M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2022年10月5日更新会社・事業を売る
会社の廃業後に残った借金の返済は必要?対処方法をパターン別に解説
後継者不足や経営状態の悪化などの理由により、会社の廃業を検討することがあります。しかし、残される借金の対処方法がわからずに廃業に踏み切れないケースも多いです。この記事では、会社を廃業した後に残る借金の対処方法をパターン別に紹介します。
目次
会社の廃業と借金
会社を廃業する際、資産より負債が上回っている場合は債務超過となり借金が残ります。会社を廃業して完全に畳むためには、残される借金の後処理をする必要があるでしょう。
会社の場合、法人と経営者個人は別扱いされるため、必ずしも経営者に会社の借金を返済する義務はありません。ただし、連帯保証がある場合は経営者の個人資産で弁済することもあり、会社の廃業後に残る借金は状況次第で対処方法が異なります。
会社の廃業とは
会社の廃業とは、会社が自主的に事業を廃することです。会社の廃業は、株主総会の解散決議や債権・債務の整理など正式な段取りを踏んだ後に、会社を消滅させます。
近年は中小企業の廃業が増えており、原因の多くは後継者問題の深刻化や、財務状況の悪化による赤字経営などです。多くの経営者が廃業や廃業後に残る借金に関して悩みを抱えています。
会社の清算とは
会社の清算とは、会社を廃業する際に必要な清算手続きのことをいいます。会社を廃業するだけでは債権・債務が残ってしまうため、資産売却や債権回収を行い、その資金で債権者に対して弁済するのです。
回収した資金で債務を弁済しきれる場合は、残された資金を株主に対し公平分配して清算手続きが完了します。後は清算結了登記をすると会社の廃業手続きが全て終わるでしょう。
会社の資産を全て処分しても債務を弁済しきれない場合は、倒産手続きへと移行します。裁判所の監督下で法的に処理手続きを行います。
会社の倒産とは
会社の倒産とは、債務の弁済が困難な状態にあり、事業活動の存続が不可能な状態のことです。清算手続きで債務が残る場合は、特別清算や破産手続きで後処理を行います。
特別清算は、裁判所に特別清算の申し立てを行い、会社の清算手続きを進めます。株式会社以外の法人形態では利用できません。
破産手続きは、裁判所に破産申立てを行い、裁判所が選任する破産管財人の主導により清算手続きを進めます。特別清算と比較すると手続きや費用面で負担が大きいですが、株式会社以外の法人形態も利用できます。
会社の廃業の流れと借金相殺の方法
まずは営業の停止をすることが、会社の廃業における流れです。営業を停止すると、会社に資産、負債、従業員の雇用契約などが残り、これらを整理することを精算といいます。
売掛金、店舗、商品在庫などの資産を売ってお金に換え、負債を支払います。法人の場合は、清算でお金が残ると、株主へ配当し清算終了です。
清算で資産と負債を相殺しなければ、会社を消滅できません。
会社を廃業した後に残った借金の行方
会社の資産で債務を弁済しきれずに会社の廃業後も借金が残る場合は、破産手続きで借金の支払い義務に関して免責を受ける手続きを行います。
会社の破産手続きであれば、経営者個人が破産したことにはなりません。経営者が連帯保証人になっている場合は、経営者自身も破産手続きが必要になるケースが多いです。
会社を廃業した際に借金が残る理由
会社の廃業で借金が残る理由には、さまざまなものがあります。状況次第で借金への対処方法が変わるので、債務超過や連帯保証の有無などの個別状況を確認しておきましょう。
債務超過している場合
会社の廃業は、清算により債権・債務の整理を行わなければ、手続きを進められません。資産売却や債権回収をしても、債務を弁済しきれない場合は債務超過となり、一定の手続きが必要です。
必要な手続きは、債務超過の金額によって変わります。以下では、少額と多額の場合に分けて手続きの内容を見ていきましょう。
少額の場合
債務超過が少額の場合は、任意整理によって返済する方向で各債権者と交渉を行います。任意整理とは、債権者との個別交渉により債務全体額や月々の返済額を減らすことで、現状よりも支払い負担を軽くする手続きです。
