M&Aとは?手法ごとの特徴、目的・メリット、手続きの方法・流れも解説【図解】
2022年12月31日更新会社・事業を売る
M&Aの相談先一覧!相談先ごとの特徴、メリット・デメリット、選び方、注意点も解説
M&Aでは、専門的な知識が必要となるため、専門家に相談しつつサポートを受けながら実施するのが一般的です。この記事では、M&Aにおける相談先ごとの特徴、相談先ごとのメリットやデメリット、選び方や注意点などについて解説します。
目次
M&Aに関する相談内容
実際に知識が全くない状態からM&Aを開始すると多くの疑問が生じますが、具体的にどのような内容の相談を持ちかければ良いのか悩んでしまう経営者の方も少なくないでしょう。
本章では、M&Aの実行前・実行中・実行後、およびM&Aによる事業承継に関する相談内容を順番に取り上げます。
M&A実行前の相談内容
M&A実行前の相談内容は、主に以下です。
- M&Aの準備に関する相談
- M&Aの相手企業探しに関する相談
- 機密情報の保護に関する相談
- M&A成功手順の相談
- M&A費用の相談
- M&A戦略策定の相談
- M&A実行可否の相談
- 企業価値の求め方の相談
- 高値でM&A取引を行う方法の相談
それぞれの相談内容を順番に詳しく紹介します。
M&Aの準備に関する相談
M&Aを行う際は、M&Aの買い手企業、売り手企業を問わず、M&Aに向けての準備を行う必要があります。
具体的に事前に検討するべき事項は、M&A戦略の策定、M&Aにおける必要機関の確認、契約手続きの整理などがあり、M&Aの専門家にこれらの準備について相談するケースが多いです。
M&Aの相手企業探しに関する相談
本格的にM&Aに向けて動く前に、自社内での想定に合致するM&Aの相手先企業がみつかるか、または条件に合った相手先企業を探してほしいなど、あらかじめ専門家に相談する場合もあります。
候補企業の有無だけでなく、売り手企業であれば売却価格、買い手企業であれば買収価格の目線が妥当かを、併せて相談するケースが多いです。
機密情報の保護に関する相談
M&Aでは、売り手企業が買い手企業に対して自社の機密情報を開示する必要があります。そのため、特に売り手企業にとっては、機密情報の保護が重大な関心事項です。
M&Aでは一般的に、会社名を出さず企業情報の概要のみを開示した後、本格的な交渉に入る前に売り手企業と買い手企業の間で秘密保持契約を締結します。
事前にM&Aの専門家に、機密情報の保護に関して相談することが多いです。
M&A成功手順の相談
基本的にM&Aは成功率の低い取引とされるうえ、高額な費用と多くの時間が必要となる「ハイリスクハイリターン」の取引なので、少しでも成功確率を上げたいと考えます。
そのため、「どのようにすればM&Aが成功するのか」を相談する経営者も多いです。
M&A費用の相談
買い手は、M&Aにおいて仲介会社・アドバイザリー会社への手数料や買収費用などで多額の費用を要します。費用を把握しておかなければ、予算の範囲内でM&Aを実行できない可能性が高いため、「どの程度、費用を要するか」を相談する経営者も少なくありません。
M&A仲介会社やアドバイザリーに相談しておくと、必要な費用を大まかに把握できます。
M&A戦略策定の相談
買い手側には、事業規模の拡大や新規事業への展開などを目的にM&Aを実施する企業が多いです。とはいえ、漠然とした方向性は定まっていても、具体的な戦略までは構築できていないケースが少なくありません。
そのため、M&A前後の戦略策定を依頼する目的で、相談を持ちかけるケースも多いです。経験豊富なM&Aの専門家に相談すれば、M&Aの相手探しから買収後の事業拡大まで幅広くサポートしてくれます。
M&A実行可否の相談
M&Aを活用して事業承継したいものの、自社に売却する価値があるのか不安に感じる経営者の方は多く存在します。そのため、「M&Aを実施すべきか」を相談するケースも多いです。
上記に関連して、「新規事業のためにM&Aを実施したいが、どのようにM&Aを利用すれば良いか」といった相談も見られます。
企業価値の求め方の相談
売り手企業の経営者にとって、企業価値の求め方は非常に気になる部分だといえます。企業価値が高いほど、最終的な売却価格も高くなるからです。
M&Aの価格は、売り手と買い手の交渉により最終的に決定されます。事前に算出された売り手による企業価値評価をもとに、最終的なM&Aの価格が話し合われる仕組みです。企業価値評価では、公認会計士や税理士などの専門家が、専門的なアプローチを用いて企業価値を算出します。
