M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2022年6月6日更新会社・事業を売る
株式交換比率とは?株式交換比率の決め方や求め方を解説
株式交換比率とは、株式交換の際に子会社の株主に対して、持ち株数をもとに親会社の株式を割り当てる比率です。マーケットアプローチなどの手法により算出した企業価値をもとに決定します。本記事では、株式交換比率の概要をはじめ、設定の注意点などを紹介します。
目次
株式交換比率とは?株式交換比率の意味
株式交換比率は、株式交換を実施する際に必要な知識です。株式交換比率について、最低限知っておくべき事柄をご説明します。
株式交換比率に関する基礎知識
株式交換比率とは、親会社が株式交換を実施して子会社を完全子会社化するときに、子会社の株主に対して持ち株数に応じて定められる親会社の株式の比率です。要するに、譲渡側の株式と譲受側の株式を交換する比率をさします。
株式交換をすれば、子会社の株式を持っていた株主に対して、所定の交換比率で計算された数の親会社の株式が割り当てられます。株式交換には、親会社側は多額の資金を必要としないので、資金の少ない企業でもほかの会社を子会社化できるメリットがあります。
日本では1999年に解禁されて以降、株式交換による子会社化は企業再編の手段として広く活用されています。ちなみに、保有株式の会社が完全子会社化された場合、株式交換比率に従って親会社の株式が交付されます。
保有する銘柄や株数が変化した結果、単元未満株が発生したり、株主優待の条件がクリアできなくなったりする可能性には注意しましょう。
単元未満株式とは
単元未満株式とは、最低売買単位の株数に満たない株式です。単元未満株は、株式分割や会社の合併、子会社化などで発生します。例えば、1株を1.2株にする株式分割が実施されたとします。
すると、株主が保有していた10株は、分割後に12株になります。このときに、1単元の株数が10株であると2株が余り、これが単元未満株となります。 単元未満株だけを持っている株主には議決権がありません。
そのため、株式交換の際には、自分の持つ株式の変化に気を付けましょう。また、この単元未満株は、発行会社に買い取ってもらったり、証券会社を通じて売却したりできます。
そして、発行会社が単元未満株の買増制度を採用している場合、買増し請求して単元未満株から1単元になるように株数を買えます。
株式交換比率と純資産
株式交換比率を決める際にはさまざまな手法を用い、会社の純資産などを加味しつつ株価に反映させます。そもそも純資産とは会社の総資産から負債を差し引いたものです。自己資本や株主資本などと呼ばれることもあります。
純資産は会社の安定度を図る目安でもあり、会社が持つ総資産のうち純資産の割合が大きいほど会社は安定しているといえるでしょう。その一方で、純資産の割合が低く、負債のほうが多い会社は危うい状態にあります。
銀行などの金融機関は、純資産などから会社の財務状況を判断して融資を決定します。この点を踏まえると、純資産の状態は会社が外部から得る信頼度を左右するといっても過言ではないでしょう。
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株式交換比率の決め方
株式交換比率の変化は、完全親会社や完全子会社における株主の権利などに大きな影響を与えます。株式交換比率を決める際は、親会社と子会社両方の企業価値を反映し、不正がないとわかるようにしておく必要があります。
しかし、会社の企業価値は、いろいろな要素が絡むうえに将来が不確定なので、簡単に決められません。では、どのように株式交換比率の基準となる株式や企業価値を算出すればよいのでしょうか?
