M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2021年4月28日更新会社・事業を売る
第三者割当増資における希薄化
M&Aでは株式譲渡や会社分割などさまざまな手法が活用されます。その中の1つである第三者割当増資は、多くのケースで活用される手法なのですが、既存株主の利益に害を及ぼす恐れのある希薄化が生じる可能性があり、注意しなくてはなりません。
第三者割当増資における希薄化
M&Aでは、株式譲渡や会社分割などさまざまな手法が活用され、目的や場面に応じて適切なM&A手法を使い分ける必要があります。そんなM&A手法の1つに第三者割当増資があり、この手法は資金調達も兼ねています。
そのため、株式譲渡など他の手法とはいくつか異なる点がありますので、第三者割当増資を利用する際はどのような手法なのか事前に把握しておくのが大切です。とくに、第三者割当増資には「希薄化」という独特の問題点があります。
希薄化が生じると、既存の株主に悪影響が及ぶ可能性があります。会社にとって株主は大切な存在ですので、希薄化によって損害を与えないように注意しなくてはいけません。この記事では、第三者割当増資の希薄化について、詳しく解説します。
第三者割当増資の希薄化とは
第三者割当増資の手法や手続きは後述するとして、まずは第三者割当増資の問題点であるの希薄化について解説します。なお、希薄化は第三者割当増資だけでなく、新株予約権やストックオプションの際にも生じることがあります。
希薄化によって生じる株主や株価への影響は同じであり、同様に注意しなければなりません。
①新株発行による希薄化
第三者割当増資を行うことで、その会社の発行済株式総数が増加し、会社側にとっては費用をかけずに資金調達が可能となります。しかし、株主側からすると、発行済株式総数が増加することで希薄化による損失を被る恐れがあります。
第三者割当増資により発行済株式総数が増えることで、なぜ株主が損をしてしまうのかといいますと、それは株式の特性によるものが原因となっています。まず、株式会社の株主は、保有する株式数によって行使できる権利が異なります。
新株発行の結果、株の保有割合が少なくなってしまえば、行使できる権限が少なくなってしまう可能性があります。また、場合によっては一株あたりの時価総額が減少する場合もあります。具体的には、通常よりも低い価格で新株が交付された場合、一株あたりの時価が減少します。
これを「株主価値の希薄化」と呼び、希薄化が生じると既存株主の利益は減少します。そのため、第三者割当増資を実施する際には、希薄化の影響を最小限に留める必要があります。
②有利発行による希薄化
有利発行とは、時価よりも著しく低い価格で第三者に対して新株を発行・交付することであり、これを実施するためには公開会社であっても特別決議が必要となります。なぜなら、有利発行による希薄化で、既存株主の利益が損なわれるからです。
希薄化をもたらし得る有利発行の基準は、会社法上で明記されているわけではありませんが、日本証券業協会が有利発行の基準を定めています。その基準によると、「発行決議日の直前日における株価に0.9を乗じた額よりも低い」場合に有利発行となります。
時価よりも低い価格で株式を発行することになれば一株あたりの時価は低くなりますので、希薄化となる可能性が非常に高くなります。第三者割当増資を実施する際は、有利発行による希薄化に注意しましょう。
③経営者も希薄化の影響に注意が必要
会社の経営者も、自社の株式を保有する株主です。そのため、第三者割当増資によって株価が減少したとしても許容できるかもしれませんが、最悪の場合には会社の支配権を失ってしまう可能性があります。
例えば、株式の総数が過半数を超えると、株主総会の普通議決を自分ひとりで決めることができます。そのため、経営者であれば現状で持ち株比率が過半数を超えているケースが少なくありません。しかし、第三者割当増資による希薄化により、持ち株比率が過半数を割ってしまうこともあります。
そうなると、これまで自分だけで決定できていた普通議決でさえも決められなくなってしまい、会社をコントロールできなくなってしまいます。株主というと、会社に投資してくれる第三者というイメージがあるのですが、経営者自身も株主であることを忘れてはなりません。
④大幅な希薄化に対する規制
第三者割当増資を行うことで希薄化が生じ、既存株主が損失を被る恐れがあります。そこで金融証券取引所では、大規模な希薄化に関して独自の規制を設けています。ただし、この規制は公開会社のみが対象となります。
下記要件のいずれかに該当する場合には、独立した第三者からの意見を入手もしくは株主の意思確認が必要となります。
- 第三者割当増資により、既存株主の議決権が25%以上希薄化する
- 支配株主が異動する
また、上記に加えてさらに大規模な希薄化に関しても規制を実施しています。その規制とは、「第三者割当増資によって希薄化率が300%を超える場合、当該企業は原則上場廃止」というものです。このように、大規模な希薄化が生じる際には、取引所の規制に抵触する可能性があります。
そのため、第三者割当増資を実施する際には、既存株主だけでなく取引所の規制にも注意する必要があります。
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第三者割当増資とは
第三者割当増資による希薄化について解説したところで、そもそも第三者割当増資とはどのようなM&A手法なのかについて紹介していきます。
①第三者割当増資の手法
第三者割当増資とは、特定の第三者に新株を発行する形式で資金調達する手法であり、本来の第三者割当増資の主な目的は資金調達です。しかし、新株を引き受ける買い手側は、一定割合の株式を保有することになるため、発行側の経営に参加できるようになります。
そのため、広義の意味ではM&A手法とも考えられており、業務提携目的のM&A手法として、第三者割当増資の実施事例は増えつつあります。
公募増資との違い
第三者割当増資と同様に、公募増資も新株を発行して資金調達を行う手法ですが、その違いは新株を発行する先にあります。まず第三者割当増資では「特定の第三者」に新株を発行するため、発行する会社が買い手となる人や企業を選択します。