インカムアプローチやマーケットアプローチなど企業価値を算出する方法はさまざま存在しますが、中小企業のM&Aでは3〜5年分の営業利益に純資産を足した金額を企業価値とするケースが多いです。
高値でM&A取引を行う方法の相談
高値でM&A取引を行う方法も、売り手からの相談内容として多いです。高値でM&A取引を実行するには、会社の収益性を高めて企業価値に磨きをかける必要があります。
技術力やブランド力などに磨きをかけつつ、将来的な収益力を高めることで、買い手から評価されやすいです。M&Aでは、過去の収益性だけではなく今後の収益性もチェックされるため、将来的な事業ビジョンを明確化しましょう。
将来的に十分な利益が見込まれる事業内容であれば、高値でM&Aが成立する可能性が高まります。
M&A実行中の相談内容
M&A実行中の相談内容は、主に以下のとおりです。
- 各契約書の相談
- デューデリジェンスの相談
それぞれの相談内容を順番に詳しく紹介します。
各契約書の相談
M&Aに限らず、取引を行う際はさまざまな契約書が必要とされます。M&Aの知識がなければ、どのような書類が必要とされるのかわからず悩んでしまうでしょう。
会社やM&A手法の種類によっても、提出する書類は異なります。「どの書類をどこに提出して、その提出期限はいつなのか」は専門家でないと判断が難しいため、M&A実行中に相談する経営者は多いです。
デューデリジェンスの相談
デューデリジェンスとは、M&Aの相手側企業に対して実施する事前調査のことです。ここでは、事前に入手している情報と実際の会社における状況に相違がないかチェックします。
書類には載っていない簿外債務や偶発債務などのリスクが発見される可能性もあるため、念入りに実施しなければなりません。
上記の理由から、M&Aを実施する際のデューデリジェンスは非常に重要です。とはいえ、会社の調査を実施するのは、簡単ではありません。M&Aの専門家に相談すれば、デューデリジェンスを効率的に実施できます。
M&A実行後の相談内容
M&A実行後の相談内容は、主に以下のとおりです。
- M&A後の従業員の相談
- 運営方針の相談
それぞれの相談内容を順番に詳しく紹介します。
M&A後の従業員の相談
M&Aが失敗に終わる原因の1つに、従業員同士の関係構築ができていない点が挙げられます。
もともと別の会社で働いていた従業員が密な関係を構築していくのは決して簡単ではなく、従業員同士のチームワーク作りに失敗する経営者は多いです。従業員のフォローもM&Aのプロセスでは重要とされるため、この問題を相談する経営者も多く存在します。
運営方針の相談
M&Aの実施後、どのように会社を経営していくのかは難しい課題です。M&Aの実行はゴールではなくスタートであり、経営者にとって「M&A後にどのように会社を運営していくか」は重要課題です。そのため、専門家に相談しながら経営戦略を立てつつ、着実に実行していく経営者も多く見られます。
事業承継M&Aに関する相談
昨今の日本では後継者不在に悩む中小企業が増えており、M&Aによる第三者への事業承継を検討する経営者は少なくありません。その際に発生する疑問は、以下が挙げられます。
- 事業承継後における経営者の処遇はどうなるのか
- 中小企業や個人事業でもM&Aを実施できるのか
- 従業員の雇用は維持されるのか
- M&Aによる事業承継を即座に検討していないが相談できるのか
上記の悩みを抱えている場合、M&Aの専門家に相談を持ちかけると良いでしょう。
相談時に伝えるべきポイント
ここでは、相談時に伝えるべきポイントを売却側と買収側に分けて見ていきましょう。
売却側のポイント
アドバイザーは、M&Aにおける実現の可能性を見極めたいと考えるので、売却側は会社に関する情報を正確に伝えることがポイントです。ネガティブな情報も重要となります。
「事業内容」「 組織・人員体制」「財務内容や希望条件」「所有者(株主)の状況」などが相談する主な内容です。
買収側のポイント
買収側は、ターゲットとなる事業内容や対象地域、資金力をできるだけ詳細に伝えましょう。M&A後の運営方針についても、買収先への積極的な経営関与(ハンズオン)あるいは現状維持のどちらを考慮しているのかなどを伝えてください。
買収後のマネジメント体制も相談しましょう。M&A後のスムーズな社内体制を構築するために必要です。
M&Aの相談先に関する調査データ
