産業廃棄物処理会社の事業承継とは？承継方法や流れ・成功のポイントを徹底解説！

産業廃棄物処理業界では、経営者の高齢化などを理由とした事業承継の事例が増加しています。

産業廃棄物処理業界には、人手不足や競争激化による厳しい経営環境に加えて、厳しい環境基準への対応や業務のDX化が求められており、高い技術力の維持や獲得が必要な状況です。

そこで、事業承継の中でもM&Aによって大手企業の傘下に入ったり、他社と合併したりして、事業規模の拡大による経営資源の獲得や、最新技術の獲得などが行われています。

また、環境事業への新規参入を計画している企業から、廃棄物処理に関する許認可を持っている産業廃棄物処理会社は人気があり、リサイクル事業などを展開する企業がM&Aの買い手となっている事例もみられます。

産業廃棄物処理会社で、事業承継を成功させた方がいい理由とはなぜなのでしょうか。事業承継が重要な5つの理由を解説します。

現在、多くの会社で、経営者の親族に会社の経営を引き継ぐ人がいない後継者問題が深刻化しています。

後継者問題が解決できなければ、会社を廃業するしかありませんが、事業承継は身内を後継者にする親族承継以外にも2つの方法があります。

1つは会社の従業員を後継者にする従業員承継、もう1つは他社に会社を売却するM&Aです。どちらの方法も、親族に会社を承継させることはできなくなりますが、後継者問題を解決して会社を存続させることができる解決策となります。

後継者問題を解決できずに会社を廃業することになったら、従業員は全員解雇することになります。

その後、すぐに再就職できる人もいるでしょうが、定年が近い高齢の人や特に技能などを持たない事務職員は再就職が難しい可能性もあり、路頭に迷う人も出てくるかもしれません。

会社を事業承継することができれば、従業員承継でもM&Aでも、基本的に従業員の雇用は継続されます。身内に後継者候補がいなくても、責任をもって事業承継を成功させることで、従業員の生活を守ることができるのです。

会社を廃業することになると、経営者は従業員への退職金や設備の処分費用などのコストを負担しなくてはいけません。もしも、事業の悪化による倒産の場合には、会社の株式は価値がゼロになり紙切れ同然になってしまいます。

また、会社が債務を残している場合には、倒産後に会社の破産手続きをしても連帯保証人の債務はなくならないので、経営者の返済義務は続きます。

事業承継を成功させることができれば、コスト負担も資産価値がなくなることもありません。負債も事業承継で新しい経営者に引き継いでもらえます。

事業承継によって倒産や廃業で負うことになるリスクを軽減できるのです。

利益はそれなりに出ていても、会社の運営を続ける上で負担になっている事業などがあれば、事業譲渡という形で他社に事業承継してもらうことも可能です。

事業譲渡を行えば、資金を獲得できます。また、今まで譲渡した事業に割いてきた時間にも余裕ができます。まとまった資金と時間で、新規事業の立ち上げというのも可能でしょう。

従業員承継やM&Aで事業承継を行う場合には、会社の株式を新しい経営者に譲ることになるので、元の経営者の手元にはまとまった資金が手に入ります。

事業承継で得た資金は、元の経営者が自由に使って良いものです。もしも、年齢を理由に引退する場合には、その資金を引退後の生活費に充てることもできます。

産業廃棄物処理会社を事業承継するときの流れをみておきましょう。

経営者の親族、もしくは会社の役員や従業員へ事業承継をする場合の流れは次のとおりです。

1. 事業承継に向けた準備の開始
2. 現在の経営状況と経営課題を把握する
3. 事業承継に向けての経営改善
4. 事業承継計画策定
5. 事業承継の実行
6. 事業承継後の会社の成長と発展

M&Aで事業承継する場合の流れは次のとおりです。

1. 事業承継に向けた準備の開始
2. 現在の経営状況と経営課題を把握する
3. 事業承継に向けての経営改善
4. 売却先探し
5. トップ面談と条件交渉
6. 基本合意書締結
7. デューデリジェンス
8. 最終交渉と最終交渉締結
9. クロージング

産業廃棄物処理会社の事業承継を成功させるための注意点です。

事業承継を行うためには、親族承継と従業員承継の場合は後継者育成に5年から10年程度の長い時間が必要です。経営者が引退する時期から逆算して、後継者候補選びと育成を始めることができるように、計画をしっかりと立てるように注意しましょう。

M&Aの場合は社内での後継者育成は必要ありませんが、最適な売却先探しや手続きには年単位の準備をした方が、良い条件での売却が可能です。引退するべき時期から逆算して、計画的に準備を進めるように注意しましょう。

社内での事業承継でもM&Aでも、後継者や売却先にとって引き継ぐ価値のある会社でなければ、後継者候補も後を継いでくれません。

事業承継の準備を進める中で、自社の強みをしっかりとアピールできるように分析しておきましょう。

事業承継をするときには、後継者の選び方もとても重要なので注意が必要です。

親族承継や従業員承継で身内や社内から後継者を選ぶときには、従業員や取引先から信頼される人物を見極めることが重要となります。確実に後を任せられる人物を選び、時間をかけて経営者としての育成を行いましょう。