特定の第三者に選択される先としては、経営に参画している取引先やこれから密接な関係となる予定の取引先であり、この特性から業務提携の際にも活用されます。
一方で公募増資では、買い手を特定するのではなく、不特定多数の投資家や企業から広く資金を集めることであり、第三者割当増資と比較すると投資家や企業が購入する株数は少なく、経営に参画できるまでは至りません。
また、敵対的買収に対する防衛策としても、第三者割当増資は活用されます。第三者割当増資を実施すると、敵対的買収者の持ち株比率が低下し、その結果として敵対的な買収を阻止できます。
ただし、他の優良な株主の持ち株比率まで低下して、最悪の場合は希薄化が生じる恐れもあります。
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②第三者割当増資のメリット
第三者割当増資は、外部(特定の第三者)に投資を募る手法です。そのため、得られた資金は返済する必要がありません。資金調達には借り入れによる方法もありますが、返済不要で資金調達できるのは第三者割当増資を実施するメリットです。
また、出資する側は相手会社の経営に参画でき、段階的に買収を進めていくことも可能となります。従って、M&Aによって生じるリスクを軽減できるメリットもあります。
なお、第三者割当増資に限らず、M&A手法にはそれぞれに特徴があり、メリットがあればデメリットもあります。実施する際はM&Aの専門家にサポートを依頼するのがおすすめです。
第三者割当増資などのM&Aをお考えの場合は、M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所には、M&Aに豊富な知識と経験を持つアドバイザーが多数在籍しており、M&Aをフルサポートいたします。
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第三者割当増資の手続き
ここでは、第三者割当増資のプロセスを簡単に解説します。
①条件決定
まずはじめに、第三者割当増資に関する条件を決定します。具体的には、以下の内容を決めることになります。
- 募集株式数
- 募集株式の払込金額と算定方法
- 現物出資の金額と内容(現物出資の場合)
- 振込の期日もしくは振込期間
- 増資の金額・準備金の額
②募集事項の通知・公告
第三者割当増資の条件を決定したら、今度はその内容を株主に通知・公告するのですが、これは払込期日の二週間前までに実施する必要があります。なお、この際に株式の商号や申し込み期日、振り込みの取扱場所などについても通知します。
ただし、上場企業が一定期日までに有価証券報告書を提出すれば、通知・公告は不要となります。
③第三者割当増資の決議
次に、第三者割当増資の実施を決議します。公開会社と譲渡制限会社とで、第三者割当増資に必要な決議が異なり、譲渡制限会社の場合は特別決議を経る必要があります。一方で公開会社の場合は、原則として取締役会で決議する必要があります。
ただし、先述した「有利発行」に該当する場合には、公開会社であっても特別決議が必要となります。
④払込の実行
第三者割当増資が決議により承認されると、引受人が払込を実行します。払込の方法には、「金銭による払込」と「現物出資」の2通りあります。なお、現物出資の場合には、株式の対価として妥当か否かを、裁判所に判断してもらいます。
ただし、以下に該当する場合には、裁判所の調査が不要となります。
- 弁護士・弁護士法人、公認会計士、税理士・税理士法人のいずれかに、現物出資の妥当性に関して証明を受けている
- すべての現物出資に対して、募集事項に定められた価額が50万円以下
- 公開買い付け等契約における価額よりも、募集事項に定められた現物出資価額のほうが低い
- 引受人または企業に割り当てる株式総数が第三者割当増資直前にすでに発行されている発行済株式総数の10分の1
- 現物出資の財産が、弁済期日が到来している金銭債務であり、当該金銭債務の価額が当該企業の負債帳簿価額以下
⑤登記手続き
最後に、登記手続きの実施すれば、第三者割当増資の手続きは完了します。登記手続きは、払込期日もしくは払込期間の最終日から2週間以内に実行する必要があります。
なお、登記手続きには免許税の支払いや書類の添付が必要となります。
まとめ
今回は、第三者割当増資で生じる希薄化について解説しました。資金調達も兼ねたM&A手法として、第三者割当増資は非常に役立ち、敵対的買収に対する防衛策としても活用できます。ただし、第三者割当増資を実行すると、株主価値の希薄化が生じる恐れがあります。
希薄化が生じると、既存株主の利益が損なわれる可能性があります。株主を守るために会社法では、希薄化が生じ得る場合には、特別決議を実施する旨を定めています。また、金融証券取引所でも、希薄化を生じさせる取引に対して、独自で規制を設けています。
大幅な希薄化が生じる場合には、上場廃止となる恐れもあります。そのため、第三者割当増資を行う際は希薄化の影響を考慮する必要があります。そもそも、株式会社にとって株主は重要な存在です。M&Aや資金調達目的であっても、既存株主をないがしろにしてはいけません。
既存株主を大事にする意味でも、希薄化の影響は最小限に留めることがよいでしょう。では最後に、この記事の要点をまとめると、下記になります。
・第三者割当増資による希薄化とは
→一株あたりの時価が減少する、株主の保有割合が減少して利用できる権限が少なくなること
・大幅な希薄化に対する規制
→5%以上の希薄化が生じた場合には独立した第三者からの意見を入手、もしくは株主の医師確認が必要。希薄化率が300%を超えると原則上場廃止となる
・第三者とは
→特定の第三者に新株を発行する形式で資金調達する手法
・第三者割当増資のメリット
→返済不要で資金調達できる、段階的な買収を進められる
・第三者割当増資の手続き
→条件決定、募集事項の通知・公告、第三者割当増資の決議、払込の実行、登記手続き
・有利発行時の手続き
→発行決議日の直前日における株価に0.9を乗じた金額よりも低い場合は、公開会社でも特別議決が必要
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