中小企業庁による中小企業白書2019では、経営者引退による事業承継を行う際に相談した、外部専門家における内訳のデータが発表されています。発表データによれば、外部へ相談した経営者の72.5%が「公認会計士・税理士」、33%が「取引先金融機関」へ相談を行っています。
それに続くのは、「商工会議所・商工会」の11.1%、「弁護士」の6%、「事業引継ぎ支援センター」の5.6%です。M&A仲介会社などが含まれる「その他経営コンサルタント」は、8.5%でした。
「公認会計士・税理士」「取引先金融機関」が大きな割合を占め、その他の専門家への相談件数は依然として低いといえるでしょう。なお、相談先は複数回答が可能となっているため、各割合の合計は100%を超えます。
中小企業庁「中小企業白書2019」経営者引退に向けて相談した専門機関・専門家(P.140)
M&Aの相談先一覧
M&Aを実行すると、ほとんどのケースで自社の経験や知識のみでは解決できない問題が発生します。特に法務や税務の問題が発生すると、経営者のみで対処するのは極めて困難です。
そのため、専門的知識のもと心強いアドバイスを与えてくれる相談相手が必要とされます。M&Aに関する具体的な相談先は、以下のとおりです。
- 公認会計士・税理士
- 弁護士
- 金融機関
- ファイナンシャルプランナー
- 商工会・商工会議所
- M&A仲介会社
- 事業承継・引継ぎ支援センター
- 知り合いの経営者
各相談先の特徴を順番に詳しく紹介します。
①公認会計士・税理士
公認会計士に対しては財務状態、税理士に対しては税務について相談可能です。これら2つの相談先はともに国家資格を持つ専門家であり、相談・依頼すれば会社の決算関連業務を手掛けてもらえます。
メリット
これらの専門家はスペシャリストとして会社の経理を熟知しているため、自社のみで実施するよりも時間を短縮できるうえに正確な経理処理が実現可能です。
会計や税務は会社の重要事項であり信頼関係が重要とされますが、公認会計士や税理士は定期的に会社を訪問してくれます。そのため、相談先と信頼関係を築きやすいです。
会社の決算業務などを依頼する際、会社の経理面を事前に把握しているため、スムーズに対応してもらえる点もメリットといえます。
デメリット
公認会計士や税理士は必ずしもM&Aに精通しているとは限らず、サポート自体を実施していないケースや、非常に限られたサポートのみしか実施してもらえないケースがあります。
サポートに対応していても、これらの専門家が抱えているネットワークや対応エリアは限定的である点に注意しましょう。
②弁護士
弁護士の中には、M&A支援や仲介を積極的に手掛けている専門家も存在します。そもそもM&Aはさまざまな法律が絡む行為でもあるため、法律の専門家である弁護士に相談・依頼すると非常に心強いです。
メリット
弁護士への相談・依頼には、M&A相手先企業とのトラブルを未然に防いでもらえたり、トラブルが起きた際に対応してもらえたりする点にメリットがあります。M&Aで必要となる法律関係書類の作成サポートを受けることも可能です。
M&Aの最終契約後は、雇用や取引先などの法律関係に対する継続的なサポートが期待できます。
従来、弁護士が手掛けるM&Aは大企業を顧客とするケースが主流でしたが、昨今における中小企業のM&A件数増加を受けて、弁護士の取り扱い案件数が増加中です。
デメリット
弁護士は公認会計士や税理士と同様に、M&Aに精通していなかったり、抱えているネットワークが限定的であったりするケースも多く存在します。税務・財務・会計などに精通する専門家のネットワークがないと、M&Aの相談先として充実したサポートは期待できません。
③金融機関
M&Aを行う際は、普段から取引している銀行や証券会社などの金融機関に相談する選択肢も有効です。
財務面の資金繰りや資金調達方法など、M&Aでは資金に関する悩みも尽きません。こうした資金面の相談は、お金のスペシャリストである金融機関に持ちかけると良いでしょう。
メリット
主要な金融機関は、広範囲のネットワークを持っています。会計士や税理士と同様に金融機関の担当者も、定期的に会社を訪問してくれるケースが多いため、信頼関係の面でも心配ありません。
大規模な金融機関であれば、M&Aの相談を専門的に請け負う部署を構え、M&Aの知識が豊富なスタッフに相談できる点もメリットです。良好な取引関係にあり自社の状況を定期的に共有している金融機関であれば、スムーズに対応してもらえます。
デメリット
金融機関では、基本的に中小企業のM&AやスモールM&Aなどの相談に対応していません。中小企業からすると、M&Aの相手が見つかりにくいうえに手数料が高い点もデメリットです。
