M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年2月9日更新会社・事業を売る
M&Aの税金に関する知識!買い手・売り手の節税対策・税務を徹底解説【2024年最新】
M&Aの実施を目指す際には、その成否にのみ目が向きがちですが、実施後に課せられる税金についても考慮しておくべきです。本記事では、M&Aのスキームごとに生じる税金を説明するとともに、税務や節税対策も解説します。
目次
M&Aと税金の基礎知識
M&Aは対価を伴う取引ですから、基本的にそこには税金が課されます。ただし、M&Aにはさまざまなスキーム(手法)があるため、課税内容は一様ではありません。また、M&Aの取引当事者は、個人の場合もあれば法人の場合もあります。
個人と法人では税金の仕組みが違いますから、同じM&Aスキームであったとしても課税内容は同一ではありません。したがって、M&Aにおける課税・税金を考える際には、以下の2点に着目する必要があります。
- 用いられるM&Aのスキームは何か
- M&Aの取引当事者は個人か法人か
ここでは、まず、個人の所得に課される税金と、法人の所得(利益)に課される税金の基本的な内容を掲示します。
個人の所得と課される税金
税法上、個人所得は10種に分類されています。さらに、その10種類は、課税の仕組みのうえで2種に大別されており、まず、その1種が総合課税を受ける所得です。
- 給与所得
- 事業所得
- 不動産所得
- 配当所得
- 譲渡所得(ゴルフ会員権売却などの場合)
- 一時所得
- 雑所得
もう1種は、分離課税扱いとなる所得です。
- 利子所得
- 退職所得
- 譲渡所得(株式売却、土地・建物売却などの場合)
- 山林所得
総合課税では、全ての所得が合算され控除額が差し引かれた金額に対し、累進税率により税金が課されます。一方、分離課税は、総合課税とは切り離され、所得ごとに定められている固定税率により、税金額を計算する決まりです。
法人の所得と課される税金
法人の場合は、個人のような分離課税制度はありません。所得として事業の損益、事業以外の損益、その他の損益が通算され、その利益額に対して法人税が課される仕組みです。また、法人税としてひと言でくくられていますが、実際には以下の種類があります。
- 法人税
- 法人住民税
- 法人事業税
- 特別法人事業税
上記の全ての法人税に課される税金の税率を計算したものが、実効税率です。法人の利益額に対し実効税率を掛けあわせることで、全体の法人税額を簡易的に算出できます。2022(令和4)年7月現在の法人税の実効税率は、約31%です。
実効税率は、会社の規模や所在地の違いで変動します。法人税の場合、全損益を通算して赤字だった場合には、税金は課されません。
個人株主と法人株主が株式譲渡をした際の税務上の違い
個人株主と法人株主が株式譲渡をした際の税務上の違いは税率や特例などにおいて違いがありますので、それぞれ解説します。
税率について
税率についてですが、以下のように違いがあります。
- 個人株主:20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+個人住民税5%)
- 法人株主(資本金1億円以下):約34%(法人税、地方法人税、都道府県民税、事業税、地方法人特別税)
譲渡時の取得費については個人株主は譲渡収入の5%と最低限認められていますが、法人株主は取得費が認められていません。
相続後3年10ヶ月以内の特例について
相続後3年10ヶ月以内の特例についても以下のような違いがあります。
- 個人株主:株式譲渡所得の計算時に、株式譲渡に係る相続税を取得費に加算できる・非上場株式を発行会社に譲渡した場合にみなし課税の適用なく、通常の株式譲渡課税扱い
- 法人株主:特例無し
特例に関しては法人株主は個人株主と違いありません。譲渡損益ともに他の所得と通算する必要があります。
繰越欠損金について
繰越欠損金について以下のような違いがあります。
- 個人株主:非上場株式の譲渡損失は繰越できない
- 法人株主:欠損金の繰越控除を利用することができる
株式譲渡によるM&Aの税金
株式譲渡で課される税金は、売り手が対象です。売り手が個人か法人かによって課される税金の内容が変わるため、税務も異なります。
個人に課される税金
