2022年11月10日更新会社・事業を売る

株式譲渡承認請求書とは?記載例・押印、必要性、手続きの流れを解説

株式譲渡承認請求書とは、株式を発行している会社に株式譲渡を認めてもらう目的で作成する書類のことです。作成する際は、押さえておくべきポイントがあります。本記事では、株式譲渡承認請求書について、記載例や必要性、手続きの流れなどを解説します。

目次
  1. 株式譲渡承認請求書とは
  2. 株式譲渡承認請求書を作成するうえでのポイント
  3. 株式譲渡承認請求書の提出後の手続き
  4. 株式譲渡の注意点
  5. 株式譲渡承認請求書のまとめ
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株式譲渡承認請求書とは

株式譲渡承認請求書とは

株式譲渡承認請求書とは、株主が第三者に株式を譲渡する際に、株式を発行している会社に株式譲渡を承認してもらう目的で送付する書類のことです。

上場株式と非上場株式

通常、株式は「上場株式」と「非上場株式」の2種類に分かれます。「上場株式」とは、一般の投資家を含めて自由に取引できるもので、取引が制限されません。「非上場株式」は、ほとんどの中小企業に見られる株式で、株主から許可を得ない限り、一般の投資家は取引できません。

株式は経営権を左右するため、発行する株式に譲渡制限を設けている会社がほとんどでしょう。譲渡制限を株式に設けることで、経営権を守れるからです。

しかし、株式に譲渡制限を設けている場合は、株主が亡くなった際に株式を相続し名義を変える必要が出てきます。また、名義変更に伴い、後継者に経営権を移譲するため、譲渡制限株式を譲渡しなければなりません。このときに必要な書類が「株式譲渡承認請求書」です。

株式譲渡承認請求書の効力

一度、株式譲渡承認請求書が提出されると、受け取った会社は2週間以内にその承認の是非を問う株主総会(取締役会の場合もあり)を開催しなければなりません。株主総会(取締役会)で決議を取り、その結果を請求者に通知する必要があります。

株主総会(取締役会)が決議を取らないまま2週間を過ぎてしまった場合は、自動的に株式譲渡が認められてしまいます。

ここまで聞くと、株式譲渡承認請求書は強力な書類のように思えるかもしれませんが、実際は、事前に株主と会社の経営陣との間で協議しているケースがほとんどです。そのため、あくまで株式譲渡承認請求書は形だけで、すでに株式譲渡自体は認可されている場合が多いでしょう。

会社にとって望ましくない人物に株式譲渡される場合、つまり会社が株式譲渡請求を不承認にする際は、会社側から取得する人物を指名できます。このようなケースでは、株式を買い取る必要があり、手続きが変わってくるため注意が必要です。

株式譲渡承認請求書の必要性

株式譲渡承認請求書は、譲渡制限株式を譲渡したいときに会社へ送ります。しかし、法律では、書面で必ず請求する必要はないのです。

ただし、株式譲渡承認請求のときに株式譲渡承認請求書を用いらなければ、不承認のときの対応が記載できない、株式譲渡承認請求をしたことを証明できない、などの不都合が生じます。そのため、株式譲渡承認請求は書面で行うほうが良いでしょう。

株式譲渡承認請求の流れ

株式譲渡承認請求の流れを見ていきましょう。

最初に会社へ株主が株式譲渡承認請求をします。譲渡を否認するときは、会社か指定買取人による株式の買取を請求できるのです。譲渡の承認は定款にある機関が決めますが、機関が定まっていないケースでは取締役会、取締役会がなければ株主総会が承認するか否かを決めます。

