2020年2月15日更新会社・事業を売る

M&Aのクロージング

M&Aの取引では、最終契約を締結してもその後に資産移転などの手続きが必要です。この手続きを「クロージング」といいます。しかし、用いたM&Aの手法によって行うべき手続きが異なります。この記事では、各M&A手法のクロージング手続きや価格調整について解説していきます。

目次
  1. M&Aのクロージング
  2. M&Aにおけるクロージング
  3. 株式譲渡を用いたM&Aクロージング
  4. 事業譲渡を用いたM&Aクロージング
  5. 組織再編を用いたM&Aクロージング
  6. 第三者割当増資を用いたM&Aクロージング
  7. M&Aクロージングの価格調整
  8. まとめ
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M&Aのクロージング

M&Aのプロセスでは、売り手と買い手が直接、またはM&A仲介会社などを介して交渉が行われ、最終的に双方が合意をすれば正式に最終契約を締結します。しかし、最終契約の締結に至っても、M&Aのすべての手続きが完了したことにはなりません。

M&Aの最終契約が締結された後も、資産の移転や代金の支払いなどを済ませる必要があります。こうしたM&Aの実務に関して「クロージング」と呼びます。M&Aの中で最後の手続きであるクロージングは重要な手続きです。

クロージングでは、具体的に何を行うのかわからない方も多いでしょう。そこで今回は、M&Aのクロージングについて詳しくお伝えします。

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M&Aにおけるクロージング

クロージング(closing)は、一般的に「閉鎖」や「終わり」といった意味を持ち、ビジネス上でも何かを終わらせる行為をクロージングと呼ぶ場合があります。M&Aでも同様であり、M&Aの手続きを完全に終わらせる行為をさします。

具体的には、M&Aの最終契約を締結したあとに、資産の移転や代金の支払いを済ませます。一般的にクロージング手続きにはそれ相応の時間を要し、少なくとも1ヶ月程度はかかります。ただし、すでにクロージングに必要となる条件を満たしている場合、M&Aの契約に至った時点でクロージングは完了します。

また、M&Aの手法によっては、簡易的なクロージング手続きの実行で済むケースもあります。

まずはクロージング条件を満たさなくてはならない

クロージング手続きはそれだけでも相応の時間を要しますが、クロージング手続きを開始する前段階でも時間を要します。理由は、「クロージング条件」をまずは満たす必要があるからです。

クロージング条件とは、M&Aの実行にあたり絶対に譲ることができない条件のことであり、一例を挙げると重要取引先からM&A後も取引を継続する旨の同意を得ることや、許認可の取得などがあります。

場合によっては、クロージング条件を達成するまでに多くの時間を要することもありますし、条件を満たせずにM&Aが破談となってしまう可能性もあります。

M&A手法によってクロージングの手続きが異なる

M&A手法は、特別決議や債権者保護手続きが必要な手法もあれば、取締役会決議のみで実行可能な手法もあります。従って、M&Aのクロージングは、用いる手法によって手続きが異なる点に留意しなくてはいけません。

なお、クロージングはいくつかの法的手続きが求められます。M&Aアドバイザーなどの専門家が手続きを行うケースがほとんどです。また、クロージング前に行う相手の選定や交渉などにおいても、仲介会社やFA、税理士・弁護士など、専門知識を持ったM&Aアドバイザーの存在が欠かせません。

もしもM&Aを行う場合は、M&A仲介会社であるM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所では、豊富な知識と経験を持つアドバイザーがM&Aをフルサポートいたします。M&A総合研究所ではスピーディーなサポートを実践しており、平均3ヶ月という期間で成約を実現します。

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株式譲渡を用いたM&Aクロージング

はじめに、株式譲渡を用いた際のクロージング手続きを解説します。株式譲渡とは、株式の移転によってM&Aを完了させる手法であり、他のM&A手法と比較してクロージング手続きが比較的簡単です。

譲渡承認請求

大半の中小企業では自社株式に譲渡制限を設定しており、売り手企業が株式譲渡制限会社の場合は譲渡承認請求が必要です。具体的には、取締役会または株主総会にて譲渡承認の決議を行います。

クロージング書類提出と株式譲渡

株式の譲渡を行う際、売り手側は買い手側に下記のクロージング書類を提出します。

  • 株主名簿
  • 株式譲渡承認請求書と承認書
  • 取締役会議事録
  • 売主証明書
  • 株主譲渡委任状
なお、これらの書類は一般的に必要となるものであり、ケースに応じて他の書類も必要となる場合があります。