株式や企業の価値を測る方法には、3つのアプローチがあります。具体的には、コストアプローチ、マーケットアプローチ、インカムアプローチです。それでは順を追って見ていきましょう。
マーケットアプローチ
マーケットアプローチは、市場に着目する点が特徴です。具体的には、下記の要素をもとに、株式交換比率を決定する基準となる株式や企業の価値を推測します。
- 評価対象の株価(市場株価法)
- 類似会社の株価(類似会社比較法あるいは倍率法)
- 類似会社の取引事例で使われた評価額(類似取引比較法)
このアプローチは、第三者が実施した評価を利用するので、客観性が高まる点が長所です。しかし、下記のデメリットがあるので注意しましょう。
- 株価の変動が大きいので、株価を信頼できない場合もある
- 評価対象の株価が利用できない場合、評価対象と似た会社や取引事例を探すのが難しい
特に取引事例を探すのは難しく、類似性のない会社や事例を選んでしまうと、評価額が大きく変わってしまうリスクがあります。
インカムアプローチ
インカムアプローチとは、ビジネスが生み出すお金に基づいて企業価値を評価する方法です。投資家はビジネスが生み出すお金で株式の価値を考えるので、投資家に適したアプローチといえます。インカムアプローチには2つの手法があります。
収益還元法
ビジネスの利益水準と投資家が期待する投資利回りをもとに、株式交換比率の決定基準となる株価を評価する方法です。
簡便な方法なので評価しやすい点がメリットです。しかし、投資利回りの設定次第で株式の価値が大きく変わるデメリットも存在します。
また、将来にわたって利益水準を一定にする評価手法なので、不確実性を慎重に考える必要があります。
DCF(Discount Cash Flow)法
将来ビジネスが生み出すお金の予測に基づいて、株式交換比率の基準となる企業価値を評価する手法です。DCF法は将来を予測して評価するため、ビジネスの将来性も考慮されます。
DCF法は最も理論的な手法です。しかし、予測すべき要素が多いことから評価が変わりやすいというデメリットがあります。
コストアプローチ
コストアプローチとは、会社が保有する資産や負債から株式交換比率の基準となる企業価値を評価する方法です。具体的には、純資産から負債の金額を引いた残りを投資家に対する価値として評価します。
このアプローチでは決算書上の資産負債に加え、不動産の含み益を足したり、未計上の負債を引いたりして、時価ベースの純資産を算出することで価値を検討します。この方法は時価純資産法と呼ばれ、とてもわかりやすく交渉に使いやすいと感じるかもしれません。
しかし、価値評価の点からはあまり役に立ちません。なぜなら、投資家はビジネスが将来に生み出すお金を重視しているからです。過去および現在の実績値である純資産の金額を見ても、ビジネスがいくらのお金を生み出すのか理解できません。
従って、実績をもとにするコストアプローチは将来性を判断するのに不向きです。さらに詳しく知りたい方は、以下の記事を参照してください。
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株式交換比率決定までの流れ
株式交換比率を決定するまでには、企業価値の算定をはじめ、書類における必須項目の記載などのプロセスがあります。株式交換比率をスムーズに決定できるように、あらかじめプロセスを把握しておきましょう。
株式交換比率決定までのプロセス
まず、親会社と子会社ともに公正な企業の価値を算定するために、専門知識を有する第三者算定機関をとおして、各種アプローチ方法に基づき結果を算出します。
次に、親会社と子会社の間で株式交換比率の交渉を実施し、株式交換比率を決定する流れが一般的です。第三者算定機関に算定してもらった結果は、通常、算定書という書類にまとめられます。
そのほか、フェアネス・オピニオンと呼ばれる書類は、第三者算定機関が組織再編時の統合比率などに不正がないことを示した文書で、算定書よりも詳しい内容です。
以上が株式交換比率の決め方ですが、割当対価が完全親会社の株式である場合、事前開示書類に複数の項目を書く必要があるので注意しましょう。
株式交換比率決定の際に必要な記載項目
公正さを示すために、完全親会社と完全子会社について、それぞれの企業価値を算出した方法を記載しなければいけません。
また、専門機関の意見を取得した場合は、第三者算定機関の名前と、算定書やフェアネス・オピニオンなど取得した書類の種類を記載します。
完全子会社の場合
完全子会社にも記載すべき項目があります。完全親会社となる会社の記載事項の算出方法と、親会社・子会社両方が利益を出している事実を証明する項目です。具体的には、下記があります。
- 完全親会社と完全子会社が、それぞれ違う第三者の機関から株式交換比率を算定してもらったこと
- 親会社の取締役と子会社の取締役が同じ場合、子会社の取締役会決議に参加していない証明
株式交換比率発表による株価変動
上場企業が株価交換の実施を周知すると、株価が変動する可能性が生じます。株価交換の可能性が強まると、株価が交渉で定められた株式交換比率に収束していきます。
仮に、株式交換比率が完全親会社:完全子会社=1:4であったとし、公表日前日における株価が、完全親会社200円、完全子会社100円だったとします。すると、完全親会社の株価に対して、完全子会社の株価は800円ほどまで上昇します。
このように、株式交換比率を発表後は、完全親会社の株価を基準に完全子会社の株価が変動する傾向がみられますが、中には短期投資家のマネーゲームによって株価が大変動することもあります。
