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2021年4月28日更新会社・事業を売る
無償の株式譲渡とは?無償株式譲渡の手続きと税金
株式譲渡を無償で行う場合、通常の株式譲渡とは異なる点がいくつか存在します。無償株式譲渡に関する手続きや、個人株主が無償株式譲渡を行った場合に課される税金、法人株主が無償株式譲渡を行った場合に課される税金、無償株式譲渡契約書の内容などについて解説します。
無償の株式譲渡
通常の株式譲渡では、株式価値の対価を支払う形で実行されます。一方、無償で株式譲渡が行われるケースも存在します。
株式譲渡を無償で行う場合、通常の株式譲渡とは異なる点がいくつか存在します。特に税金面では、大きな違いが生じます。そのため、無償での株式譲渡を実施する際、無償譲渡特有の税制について把握する必要があります。
この記事では、無償株式譲渡における手続きや税金について詳しく説明します。
また、無償株式譲渡では、「契約書の作成が必要かどうか」という点も議論となります。無償株式譲渡における契約書の必要性についても、併せて解説します。
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無償の株式譲渡を行うための手続き
まず最初に、無償株式譲渡を行うために必要な4つの手続きを順に解説します。
- 無償株式譲渡契約書の締結
- 株主総会または取締役会における譲渡承認
- 株式の無償譲渡実行
- 株主名簿の書き換え
基本的には、通常の株式譲渡と手続きはほぼ同じです。
株式譲渡は、M&Aの手法の1つです。実行するなら売り手選びは重要となります。条件はもちろん、交渉する際の相性も、交渉を円滑に進めるポイントになるのです。
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①無償株式譲渡契約書の締結
まず初めに、無償株式譲渡契約書を締結します。無償の株式譲渡は、親しい関係間で行われるケースがほとんどです。そのため、通常の株式譲渡とは違い、デューデリジェンスやトップ面談のプロセスは省略できます。
無償譲渡契約書に関しても、作成しなくても法律上の問題ありませんが、可能な限り作成しておくことをおすすめします。契約書の作成プロセスをスムーズに進めるためには、専門家のサポートが有用です。
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②株主総会または取締役会における譲渡承認
次に、株主総会または取締役会にて、無償譲渡を承認する手続きを行います。
- 取締役会設置会社の場合:原則、取締役会にて承認
- 取締役会不設置の場合:株主総会での承認
この際、議事録の作成もしておきましょう。無償譲渡の場合は、口約束だけで終わらせるケースが多いです。ただ、後に生じ得るトラブルを回避するためにも、議事録に承認された旨を残しておくことが必要となります。
③株式の無償譲渡実行
取締役会で承認したら、無償の株式譲渡を実行します。対価(現金)の支払いがないため、ここまでの手続きは1〜2日で完了することが可能です。
④株主名簿の書き換え
無償の株式譲渡では、このプロセスが最も重要となります。株券を発行している会社であれば、株券交付によって手続きは終結します。しかし、株券不発行の場合は、株主名簿の書き換えが必要です。
無償で株式譲渡するため、書き換えは忘れられてしまうことが多いです。万が一、名簿の書き換えを行わなかった場合、譲受側は正式な株主として認められない可能性があります。最後のプロセスになりますが、忘れずに必ず書き換えを実施しましょう。
以上の4つの手続きで、無償株式譲渡に必要な手続きは完了です。通常の株式譲渡と比べると、時間や手間を少なくすることができます。
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無償株式譲渡で課される税金
ここからは、無償株式譲渡で生じる税金に関してご説明します。全部で4種類あり、ケースによって生じる税金が異なります。
- 個人から個人への無償株式譲渡で発生する税金
- 個人から法人への無償株式譲渡で発生する税金
- 法人から個人への無償株式譲渡で発生する税金
- 法人から法人への無償株式譲渡で発生する税金
①個人から個人への無償株式譲渡で発生する税金
個人の株主が、他の個人に無償で株式譲渡するケースです。例えば、代表取締役の方が他の役員に無償で株式譲渡するケースなどが該当します。
- 譲渡側:課税されない
- 譲受側:贈与が110万円を超える場合は課税される
譲渡側の税金