M&Aの株式譲渡で売り手が個人の場合とは、オーナー経営者が自身の所有する会社の全株式を買い手側に売却するケースです。非上場の中小企業では、ほとんどがこれに該当するでしょう。個人が株式譲渡で得た利益に課せられる税金は、譲渡所得税です。
株式の譲渡所得は分離課税であり、税率は固定で20.315%ですが、その内訳は所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%となっています。復興特別所得税は、2037(令和19)年までの時限措置です。譲渡所得額の算出は、以下の計算式で求めます。
- 譲渡所得=譲渡価額-(株式取得費用+譲渡手数料)
株式取得費用とは、会社設立時の出資額と株式発行に関わる手数料や名義書換料などが該当します。譲渡手数料とは、株式譲渡実施のために業務を依頼したM&A仲介会社などに支払った手数料などのことです。
株式譲渡の税務では1つ注意点があります。それは、所得税と住民税の納税時期が異なることです。所得税は、毎年2月16日から3月15日までの期間に、前年1月から12月分の確定申告を行い納税します。
一方、住民税の場合は、課税事象が発生した翌年6月に納付書が届き、税金の支払いを行います。とかく納税は確定申告時期だけと思い込みがちです。住民税の納税資金の確保も忘れずにいてください。
相続後3年10カ月以内で適用される特例
相続後3年10カ月以内の個人株主には、2つの特例が適用されます。
- 株式譲渡所得を計算する際に、株式譲渡に係る相続税を取得費に加算できる
- 非上場株式を発行会社に譲渡した場合はみなし課税の適用はされず、通常の株式譲渡課税扱いになる
上記の特例は個人株主にのみ適用されるものであり、法人株主は適用対象とはなりません。また、個人株主の株式譲渡は分離課税のため、他の所得との通算に関しては、他の所得と分離して所得計算し、非上場株式同士における譲渡損益は同一年のみ通算可能です。
なお、法人株主の場合は、譲渡損と譲渡益は、どちらも他の所得と通算することになります。
法人に課される税金
M&Aでは、法人が子会社など他社の株式を譲渡することもあります。株式譲渡により譲渡益が出れば法人税が課されますが、法人税はその会社の全損益を通算したうえでの課税です。したがって、他に大きな損金がある場合、非課税となる可能性もあります。
株式譲渡益の算出方法は、個人の譲渡所得の場合と同様です。ただし、個人では「譲渡所得」と表現しますが、法人では「譲渡益」と表現します。法人税の実効税率は、2022年7月現在、約31%です。
- 譲渡益=譲渡価額-(株式取得費用+譲渡手数料)
繰越欠損金の利用
非上場株式の譲渡損失がある場合、個人事業主は繰越しが認められていませんが、法人株主は欠損金の繰越控除が利用できます。
繰越金については法人税申告書別表一(一)で、翌期以後に繰越す欠損金総額、各期に生じた欠損金の使用期限は法人税申告書別表七(一)(法人事業税上は第六号様式別表九)で確認できます。
ただし、繰越欠損金は資本金1億円以下の法人は全額が充当可能ですが、資本金1億円超の法人あるいは資本金5億円以上の法人の完全子会社などは一部しか充当できません。
買収側に課される税金
原則的に、株式譲渡で買収側は課税の対象ではありません。ただし、一部例外があるので以下ではその内容を紹介します。
贈与税が課されるケース
これは、個人が買収側の場合に起こり得る事象です。株式の譲渡価額が、一般的に算定される時価よりも、非常に低額であった場合、時価と譲渡価額の差額分について、譲渡側から贈与を受けたと見なされて贈与税を納付する義務が生じます。
- 贈与税対象額=株式の一般的時価-譲渡価額
なお、贈与税は累進税率で10~55%の税率です。対象額次第では、税金が高額となります。
法人税が課されるケース
法人が買収側のとき、上述した個人のケースと同じように、時価よりも非常に安価な譲渡価額だった場合、受贈益を得たと見なされます。法人税の算定の際に、受増益分の金額が加算された課税となるのです。
- 受増益=株式の一般的時価-譲渡価額
【参考】オーナー経営者による株式譲渡のメリット
オーナー経営者が株式を譲渡する場合、株式譲渡所得に対して所得税、復興特別所得税、個人住民税がかかります。2021年6月時点の税率は合計で20.315%です。株式譲渡所得は「収入金額から取得費と譲渡費用を差し引いた金額」で計算されます。総合課税の最高税率が約56%のため、役員報酬と同等の額を株式譲渡で得ると、税率差で手取りが多くなります。
