M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2024年6月28日更新会社・事業を売る
M&Aのメリット・デメリットとは?買い手・売り手ごとのメリットやリスクを紹介
M&Aのメリット・デメリットには、さまざまなものがあります。また、売り手・買い手という立場の違いで内容が異なるので注意が必要です。本記事では、M&Aのメリット・デメリットを各手法別に網羅し、従業員や地域社会などに与える影響も解説します。
目次
M&Aにおける上場企業・大手企業のメリット
最近、新聞や経済雑誌で「ROE経営」という言葉をよく見かけます。このトレンドは、日本政府が2014年に企業に「世界レベルのROE(投資対効果)を出せ」と要求したことがきっかけです。政府は企業がただお金をため込むのではなく、新しい機械を買ったり、他の企業を買収したりするよう促しています。
特に大きな企業は、自分たちの株を買い戻したり、株主に多くの配当を出したりしています。このような方法は、財務的には比較的簡単にできる手段です。ただ、企業が本当に成長するためには、良い商品やサービスを提供して利益を増やすことが基本です。
ROEを上げるには大きく3つの方法があります。
- コストを削減して利益率を上げる
- 売上を増やして、より多くの資産を効率よく使う
- 借金を使って、自分の資本(会社が持っているお金)に対するリターンを上げる
現在、低金利の環境が続いているので、新しい機械などの投資もしやすい時期です。しかし、一部の企業はこのチャンスを生かせていないようです。
そこで、企業が成長するための一つの方法として、他の企業を買収(M&A)する動きがあります。これによって、新しい技術や顧客を得られる可能性があり、結果としてROEが上がり、企業価値も高まると期待されます。
M&Aにおける中小企業オーナーのメリット
中小企業のオーナー経営者は、M&Aを活用して事業の規模を拡大し、競争力を強化することを考えています。これには、異業種や他地域の企業と協力し、新しいビジネス機会を探ることも含まれます。また、業界の再編成が進む中で、経営資源の集中や効率化を図るために、事業の売却や他社の買収も積極的に検討されています。
これらの動きは、市場の競争が激化し、業界の構造が変化する中で、中小企業のオーナー経営者が企業価値の向上や成長を目指すための戦略としてのM&Aや提携の利用を示しています。
M&Aにおける売り手(売却側)のメリット
2000年代以降、M&Aは有効な経営戦略のひとつとして広く認識されるようになり、近年は企業規模を問わず行われるようになってきました。
M&Aは売り手・買い手ともにメリットのある方法ですが、具体的にはどのようなものがあるのでしょうか。まずは、売り手側がM&Aを実施して得られるメリットについて解説します。
- 事業承継問題の解決
- 創業者利益の獲得
- 従業員の雇用維持
- M&Aによる事業拡大
- 廃業コスト
- 個人保証からの解放
- 主力事業に集中できる
- 投資の回収時間を短縮できる
- 売却成功時の手にできる現金や株式が多い
①事業承継問題の解決
現在、多くの中小企業が後継者不足に悩まされています。従来は、経営者の子どもなどを後継者とする「親族内承継」が広く行われていましたが、少子化と価値観の多様化により、親の後を継ぐ子どもが減ってしまいました。
次善の策として、会社の従業員や役員が後継者となる「社内承継」もありますが、この場合、後継者は現経営者から株式を買い取る必要があり、その資金がないために後継者を辞退するケースも少なくありません。
このような状況の中、後継者不在の中小企業の多くが廃業危機にあります。そこで近年は、M&Aで事業や会社を売却し、その買い手が後継者(新たな経営者)となり事業承継を実現するという手段が多く用いられるようになってきました。
②創業者利益の獲得
M&Aを用いて会社を売却すれば、多額の現金を得られるメリットがあります。獲得した現金は、新規事業の立ち上げや老後の生活資金、借入金の返済など、自由に使える資金です。また、M&Aで得られる売却代金は、将来に渡り事業を継続して得られる利益の数年分となります。
リスクを負ってコツコツ利益を得るよりも、M&Aでまとまった現金を得た方が、長期的に見てメリットとなる場合もあるでしょう。
③従業員の雇用維持
M&Aではなく廃業を選べば、従業員は職を失い路頭に迷ってしまいます。後継者不足を理由に廃業した場合、困るのは経営者だけではないのです。M&Aによって第三者に会社売却することで、従業員が職を失わずにすみます。
また、優良企業を選んでM&Aを実施すれば、以前よりも従業員の待遇がよくなる可能性まであるのです。M&A先の環境に合わないデメリットが生じるリスクもありますが、いきなり職を失うよりも多少はメリットがある選択肢です。
④M&Aによる事業拡大
近年、日本では少子高齢化が進み、人口が減少しつつあります。それに伴い、国内市場では、少ないパイを奪い合って競争が激化している状態です。大企業は海外進出が容易なことや、豊富な経営資源を活かして国内でも優位に立てるので問題ありません。
しかし、経営資源の乏しい中小企業にとって、激化する競争で勝ち残るのは困難です。そこで、M&Aの実施により大企業の傘下に入れば、市場で勝ち残れるメリットが得られます。
大企業は、豊富な経営資源や販路があり、それらを活かせば、M&Aの実施前よりも成長できる可能性があるのです。また、信用力も高まり、金融機関から資金調達しやすくなるメリットも得られます。