株式も資産なので、当然価値を持っています。本来、価値がある株式を無償で譲渡するため、譲渡する側は損をすることとなります。そのため、基本的には譲渡側に税金は課されません。
例えば、時価1,000円の株式を100株分無償譲渡した場合、1,000×100=100,000円のマイナスとなります。マイナスとなるため、所得税が発生しないわけです。
ただし、1点注意が必要です。無償株式譲渡で生じた譲渡損失は、存在しなかったものとしてみなされます。つまり、他の譲渡所得との損益通算はできません。
譲受側の税金
無償で株式譲渡を引き受けた側は、受け取った価額に対して贈与税が課されます。ただし、他に贈与された資産と合わせて年間110万円以下の場合には、贈与税は課されません。
つまり、下記の場合に贈与税が発生します。
- 無償株式譲渡で受け取った価額+それ以外に受け取った資産の価額≧110万円
なお、非公開株式の株価は、会社ごとに適切な方法を用いて算出します。専門的な分野になるため、ご自身で判断せず、税理士に株価算定を依頼しましょう。
②個人から法人への無償株式譲渡で発生する税金
次に、個人から法人への無償譲渡で生じる税金について説明します。数少ないケースではありますが、念のため知っておくことをおすすめします。
- 譲渡側:所得税が課税される
- 譲受側:法人税が課税される
それぞれに課税される税金について、詳しくご紹介します。
譲渡側の税金
無償で株式譲渡するため、先ほどと同じように税金は発生しないと思っている方も少なくありません。しかし、法人に対して譲渡する場合は、無償であっても所得税が課税されます。
具体的には、株式譲渡時の時価をもとに、所得税が発生します。例えば、時価が1,000円の株式を100株分無償譲渡する場合、合計金額の100,000円に対して所得税が課税されます。
このとき、わかりやすくするために、譲渡費用や取得費用は0円としています。
譲渡所得の税率は、金額に関係なく20.315%と設定されています。よって、このケースにおいては、下記の通り納税額が計算されます。
- 100,000円×20.315%=20,315円
譲渡先が個人か法人かによって、無償株式譲渡で生じる税金は異なるため、注意が必要です。
譲受側の税金
株式の無償譲渡を引き受ける法人側には、法人税が課されます。法人税は、時価×株式数分の金額をもとに計算されます。
無償譲渡で引き受けた際は、時価×株式数分が全て受贈益とみなされるということになります。
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③法人から個人への無償株式譲渡
会社側が保有する株式を、役員などの個人に対して、無償譲渡するケースです。
- 譲渡側:法人税が課税される
- 譲受側:給与所得、または一時所得が課税される
それぞれに課税される税金について、詳しくご紹介します。
譲渡側の税金
法人は、譲渡した株式の時価に対し、法人税が発生します。また、譲受する個人との雇用関係の有無によって、扱いが変わります。
- 雇用関係あり:賞与
- 雇用関係なし:寄付金
譲受側の税金
一方で、譲受側は、時価×株式数の金額に対して所得税が課税されます。ただし、この場合の所得は、譲渡所得とはなりません。
- 譲受人が法人の従業員や役員の場合:給与所得
- 従業員や役員でない場合:一時所得
譲渡側によって、所得の分類が異なります。どちらにしても、税金が課されるので要注意です。
④法人から法人への無償株式譲渡
法人が法人に無償譲渡するケースをご説明します。
- 譲渡側:法人税が課税される
- 譲受側:法人税が課税される
それぞれに課税される税金について、見ていきましょう。
譲渡側の税金
譲渡側に課される税金は、「個人から法人に譲渡される」ケースと同じです。つまり、時価と取得価額の差額に法人税が発生します。法人税の税率は、20.315%です。
また、時価×株式数で計算される価額部分は、寄付金となります。
譲受側の税金
法人が無償で株式譲渡を引き受ける場合、時価×株式数の金額が「有価証券受贈益」と見なされます。その有価証券受贈益に対して、法人税が課されます。
無償株式譲渡で課される税金一覧
以上で、無償株式譲渡で生じる税金の説明が完了しました。ここまでをまとめると、以下のようになります。
譲渡側 | 譲受側 | |
個人→個人 | 課税なし | 贈与税 |
個人→法人 | 所得税 | 法人税 |
法人→個人 | 法人税 | 給与所得、または一時所得 |
法人→法人 | 法人税 | 法人税 |
通常の株式譲渡と比べて、税金面で不利となる場合もあります。
一見すると、無償譲渡は有利に思えるかもしれません。しかし、今回ご紹介した通り、多額の税金が発生する恐れがあります。有償と無償どちらが有利かは、試算しないとわかりません。
