2022年10月11日更新会社・事業を売る

TSA(Transition Service Agreement)の意味とは?重要な契約を解説!

M&Aで締結する契約の1つにTSAと呼ばれるものがありますが、知らない方やよくわからない方も多いのではないでしょうか。本記事では、TSAの意味や活用される場面、TSAと関連の深い契約である最終契約や業務委託契約などを解説します。

目次
  1. M&AにおけるTSA(Transition Service Agreement)の意味
  2. TSA(Transition Service Agreement)が活用される手法
  3. TSA(Transition Service Agreement)がM&Aに関わるタイミング
  4. M&AにおけるTSA(Transition Service Agreement)の対象業務
  5. M&AにおけるTSA(Transition Service Agreement)の重要契約
  6. M&AにおけるTSA(Transition Service Agreement)の契約事項
  7. M&AとTSA(Transition Service Agreement)の相談先
  8. TSA(Transition Service Agreement)の意味まとめ
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M&AにおけるTSA(Transition Service Agreement)の意味

TSA(Transition Service Agreement)とは、M&Aの売り手企業が自社の業務やサービスの一部を、一時的に買い手企業に提供する契約を意味します。買い手は、対価として金銭を支払うのが一般的です。

TSAは日本語での適切な用語・訳語がないのでややわかりにくいですが、英語の「Transition Service Agreement」をそのまま直訳すると、「移行サービス契約」を意味します。この契約が必要になる理由は、M&Aは必ずしも売り手企業のすべてを買収するわけではなく、一部分だけを買収することもあるためです。

例えば、売り手企業の製造部門だけをM&Aで買収した場合、販売や経理などほかの部門は売り手企業に残るので、買い手側がこれらの業務やシステムを新たに構築する必要があります。構築作業にはある程度の期間がかかるので、完了するまでの間は売り手企業がこれらの業務やサービスを買い手に提供しなければなりません。

そのためには、どのサービスをどのくらいの期間提供するのかといった具体的な内容を契約書として締結しておく必要がありますが、これを契約・締結するのがTSAです。TSAは、基本合意書や最終契約書のようにM&Aの内容に直接関わる契約ではありませんが、M&A後のクロージングとPMIを円滑に進めるために必要です。

【関連】M&AのTSA (Transition Service Agreement)とは?意味・契約の内容を紹介| M&A・事業承継の理解を深める

TSA(Transition Service Agreement)が活用される手法

TSAは最終契約書と違って、M&Aにおいて必ず契約しなければならないものではありません。個々のM&A事例によって、TSA契約が必要かどうか判断します。

TSA契約が必要であるかを判断するには、どのM&A手法(スキーム)を用いるかが重要なポイントです。この章では、M&Aの手法の全体像について概要を解説し、そのなかでTSAが必要になるスキームをピックアップして解説します。

M&Aの手法(スキーム)とは

M&Aは会社の買収・売却や事業再編などの総称であり、非常に幅広い範囲を指す用語です。ひとことにM&Aといっても、さまざまな手法があります。M&Aスキームにはいろいろな分類方法がありますが、TSA契約の判断では、会社全体を取得するか、一部のみを取得するかといった視点で分類すると理解しやすいです。

会社全体を取得することは株式を取得して経営権を得ることを意味し、手法としては株式譲渡株式交換・株式移転・合併などがあります。会社の一部のみを取得する(カーブアウト)手法としては、事業譲渡・会社分割があります。

資本提携や業務提携といった企業同士の独立性を保つ手法は狭義にはM&Aではありませんが、広義のM&AとしてM&Aスキームに含めるケースも多いです。M&Aスキームの分類は下表のとおりです。

分類 主な手法
会社全体を取得する(経営権を得る) 株式譲渡・株式交換・株式移転・合併など
会社の一部を取得する(カーブアウト) 事業譲渡・会社分割
広義のM&A(独立性が維持される) 資本提携・業務提携

TSA契約が必要となる主なM&Aスキーム

M&AでTSA契約が必要となるのは、売り手企業の一部だけを譲受・買収する場合です。前節で挙げたM&Aスキームのうち、これに該当するのは事業譲渡と会社分割です。もちろん、これ以外のM&AスキームでTSA契約を活用することは可能であり、TSA契約を結ばずに事業譲渡や会社分割を行ってはならないわけではありません。