主要な金融機関は大規模な組織であるため、フットワークが軽いとはいえず、迅速な対応を期待できない可能性もあります。
④ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルプランナーは、M&Aの目的が事業承継であり、引退後の収入源を確保したいと考えている場合に有効な相談先です。ファイナンシャルプランナーに相談すると、M&A後における資産運用のアドバイスがもらえます。
メリット
ファイナンシャルプランナーには、M&Aによる経営引退後の資金運用やライフプランなどを相談できます。基本的に個人を対象とするビジネスを展開している専門家であるため、M&Aによる事業承継に際して個人情報を提供するケースでも情報漏えいの心配はありません。
デメリット
もともとM&Aの専門家ではない点に注意が必要です。M&Aをはじめとする経営戦略を策定する際の相談相手としても適さないことから、あくまでもM&Aを実行した経営者の資金運用・ライフプランの相談先として活用すると良いでしょう。
⑤商工会・商工会議所
商工会議所・自治体などの公的機関も、M&Aの相談相手として活用できます。地元企業とのネットワークを有しており、特に地方部でのM&Aを検討している場合に有効的な相談先です。
メリット
商工会・商工会議所などの公的機関には、中小企業を支援する助成金や補助金などの制度を運営する機関もあるため、M&Aの資金に悩んでいる場合は相談するとよいでしょう。
金融機関の融資とは違い、返済が求められない制度であるため、中小企業でも活用しやすいです。
デメリット
商工会議所・自治体ともに、M&Aの専門的な機関ではありません。M&Aの相手探しや資金面のサポートは望めるものの、手続き面のサポートは受けられない可能性が高いです。
助成金や補助金などの制度は、申請期間が定められているうえ、申請から受給までに1年ほどの期間がかかるケースもあるので、申請要項を事前に確認したうえで相談を持ちかけるとよいでしょう。
⑥M&A仲介会社
M&A仲介会社は、M&A業務自体を事業として手掛けている会社です。知見や実績などを豊富に備えているため、相談をスムーズに進められます。漠然とした相談だけでなく、実行からアフターフォローまで幅広い相談に対応可能です。
メリット
専門的な知識を保有しているだけでなく、業界ごとの最新動向やM&Aで発生する費用の相場なども理解しているため、M&Aの相談相手として最適な機関です。
M&Aアドバイザーが在籍しており、専門的なネットワークを備えているため、相談からクロージングまでのプロセスを円滑に進行します。
M&Aの相手先企業を探索する際に、幅広いネットワークから多くの選択肢を期待できるため、相談者の希望に沿ったM&Aを実施しやすい点もメリットです。
デメリット
M&A仲介会社に相談し依頼を行うと、仲介手数料が発生するため注意が必要です。M&A仲介会社は、一般的に相談・実行・成功などのタイミングで報酬を求めます。
このうち成功報酬は、M&Aによる売却金額の5%〜10%程度が目安として発生します。たとえ規模が小さいM&Aでも、最低300万円程度の費用は必要です。
M&A仲介会社によっては、仲介手数料以外に、相談料・着手金などの費用を請求するケースもあるため注意しましょう。
M&A仲介会社の収入は仲介手数料などの報酬のみであるため、報酬獲得を最優先の目的に掲げて不十分なサポートのもとでM&A成立のみに注力する会社がある点もデメリットです。
M&Aのご相談はM&A総合研究所へ
M&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所にお任せください。M&A総合研究所では、M&Aの知識や経験が豊富なM&Aアドバイザーが、相談時からクロージングまで案件をフルサポートいたします。
料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります。)随時、無料相談を行っておりますので、M&Aをご検討の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。
⑦事業承継・引継ぎ支援センター
事業承継・引継ぎ支援センターは、各県に設置された後継者不足による事業承継を専門的にサポートする公的機関です。公的機関であるため、法制度や公的支援制度の情報を多く有しています。
メリット