M&Aの場合には、シナジー効果を得られる相手を選ぶことが重要です。会社を売却したあとでも働き続ける従業員が、売却先に快く受け入れてもらえるようにするためにも、売却先の見極めに注意しましょう。

事業承継の公表は事業承継が完了してからにしましょう。事業承継が完了する前に情報が漏れてしまうと、従業員や取引先に不安や憶測が広がり、離職や取引停止を招く恐れがあります。

特にM&Aの場合には、関係者が不安に陥りやすいので、最終契約書を締結するまで情報がもれないように注意しましょう。

事業承継について悩み始めたら、まずはM&Aの専門家に相談しましょう。M&Aは事業承継の方法の1つなので、親族承継や従業員承継についても相談できます。

事業承継の手続きでは、法律や財務についての高度な知識が必要です。経験がない人には難しいことばかりなので、専門家のサポートを受けるように注意しましょう。

産業廃棄物処理業界で事業譲渡を適切に行うには、各業界に精通した専門家によるサポートを受けるのがおすすめです。

M&A総合研究所では、M&Aの支援経験豊富なM&Aアドバイザーが専任につき、事業譲渡を丁寧にフルサポートいたします。

また、料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。（※譲渡企業様のみ）

無料相談も随時受け付けておりますので、こちらの業界で事業譲渡をご検討の際はM&A総合研究所までお気軽にご相談ください。

産業廃棄物処理業界で実施された事業承継の事例を5つ紹介します。

2023年8月29日に、IoT開発事業や飲食店事業などを手掛けるTHE WHY HOW DO COMPANY株式会社(以下、ワイハウ)から、山口県宇部市の産業廃棄物処理会社である株式会社宇部整環リサイクルセンターの全株式を取得して子会社化することが発表されました。

ワイハウでは、同社が培ってきたIoT技術を使って、産業処理廃棄物処理業界が目標とするカーボンニュートラル実現に貢献することで、新しいビジネス価値を構築したいとのことです。

参考：株式会社宇部整環リサイクルセンターの株式取得（子会社化）に関するお知らせ

2023年1月17日に、家電量販店業界国内売上高1位の株式会社ヤマダホールディングスから、同社の連結子会社である株式会社ヤマダ環境資源開発ホールディングスが、福島県会津若松市の産業廃棄物処理会社の株式会社あいづダストセンターの全株式を取得する株式譲渡契約を締結したことが発表されました。

ヤマダデンキでは家電のリユース事業を展開しており、この事業承継により、リサイクルの過程で出る焼却できない廃棄物の最終処分を自社グループで行うことができるようになるとしています。

参考：当社連結子会社による株式会社あいづダストセンターの株式取得（子会社化）に係る 株式譲渡契約締結に関するお知らせ

2022年9月26日に、飲食店などを展開する株式会社ジェイホールディングスから、同社の連結子会社である株式会社ジェイクレストが、岡山県倉敷市の産業廃棄物処理会社であるエイチビー株式会社の全株式を取得して、完全子会社化することが発表されました。

この事業承継により、ジェイホールディングスでは産業廃棄物の最終処分場事業に進出し、新しい事業基盤を構築するとしています。

参考：連結子会社による株式取得（孫会社化）に関するお知らせ

2022年5月30日に、廃棄物を資源として循環させる事業を行っている株式会社リファインバースグループから、東京都を中心に産業廃棄物の収集運搬と中間処理を行っている株式会社コネクションの全株式を取得して子会社化する事業承継が発表されました。

リファインバースグループでは、廃プラスチックを資源化する事業の準備を進めており、この事業承継により、同社の産業廃棄物処理のキャパシティの拡大を図ることができるとしています。

参考：株式取得（子会社化）の基本合意に関するお知らせ

2022年5月27日に、静岡県に本社があり、エネルギー関連や総合リフォーム、情報通信関連事業などを展開している株式会社TOKAIホールディングスから、岐阜県下呂市の産業廃棄物などの受け入れや中間処理、廃材からの木材チップ製造などを行う株式会社ウッドリサイクルの株式を取得して子会社化することが発表されました。

この事業承継により、TOKAIホールディングスとしては廃棄材受入態勢を強化できるとともに、木材チップの増産と拡販が期待できるとしています。

参考：株式会社ウッドリサイクルの株式取得（連結子会社化）に関するお知らせ

産業廃棄物処理会社でも、事業承継に成功できた会社もあれば、事業承継を希望しながらも廃業するしかなかった会社もあるのが現実です。

会社の将来に不安を感じているのであれば、まずはM&Aを含む事業承継の可能性について、事業承継全般についての知見の高いM&Aの専門家に相談してみることをおすすめします。