さらに、株主が役員の場合、退職金を組み合わせることで税負担を減らすことが可能です。退職金の計算は「最終報酬月額×勤続年数×役職に応じた功績倍率」で行い、退職所得は「退職金から退職所得控除を差し引いた金額の半分」です。この退職金は、譲渡するオーナーだけでなく、受け取る企業にもメリットがあります。
事業譲渡によるM&Aの税金
事業譲渡は法人間の取引ですから、課税対象は法人のみです。売り手と買い手それぞれに別の税金が課されます。売り手に対しては法人税、買い手に対しては消費税です。それぞれの税金の概要を掲示します。
法人税と課税額の算出方法
事業譲渡で買い手側に売却を行う当事者は会社です。したがって、売却によって得た譲渡益に対して会社に法人税が課されます。譲渡益の算出方法は、譲渡価額から譲渡した資産の簿価を差し引いて求めます。
- 事業譲渡益=譲渡価額-譲渡資産の簿価
法人税のため、益金の計算や実効税率などは株式譲渡時と同様です。
消費税と課税額の算出方法
事業譲渡によるM&Aでは、買収側に消費税が課されます。ただし、売却側が譲渡代金とともに徴収しますので、税務署に納付するのは売却側です。事業譲渡では資産の売買も行われるのが常で、資産には消費税課税対象のものがあります。
消費税の課税資産と非課税資産の内訳は、以下のとおりです。
- 課税資産:土地以外の有形固定資産、無形固定資産、棚卸資産、のれんなど
- 非課税資産:有価証券、土地、債権など
課税資産である有形固定資産とは設備、施設、機材、10万円以上の備品などです。無形固定資産とは特許権や商標権、意匠権やソフトウェアなどになります。棚卸資産とは、事業における販売を目的として売却側が保有・保管していた在庫製品やその原材料などです。
事業譲渡における消費税は、支払い義務を持つ買収側の税務であるばかりでなく、仮受けして納付する立場の売却側でも行わなければならない税務となります。課税資産と非課税資産の仕分け後、消費税の算出式は以下のとおりです。
- 税金=(譲渡価額-非課税資産総額)×消費税率
買収側にとっては、株式譲渡と違って、譲渡対価以外に消費税分の資金を用意しなければなりません。
不動産が譲渡対象に含まれる場合に課される税金
事業譲渡の譲渡対象の中に不動産がある場合は、別途、買収側に税金が課されます。
登録免許税と課税額の算出方法
事業譲渡の実施において、売却側から土地=不動産も買収する場合、買収側では登録免許税の納付義務が発生します。登録免許税は、土地が売買され、その所有権が移転されたことの登記を行う際に納付するものです。2022年7月現在の登録免許税は、以下のようになっています。
- 登録免許税=土地の価格×1.5%
不動産取得税と課税額の算出方法
買収側が、土地だけでなく建物も事業譲渡で取得した場合、そのどちらに対しても不動産取得税が課されます。2022年7月現在の不動産取得税の計算は、以下のとおりです。
- 不動産取得税(土地)=土地の価格×3%
- 不動産取得税(建物)=建物の価格×4%
※建物が住宅の場合は税率3%
組織再編(合併・会社分割)M&Aの税金
M&Aのスキームのうち、合併と会社分割は、企業組織再編行為という位置づけになっています。そして、課税は特別な優遇措置を受けることが可能です。ここでは、組織再編行為向けの課税優遇措置の概要を掲示します。
消費税は課税されない
合併・会社分割は組織再編行為と位置づけされていることから、商取引とは見なされません。商取引ではないということは、消費税の課税対象にはなり得ないということです。したがって、会社分割では消費税は課税されません。
税優遇措置の分かれ目は税制適格要件を満たすかどうか
合併・会社分割を実行するにあたって、法令で規定されている適格要件を満たすと、適格組織再編と見なされます。適格組織再編と見なされた合併・会社分割に限って、税制上の優遇措置が受けられるのです。
優遇措置の具体的な内容は、譲渡側から譲受側に引継がれる資産が簿価で計算されることになり、譲渡益が生じないため課税措置を受けません。これが非適格組織再編であれば、引継ぎ資産などは時価で計算されます。その結果、該当資産の時価と簿価との差額が譲渡益と見なされ、法人税の対象です。
税制適格の要件
適格組織再編と見なされる要件は、譲渡側と譲受側の関係性により異なります。その関係性の違いにより、後述する要件のうち、満たさなければならない内容が異なります。両者の関係性は以下の3種です。