しかし、大枠としては、事業譲渡と会社分割でTSA契約が必要になると理解しておきましょう。ここでは、TSA契約が必要になることが多い事業譲渡と会社分割とはどのような手法なのか、それ以外のM&AスキームでTSA契約が必要になる例としてグループ企業の株式譲渡も解説します。

事業譲渡

事業譲渡とは、事業資産を金銭で売買するM&A手法のことです。株式譲渡のように会社の経営権を得るのではなく、店舗や設備などを直接売買して、事業資産の所有者を売り手から買い手に移します。事業譲渡の主な特徴は、株式譲渡と違って買収する資産を細かく選べることです。

買い手側は、売り手の合意が得られるならば、不要な負債の譲受は拒否して必要な資産だけを手に入れられます。事業譲渡は株式の売買を一切伴わないので、個人事業でも行えることも特徴の1つです。

事業譲渡では譲渡した資産以外は売り手企業に残るので、これらの資産をクロージングやPMIで利用したい場合は売り手とTSA契約を結ぶ必要があります。

会社分割

事業譲渡以外にTSA契約が多く利用されるM&Aスキームとして、会社分割があります。会社分割とは、ある会社が営んでいる複数の事業のうちの1つまたは複数を、別の会社に引き継ぐことです。

事業譲渡との違いが若干わかりにくいですが、事業譲渡は店舗や設備といった事業資産を金銭で直接売買することであるのに対して、会社分割は事業全体を別な会社に移す、包括承継の組織再編手法である点が異なります。

仮に会社分割で売り手の製造・開発部門を承継したならば、経理や販売部門などはもとの売り手企業に残ります。そのため、M&A締結後しばらくの間は、TSA契約によって売り手の経理や販売業務を提供してもらわなければなりません。

グループ企業による株式譲渡

株式譲渡とは、売り手企業の株式を買い手が取得し、経営権を得て子会社化するM&A手法のことです。M&Aのなかで最も一般的な手法であり、多くのM&Aは株式譲渡で行われています。株式譲渡は事業譲渡や会社分割と違って、経理・製造・販売など売り手企業のすべての部門を包括的に取得するため、基本的にはTSA契約が不要なM&Aスキームです。

しかし、グループ企業のうちの1社か数社だけを、株式譲渡で買収した場合は異なります。グループ企業は業務の一部を親会社が一括して行っていることもあるので、子会社だけを買収した場合は親会社の業務・サービスを一時的に使わせてもらうためにTSA契約を締結する可能性があります。

TSA(Transition Service Agreement)がM&Aに関わるタイミング

TSA契約は事業譲渡などのカーブアウト型M&Aで重要になりますが、M&A締結までには非常に多くの手続きがあるので、どのタイミングでTSA契約を締結するのか理解しておくことが大切です。

この章では、M&Aの流れを大局的に理解するための3つのフェーズを解説し、TSAが関わってくるのはどのタイミングなのかを解説します。

M&Aのフェーズとは

M&Aの手続きの流れを把握するためには、前半・中盤・後半に分けて考えると理解しやすいです。呼び方は統一されているわけではありませんが、例えば前半は検討フェーズ、中盤は交渉フェーズ、終盤は実行フェーズなどと呼ばれます。

M&AでTSA契約について考える際は、大まかなフェーズで流れをとらえるとわかりやすいです。どの手続きをどのフェーズに分類するかは統一したものがあるわけではないので、この節では一般的だと考えられる分類方法で解説します。

検討フェーズ

M&Aの手続きにおける検討フェーズとは、本格的な交渉が始まる前の準備段階の手続きのことです。検討フェーズの手続きは、そもそもM&Aをすべきなのかを専門家と相談することから開始します。そして、M&Aを行うことを決定したらM&Aを行う相手企業を選定し、企業の磨き上げや資料作成などを行います。

交渉したい買い手候補が決まったらノンネームシートを提出して、M&Aの交渉について打診する流れです。買い手が合意すれば、秘密保持契約や詳しい企業情報を記した資料の提出などを行い、トップ面談をすべきか検討します。