全ての債権者に対して公平に返済しなければならないため、満たすべき条件は多いです。また、清算手続きで任意整理を行うためには、以下の条件を満たす必要があります。
【任意整理が利用できる状況】
- 債権者の数が少ない
- 全ての債権者が会社の清算に協力的
- 経営者が債務整理を公平に行う意思を示している
- 債権者が任意整理では債権放棄額を損金算入できない可能性があることを了承している
多額の場合
債務超過が多額の場合は任意整理が難しいため、法的整理で個人再生もしくは自己破産手続きを行います。
個人再生とは、裁判所に申し立てして債務を大幅に減額する手続きです。減額処理後に残された債務は原則3年で分割返済します。全ての債務を消滅させるのではなく一部の返済を行うことで、自宅など一定資産を保護できるメリットがあります。
ただし、個人再生でも、任意整理と同じく定期収入がないと認められるのは難しいでしょう。また、信用情報機関へ事故情報として登録されるため、新規の借り入れやローンは5~10年間利用できません。
自己破産とは、裁判所で債務を免除してもらう手続きです。破産者の財産を処分して債権者に分配を行い、債務が残る場合は免責措置を受けられ借金の返済義務が免除されます。つまり、自己破産により借金がなくなるのです。
ただし、自己破産はメリットばかりでなく下記のデメリットがあります。
【自己破産のデメリット】
- 社会的信用を失う
- 生活に必要最低限のものが処分される
- 官報公告される
- 手続き中は公的な資格が制限される
- 手続き中は住所の移転が制限される
上記に加え、任意整理や個人再生と同様に信用情報機関へ事故情報登録されるため、新たな借り入れやローンは10年間できません。
連帯保証がある場合
連帯保証がある場合は、会社の廃業後に連帯保証人になっている人に返済義務が生じます。中小企業が融資を受ける際は経営者自身が連帯保証人になっていることが多いため、結果として経営者に借金が残るケースが多いです。
連帯保証人の個人資産でも弁済しきれない場合は、保証人個人が破産手続きを行う必要があります。会社の多額の借金を個人で返済するのは非現実的なので、個人破産(会社の自己破産とほぼ同じ)が妥当です。
個人破産手続きは、裁判所が選任する破産管財人によって進められます。連帯保証人が保有する現金・預金・不動産・生命保険など、あらゆる資産を現金に換えて、債権者に平等分配を行うのです。
残された債務に関しては、支払い能力不足により免責となり全額帳消しとなります。借金をゼロにできるのは個人破産のみであり、最も効果が得られる手続きです。
会社の廃業後に借金が残った場合のパターン別対処方法
破産手続きでは、破産者の資産を現金に換金して各債権者に配当します。しかし、全ての債務を弁済できないこともあるため、全ての債権者が平等に返済を受けるのは難しいのが実情です。
そこで、公平性や政策上の目的を実現するため、債権者が複数の場合は各債権に優先順位を設けて返済することが定められています。定められた優先順位に反して返済を行った場合、本来返済を受けるはずだった債権者が不利益を被る可能性があるでしょう。
この場合は損害賠償問題に発展することもあるので、債権者への返済は注意しながら進める必要があります。
【会社の廃業後の借金の返済優先順位】
- 担保への対応
- 財団債権への対応
- 一般債権への対応
担保への対応
債権の返済優先度が最も高いのは、担保が設定されている借金です。担保は債務を弁済するための保証なので最も優先的に返済される権利があるため、何よりも優先して返済します。
返済方法は、破産手続きによらずに担保物を処分するものです。破産手続きから除かれることを別除権とも呼び、別除権を有する担保権者を別除権者といいます。
破産者が資産的価値のある不動産を所有していた場合、全ての債権者に公平に弁済するのではなく、別除権者に優先的に返済して残った金額をほかの債権に充当します。
財団債権への対応
破産手続きに関する債権のなかで、優先順位が高いのは財団債権です。財団債権は会社が保有する資産から随時返済を行います。
租税の請求権や従業員の給与などが含まれており、優先的に返済するべきです。破産法第2条第7項で示されている財団債権の分類は、以下になります。
【財団債権の分類】
- 破産管財人の報酬
- 破産債権者の共同利益のために行われる裁判費用
- 破産財団の管理にかかる費用や裁判上の費用の請求権