⑤廃業コスト
廃業では、以下のようなコストがかかる点がデメリットです。
- 従業員への解雇手当
- 税務処理の依頼費用
- 設備や在庫の処分費用
また、廃業に関する手続きに多くの時間や手間がかかります。借入金の返済義務も残り、経営者は新しい仕事を探さなければなりません。M&Aを実施すれば廃業コストは発生せず、上述したようにさまざまな利益を獲得できます。
⑥個人保証からの解放
多くの中小企業では、会社が融資を受ける際に経営者が個人保証を負っています。M&Aのスキーム(手法)の1つである株式譲渡を行えば、基本的に債務は買い手に引継がれます。したがって、個人保証を解消する手続きが可能になるのです。
⑦主力事業に集中できる
M&A手法の中でも事業譲渡を用いた場合、主力事業に集中できるようになるのです。事業譲渡によって会社の不採算事業や重要でない事業を売却すると、その対価を得られます。それに加え、その事業に費やしていた経営資源が余ります。
事業譲渡によって生み出された資金や経営資源は、主力事業に投入可能です。さらに、経営者も主力事業に集中できます。その結果、主力事業の業績が向上する可能性が高まるでしょう。
⑧投資の回収時間を短縮できる
事業譲渡には、もう1つのメリットがあります。該当事業で数年かけて得られるであろう収益を、事業を売却することで瞬時に現金化できるため、結果的に投資の回収時間を短縮できるのです。このように、M&Aにはさまざまなメリットがあります。
ただし、M&Aの各プロセスでは専門的な知識や経験が不可欠です。スムーズにM&Aを進め成約確度を上げるには、M&A仲介会社などの専門家のサポートが欠かせません。M&A仲介会社をお探しになる場合には、一度、M&A総合研究所までご連絡ください。
M&A総合研究所には、専門的な知識や経験が豊富なM&Aアドバイザーが多数、在籍しており、そのノウハウを活かしてM&Aを丁寧にサポートいたします。
スピーディーなサポートを実践しており、最短3カ月での成約実績も強みです。料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」となっています(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。
随時、無料相談をお受けしておりますので、M&Aをご検討される際には、お気軽にお問い合わせください。
⑨売却成功時の手にできる現金や株式が多い
M&Aで会社全てを売却する場合でも、一部の事業のみを売却する場合でも、売り手企業は買い手企業から現金や新株式発行などの形で対価が支払われます。
多額の現金や株式が手に入ることから、負債を抱えている事業がある場合に、譲渡金によって事業の立て直しが可能です。
さらに、売り手企業側が廃業を検討している場合にもM&Aによって得られる譲渡金が役立つことがあります。
廃業時には、解雇する従業員への補償、設備や在庫の処分費用などで別途多額の資金が一時的に必要となるからです。
廃業後の手元資金は多いほど安心であることはいうまでもありません。
廃業後もその整理に手間取ることがありますし、場合によっては借入金の返済が継続する恐れもあるからです。
M&A実施をご検討の際は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、M&Aに豊富な知識と経験を持つアドバイザーがM&Aをフルサポートいたします。
M&Aにおける売り手側のデメリット・注意点
M&Aにはメリットもある一方で、デメリット・注意点もあります。M&Aを実行する際には、デメリット・注意点にも目を向けなければなりません。まずは、M&Aにおける売り手側のデメリット・注意点を紹介します。
- 従業員のモチベーションが下がり離職するおそれ
- 最適なM&A買い手企業が現れない可能性
- 取引先との関係が悪化するおそれ
- 企業文化の融合に多くの時間がかかる
- 経営に関する権限の縮小
①従業員のモチベーションが下がり離職するおそれ
M&Aを活用すれば、売却先企業の傘下として生き残れます。従業員の雇用や築き上げてきたノウハウも維持できるのです。ただし、望みどおりの形で維持できるとは限りません。M&Aを実行すると、経営権は買い手企業に移ります。
基本的にM&A後は、買い手企業の意向に合わせなくてはいけません。従来どおり経営させてもらえるならば問題ありませんが、大抵のM&Aでは、労働環境や評価システムなど、あらゆるものが変わります。それにより、従業員が不満を感じるおそれがあるのです。
その結果、従業員のモチベーションが下がるデメリットが生じます。最悪の場合、従業員が離職する事態もあり得るでしょう。また、M&Aの実施後、経営者が交代する場合もあります。経営者の交代は、従業員にとってはデメリットと感じる可能性が高いです。
なぜならば、中小企業の場合、経営者についていく気持ちで働く従業員が多く、経営者の交代はモチベーション低下や離職などのデメリットにつながります。買い手企業にとって優秀な人材確保は、M&Aを実行する目的の1つです。
優秀な人材がいなくなれば、買い手側からするとM&Aのメリットが失われてしまいます。そうなると、売り手と買い手でトラブルとなるかもしれません。これを防ぐためにも、M&Aでは従業員との密なコミュニケーションが必要不可欠です。
②最適なM&A買い手企業が現れない可能性