検討フェーズの段階では、まだどの買い手と交渉するかも決まっていないので、TSA契約を検討する必要はありません。

交渉フェーズ

売り手と買い手候補がお互い合意したら、両社の経営者同士が実際に会ってトップ面談を行い、交渉フェーズへと移ります。M&Aの契約内容に関して大まかな合意ができたら、基本合意書を締結してここまでの合意内容を書面にします。基本合意書には独占交渉権の付与など一部法的拘束力のある条項も含まれますが、この時点ではまだTSA契約を結ぶことはありません

基本合意書を締結したら、買い手によるデューデリジェンスが行われます。デューデリジェンスでは、売り手企業の財務・税務・法務などを調べてリスクを洗い出すとともに、売り手企業の業務システムの把握などを行います。

実行フェーズ

デューデリジェンスが終わると、M&Aを実行するフェーズに移ります。まずはデューデリジェンスの結果を踏まえて最終交渉を行い、互いの合意が得られたら最終契約書を締結します。その後は、M&Aの契約内容を実行していくクロージング、売り手と買い手がうまく協働するための統合プロセス(PMI)を行う流れです。

TSAはどのフェーズでM&Aに関わるのか

TSA契約が関わってくるのは、主にM&Aの実行フェーズです。TSA契約は、最終契約書の締結時か締結後クロージングに入る前に締結します。ただし、実行フェーズの前のデューデリジェンスの段階でも、TSAを意識して調査を行う必要があります

なぜなら、デューデリジェンスでどの業務をTSAで提供してもらうのか目星をつけておかないと、TSAの契約内容を詰められないためです。最終契約の時点でTSA契約も詳細が決まっているならば、同時に締結することもできます。

しかし、一般には、最終契約時は大枠だけ決めてドラフトを作成しておき、クロージング条件としてTSA契約の締結を盛り込んでおくことが多いです。

M&AにおけるTSA(Transition Service Agreement)の対象業務

TSA契約は買い手にとってはメリットがあるものですが、売り手にとっては負担となる面が大きく、できればTSA契約を結びたくないと考えるのが本音です。TSA契約を結ぶ際は、対象となる業務を本当に必要なものに絞って、必要十分な範囲に設定する必要があります。

M&AでTSA契約の対象となることが多いのは、経理や総務といった顧客と直接関わらない業務(バックオフィス)、顧客に合わせた物流・配送業務(ロジスティクス)、供給連鎖管理が必要な業務(サプライチェーン)などです。

事業譲渡や会社分割でM&Aを行う際は、クロージングやPMIにおけるこれらの業務の必要性を洗い出し、必要なものに関してはTSA契約に盛り込めるように交渉します。

顧客と直接関わらない業務

経理や総務といった顧客と直接関わらない業務(バックオフィス業務)に対して、TSA契約を結ぶのは多くみられるケースです。グループ企業などでは、バックオフィス業務を1カ所に集中させてグループ企業間でシェアする、いわゆるシェアードサービスを行っている会社が多いです。

こういったグループ企業のうちの1つをM&Aで買収した場合、TSAで買い手が売り手企業のシェアードサービスを利用できるようにしておかないと、クロージングやPMIを行うのが難しくなります。

顧客に合わせた物流・配送業務

顧客のニーズを分析して在庫を調整し、物流の効率化とコスト削減を目指す物流・配送業務(ロジスティクス)を取り入れる企業は多いです。売り手企業のロジスティクスに対してTSAを契約しておくと、買い手としてはクロージングやPMIが行いやすくなります。

特に高度なロジスティクスで在庫や出荷タイミングを調整している企業を買収した場合、TSAを締結しておかないと一時的に物流コストが大きく跳ね上がってしまう可能性もあります。

【関連】物流業界のM&A・事業承継!動向・メリット・注意点を解説【事例15選】| M&A・事業承継の理解を深める

供給連鎖管理が必要な業務

コスト削減や効率化のために材料の調達から製造・配送・販売までをグループ企業内で一貫して行う、いわゆる供給連鎖(サプライチェーン)を構築している企業は多いです。

もしもサプライチェーンを構築しているグループ企業の一部をM&Aで買収した場合、TSAでサプライチェーンを利用できるようにしておかないと、クロージングやPMIに大きな支障が及ぶおそれがあります。