株式譲渡承認請求を受けた会社は、請求された日から2週間以内に株主へ通知する流れです。期間内に通知しなければ、承認とみなされます。

【関連】株式譲渡の制限| M&A・事業承継の理解を深める

株式譲渡承認請求書を作成するうえでのポイント

株式譲渡承認請求書を作成するうえでのポイント

ここでは、株式譲渡承認請求書を作成するうえでのポイントを解説します。

株式譲渡承認請求書の記載事項

株式譲渡承認請求書を作成する際に、不可欠な要素は以下の3点です。

  • 譲渡する株式の種類と株式の数
  • 譲渡される相手の氏名と住所
  • 譲渡する株主の氏名と住所と印鑑

実際に株式譲渡承認請求書を作成する際は、インターネット上に掲載されているテンプレートを参考に作成することをおすすめします。

譲渡する株式の種類と数

株式の種類は、普通株式、優先株式、劣後株式などです。普通株式がメインとして使われます。優先株式は配当や残余財産の分配などで普通株式より優先順位が高くなる株式、劣後株式は配当や残余財産の分配などで普通株式より優先順位が低くなる株式です。

株式の種類と数を記し、株式譲渡の契約書を確認して間違いのないよう注意してください。

譲渡する相手に関する情報

譲渡する相手に関する情報として、氏名、住所を記しましょう。株式譲渡の契約書を確認して、誤りがないよう記載してください。

実印の押印(場合によっては)

基本的に認印を押しますが、場合により実印が必要なこともあります。実印は印鑑証明書とセットで効力を生じ、本人が押印したことを証明するので、実印は慎重に使うことが多いです。

認印も実印も、同じ法的効力を持ちますが、認印は、自分が押していない、自分の印鑑ではないなどと主張されると、それを立証するのは簡単ではありません。

実印を求められても拒否できますが、トラブルが生じると実印ではなかったためにトラブルが悪化することもあるので、特別な理由がなければ実印を押しましょう。

不承認の際の対応

株式譲渡が不承認になると、会社か指定買取人が株式を買い取ります。不承認の際の対応に関して、株式譲渡承認請求書に明記してください。そうすれば、期限内に対応することを促すことが可能です。そして、株式譲渡が円滑に進むでしょう。

株式譲渡承認請求書の記入例

株式譲渡承認請求書の書き方を見ていきましょう。下記を参考にしてください。ただし、これはあくまで一例です。

株式譲渡承認請求書の記入例

出典:https://fundbook.co.jp/application-for-approval-regarding-transfer-of-shares/#chapter-3

単独で譲渡請求できる条件

株式譲渡は原則、譲渡する株主と譲渡される相手の共同で請求します。株式譲渡があくまで個人間のやり取りであっても、他の株主に影響を与え、最悪な場合は損害を発生させる恐れがあるからです。

ただし、譲渡する株主に対して株式譲渡承認を請求する判決が出ている場合は、その旨を証明する書類を提供すれば単独で譲渡請求できます。また、株式譲渡承認請求書が不承認にされ、会社から指名する買い取り相手になった場合は、その旨を記載する必要があります。

事前協議が成立している場合は手間がかからない

株式譲渡承認請求書はシンプルな書類であるものの、株式譲渡において非常に重要な書類です。株式を発行している会社との事前協議が成立していれば、先方のアドバイスを得たうえで書類作成できます。そのため、あまり手間がかかりません。

一方、事前協議が成立していない状態で株式譲渡請求承認書を送る際は、弁護士や税理士などプロのアドバイスを得ることをおすすめします。

M&A総合研究所では、専門的な知識や経験が豊富なM&Aアドバイザーが、培ったノウハウを生かして案件をフルサポートいたします。

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【関連】株式譲渡の相談は税理士・弁護士にするべき?相談先一覧!| M&A・事業承継の理解を深める

株式譲渡承認請求書の提出後の手続き

株式譲渡承認請求書の提出後の手続き

この章では、株式譲渡承認請求書の提出後における手続きについて見ていきましょう。

譲渡が承認されたケース

株式譲渡が承認されたケースでは、株主名簿に記された株主の氏名を譲受人へ変更するよう請求します。株式譲渡承認請求のみでは、譲渡制限株式の譲渡ができません。

株式譲渡契約を結ぶと株式の譲渡が可能です。しかし、譲受人が会社へ株主としての権利を主張する際、株主名簿に譲受人の氏名が載っていなければなりません。

株主名簿書換請求とは、株主名簿における氏名の変更を請求することをいい、譲渡人と譲受人が行います。株式譲渡承認請求と株主名簿書換請求の順序は替えられません。

会社は、株式名簿書換請求の否認はできません。つまり、株式譲渡承認請求が承認されると、手続きを行うのみで株式譲渡が実現できます。ただし、株主名簿に氏名が載っていなければ、株主の権利を主張できないので、手続きを後回しにしないでください。