M&Aにおいて、自社の企業価値を評価する指標は、将来の収益性です。これが高いとみなされる企業は、希望どおりの条件でM&Aを実施できる可能性が高いですが、それが見込めないとなると、希望する条件でのM&A相手探しに苦労することがあります。
たとえ現在は安定した利益を生んでいる事業を手掛けていても、将来の収益性が高くないと判断されてしまうと、企業価値が低く評価されるおそれがあるのです。将来の収益性をアピールするためには、設備投資や借入金の返済が効果的といえます。
これにより収益の見直しを図り改善できれば、M&A相手先に自社の魅力を強くアピールできるでしょう。
③取引先との関係が悪化するおそれ
M&A実施に際して、取引先との契約内容に大幅な修正が必要となる場合、取引先から大きな反発が起こるおそれがあります。最悪の場合、取引先との契約打ち切りという事態に陥ってしまう深刻なデメリットを招きかねないため、注意しなければなりません。
また、取引先との関係性は人間関係によって成り立っている側面が強いため、経営権が移り担当者の変更となった場合、円滑な取引継続の妨げとなります。関係を悪化させないためにも、M&Aの際には、取引先にしっかりと説明して納得してもらうことが必要です。
④企業文化の融合に多くの時間がかかる
買い手側にとってM&Aの成功とは、経営統合(PMI=Post Merger Integration)後、想定したシナジー効果などを得て業績が向上することです。したがって、経営統合は買い手の主導により行われます。代表的な経営統合内容は以下のようなものです。
- 管理制度
- 経理システム
- ITシステム
- 業務システム
- 就業規則
- 人事評価制度
- 組織再編
- 企業文化
制度やシステムの統合は、綿密に設計しスケジュールに基づいて実施していけば進捗に問題は出ないでしょう。しかし、企業風土や社風などとも呼ばれる企業文化については、長年の蓄積で培われたものであり従業員の気持ちの問題も絡むことなので簡単にはいきません。
さらに、派閥化のような事態を避けるためにも、たとえ大変な時間がかかろうとも着実に企業文化も統合させていく必要があります。
⑤経営に関する権限の縮小
売り手企業は、M&Aによって大企業の傘下に参入することになります。売り手企業の経営者にとってはデメリットです。経営に関する権限の縮小によって、買い手企業の経営方針に従う必要があるからです。経営統合後に新規で練り直した経営方針や目標利益、予算配分、社内人事などの面で思ったように力を発揮できなくなります。
売り手企業は立場が弱くなるケースが多く、経営統合後は影響力がなくなってしまうことを覚悟したほうがよいでしょう。
M&Aにおける買い手(買収側)のメリット
次に、買い手側がM&Aを実行するメリットを紹介します。
- スピーディーな経営戦略
- 事業規模の拡大
- 事業の多角化
- 弱みを補強できる
- シナジー効果
- 新規事業への参入リスクの軽減
- 節税対策
- ライバル企業吸収による業界再編
①スピーディーな経営戦略
国内市場の縮小により競争が激化している昨今、経営にはスピーディーさが必要です。事業規模拡大・多角化・弱点の補強などの経営戦略を実施する際、一からコツコツやっていては市場では勝ち残れません。
コツコツ作り上げて事業を軌道に乗せ成功させたとしても、市場の移り変わりにより優位性を勝ち取れない場合もあります。そうなった場合、費やしてきた時間・コスト・労力は水の泡です。場合によっては、廃業に追い込まれてしまうおそれもあります。
したがって、スピーディーな経営戦略の遂行は不可欠です。M&Aを活用すれば、あらゆる経営戦略をスピーディーに遂行できるメリットがあります。M&Aで目的に沿う事業や会社を買収すれば、短期間で経営戦略の遂行を達成可能です。
つまりM&Aとは、お金で時間を買う行為と言えるでしょう。短期的に競争優位性を構築できる点は、M&Aを行う最大のメリットです。また、経営が失敗するリスクを軽減できる点も、M&Aによって他社を買収するメリットになります。
②事業規模の拡大
事業規模の拡大を目的に、M&Aを実行する企業は多いです。特に大企業は、この目的のためにM&Aを行う傾向があります。生産ラインの構築や、販売ルートの選定など、事業規模を拡大するまでには、多くの時間がかかるためです。
したがって、今すぐ事業規模を拡大する必要がある状況で、数年単位での実現は遅いと言わざるを得ません。そこで、工場や販売網を所持する会社・事業をM&Aで買収すれば、短期間で事業規模を拡大できます。
事業規模を拡大すれば、規模の経済性と呼ばれるメリットも獲得可能です。規模の経済性とは、事業規模が大きくなるほど、低コストで商品やサービスを提供できる効果のことです。M&Aによって早期から規模の経済性を利用して事業を構築すれば、確固たる市場シェアを獲得できます。
加えて、狙い通りのブランドイメージを顧客に植えつけられるでしょう。
③事業の多角化
M&Aによって、新規事業参入のメリットもあります。市場環境は変化が激しく、かつて有していた自社の強みが弱みに変わる可能性も少なくありません。したがって、既存事業の強化のみならず、市場ニーズに応じた事業をスタートさせる必要があります。
これが、いわゆる「多角化」と呼ばれる経営戦略です。ただし、ただやみくもに多角化を実施すればよいわけではありません。しかし、ゼロの状態から多角化をスタートさせていくと、多くの手間や時間が発生するだけでなく、失敗する場合もあるでしょう。