- 完全支配関係における組織再編:100%親会社がその子会社に対して行う組織再編
- 支配関係における組織再編:50%超の株式を有する親会社がその子会社に対して行う組織再編
- 支配関係のない会社間における共同事業:独立した企業同士による共同事業としての組織再編
適格組織再編と見なされる要件には、以下の6項目があります。
- 対価要件:組織再編行為の対価が株式のみで行われる
- 事業関連要件:譲渡側と譲受側の事業が相互に関連している
- 事業規模または経営参画要件:譲渡側と譲受側の事業規模の差が5倍以内
- 従業者引継要件:組織再編により従業員の約8割が引継がれる
- 移転事業継続要件:組織再編後も以前から行っていた事業が継続される
- 株式継続保有要件:組織再編後、株式が継続して保有される
完全支配関係における組織再編では、上記の要件のうち、対価要件さえ満たせば適格組織再編と見なされます。支配関係における組織再編では、対価要件・従業者引継要件・移転事業引継要件を満たさないと適格組織再編と見なされません。
そして、支配関係のない会社間における共同事業では、6項目の要件全てを満たすことが、適格組織再編と見なされる条件です。
M&Aの税金対策
ここでは、M&A実施の際の税金対策、つまりは節税手段を考察します。導入可能な税金対策としては、以下の5つです。
- 役員退職慰労金の活用
- 株式譲渡を用いる
- 株式譲渡ではなく第三者割当増資を用いる
- 買収ニーズの高い資産のみを売却する
- 売却益をのれん償却などの経費で相殺する
①役員退職慰労金の活用
株式譲渡で実施可能な節税対策が、役員退職慰労金の活用です。M&Aでの譲渡価額の一部を退職金として受け取ることで、税金を引いた後の手取り額が多くなる場合があります。退職金に対する所得税の税率は、ある一定額までは譲渡所得にかかる税率よりも低いです。
税率詳細を確認してシミュレーションすることで、どの程度、手取り額が多くなるかもわかります。ただし、税務の知識がないまま自己判断で実行してしまうと、節税どころか逆効果になってしまうかもしれません。したがって、安心できる専門家に相談しながら行うのが賢明です。
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②株式譲渡を用いる
ここでは、M&Aを現実に行った際の課税時の対策ではなく、納税上、どのM&Aの手法を選ぶと節税につながるかという観点で考えてみましょう。まず、組織再編行為である合併と会社分割は選択肢から除きますので、株式譲渡と事業譲渡のどちらがいいかという話になります。
この場合、ポイントは税率です。個人と法人の違いがあるため、公平な比べ方にはなりませんが、株式譲渡での譲渡所得への課税率は20.315%であるのに対し、事業譲渡での法人税の実効税率は約31%になります。
中小企業の場合、経営者個人の手元に残るキャッシュも、会社に入るキャッシュも同様に事業資金として運用されるケースもあることを考えると、株式譲渡の方が使える資金は大きいといえるでしょう。
ただし、株式譲渡では会社の経営権は失ってしまいますが、事業譲渡であれば会社は存続します。したがって、会社を存続させたい場合は事業譲渡しか選択肢がありません。最終的にはケースバイケースとなってしまいますが、この点も含め専門家とよく相談してください。
③株式譲渡ではなく第三者割当増資を用いる
税金を発生させず買収側に経営権を引き渡す方法としては、第三者割当増資があります。具体的には、議決権割合が5割超となる数の株式を、第三者割当で買収側に交付します。このとき、買収側が支払う株式対価は出資金です。
オーナー経営者個人が所有する株式を売却したわけではないので税金は課せられませんが、オーナー経営者への入金もありません。
④買収ニーズの高い資産のみを売却する
買い手が本当に欲しい資産だけに絞って売却を行えば、対価が低くなるため必然的に税額も下がります。具体的には、以下の方法が考えられます。
- 会社を丸ごと売却する株式譲渡ではなく事業譲渡を用いる
- 会社分割を用いたM&Aにより、譲渡内容を絞り込む
- 不要資産を処分後に、株式譲渡を行うことで譲渡価額を下げる
⑤売却益をのれん償却などの経費で相殺する
