譲渡する株主に対して株式譲渡承認を請求する判決が出ている場合は、その旨を証明する書類を提供すれば単独で譲渡請求できます。また、株式譲渡承認請求書が不承認にされ、会社から指名する買い取り相手になった場合は、その旨を記載する必要があります。
事前協議が成立している場合は手間がかからない
株式譲渡承認請求書はシンプルな書類であるものの、株式譲渡において非常に重要な書類です。株式を発行している会社との事前協議が成立していれば、先方のアドバイスを得たうえで書類作成できます。そのため、あまり手間がかかりません。
一方、事前協議が成立していない状態で株式譲渡請求承認書を送る際は、弁護士や税理士などプロのアドバイスを得ることをおすすめします。
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株式譲渡承認請求書の提出後の手続き
この章では、株式譲渡承認請求書の提出後における手続きについて見ていきましょう。
譲渡が承認されたケース
株式譲渡が承認されたケースでは、株主名簿に記された株主の氏名を譲受人へ変更するよう請求します。株式譲渡承認請求のみでは、譲渡制限株式の譲渡ができません。
株式譲渡契約を結ぶと株式の譲渡が可能です。しかし、譲受人が会社へ株主としての権利を主張する際、株主名簿に譲受人の氏名が載っていなければなりません。
株主名簿書換請求とは、株主名簿における氏名の変更を請求することをいい、譲渡人と譲受人が行います。株式譲渡承認請求と株主名簿書換請求の順序は替えられません。
会社は、株式名簿書換請求の否認はできません。つまり、株式譲渡承認請求が承認されると、手続きを行うのみで株式譲渡が実現できます。ただし、株主名簿に氏名が載っていなければ、株主の権利を主張できないので、手続きを後回しにしないでください。
譲渡が承認されなかったケース
次に、譲渡が承認されなかったケースの手続きを見ていきましょう。このケースでは、譲渡制限株式を譲渡できません。しかし、会社が株式譲渡承認請求を否認し続けていると、株式の換金やオーナー経営者の退任などが行えません。
そこで、株式譲渡を承認請求した株主は、株式を指定買取人または会社が買い取るよう求められます。会社が株式を買い取れば自己株式の取得となるので、分配可能額の制限を受けるでしょう。
会社が株式を買い取るケースでは、株式譲渡承認請求を否認してから40日以内、指定買取人が買い取る場合は10日以内に、買い取る株式数と買取の旨を株主に通知する必要があります。これを行わなければ、株式譲渡承認請求を承認したことになるのです。
会社が指定買取人による買取を選ぶケースでは、取締役会の決議もしくは株主総会の特別決議を要します。また、指定買取人として指定されたことを本人が、株主へ知らせます。
株式譲渡の注意点
株式譲渡承認請求書を作成する際は、株式譲渡の注意点について押さえておくことが重要です。ここでは、株式譲渡の注意点について見ていきましょう。
- 知識を習得し正当性にも配慮する
- 税金が発生する
①知識を習得し正当性にも配慮する
株式譲渡を実施する際は、株式譲渡に関する知識を事前に習得し、譲渡そのものの正当性にも配慮することが非常に重要です。
とりわけ株式譲渡承認請求書を作成する必要がある非上場株式は、発行している会社が中小企業であるケースがほとんどです。そのため、株式譲渡の際は、役所などをとおす必要がなく、公的な目線がない状態で取引が進みます。つまり、株式譲渡の正当性について法的に証明することが困難です。
中小企業の中には、株式や株主の管理が雑になっている企業も少なからず存在します。会社法をきちんと理解していない人が経営陣にいるケースも十分にあり得るでしょう。
そのため、株式譲渡を実施する側も承認する側も、知識不足や管理の悪さが原因で誤った株式譲渡を実施してしまう可能性があります。
このように、株式譲渡を実施する際は、株式譲渡に関する知識を習得し、正当性にも配慮して実施する姿勢が重要です。少しでも不安を感じる場合は、弁護士などのエキスパートを介在させましょう。
②税金が発生する
「株式譲渡があくまで個人間のやり取りであるなら、税金は発生しないのでは?」と思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、株式譲渡では基本的に税金が発生します。
実際の株価と全く異なる金額で株式譲渡が実施された場合は、利益が生じるため、税務面で問題が発生する可能性があるのです。従って、税務関係に関する協議は、株式譲渡承認請求書を出す前に実施する必要があります。
M&Aにおける株式譲渡の類型
M&Aにおける株式譲渡には、いくつかの類型が存在します。それぞれの特徴を理解することで、最適な方法を選択することが可能です。
株式交換
株式交換とは、ある会社の株式を他の会社に取得させる代わりに、その会社の新株を割り当てる方法です。被取得会社は消滅しますが、事業は存続します。
株式移転
株式移転とは、新たに設立する会社に、既存の会社の株主が株式を譲渡する代わりに、新会社の株式を取得する方法です。既存の会社は消滅し、新会社が事業を承継します。
第三者割当増資
第三者割当増資とは、特定の第三者に対して新株を発行し、資金を調達する方法です。M&Aにおいては、買収企業が被買収企業の株式を取得する手段として利用されます。
株式譲渡承認請求書のまとめ
株式譲渡承認請求書の作成自体は、さほど手間ではありません。しかし、株式譲渡で重要なのは、株式譲渡承認請求書を作成する前段階です。
会社側との事前の協議がすでに完了していれば、そこまで手間はかかりませんが、そうでない場合は、トラブルを発生させるリスクがあります。そのため、株式譲渡承認請求書の作成も含め、株式譲渡の際は専門家の力を借りましょう。
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。