そこで、M&Aを用いれば、事業の多角化を低リスクかつスピーディーに実行可能です。
④弱みを補強できる
M&Aの活用により、自社の弱点を迅速に補えます。このメリットにより、M&Aで不採算事業を強化できる可能性があります。たとえば製品開発に強い一方で、販売ルートに弱点を持っている企業のケースを考えてみましょう。
通常、この場合、自社の力で販売網を強化しようと試みます。しかし、人件費や時間がかかるうえに、経営資源が分散するため、強みの部分にも悪影響が及びかねません。そこで、M&Aで販売網を多く持つ企業を買収し、素早く弱点を補強できます。
さらに、経営資源を強みである製品開発に集中できる点もメリットです。このようにM&Aを活用すれば、強みを伸ばせるだけでなく、弱みを補強できるメリットも享受できます。弱点の補強を目的にすえる場合、M&A手法の中でも事業譲渡を活用しましょう。
なぜなら、必要な事業を部分的に買収できるためです。また、事業譲渡には、簿外債務や訴訟リスクを引継ぐことなくM&Aできるメリットもあります。一方で、事業譲渡には手続きが面倒というデメリットもあるので注意して下さい。
⑤シナジー効果
買収した事業と自社の事業を組み合わせることでシナジー効果が期待できます。また、買収した企業の営業ノウハウのおかげで、既存商品の売上がアップするなどのメリットもあるでしょう。
また、仕入れや物流で生じる費用を抑えられるなど、M&Aを行う相手企業次第で、さまざまなシナジー効果が生まれる可能性があります。
⑥新規事業への参入リスクの軽減
新規事業への参入は、参入障壁が高いほど、失敗するリスクは高くなります。しかし、参入障壁が高いからこそ、成功したときの意義があるのです。このリスクの軽減は、M&Aであれば解決できます。
すでに参入障壁が高い事業を順調に行っている企業を買収すれば、ノーリスクに近い状態で新規事業に参入できるのです。
⑦節税対策
かつてアメリカの大手製薬会社が行ったM&A事例として、税率の低い国の企業と合併を行い、その企業を存続会社とすることで税額を低く抑えるという手法がありました。
確かにM&Aを用いた節税対策ではありますが、明らかな税逃れのためのこの手法は当局から問題視され、同様の手法には規制がかけられるようになってしまっています。
日本では赤字発生後7年間の繰越が可能で、翌年に繰り越された赤字は繰越欠損金として黒字売上と相殺できます。結果として法人税の節税対策になることがあります。
⑧ライバル企業吸収による業界再編
事業市場が成熟期である場合、シェアを伸ばすためにライバル企業と過当競争を行うのは得策ではありません。規模の経済性を獲得して市場で優位な立場を築くために、ライバル企業とM&Aを実施し、業界再編を仕掛けるのが賢明な策と言えるでしょう。
M&Aにおける買い手側のデメリット・注意点
ここでは、M&Aにおける買い手側のデメリット・注意点を紹介します。
- 買収金額が高すぎて投資以上の利益が出ない
- 偶発債務などの簿外債務を引き継ぐおそれ
- 最適な売り手企業が見つかりにくい
- 企業の融合が滞り期待した効果を得にくい
- シナジー効果が発揮されるとは限らない
- 不満を抱いた優秀な人材が流出するおそれ
- 粉飾が見つかる可能性
- のれんの減損リスクを負う
①買収金額が高すぎて投資以上の利益が出ない
買収対象企業の企業価値の判定を誤り、買収金額が高すぎてしまい、結果として事業統合後の利益を圧迫するケースがあります。
買収対象企業の企業価値は、事業統合後のシナジー効果、ブランド価値、保有技術力などの「のれん代」を元にして算出されています。
のれん代は毎年減価償却する必要があるため、のれん代が多額になってしまうと、償却することによって利益を圧迫し、場合によってはマイナスになってしまいます。
最悪のケースでは、M&Aに当てた費用が回収できないということで、「減損」の手続きによって多額の損失として計上しなければならなくなります。
のれん代は、高すぎると後々まで影響し事業統合後もその影響が続きますので、無理のない妥当な買収金額を算定することが重要です。
②偶発債務などの簿外債務を引き継ぐおそれ
買い手側に生じる最も大きなデメリットは、偶発債務などの簿外債務の引継ぎです。偶発債務とは、まだ債務ではないものの、将来的に債務となり得るものを指します。具体例としては、顧客との訴訟や環境汚染発生による提訴などです。
また、簿外債務は、偶発債務も含めて貸借対照表に載っていない債務をさし、具体的には退職給付引当金や未払い給与などが該当します。M&A実施後、それらが発生した場合、大きな経営ダメージを受ける可能性があるのです。
これを未然に防ぐには、売り手側へのデューデリジェンス(買収監査)を徹底して行うしかありません。また、M&Aスキームのうちの事業譲渡であれば、売買内容を選別できるため、簿外債務を引継ぐリスクを回避可能です。
③最適な売り手企業が見つかりにくい
M&Aでは、希望する条件の売り手が見つからないことがあります。日本のM&A市場は、業界によっては売り手市場になっているからです。そのような際には、M&A総合研究所の買収ニーズ登録システムをご活用ください。
公開可能な案件情報一覧も閲覧できるようになっています。詳細は下記のリンク先にてご確認ください。
④企業の融合が滞り期待した効果を得にくい
M&Aでは、これまで独立して存在していた会社同士が、1つの会社に融合します。そのため、それぞれの会社で社風や従業員への待遇が異なっていることから、企業文化の相違によって融合に多くの時間がかかるおそれが高いといえます。