各県に設置されているため、各県の地方自治体による法制度の情報や、地元における専門家などとのネットワークを介した紹介を受けられる可能性があります。
公的な立場であり利用料がかからないため、気軽に相談できる点もメリットです。
デメリット
事業承継・引継ぎ支援センターは、事業承継目的のM&Aが中心であるうえ取扱件数が少ないことから、大規模案件や複雑なスキームのM&Aには対応できません。
また、事業承継・引継ぎ支援センターが持つネットワークは地元のつながりが中心なので、会社の成長戦略に合致したM&A先がみつかる保証はありません。
M&Aをつうじた成長戦略を実行する場合は、民間のM&A事業者のほうが適しているといえるでしょう。
⑧知り合いの経営者
中小企業庁のデータによると、M&Aの相談先として上位に位置するのが、知り合いの経営者へ相談するケースです。
「知り合い」とは、単純に知人である場合や取引先の経営者である場合などさまざまですが、M&Aを検討する前から知っていて信頼できる相手といった点で、相談先に選ばれていると考えられます。
メリット
M&Aを検討する企業のオーナー経営者にとって、他社のオーナー経営者は置かれている立場が同じなので、よりリアルな相談が可能です。
実際、知り合いの経営者がM&A経験者であれば、M&Aで注意すべき事項、M&A後における社員などの待遇、自己所有の株式における処理などを本音で情報交換できます。
最初は経営者同士の相談という形でも、最終的にはM&Aの相手企業になるケースもあるのです。
デメリット
知り合いに相談すると、相手はある程度自社の現状を知ります。そのため、機密情報が漏えいしたり自社の悪評が立ったりする可能性に留意が必要です。
経営者同士のネットワークで自社の評判が悪くなるのを避けるためにも、相談相手は慎重に選ぶ必要があるでしょう。
M&Aの相談にかかる料金
いずれの相談先でも、M&Aのごく初期的な相談にかかる料金は、通常は無料です。ただし、商工会の入会金や、士業やM&Aコンサルタントによっては相談料が発生することがあるので、事前に確認しましょう。
正式依頼の段階では、M&Aアドバイザーには着手金が生じるケースが多く、目安は100万円〜300万円ほどです。
案件化における段階では株価評価を実施します。M&Aアドバイザーを用いる場合、正式依頼済みであれば着手金に含まれるので無料ですが、株価評価のみを依頼すると50万円〜100万円くらいかかるでしょう。会計士に依頼すると、精密な数値を反映した企業価値評価を行うので、目安は50万円〜数百万円です。
買手探しでは、M&Aアドバイザーへの費用は生じず、生じても遠方への旅費実費くらいです。
基本合意の段階では、M&Aアドバイザーに中間報酬を支払うこともあり、成功報酬の10〜20%かかります。弁護士に基本合意書のチェックを依頼すると、手数料がかかります。
買収監査の段階では、買手が買収監査を依頼する会計士、税理士、弁護士への手数料がかかり、一般的には100〜200万円ほどが目安です。大手に依頼すると、500万円以上かかることもあるでしょう。
クロージングの段階では、M&Aアドバイザーに成功報酬が生じます。ほとんどのM&A会社は、最低報酬として数百万円〜数千万円を設定しているでしょう。着手金や中間報酬を取らず、完全成功報酬制のM&A仲介会社も存在します。
M&Aの相談先の選び方
M&Aの相談に対応している機関や専門家は多く存在しています。相談先を決める客観的な基準は、明確にはされていません。
とはいえ、以下の点を基準に相談相手を決めると、M&A手続きを円滑に進行できる可能性が高いです。
- M&A経験が豊富であるか
- 自社との相性が良いか
- 迅速に対応してもらえるか
- 親身になって対応してもらえるか
- 報酬体系が明確かつ妥当な水準であるか
- 相談内容について高い専門性を持っているか
- M&Aを実施するうえで必要な情報を提供してくれるか
各選び方のポイントを順番に詳しく紹介します。
①M&A経験が豊富であるか
M&Aの相談を持ちかける際、相談者は的確なアドバイスの提供を期待します。しかし、M&Aの経験が豊富に備わっていない相談先からは、的確なアドバイスがもらえる可能性は低いです。
M&Aの経験は、具体的にいうと、実際にM&Aの経験がある点や、M&Aをサポートした実績がある点などから判断可能です。これらの経験の有無によって、アドバイスの質が大きく異なります。書籍やネットで得た知識の引用は、専門家でなくとも行えるからです。