- 破産手続開始前の租税のうち、法定の一定限度
- 破産者の従業員(使用人)の給料などのうち、破産手続開始前3月間分
- 破産者の従業員が破産手続終了前に退職した場合の退職金(退職手当)のうち、退職前3月間の給料の総額に相当する額
一般債権への対応
一般債権は、債権のなかでもっと優先度が低い債権です。財団債権の弁済が終わった後、支払い能力が残っている場合に弁済します。
財団債権までの支払いで資産が尽きてしまうことが多いため、会社や連帯保証人がよほどの資産・財産を保有していな限り、一般債権者は返済を受けられないケースが多いです。
会社の廃業後に借金が残る場合の対策
会社を廃業しても借金が残ってしまう場合は、破産手続きにより借金の返済に関して免責措置を受けられます。しかし、社会的信用の喪失や事業の存続ができなくなるなどのデメリットがあり、できる限り破産は避けたいところです。
そのような際に検討したいのが、廃業を避けながら借金を返済する方法です。ここでは、会社の再建とM&Aによる会社売却の選択肢について解説します。
会社の再建を考える
事業計画により現実的な借金の返済スケジュールを作成することで、金融機関から新たに融資を受けて再建を目指す方法です。新たに借り入れた資金を元手に事業を立て直して収益向上を目指します。
借金が原因で廃業を検討する会社は、金融機関への返済を続けた結果、従業員への支払いや一般経費の決済ができなくなってしまい、限界を迎えるケースが多いです。
つまり、一定のキャッシュフローが回っている会社であれば、金融機関への返済スケジュールを変更することで再建を目指すことも不可能ではありません。
ただし、事業計画が非現実的な場合は融資を受けられないことがあります。債権者である金融機関は債権回収リスクを嫌うため、着実に借金を返済できる計画を策定できなければ、会社の再建プランは難しいでしょう。
M&Aを検討する
借金が多すぎて会社の再建を目指す体力がなかったり、新たに融資を受けるのが難しかったりする場合は、M&Aによる会社売却の選択肢があります。
M&Aとは、会社の合併・買収の総称で、複数の法人格を一つに統合したり会社が他会社の経営権を買い取ったりすることです。
中小企業のM&Aは株式譲渡の手法が多く使われており、借金を含めたあらゆる負債を包括的に承継できます。株式譲渡の包括承継では、融資を受ける際に契約した連帯保証も引き継げます。買い手側の評価次第では借金を返済したうえで、一定の売却益を獲得することも不可能ではありません。
M&Aで会社を存続できれば従業員の雇用も守れるので、廃業と比較すると多くのメリットがあります。
会社に借金があってもM&Aは可能
M&Aによる会社売却を検討する際、借金がある会社に買い手がつくのかという問題がありますが、借金があってもM&Aによる会社売却は可能です。
M&Aにおいて会社の評価を決めるのは買い手側です。収益性を求めるだけではなく、保有する技術・ノウハウや顧客・取引先の確保、あるいは地域戦略の一環としてM&A買収を行うこともあります。
会社が事業を行っているだけで価値評価される可能性もあり、買い手次第では借金を上回る評価を得ることも少なくなりません。
M&Aによる会社売却ができれば借金を清算できる可能性が高くなるので、廃業する前にM&Aの可能性について検討することも重要です。
会社に借金がある状況でM&Aを検討する際の相談先
借金の対応に追われている場合は、早い段階で行動を起こす必要があります。現状を維持するだけでも借金が膨らんでいく可能性があるため、状況が悪化してM&Aによる売却の可能性も失われるでしょう。
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会社の廃業後に残った借金の対処方法まとめ
会社の廃業は、債権・債務の整理を行わなければ、手続きを進められません。清算手続きで債務が残る場合は任意整理や破産手続きをする必要があり、個人資産を失うこともあります。
廃業以外の選択肢としてM&Aによる会社売却も検討することが大切です。買い手がみつかれば借金を引き継ぐことも不可能ではないので、経営者としての早期決断が求められます。
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