さらに、企業統合するにあたって、M&A当事者の会社に亀裂が生じて対立してしまえば、期待していたメリットが得られないことも考えられます。したがって、M&Aにおける企業統合は、着実かつ丁寧に実施しなければなりません。
⑤シナジー効果が発揮されるとは限らない
M&A実施時に想定するシナジー効果は、あくまでも経営統合がうまくいった場合に発現するものです。したがって、経営統合がスケジュールどおりに進まなかったり失敗したりした場合は、シナジー効果が発揮されず業績向上も実現されないでしょう。
⑥不満を抱いた優秀な人材が流出するおそれ
買い手側主導で行われる経営統合では、どうしても売り手側従業員は反発心や不安感を抱きがちです。それが買い手側従業員との間で感情的もつれにまで発展してしまうケースもあり、その場合、多くは離職していきます。
離職者の中に事業をキーマンとなるような人物が含まれている場合、大きな痛手です。
⑦粉飾が見つかる可能性
買収対象企業の財務状況の調査はとても重要です。M&Aにおいては、買収対象企業が何らかの問題を抱えている可能性が高く、よく調査を行った場合に粉飾が見つかる可能性もあります。
例えば、「簿外債務」の存在です。退職給付引当金や未払い給与などが存在していても貸借対照表に載っていないのならそのまま引き継いでしまうおそれがあります。
また、「偶発債務」も問題となることが多々あります。顧客との訴訟や環境汚染といった買い手にとって不利な情報となる偶発債務も財務諸表に載せていない場合が多いため慎重に調査を行う必要があります。
⑧のれんの減損リスクを負う
のれんとは、売り手企業の無形資産に対する評価額を意味します。無形資産とは以下のようなものです。
- 知的資産(特許、商標、著作権など)
- ノウハウ
- 業務システム
- ブランド力
- 販売ネットワーク
- 取引先・顧客リスト
一般にM&Aでは、買収価額と売り手企業の時価純資産額の差額が、のれんです。のれんは買い手企業の連結仕訳で費用に計上されます。M&A後、売り手企業が業績低下した場合は、のれんを損失処理(=価値の修正)しなければなりません。
これを、のれんの減損リスクといいます。
具体的な事例でデメリットを解説
のれんの減損事例で巨額だった2例を紹介します。東芝は、2017年3月期決算において、買収したアメリカの原子力発電所会社ウエスチングハウスの粉飾決算発覚などにより、約7,200億円の減損を計上しました。
同じ期に、日本郵政は、買収したオーストラリアの物流企業トール・ホールディングスの業績低迷により、約4,000億円の減損計上となっています。
M&Aで買い手側が成功するコツ
M&Aによる買い手側に大切なのは、大きな失敗を避ける意識を持つことです。M&Aが成立した時点で「時間を買うこと」には成功していますので、その後は事業統合後にM&Aのシナジー効果を発揮できるようにする必要があります。
買い手企業がM&Aで大きな失敗を避けるためには、正確な「デューデリジェンス(DD)」を行いましょう。DDとは、売り手企業の財務、税務、法務、人事などのリスクを洗い出し、正確な買収価格を算出するための重要なプロセスです。
買収対象企業をさまざまな観点から分析し、意図せず継承してしまう可能性のある「簿外債務」や「偶発債務」まで把握できれば、買収後のトラブルを最小限に抑えられます。
また、M&Aでは「適切なスキームの選択」や「基本合意の締結」も大きな失敗を避けるために重要です。これらもきちんと理解しておきましょう。
海外M&Aのメリット
海外M&A(クロスボーダーM&A)は、海外進出を行う多くの会社が実行しています。海外M&Aのメリットは、以下のとおりです。
- 海外の新しい市場への進出
- 新製品の開発
- 海外進出の手間とコストを削減
①海外の新しい市場への進出
昨今、少子化による人口減少で国内市場は縮小しており、どの業界でもシェアを奪い合うような状況になっています。しかし、海外M&Aで海外進出を行えば新しい市場に進出可能です。現在、海外進出先として人気なのは、東南アジア、アフリカなどが挙げられます。
さまざまな会社が海外M&Aを通じて新しい市場に進出し、業績拡大を遂げているのです。
②新製品の開発
海外M&Aを行えば、海外企業のノウハウや技術を取り入れることによって新製品開発が実現する可能性が高まるでしょう。また、海外M&Aの対象となる会社の設備や研究員、生産ライン、販売路なども直接利用できるようになるため、新製品の提供もより容易になります。
③海外進出の手間とコストを削減
通常、海外進出を行う際は、現地のコーディネーターや取引先の確保、拠点の設立など、さまざまなプロセスを踏む必要があります。しかし、全てのプロセスを完了することは決して簡単なことではなく、手間もコストもかかってしまうでしょう。
一方、海外M&Aで現地の企業を買収すれば、直接、海外進出の足掛かりを得られるのです。よりスピーディーに海外進出をするうえで、海外M&Aは有効的な手段だといえます。
M&A手法別のメリット・デメリット
ここでは、M&Aの手法ごとのメリット・デメリットを紹介します。取り上げるM&A手法は以下のとおりです。
- 株式譲渡
- 事業譲渡
- 会社分割
- 資本業務提携
- 株式交換・株式移転
- 合併
- 新株引受
株式譲渡
株式譲渡とは、株式を買い手に売り会社の経営権を渡すことです。中小企業の場合、今まで経営者や親族などが持っていた株式を買い手に売ることで、買い手に経営権を譲渡する手法をさします。