M&Aの相談を持ちかける際は、実体験に基づいた貴重なアドバイスをしてくれる相談先を選びましょう。これにより、的確なアドバイスをもらえる可能性が高まります。
②自社との相性が良いか
M&A実績のある相談先であったり、信頼できる相談先であったりしても、自社の意向と相性が悪ければ、最適な相談先とはいえません。見当違いなアドバイスを受けてしまい、結果としてM&Aの手続きが難航してしまうおそれがあるためです。
M&Aの相談を持ちかける際は、「担当者と話しやすいか」「会社の意向を理解してくれているか」などの項目を基準にして、相性の良い相談先を見つけましょう。
③迅速に対応してもらえるか
M&Aの手続きは、短期間で実施する必要があります。M&Aでは、決算時期などを考慮しつつ実行時期を逆算して計画が進められるうえ、相手側企業の予定も考慮しなければなりません。
上記の理由から、相談相手には迅速な対応力が求められます。たとえ規模が小さくても、M&Aでは最低3カ月程度の時間が必要です。手続きに遅れが発生しないよう、迅速に対応してくれるM&Aの相談相手を選びましょう。
④親身になって対応してもらえるか
M&Aの相談を持ちかける際、経営者は不安を抱えているケースがほとんどです。一方的なアドバイスを提供する相手ではなく、自社に親身な対応をしてくれる相手に相談するべきといえます。
特に「どのような会社とM&Aを実施するべきか」などの質問には、親身になって理解を示してくれる相談先でなければ的確にアドバイスできません。
相談先を選ぶ際は、自社にどれだけ親身な対応をしてくれるかを見極める必要があります。無料で相談に乗ってくれる機関も多いため、これを利用して複数の相談先の対応力を吟味すると良いでしょう。
⑤報酬体系が明確かつ妥当な水準であるか
M&Aの相談を持ちかける際は、事前に報酬体系も把握しておくべきです。相談先によっては、相談料がかるケースもあります。
相談後にM&Aの仲介やサポートを依頼する場合は、着手金や成功報酬などが請求されるのが一般的です。M&Aの相談を持ちかける前に、相談先の提示する報酬体系を調べておきましょう。
⑥相談内容について高い専門性を持っているか
相談先は、M&Aを行ううえでの課題に応じて選択するのがおすすめです。例えば、多くのM&A候補先を見つけたい場合は、財務や法務の専門家である公認会計士や弁護士よりも、M&A専門会社に依頼する方が良い結果が得られるでしょう。
中小規模の会社は、仲介方式のM&A専門会社を選ぶことで、コストを抑えられます。M&Aを成長戦略に織り込んでいるなら、自社の業界・業種に特化したM&A専門会社を選べば、シナジー効果の高いM&A相手をみつけることが可能です。自社の相談内容に適した専門家に相談しましょう。
⑦M&Aを実施するうえで必要な情報を提供してくれるか
M&Aの専門家は、M&Aを行う企業の両社に対し円滑に調整を行う中で、報酬を得るため可能な限りM&Aを成約させるようと努力する傾向があります。
本当に価値のあるM&Aかを判断するためには、必要な情報を適したタイミングで提供してもらうことが重要なので、依頼前からきちんと情報を開示してくれる相談先を選びましょう。
M&Aを相談する際の注意点
M&Aの相談を行う際の注意点として、以下の3つを取り上げます。
- 相談相手をしっかりと見極める
- 相談相手は限定する
- 情報漏えいに注意する
それぞれの注意点を順番に見ていきましょう。
①相談相手をしっかりと見極める
M&Aの相談を持ちかける際は、相談相手により得意分野が異なる点に注意しましょう。例えば、公認会計士であればバリュエーション、仲介会社であればM&Aの相手探し、金融機関であれば資金調達をそれぞれ得意としています。
相談内容を決めたうえで、その分野を得意とする相談先を利用することが大切です。
②相談相手は限定する
M&Aの相談時は、さまざまな機関に安易に相談を持ちかけない点にも注意しましょう。たとえ同じ内容を相談する場合でも、相談相手により回答が異なる可能性があるためです。さまざまな立場の相談先を利用すると、M&Aにおける実行可否の決断が困難になるおそれがあります。
相談先を見極めたうえで、限定して混乱を避けることが大切です。
③情報漏えいに注意する
M&Aの相談を行う際、自社の機密情報を漏らさないよう注意が必要です。機密情報を漏らしてしまうと、自社の経営に悪影響がおよぶおそれがあります。実際にM&A業務を依頼する際は、「秘密保持契約」を締結したうえ、重要な情報をM&Aの専門家に開示するのが一般的です。
M&Aの相談先として役立つファイナンシャルアドバイザリーとは?