対価支払い

買い手側がクロージング書類を確認し、問題がなければ対価の支払いが履行されます。

株主名簿の書き換え・印鑑や通帳の授受

対価の支払いが完了したら、株主名簿の書き換えを行います。これにより、正式に経営権が売り手から買い手側に移転します。また、この際に会社の実印や通帳なども買い手側に引き継ぎます。

臨時株主総会・代表取締役の選任と登記

最後に、買い手側企業にて臨時株主総会を開催します。新役員の決定や前経営陣に対する退職慰労金の支給などが決定され、取締役会で新しい代表取締役も決定します。以上が、株式譲渡によるM&Aのクロージングであり、中小企業のM&Aではクロージング手続きが1〜3日で完了するケースが多いです。

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事業譲渡を用いたM&Aクロージング

事業譲渡とは、会社の一部の事業や資産を売買するM&A手法です。中小企業のM&Aでは、株式譲渡に次いで実行されている手法であり、買い手側の視点では簿外債務を引き継がずにM&Aを実行できるメリットがあります。

ただ、クロージングにおいては株式譲渡と比べて手続きが面倒です。ここでは、事業譲渡によるM&Aで必要なクロージング手続きを解説します。

特別決議

事業譲渡においては、一定の条件に合致する場合に特別決議が必要となります。特別決議とは、企業の経営を左右する事項を決定する際に行われるものであり、出席株主のうち3分の2以上の賛成が必要となります。事業譲渡において、特別決議が必要となる条件は下記になります。

  • 事業の全部譲受
  • 事業の全部譲渡
  • 事業の重要な一部譲渡(譲渡事業の価額が総資産の1/5以上)
このように、買い手側は事業の全部を買収する際に特別決議が必要となり、売り手側は事業の全部を売却する場合、もしくは重要な事業を売却する際に特別決議が必要となります。

資産・契約の個別合意

株式譲渡によるM&Aでは、M&Aによって資産や契約の所有権が自動的に移転します。つまり、個別の合意を取る必要はありません。一方で事業譲渡では、資産や契約の当事者に同意を得なくてはいけません。個別に同意を得る必要があるため、M&Aのクロージングには時間を要します。

以上が、事業譲渡によるM&Aのクロージングとなります。株式譲渡とは違い、最終契約とクロージングを同日に実行可能なケースはまれであり、クロージングに時間がかかる点に留意しましょう。

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組織再編を用いたM&Aクロージング

合併や会社分割、株式交換、株式移転などのM&A手法を総称して組織再編と呼びます。株式譲渡や事業譲渡は、主に会社やビジネスを売買する目的で実行されるのに対し、組織再編に属するM&A手法はグループ内再編や子会社化などを目的に行われます。

そのため、基本的には大企業が用いるM&A手法です。ここでは、「会社分割・合併」と「株式交換・株式移転」に分けてM&Aのクロージングを解説します。

会社分割・合併を用いたM&Aクロージング

まずは、会社分割・合併を用いた際のクロージング手続きについて、それぞれの手法を簡単に紹介してから解説していきます。

会社分割・合併の手法

会社分割とは、事業の一部またはすべてを切り離して、第三者に移転するM&A手法です。一方で合併とは、複数の会社を1つに統合するM&A手法です。

M&Aのクロージングに必要な手続き

会社分割では、一部の事業が他の会社に移転され、合併では複数の異なる会社が1つになります。つまり、これらのM&A手法では、会社の中身が抜本的に変わるため特別決議や債権者保護手続きが必要です。

特別決議は前述したとおりであり、債権者保護手続きとは債権者を守るための制度です。債権者保護手続きでは官報公告と個別の通知を行い、異議申し立ての期間として、債権者に対して1ヶ月を与えなくてはなりません。

M&Aのクロージングが完了するまでには最低でも1ヶ月かかることになり、会社分割や合併を行う際はM&Aのスケジュール計画が非常に重要となります。

株式交換・株式移転を用いたM&Aクロージング

次に、株式交換・株式移転を用いた際のクロージング手続きを解説していきます。

株式交換・株式移転の手法

株式交換とは、発行済の全株式を既存の他社に受け渡すM&A手法です。一方で株式移転とは、発行済みの全株式を新しく設立する企業に移転させるM&A手法です。両手法の違いは株式の譲渡先であり、既存他社に譲渡する場合は株式交換、新設会社に譲渡する場合は株式移転となります。