株式譲渡によるM&Aのメリット
ここでは、株式譲渡のメリットについて2点を紹介します。まず1つは、他のM&A手法と比べて手続き面が簡易です。M&A成立までにかかる時間も比較的、短くなります。2点目は、包括承継であるため、従業員の雇用が継続されることです。
株式譲渡によるM&Aのデメリット
株式譲渡を、組織ごと統合される合併などと比べると、売却側企業の独立性が保たれているため、経営統合が進みにくいかもしれません。また、包括承継であるため、簿外債務を引き継ぐリスクがあるのもデメリットです。
さらに、中小企業で株式が多数の株主に分散しているようなケースでは、買い手の希望に反して全株式を買取出来ないこともあります。
事業譲渡
事業譲渡とは、会社の事業やそれに関連する資産などを選別して売買することです。売り手側の法人格は、そのまま残ります。
事業譲渡によるM&Aのメリット
相手方との合意は必要ですが、売り手・買い手ともに、それぞれ売りたいものだけを売り、買いたいものだけを買えることがメリットです。したがって、包括承継の株式譲渡のように、簿外債務などの経営リスクを引継いでしまう危険性を減らすことができます。
事業譲渡によるM&Aのデメリット
株式譲渡のような包括承継ではないため、事業譲渡に関わる資産の所有権の移転手続きをはじめ、取引先との契約・従業員との労働契約なども全て個別に締結し直す必要があり、手続き面が非常に煩雑です。また、許認可も引継げません。
さらに、買い手は、株式譲渡であれば対価を支払うだけですみますが、事業譲渡では、譲受する資産に消費税課税資産が含まれていれば、消費税も負担することになります。
会社分割
会社分割とは、事業部門を丸ごと切り出して他の会社に移転(譲渡)するM&A手法です。事業譲渡と類似して見えますが、会社分割は事業部門を包括承継します。なお、会社分割には吸収分割と新設分割があり、その違いは以下のとおりです。
- 吸収分割:既存の会社間で行われる会社分割
- 新設分割:既存の会社が新設会社に対して行う会社分割
会社分割によるM&Aのメリット
会社分割は、事業部門の包括承継であるため、該当事業の資産、権利義務、取引先との契約、従業員との労働契約、許認可(例外あり)などをそのまま引継げます。事業譲渡のような個別の手続きなどは不要です。債権者の同意も必要ありません。
また、株式譲渡や事業譲渡の場合、対価は現金に限られています。一方、会社分割では対価に買い手企業の株式を用いることが出来るため、現金が不要です。買い手としては事業部門を丸ごと吸収するため、経営統合もやりやすいでしょう。
会社分割によるM&Aのデメリット
対価に株式を用いた場合、買い手企業の株主構成が変化します。また、新株発行により既存株主の株式価値は下落し所有比率も下がるため、他の株主に反対されることが懸念点です。取得した事業部門が巨大だった場合、混乱が生じ経営統合がうまくいかない危険性があります。
資本業務提携
資本業務提携は、提携契約を結ぶ企業間で「資本提携」と「業務提携」の両方を同時に実行することです。資本提携では、企業間で株式を持ち合う場合と、一方が他方に出資する場合の2種類があります。
業務提携は、お互いの経営資源を共有し、協力して業務を行うことです。通常、資本業務提携では、会社の経営権に関わるような株式の異動はありません。しかし、資本の移動を伴うため、広義のM&Aとされています。
資本業務提携によるM&Aのメリット
資本業務提携では、自社では所有していない経営資源を相互活用することで、単独ではできなかった新製品の開発・販売や新サービスの提供などが可能になります。経営権に関わるような株式の取得は行わないため、会社の独立性が担保されていることもメリットです。
資本業務提携によるM&Aのデメリット
経営権に関わるような株式の取得ではなくとも、株主になることは事実です。今までは知り得なかった内部情報を知ることにより、経営に口出ししてくる可能性は否定できません。また、資本業務提携を解消する場合、株式の買い戻しなど面倒な手続きが発生します。
株式交換・株式移転
株式交換とは、完全親子会社になる前提で買い手が売り手の全株式を取得し、その対価として買い手企業の株式を交付するM&A手法です、株式移転は、持株会社体制を構築する際に用いられます。
親会社(持株会社)を新設し、子会社(事業会社)となる企業の株式を取得させ、その対価として持株会社の株式を交付する手法です。
株式交換・株式移転によるM&Aのメリット
買手企業(親会社)側は対価が株式交付であるため、現金を用意せずにM&Aを実施できることがメリットです。また、売り手企業に複数の株主がいる場合、そのうちの3分の2の議決権数の株主から賛同を得られれば、反対する少数株主を排除してM&Aを実施できます。
売り手企業は独立した法人格のまま存続するので、独立性を持った経営が担保される点もメリットです。
株式交換・株式移転によるM&Aのデメリット
対価を株式とするM&A手法では、デメリットは共通です。まず、買い手企業における株主構成が変化してしまいます。新株を発行すれば既存株主の株式所有比率が下がるため、結果的に1株あたりの株式価値の下落につながってしまう点もデメリットです。
合併
合併とは、企業の組織再編行為であり、複数の企業を1社に統合するM&A手法のことです。法人格が残る1社(=存続会社)以外の企業は、法人格がなくなり消滅します(消滅会社)。合併は吸収合併と新設合併の2種類があり、その違いは以下のとおりです。