法人税は、会社の全損益を通算した額が課税対象となるので、売却益をのれん償却などの経費で相殺すれば税負担を少なくすることが可能です。具体的には、株式譲渡益や事業譲渡益が生じた同年度内に、大規模な設備投資などを行って高額の費用を計上し、譲渡益と相殺します。
事業譲渡の場合、買収側はのれん代を償却し、経費として処理が可能です。固定資産の耐用年数においては、中古資産の短い耐用年数が利用できます。なお、この方法は法人に限り利用可能な節税対策です。
そのほか、例えば、1億円の株式売却益がある年度に1億円の広告宣伝費を支出すれば、その年度の法人税は実質ゼロになることがあります。
ただし、こうしら節税方法は実際の現金支出を伴うため、節税をしない場合と比べて手元に残る資金は少なくなることを理解しておく必要があります。ただ無駄に経費を計上するのではなく、経営上本当に必要で効果が見込める支出に限定することが重要です。
M&Aにおける税金の申告タイミング
ここでは、個人・法人それぞれの税金申告時期を確認しましょう。
個人の税金申告タイミング
個人の税金申告は、M&A実施の有無にかかわらず、通常の確定申告を行い、税金を納付することになります。確定申告時期は、例年、2月中旬から3月15日前後までです。前年1~12月の1年間の収入を申告します。
法人の税金申告タイミング
法人の場合は、各社によって事業年度の区切りが異なるため、個人のように画一された時期の特定はありません。法人の確定申告は、事業年度終了日の翌日から2カ月以内に行い、税金の納付も同一期間内です。
M&Aの当事者ごとの税金ポイント
M&Aにおける税金は、当事者ごとに税務の取り扱いが異なるため、自身に必要な手続きを事前に正しく知っておくことが大切です。ここでは、譲渡・売却側と譲受・買収側とに分け、ポイントとなる点を説明します。
譲渡側のポイント
M&Aの譲渡側における税金について、株式譲渡の際の個人株主・法人株主それぞれのポイントと、役員退職慰労金を活用する場合の注意点を取り上げます。
個人株主の場合(株式譲渡)
個人株主が株式譲渡を行った際に課されるのは、所得税、復興特別所得税、住民税です。譲渡収入のうち5%は取得費として計上でき、相続後3年10カ月以内であれば特例も適用されるので、クロージング日の翌年は忘れずに申告を行いましょう。
ただし、株式譲渡を行った対象企業の資産の70%以上を土地や借地権が占める場合、不動産の短期譲渡所得とみなされて課税率が変わることもあるため注意が必要です。
また、配当金の受け取りや譲渡企業株式を譲渡企業に譲り渡した場合、配当所得に対して最高約50%(配当控除後、累進課税)の所得税などが課されます。
支払法人から配当額に対する税金(20.42%)が差し引かれた額を受け取ることになるので、配当が一定額を超えた場合は、翌年の確定申告での精算が必要です。
法人株主の場合(株式譲渡)
法人株主の場合は、株式譲渡益が他の利益と通算され、法人税が課されます。ただし、配当金の受け取りや、譲渡企業に譲渡企業株式を譲り渡した場合は一定額を非課税にでき、差し引かれた源泉徴収を法人税額から控除可能です。
また、完全子会社から土地などの現物配当を受けた場合は、全額が非課税扱いとなります。
退職金における税務上の留意点
「M&Aの税金対策」で述べたように、株式譲渡を行おうとする個人株主の場合、譲渡対価の一部を減額し、その減額分を譲渡企業から役員退職金として支給を受けることで、それぞれの税率の違いから手取り額の増額が可能です。
- 株式の譲渡所得への税率=20.315%
- 退職所得への実質税率=7~28%
退職金は、一定の金額帯ごとに税率が変わる累進課税です。株式の譲渡所得の税率を下回る金額分を退職金に振り替えることで手取り額が増えます。その際には、「退職所得の受給に関する申告書」を会社に提出しておけば、退職金の支払い時に源泉徴収されて便利です。
同書を提出しなかった場合、簡易源泉徴収として20.42%の税率で徴収されてしまい確定申告が必要になります。一方、退職金を支払う譲渡企業としては、役員退職金を適正額まで損金として計上可能です。
また、役員退職金などの損金が益金と通算しきれない場合、繰越欠損金として翌期以降9年にわたり繰越できます。
譲受側のポイント
M&Aの譲受側企業には、税務面で注意点があります。
株式取得価額として資産計上されるもの