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無償株式譲渡のメリット
無償株式譲渡には、2つのメリットがあります。
- 手続きが簡単である
- 事業を継続することができる
①手続きが簡単である
株式譲渡は、事業譲渡や会社合併などの手続きと比較して、手続きが簡単というメリットがあります。
また、無償株式譲渡では、売買取引ではありません。そのため、対価が支払われる株式譲渡よりも、手続きをより簡単に済ませることが可能です。
②事業を継続することができる
事業譲渡の場合には、事業に関する引継ぎが必要となります。さらに、会社を合併する場合には、会社自体がなくなってしまうのです。
一方、無償株式譲渡は、株式を譲渡することで経営権を持つ株主が変わるだけです。手続き中に組織内の再編成はありません。そのため、株式譲渡の手続き中にも、事業を継続することができるのです。
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無償株式譲渡を行う際の注意点
無償株式譲渡を行う際には、3つの注意点があります。
- 株券発行会社なら、株券を交付する必要がある
- 株券を譲渡する際に税金がかかる
- 譲渡契約の手続きについては、自分で確認する
①株券発行会社なら、株券を交付する必要がある
現在、株券不発行会社が増加しています。つまり、株券を発行しないケースが多いのです。
一方、株券発行会社とは、株式に係る株券を発行するという内容を定款で決めている株式会社を指します。株券発行会社は、譲渡側と譲受側の合意で、株式譲渡を行うことが可能です。
株券発行会社の場合には、株式譲渡を行う際に株券を交付する必要があります。株券交付をしないと、株式譲渡が認められないのです。株券の発行について定めた内容を、しっかりと確認しましょう。
②株式を譲渡する際に税金がかかる
前述したように、株式譲渡には税金が発生します。発生する税金は、譲渡側と譲受側が、法人か個人かによって異なっていて、とても複雑な仕組みになっているのです。
株式譲渡を無償で行う際には、専門家に相談することをおすすめします。
③譲渡契約の手続きについては、自分で確認する
株式譲渡の手続きは、公的な手続きが全くないので、「有効に手続きが完了したかどうか」は自分で確認することが必要です。
手続きの妥当性や違法性は、明確にならないことが多いです。万が一、契約でトラブルがあると、当事者同士で解決することになります。
トラブルを避けたり、トラブルをスムーズに解決したりするためにも、手順に則って株式譲渡を行う必要があります。
無償株式譲渡契約書
最後に、株式の無償譲渡契約書に関して、2つのポイントをご紹介します。
- 無償株式譲渡では契約書は必要?
- 無償株式譲渡契約書の記載内容
契約書の作成を迷っている方は、ぜひともご参考にしてください。
無償株式譲渡では契約書は必要?
無償で株式譲渡を実施する際、口約束のみで終わらせるケースは少なくありません。譲渡制限がない場合、基本的に契約書を作成しなくとも、問題はありません。
しかし、どれだけ親しい間柄であっても、無償株式譲渡契約書は作成しておくことをおすすめします。口約束だけでは、後にトラブルが生じた場合に面倒な事態となってしまいます。
契約書をしっかり作成しておくことで、トラブルがあった場合でも迅速に解決することができます。無償か有償かに関係なく、株式譲渡の契約書は作成する方が無難と言えます。
無償株式譲渡契約書の記載内容
無償株式譲渡契約書は、記載すべき内容が明確に決められているわけではありません。そこで、トラブル回避をするという観点から、下記の3つの内容は最低限記載しましょう。
- 無償で株式譲渡する旨
- 他の第三者に株式譲渡を行わない旨
- 株式譲渡の後に、名簿の書き換えを請求する旨
この3つの項目を盛り込むことで、安心して無償株式譲渡を実施できます。通常の株式譲渡契約書と比べると、非常に簡素な契約書となりますが、あるとないとでは大違いです。
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まとめ
今回は、無償の株式譲渡に関してご説明しました。通常の株式譲渡と比べると、無償譲渡は手続き面で簡単と言えます。しかし、税金面に関しては、無償譲渡の方が少し複雑になります。無償で株式譲渡を実施する際は、税金面で十分に注意しましょう。
またトラブル回避の観点から、無償譲渡契約書は作成しておくことをおすすめします。今回ご紹介した知識を、ぜひ無償株式譲渡の場面で活用してみてください。
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