- 吸収合併:既存の企業同士による合併
- 新設合併:新設会社を存続会社として行われる合併
合併によるM&Aのメリット
合併は、対価について現金・株式交付のどちらかを選択できます。株式を対価にすれば、現金を用意せずにM&A実施が可能です。また、株式譲渡のような子会社化と違って組織も融合されるため、M&A後の経営統合が行いやすいでしょう。
特に、売り手側従業員が持つイメージとして、子会社化よりも合併の方が対等感があるため、その意味でも経営統合がスムーズに進むと考えられます。
合併によるM&Aのデメリット
対価を株式とするM&A手法では、デメリットは共通です。まず、買い手企業における株主構成が変化してしまいます。新株を発行すれば既存株主の株式所有比率が下がるため、結果的に1株あたりの株式価値の下落につながってしまう点もデメリットです。
合併は、経営統合が進めやすい反面、一体化された組織を軌道に乗せるためには急ピッチで統合を行わなければならないため、現場への負荷が大きいのはデメリットになります。
また、仮に重複する取引先があった場合、会社が統合されることで契約対象は1社になることで、合併前の複数企業分の契約規模が維持できない可能性があることも懸念点です。
新株引受
新株引受はM&A手法名ではありませんが、具体的な手法および制度として以下の2つがあります。
- 第三者割当増資:特定の第三者に対し新株を交付して資金調達(増資)するM&Aスキームで資本提携の際に用いられる
- 新株予約権:事前に取り決められた価格で当該企業の新株交付を受けられる権利
新株引受によるM&Aのメリット
第三者割当増資・新株予約権ともに、定款に特別の定めをしていない企業であれば、取締役会の決議のみで実施できます。株主総会の承認を得る必要がない点はメリットといえるでしょう。
また、上場企業には公開買付け規制がありますが、第三者割当増資・新株予約権は、この規制を受けません。新株予約権の利点としては、一括で権利を行使せず任意のタイミングに分けられるため、資金状況に応じた株式の取得が可能です。
新株引受によるM&Aのデメリット
新株引受側が買収を目的としている場合、既存株主の存在により、100%の株式取得がすぐにできない点はデメリットです。また、既存株主の所有分を将来、取得できたとしても、株式譲渡を実施した場合と比べて資金が多くかかってしまいます。
新株発行価額の設定が適切かどうかということも議論になることがあり、これも懸念点です。
M&Aで基本合意書を締結するメリット
M&Aを実施するうえで、重要なプロセスの1つに「基本合意書の締結」があります。基本合意書は、M&Aの成約を意味する最終契約書とは異なるため、あまり表立って取り上げられることが少ない事項ですが、この締結の意義・メリットは知っておくと役立ちます。
基本合意書とその必要性
M&Aの交渉が始まり、大筋で条件面の合意が形成されたとき、基本合意書は締結されます。基本合意契約書と呼ばれることもありますが、現時点での合意内容確認書という位置付けの書面であるため、厳密には契約書ではありません。
つまり、基本合意書を締結してもM&Aが成約されたわけではなく、その後、最終契約書を締結せず破談になったとしても、双方ともに法的責任は発生しないのです。
基本合意書のメリット
M&A成約に関する法的拘束力はない基本合意書ですが、記載されている条項の中には、以下のような意義・メリットがあります。
- 法的拘束力はなくとも、合意書の締結によって精神的拘束効果がある。
- 特に上場企業が関わるM&Aの場合は、基本合意書の締結時点で情報開示することが多く、精神的拘束性はより強まる。
- 合意内容の1つに対価の金額があり、買収側としては買収額の上限設定ができたことになる。
- 合意内容項目には、成約・クロージングまでの今後のスケジュールの見通しも記載されるので、スケジュールの明確化・遅延なき進行が可能となる。
- 例外的に法的拘束性を持つ条項として「買い手の独占交渉権」があり、これによって一定期間、売り手は他の買い手候補との交渉が禁じられる。
M&Aが従業員に与えるメリット・デメリット
ここでは、M&Aが従業員に与えるメリット・デメリットを考えます。会社にとって人材は大切な経営資源ですから、決して軽視はできません。内容をよく確認しましょう。
従業員に与えるメリット
買収側従業員の観点でいえば、M&Aによって外部から新しい従業員が入ってくるため、社内の活性化により働きやすい環境構築が狙えるというメリットがあります。また、福利厚生についても双方の企業のうち、良い方の制度を踏襲することで待遇改善も期待できるでしょう。
さらに、これまで実力が発揮しきれなかった従業員が、M&A後にキャリアが拡大して自分の能力を活かせるポジションへ異動できる可能性もあります。
従業員に与えるデメリット
双方の企業で異なる給与水準や福利厚生内容であり、それがM&A後も継続した場合、水準が劣る企業の社員が不満を抱くというデメリットが発生します。
通常、売り手企業は買い手企業に社内ルールや福利厚生・システムを合わせるので、M&A後に両社が統合するまでの間、売り手企業の従業員はストレスを抱えてしまうことがあるのです。
M&Aが顧客に与えるメリット・デメリット
ここでは、M&Aが顧客に及ぼす影響について確認しましょう。M&Aが顧客に与えるメリット・デメリットを説明します。
顧客に与えるメリット