株式譲渡の際、譲受側企業が支払った対価は、株式取得価額として資産に計上されます。また、株式譲渡の対価以外に、M&A仲介会社への手数料が発生しますが、各種手数料で扱いが変わるため注意が必要です。まず、各種手数料の違いを確認しましょう。
- 着手金:M&A仲介会社と業務委託契約を締結した際に支払う手数料。無料の会社もある。
- 中間報酬:M&A取引相手と基本合意書を締結した際に発生する手数料。成功報酬の一部の前払い。
- 成功報酬:M&Aが成約しクロージング時に支払う手数料。
- デューデリジェンス(買収監査)費用:売り手企業に実施する精密調査の手数料。
株式譲渡が成約した場合、上記の手数料のうち着手金以外は、株式取得価額に加算されます。着手金は、損金としての計上です。また、デューデリジェンスまで進んだものの最終的に株式譲渡が破談する場合もあります。
そのとき、すでに支払い済みである中間報酬やデューデリジェンス費用は返却されません。したがって、そのケースでは、中間報酬とデューデリジェンス費用を損金として計上します。
中小企業事業再編投資損失準備金について
中小企業事業再編投資損失準備金とは、税制改正により2021(令和3)年8月から導入された制度(経営資源集約化税制)です。中小企業事業再編投資損失準備金の概要は以下のようになっています。
- 投資額(株式譲渡の対価)の70%以下の金額を準備金として積立できる=損金に算入できる
- ただし、積立から5年経過後、積立額を5年間の均等取崩する=益金として計上しなければならない
後日、益金算入するため、課税が繰り延べられるだけですが、M&A実施年度の節税効果は高いので、これによりM&Aが今までよりも普及することが目的の制度です。ただし、この計上処理が認められるには、以下の要件全てを満たさなければなりません。
- 資本金1億円以下の法人
- 従業員数2,000人以下の法人・個人
- (資本または出資を有しない場合は従業員数1,000人以下の法人・個人)
- 株式の取得価額が10億円以下
- 事業承継等事前調査(実施する予定のデューデリジェンス)の内容を記載した経営力向上計画を策定し主務大臣の認可を受ける
- 認定計画の内容どおりに株式取得を実行する
- M&Aの最終合意後に主務大臣に報告を行い確認書の発行を受ける
なお、資本金や従業員数が該当する場合でも、資本金5億円以上の企業の完全子会社は除外されることになっています。
消費税の取扱い
事業譲渡では、譲受側が消費税を負担します。仮に1億円の対価のうち消費税課税資産の価額が8,000万円だとすれば、対価支払い時に1億800万円が必要です。対価がもっと高ければ、消費税額ももっと高額となるでしょう。
したがって、事業譲渡を実施する場合には、消費税分も加味した資金繰りをしておくことが肝要です。事業譲渡で発生する消費税の税務では、仕入税額控除の処理をします。仕入税額控除とは、1つの製品やサービスに対し多重に消費税が課税されないようにする仕組みです。
具体的には、企業における消費税の算出の際に、課税売上の消費税額から課税仕入れの消費税額を差し引きます。
M&Aの税金に関する専門家
M&Aにかかる税金やその扱いは、使用スキームや個々の状況によっても変わってくるため、専門家に相談しながら正しく処理することが大切です。
税金に関しては税理士や会計士などの士業にアドバイスを受けるとよいですが、M&Aのスキーム選択などからクロージングまでのサポートを受けたい場合には、M&A仲介会社をおすすめします。
M&A総合研究所は、主に中堅・中小企業のM&Aを手がける仲介会社です。M&Aや事業承継の経験豊富なアドバイザーが相談から成約までフルサポートいたします。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談を随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際は、どうぞお気軽にM&A総合研究所へお問い合わせください。
M&Aの税金に関する知識まとめ
M&Aでは、合併・会社分割で適格要件を満たしている場合を除き税金が課されます。組織再編以外のどのM&Aスキームを選択するとしても、M&Aを実施する前に、あらかじめ税金対策など税務について考えておくことは肝要です。
M&Aのサポートを依頼する専門家を決める際には、税務の相談もできるところを選ぶのが賢明でしょう。
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