譲渡が承認されなかったケース

次に、譲渡が承認されなかったケースの手続きを見ていきましょう。このケースでは、譲渡制限株式を譲渡できません。しかし、会社が株式譲渡承認請求を否認し続けていると、株式の換金やオーナー経営者の退任などが行えません。

そこで、株式譲渡を承認請求した株主は、株式を指定買取人または会社が買い取るよう求められます。会社が株式を買い取れば自己株式の取得となるので、分配可能額の制限を受けるでしょう。

会社が株式を買い取るケースでは、株式譲渡承認請求を否認してから40日以内、指定買取人が買い取る場合は10日以内に、買い取る株式数と買取の旨を株主に通知する必要があります。これを行わなければ、株式譲渡承認請求を承認したことになるのです。

会社が指定買取人による買取を選ぶケースでは、取締役会の決議もしくは株主総会の特別決議を要します。また、指定買取人として指定されたことを本人が、株主へ知らせます。

株式譲渡の注意点

株式譲渡の注意点

株式譲渡承認請求書を作成する際は、株式譲渡の注意点について押さえておくことが重要です。ここでは、株式譲渡の注意点について見ていきましょう。

  1. 知識を習得し正当性にも配慮する
  2. 税金が発生する

①知識を習得し正当性にも配慮する

株式譲渡を実施する際は、株式譲渡に関する知識を事前に習得し、譲渡そのものの正当性にも配慮することが非常に重要です。

とりわけ株式譲渡承認請求書を作成する必要がある非上場株式は、発行している会社が中小企業であるケースがほとんどです。そのため、株式譲渡の際は、役所などをとおす必要がなく、公的な目線がない状態で取引が進みます。つまり、株式譲渡の正当性について法的に証明することが困難です。

中小企業の中には、株式や株主の管理が雑になっている企業も少なからず存在します。会社法をきちんと理解していない人が経営陣にいるケースも十分にあり得るでしょう。

そのため、株式譲渡を実施する側も承認する側も、知識不足や管理の悪さが原因で誤った株式譲渡を実施してしまう可能性があります。

このように、株式譲渡を実施する際は、株式譲渡に関する知識を習得し、正当性にも配慮して実施する姿勢が重要です。少しでも不安を感じる場合は、弁護士などのエキスパートを介在させましょう。

②税金が発生する

「株式譲渡があくまで個人間のやり取りであるなら、税金は発生しないのでは?」と思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、株式譲渡では基本的に税金が発生します。

実際の株価と全く異なる金額で株式譲渡が実施された場合は、利益が生じるため、税務面で問題が発生する可能性があるのです。従って、税務関係に関する協議は、株式譲渡承認請求書を出す前に実施する必要があります。

【関連】会社譲渡(株式譲渡)時にかかる税金とは?仕組みや計算方法について解説!| M&A・事業承継の理解を深める
【関連】株式譲渡の手続きの流れ!手順、必要書類、注意点も徹底解説| M&A・事業承継の理解を深める

株式譲渡承認請求書のまとめ

株式譲渡承認請求書のまとめ

株式譲渡承認請求書の作成自体は、さほど手間ではありません。しかし、株式譲渡で重要なのは、株式譲渡承認請求書を作成する前段階です。

会社側との事前の協議がすでに完了していれば、そこまで手間はかかりませんが、そうでない場合は、トラブルを発生させるリスクがあります。そのため、株式譲渡承認請求書の作成も含め、株式譲渡の際は専門家の力を借りましょう

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