M&A実施後、経営統合の結果、各種シナジー効果により新商品の開発・新サービスの提供が行われれば、それを受ける立場の顧客側としては、商品やサービスのラインアップの充実というメリットが得られます。
また、原材料の取引をしている顧客であれば、M&Aで事業規模が拡大すれば以前よりも大量の注文が得られる可能性もあるでしょう。
商品やサービスの取引をしている場合は、M&Aによるスケールメリットでコスト削減に成功した企業が値下げを行う可能性もあり、顧客にとってもメリットとなります。
顧客に与えるデメリット
顧客側がM&Aの売り手・買い手のどちらかとは取引相手であり、もう一方とは競合関係だった場合、M&A後、取引停止の可能性は否定できません。
また、M&A後の経営統合により、事業内容の見直しなどが行われた場合、一部の製品やサービスの廃止もあり得ます。そのとき、廃止される製品・サービスを利用していた顧客側は、代わりのものを探さなければならない点はデメリットといえるでしょう。
M&Aが地域社会・行政に与えるメリット・デメリット
M&Aが、地域社会・行政に与えるメリット・デメリットについても考えてみましょう。企業の動向が地域社会に及ぼす影響は、小さくありません。
地域社会・行政に与えるメリット
後継者不在の企業が廃業した場合、地域経済にとってダメージです。そのような企業がM&Aで事業承継すれば会社が存続するだけでなく、買い手のバックアップにより事業を拡大するケースもあります。そうなれば地域経済には好影響が生まれ、雇用数も増えるでしょう。
地域社会・行政に与えるデメリット
M&A後、買い手の主導により売り手の事業内容が見直され、そのうちの一部が廃止されることも多々あります。その場合、廃止される製品・サービスを利用していた地域住民にとっては、デメリットです。
また、社会貢献よりも自社の利益追求を優先するような企業が、M&Aの買い手となって進出してきた場合、そのような経営方針の企業の参入は、地域社会にとって好ましいものではありません。
M&Aが金融機関に与えるメリット
M&Aが金融機関に与えるデメリットはありません。ここでは、M&Aが金融機関に与える以下のメリットを説明します。
- 貸し倒れの防止
- 仲介手数料の獲得
- 新たなビジネスモデルの創出
貸し倒れの防止
金融機関にとって、融資先の企業が廃業や倒産すると融資金額を回収できない可能性があり、貸し倒れとなって大ダメージです。特に、業績が理由ではなく、後継者不在で廃業危機にあるような企業がM&Aで存続するのは、金融機関にとってメリットといえます。
仲介手数料の獲得
金融機関は、融資先企業から経営相談を受ける機会も多く、その延長上、M&Aの仲介を行うこともあります。その場合、仲介手数料という、通常の銀行業務では得られない収入を得られるのです。
新たなビジネスモデルの創出
前項のような状況を受け、地方銀行や信用金庫なども含め、ほとんどの金融機関がM&A・事業承継サポートのための専門部署を設け、これまでの銀行業とは異なるM&A仲介業務を、金融機関ならではのネットワークを用いて行うという新たなビジネスモデルが創出されました。
M&Aが士業に与えるメリット
M&Aが専門家と呼ばれる士業に与える影響についても考えてみましょう。
デメリットよりもメリットのほうが多いことがよくわかります。
- 税理士
- 公認会計士
- 弁護士
税理士
税理士はM&Aでも重要な役割を果たします。
例えば、税務に関するアドバイザリー、税務・財務のデューデリジェンス、企業価値判定のバリエーションなどの各種業務を行っています。
税理士は、税務・財務の専門家としての活躍の場が多く、M&Aにおいても外すことのできない存在です。
公認会計士
M&Aでの公認会計士の存在価値は大変高く、M&A実務の主役といっても過言ではありません。
会計士のM&A実務といえば、M&A戦略の策定、スケジューリング、バリエーション、財務デューデリジェンスなど、ほかの士業との連携によって専門的でなおかつ幅広い業務を行うことができます。
弁護士
弁護士がM&Aで活躍できる場が数多く用意されています。
例えば、M&Aアドバイザー、FA業務、M&A仲介業務、M&Aに関する法務・労務管理などを担当できます。
弁護士は、M&Aを希望する企業同士のマッチングに始まって、クロージングまで一貫して責任を持ってM&A業務を引き受けることができるため、大変重要な存在となっています。
M&Aのメリット・デメリットまとめ
M&Aにはメリット・デメリットの両方があります。それらは均等に存在するのではないため、特にデメリットに関しては、その内容や注意点を知っておけば多くは防げるでしょう。したがって、M&Aのプロセスや手法ごとに存在するそれぞれのメリット・デメリットをよく知ることが肝要です。
しかし、M&Aにおける全てのメリット・デメリットを把握するのは困難なものがあります。
そこで、M&A仲介会社などの専門家を活用しましょう。M&A仲介会社などに任せれば、デメリットを回避しながらメリットを最大限に享受できるM&Aが実現しやすくなります。
今回の記事をまとめると、以下のようになります。
- M&Aにおける売り手と買い手の両方のメリット・デメリット、その他注意点
- M&Aの成功事例と失敗事例
- 海外M&Aのメリット
- M&Aの各手法別のメリット・デメリット
- M&Aが関係各者に与えるメリット・デメリット
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。