M&Aによってサプライチェーンにどのようなリスクが生じるのか、買い手が新たな供給システムを構築するまでにどのような手続きが必要になるのかなどは、デューデリジェンスの段階で調査しておく必要があります。

M&AにおけるTSA(Transition Service Agreement)の重要契約

M&AでTSA契約とほぼ同じタイミングで締結されるのは、最終契約と業務委託契約です。TSA契約・最終契約・業務委託契約の3つはそれぞれ密接に関連しているので、お互いの契約内容をみながらTSA契約を吟味していく必要があります。

最終契約

最終契約書とは、株式譲渡でいう株式譲渡契約書・事業譲渡でいう事業譲渡契約書のことで、締結によってM&Aの契約が確定し法的拘束力を持つ書類のことです。最終契約書には、譲渡する資産やその額、譲渡する日時などが記載されているので、TSA契約とも深い関係があります。最終契約書には、クロージング条件の1つとしてTSAの締結を入れておくことが多いです。

クロージング条件とは、これらの条件を満たさない限りクロージングに着手できない前提条件のことで、TSAを入れておくことで確実に契約を締結できるようにしておきます。

【関連】M&Aの最終契約書(DA)とは?基本合意との違いや目的、項目を解説| M&A・事業承継の理解を深める

最終契約書の締結からTSA開始までの期間

TSA契約はクロージングが始まるまでに締結しないと意味がないので、最終契約からクロージング開始までの期間に締結します。最終契約からクロージング開始までの期間は事例によってばらつきがあり、短くて1カ月、長いと1年程度空く事例もありますが、この期間にTSA契約の内容を取り決めておきます。

もしもクロージングをすぐに開始できる状態でTSA契約も最終契約時にすでに締結しているならば、最終契約締結後すぐにTSAを開始してクロージングに入ることも可能です。

クロージング条件を満たすための手続きに時間がかかったり、デューデリジェンスで何か問題が発覚したりした場合は、クロージングまでの期間が長くなってTSAの開始もずれ込みます。

業務委託契約

業務委託契約とは、特定の業務を外部に委託する契約のことです。TSAは売り手が買い手に提供する業務内容などを取り決めるものであるため、売り手が業務を行うこと自体は契約しません。売り手からTSAにもとづく業務やサービスの提供を受けるには、別途業務委託契約を締結する必要があります。

TSAと業務委託契約の内容は、できるだけ具体的に取り決めておく必要があります。内容があいまいな状態だと、提供する業務の内容について齟齬が生じ、トラブルに発展するおそれもあります。特に売り手が提供する業務に外部の企業が関わる場合、買い手がその外部企業に対してどこまでの業務を要求してよいかを決めておくことが重要です。

M&AにおけるTSA(Transition Service Agreement)の契約事項

以下に、TSAの具体的な契約内容の一例をまとめました。

  • サービスの提供者・受給者
  • サービスの範囲
  • サービスの対価・支払条件
  • 契約の有効日・終了日

TSAは契約の1種なので、対価や有効日・終了日もはっきりさせ、事前に通知することで契約を解除できるのか延長できるのかなども定めておくのが一般的です。

M&AとTSA(Transition Service Agreement)の相談先

M&AはTSA契約を始めとするさまざまな専門的な手続きがあるので、スムーズに済ませるには専門家のサポートを得ることが必要不可欠です。M&A総合研究所は、主に中堅・中小企業M&Aを手がけている仲介会社です。経験豊富なアドバイザーが、TSA契約を始めとするM&Aの手続きをフルサポートいたします。

当社は成約までのスピードを重視しており、最短3か月での成約実績もございます。M&Aの手続きは、経営者様にとって精神的負担や本業への支障も大きくなりやすいので、当社ではこういった負担を最小限に抑えるべくサポートいたします。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。M&AやTSA契約に関して無料相談をお受けしておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

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TSA(Transition Service Agreement)の意味まとめ

TSA契約はM&Aで必ず締結するわけではありませんが、事業譲渡や会社分割を行う際には重要になる契約です。TSAにどの業務を盛り込むかの選択が重要となるため、売り手と買い手でしっかり交渉し、できるだけ細かく取り決めておくことがポイントです。

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