ストロベリーコーポレーションがアドバネクスを完全子会社化した事例がよい例でしょう。株式交換比率の発表後にストロベリーコーポレーションの株価が跳ね上がり、アドバネクスの株主が株式交換で損失を被る可能性が生じました。
結果として株価が落ち着いて株式交換されましたが、場合によっては損失を回避できないケースも考えられるでしょう。そのため、株価交換では、株式交換比率の発表後に生じる株価変動に注意が必要です。
株式交換と完全子会社化戦略
株式交換比率と密接に関わる手法が株式交換です。株式交換は、対象会社を完全子会社化するための方法であり、M&Aや組織再編の場面で使われます。近年、株式交換を用いて子会社を完全子会社化する会社が増加傾向です。
完全子会社は、子会社以上に親会社から強く支配され、独立性が低くなっています。従来は、M&Aで会社を買収する際、売り手に配慮して一定の独立性を残す方針がとられ、親会社と子会社で親子上場を果たすケースも一般的でした。しかし、独立性を配慮するとさまざまな問題が生じます。
例えば、少数株主の利益相反や株式の流動性の低下、ガバナンスの低下、意思決定速度の低下などです。そのため、近年では株式交換により対象子会社を完全子会社にすることで関係性を固定化し、ガバナンスの引き締めや意思決定の迅速化を図る会社が増えています。
株式交換比率をご検討の際は、M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所には、M&Aの仲介実績が豊富なアドバイザーが在籍しており、迅速かつ丁寧にサポートいたします。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)
無料相談をお受けしておりますので、M&Aをご検討の際はどうぞお気軽にお問い合わせください。
株式交換比率を用いた合併は少数株主に不利
株式交換比率によって合併を行う際、少数株主が不利になることがあります(合併の場合は合併比率と呼びます)。株式交換比率は両社の株価を反映したうえで決定しますが、プレミアムをつけるなどの対応で各社の株式に配慮すべきです。
しかし、合併の当事者同士が安易に株式交換比率を決定してしまうと、少数株主が投資した分を失うトラブルが発生し、合併自体が反対されてしまいかねません。株式交換比率を決める際は株主に配慮することが非常に重要です。
会社は規模にかかわらず株主の権利や利益を保護する義務を負っています。会社同士の決定だけでは株主に損失を与える恐れがあるので注意しておきましょう。
株式交換比率の注意点
株式の設定を間違えると会社にとって不都合が生じることがあります。ここからは、株式交換比率に関する注意事項についてご説明します。
株主の反発
株式交換比率に関して、最も注意すべき点は株主の反発です。もし、株式交換比率が株主の利益を損なう設定になれば、会社は株主からの信頼を失います。そのほか、株主総会で反対され、株式交換や合併が不可能になる恐れもあります。
また、株主と経営陣の考えが食い違うと、第三者がM&Aを仕かけてきた際に流れてしまうかもしれません。そのため、株主の利益や権利に配慮して株式交換比率を設定すべきです。
株主と経営陣の対立が経営に支障をきたす点は、上場会社・非上場会社双方に共通しています。昨今の経営環境では株主保護の傾向が強まっているので、株式交換や合併では株主と協力できる取り組みが必要です。
固定比率方式と変動比率方式
株式交換比率には、固定比率方式と変動比率方式があります。固定比率方式は完全親会社を1とし、それを基準にしたうえで完全子会社の比率を、完全親会社の株価に完全子会社の株価を割った数値で設定するものです。
これに対して変動比率方式は、先に完全子会社の株価を決定し、株式交換が実行される直前に完全親会社の株価を決定します。
いずれの方式も、完全親会社と完全子会社のそれぞれにメリットとデメリットがあり、株式交換を行う会社の事情にあわせて使い分けられます。使い方を誤ると株式の希薄化を招く恐れもあるので、慎重に検討するようにしましょう。
株式交換比率を具体的な事例で確認
ここまで株式交換比率の概要を説明しましたが、具体的なイメージをもてるよう、実際の事例が参考になります。株式交換の事例をもとに、具体的な株式交換比率についてまとめていきます。
2007年に行われた味の素によるカルピスの子会社化では、カルピスの株式1株に対し、味の素の株式0.95株が割り当てられました。味の素はカルピスのブランド力を手に入れました(その後、味の素はアサヒグループホールディングスにカルピスの全株式を譲渡)。
また、2017年に実施されたパナソニックとパナホームの株式交換では、パナホームの株式1株に対して、パナソニックの株式0.8株が割り当てられました。この株式交換では、パナソニックがパナホームの株式を80%しか獲得できず、完全子会社化に至りませんでした(その後、パナホームはパナソニックの子会社となり、「パナソニック ホームズ」に社名変更)。
そのほか、2018年にはユニーによるUCSの子会社化が発表され、その後の株式交換では、UCSの株式に対して、1,830円の金銭が支払われました。株式交換において金銭を対価としている点が特徴です。
まとめ
今回は、株式交換比率について説明しました。株式交換比率は、親会社が株式交換で子会社を完全子会社化するとき、子会社の株主に向けて、持ち株数に応じて定められる親会社の株式の比率です。
株式交換の際、親会社側は多額の資金を必要としないので、資金の少ない企業でもほかの会社を子会社化できるメリットがあります。しかし、株式交換比率の設定を誤ると株主から反発されかねません。
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