M&Aの初期的相談や実行をする際は、M&A仲介会社など仲介型のファイナンシャルアドバイザーや、助言型のファイナンシャルアドバイザーに依頼するのが一般的です。
以下では、ファイナンシャルアドバイザーの果たす役割を解説します。
- M&A戦略の立案・交渉に関する相談へのアドバイス
- M&Aの契約書に関する相談へのアドバイス
- M&Aの取引価格に関する相談へのアドバイス
- M&A手法に関する相談へのアドバイス
- デューデリジェンス(買収監査)の調整・遂行
- 資金調達に関する相談へのアドバイス・サポート
M&A戦略の立案・交渉に関する相談へのアドバイス
ファイナンシャルアドバイザーにおける役割の一つに、M&A戦略の立案があります。
M&A戦略とは、M&Aを企業における成長戦略のどの部分に位置づけ、どのように実行に移すかを決めることです。ファイナンシャルアドバイザーは、M&Aに強みを持つ外部におけるコンサルタントの立場で、M&A戦略のアドバイスができます。
M&Aの交渉は、弁護士法の関係で、企業自身か代理人である弁護士が行うのが一般的です。ファイナンシャルアドバイザーが同席することもありますが、あくまでサポートの役割を担います。
M&Aの契約書に関する相談へのアドバイス
M&Aで必要な基本合意書、意向表明書、最終契約書などの契約書は、原則として弁護士が作成します。
ドラフト段階や内容協議段階では、ファイナンシャルアドバイザーがM&Aならではのポイントにおけるアドバイスを行うのが一般的です。
案件全体の取りまとめ役であるファイナンシャルアドバイザーからは、両社の温度感に基づいて契約条件に関する適切なアドバイスを受けることが期待できます。
M&Aの取引価格に関する相談へのアドバイス
M&Aの取引価格は、両社が行う企業価値評価の結果に基づいて、交渉により決定されます。
企業価値評価は、財務や会計に精通した専門家によって行う方が、より客観的な結果を得られるでしょう。ファイナンシャルアドバイザーは、財務の専門家でもあるため、企業価値評価へのアドバイスが可能です。
上場企業や少数株主が絡むM&Aでは、訴訟対応までカバーするために、裁判に強い企業価値評価の専門会社をアサインする場合もあります。
M&A手法に関する相談へのアドバイス
M&Aでは、会社法や金商法上の法的構成次第で、手続きや税務処理が異なります。M&A手法を間違えれば、数千万円や数億円単位で追加支払が必要となるため、株主も手法の選択を注視しているのです。
ファイナンシャルアドバイザーは、ときには公認会計士や税理士とも協力して、最適なM&A手法を検討・選択する役割を担っています。
デューデリジェンス(買収監査)の調整・遂行
ファイナンシャルアドバイザーは、M&Aの取りまとめ役として、デューデリジェンスにおける司令塔の役割も果たします。
デューデリジェンスを進めるためには、委託先の弁護士や公認会計士など専門家の選定、スケジュール管理などの仕事が必要です。M&Aに精通しているファイナンシャルアドバイザーであれば、案件の性質に合わせ、その分野に強い専門家を選定してくれるでしょう。
資金調達に関する相談へのアドバイス・サポート
M&Aを自己資金のみで実行するケースは少なく、多くの場合借入や株式調達によりM&A資金を準備する必要があります。
ファイナンシャルアドバイザーは、金融機関や投資家から資金提供を受けるため、M&A戦略の整理・説明をサポートする役割を担います。
そもそもファイナンシャルアドバイザーに金融機関を選択することで、資金調達の相談に乗ってもらうことが可能です。
M&Aの相談先まとめ
M&Aを検討する経営者に、悩みは付きものです。会社には機密情報や個人情報などがあり、特定の第三者にM&Aの相談を行う際は慎重にならざるを得ません。
とはいえ、M&Aを実行する際は、ある程度の情報を公開する必要があります。会社内の人間のみでM&Aを成功させるのは困難であるため、M&Aを実行する際は各分野に信頼できる相談先があると安心です。
M&Aの成功を目指すなら、さまざまな視点から信頼の置ける専門家に相談することが有効策といえます。
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