M&Aのクロージングに必要な手続き

会社分割や合併と同様に、特別決議は原則必要となります。しかし、株式交換・移転では株式を100%移転しますので、株主(経営陣)が変わるだけで債権の内容は変わらず、債権者が損をする恐れがないために債権者保護手続き基本的に必要ありません

そのため、合併や会社分割と比べるとM&Aのクロージング手続きは簡単といえます。

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第三者割当増資を用いたM&Aクロージング

最後に、第三者割当増資によるM&Aで必要なクロージングの手続きを解説します。

第三者割当増資の概要

第三者割当増資とは、発行した新株を特定の第三者に買い取らせるM&A手法であり、一般的には未上場の中小企業が資金調達目的で実行します。売り手側は株式を買収してもらうことで、財務状況を改善・向上できます。

株式譲渡とは違い、すべての株式を譲渡するわけではありませんが、第三者割当増資後は買い手側が売り手企業の経営に参画するケースがほとんどです。

M&Aのクロージングに必要な手続き

このM&A手法では、クロージングまでに新株の発行と代金の支払いが必要です。なお、新株発行に際しては譲渡制限会社か公開会社かによって、必要な手続きが異なります。

譲渡制限会社の場合

株式譲渡に制限をかけている企業の場合、株主総会の特別決議が必須となります。つまり、ほとんどの中小企業ではクロージング手続きとして特別決議が必要です。

公開会社の場合

公開企業の場合、基本的には取締役会の決議で良いのですが、「妥当な価格よりも著しく低い価格での新株付与」または「無償譲渡」のいずれかに該当すると有利発行となり、特別決議が必要となります。その理由は、有利発行を行うことで1株あたり株価が下落し、既存株主の利益が減少するからです。

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第三者割当増資の手続きとは?契約書や取締役会について解説
株式譲渡制限会社

M&Aクロージングの価格調整

ここでは、M&Aのクロージングにおける価格調整について解説していきます。

M&Aの価格調整とは

M&Aの最終契約において、「価格調整条項」が盛り込まれる場合があります。価格調整条項とは、最終契約日からクロージング日までの企業価値の変動を、M&Aの買収価格に反映させる旨を約した条項です。

一般的にM&Aでは、最終契約日からクロージング日までに期間が空くのが一般的であり、1ヶ月以上かかる場合もあります。企業価値は株価が影響するため、最終契約日とクロージング日では変動する可能性は高く、場合によっては大きく乖離することもあります。

このような状態になった場合、M&Aの当事会社のどちらかが損してしまうことになり、リスクを軽減するためにM&A契約で「価格調整条項」が設定されますが、クロージング日の価格調整には専門知識が不可欠となります。

もちろん、M&A全体において専門知識が必要となりますので、価格調整条項だけでなくM&Aの検討段階からM&A仲介会社などの専門家に相談し、サポートを受けることが望ましく、その際はぜひM&A総合研究所にご相談ください。

M&A総合研究所には会計士や知識と経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、これまでに培ったノウハウを活かしてM&Aをフルサポートいたします。ご相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

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価格調整で考慮される要素

一般的なM&Aでは、「純資産」「純有利子負債」「運転資本」が価格調整で考慮されます。

純資産

純資産とは、貸借対照表の資産から負債を差し引いたものをさし、資本金や資本準備金が該当します。一般的な企業では純資産は変動しにくいため、実際には価格調整ではあまり用いられません。

純有利子負債

純有利子負債とは、有利子負債から余剰現預金や事業に利用しない資産を差し引いた金額です。純有利子負債を価格調整に用いる場合、企業価値算出のDCF法との整合性を担保できます。そのため、M&Aの実務上多用されています。

運転資本

運転資本とは、事業活動に活用している資本をさします。一般的には、棚卸資産に売掛債権を足して仕入債務を差し引いて求めます。実務上、純有利子負債と運転資本の併用が最も合理的な価格調整の方法と言われています。

ただし、企業やM&A手法によって最適な価格調整の方法は異なりますので、専門家のサポートを受けて状況に応じた価格調整を行う必要があります。

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まとめ

今回は、M&Aのクロージングについて解説しました。M&Aのプロセスでは、企業価値の算定やデューデリジェンスなど重要な手続きが多く、クロージングもM&Aにおいて重要な手続きですが、クロージングに必要な手続きや時間はM&A手法によって異なります。

そのため、M&Aを実行する際にはクロージングも含めてスケジュールを立てなければなりません。また、M&Aの買収価格を決める場合は価格調整についても考慮することが大切であり、円滑に進めるためにはM&Aの検討段階から専門家に相談することをおすすめします。

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