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2021年5月4日更新事業承継
農地の相続とは?届け出や相続放棄・売却方法を解説
農地を相続する場合は、一般的な相続とは異なるため十分に注意する必要があり、その手続きは農地法により細かく決められているため、詳しく調べたうえで実施することが重要です。今回の記事では、農地の相続に必要な手続きなど、相続放棄や売却方法ついても詳しく説明します。
はじめに
経営者であれば、誰でも相続人となる機会があります。その際、受け継ぐ遺産は現金や株式だけでなく、農地も含まれます。農地を相続する際は、通常とは異なる手続きを要するため注意が必要です。
農地相続に必要な届出
まず、農地相続に必要な届出について解説します。
農地相続の届出とは
通常の土地を相続する場合には相続登記のみで手続きが完了しますが、農地を相続する際には登記に加え、農業委員会へ届出書を提出する必要があります。
農業委員会とは、各地の市町村に設置されている行政委員会の一つです。農業委員会に届出する際は、農地を相続した旨を確認できる書面(登記事項証明書など)も併せて提出する必要があります。
農地相続の届出書の記載内容
農業委員会の窓口で取得できる農地相続の届出書には、主に下記の内容を記載します。
- 農地取得者(相続人)の氏名と住所
- 農地の所在地(地番や地目なども含む)
- 取得した農地の種類と内容
- 農地の取得日
- 農地を取得した理由
- 農業委員会によるあっせんなどの希望に関する内容
以上の内容を記載した届出書を、添付書類と一緒に提出します。記載内容を詳しく知りたい方は、農地法第3条の3第1項を参考にしてみてください。
届出の提出期限
農地相続の届出書は、農地取得を認識した日から10ヶ月以内に提出する必要があります。届出は絶対であり、届け出なかった場合には10万円以下のペナルティが科される可能性があるため注意が必要です。
そのため、農地を相続する方は、忘れずに届出書を提出しましょう。また、虚偽の内容を記載した場合にも、同様の措置が取られるため、注意する必要があります。
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相続した農地の評価額と計算方法
ここでは、農地相続の評価額について解説します。
評価額の算定方法は、相続する農地の種類によって異なります。そこで、この項では、以下のように農地の種類ごとの評価額算定方法をご紹介します。
- 純農地・中間農地
- 市街地周辺農地
- 市街地農地
①純農地・中間農地
純農地とは、生産性が非常に高いため宅地への転用がほぼ不可能な農地のことをさします。一方、中間農地とは、売買できる可能性が高く、許可を得れば宅地への転用が可能である農地です。
純農地と中間農地に関しては、倍率方式により評価額を算出します。倍率方式とは、農地の固定資産評価額に地域ごとに設定された倍率を掛けて算出された数値を、相続財産の評価額とする方式です。地域ごとに設定された倍率は、国税庁の定めた評価倍率表に記載されています。
②市街地周辺農地
市街化周辺農地とは、市街化の傾向が強い場所に所在する農地です。電車の駅が数百メートル以内にあるなどの条件に合致することで、市街化周辺農地となります。
市街化周辺農地に関しては、市街地農地として評価した価額の80%を相続財産の評価額とします。つまり、市街化農地であると仮定して、一度評価額を算定します。算出された評価額に0.8を掛けることで、市街化周辺農地の評価額を算定できます。
③市街地農地
市街地農地とは、文字通り市街地に所在する農地であり、農地を転用しやすい点が特徴です。
市街地農地に関しては、宅地比準方式、もしくは倍率方式により評価額を算出します。宅地比準方式では、宅地であると仮定した場合の評価金額から、宅地に転用する際の造成費を控除する形で評価額を算出します。造成費に関しては、地域ごとに設定された数値を使用します。
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農地相続で役立つ納税猶予の特例
次に、農地相続で役立つ納税猶予の特例に関して解説します。
特例猶予の概要
農地を相続または受贈した場合は、他の資産と同じように相続税や贈与税が発生します。そのため、税負担を気にせずに円滑に農業を引き継ぎたい場合は、農地の納税猶予特例が非常に役立ちます。
農地の納税猶予特例を活用すれば、相続や贈与により承継した農地に関して、相続税もしくは贈与税の納税を猶予されます。さらに、農地を相続した後に農業を亡くなるまで続ければ、猶予した相続税は免除されます。
つまり、特例を活用すれば、税負担を気にせずに農業を承継できます。
相続税の納税猶予を受ける条件
相続税の納税猶予を受けるためには、被相続人・相続人に関する諸条件を満たす必要があります。まず、被相続人に関しては、生前に農地を一括贈与しているなどの条件を満たす必要があります。また、相続人には、農地を引き継いだ後も引き続き農業を続けるなどの条件があります。
贈与税の納税猶予を受ける要件
贈与税の納税猶予を受けるためには、贈与者・受贈者・贈与に関する諸条件を満たす必要があります。まず、贈与者に関しては、継続して農業を実施していたなどの要件が設定されています。受贈者については、農業を引き継ぐ旨を農業委員会に証明されるなどの条件があります。
さらに、農地の贈与自体にも要件があり、一定以上の農地を一括贈与すると決まっています。このように、贈与税の納税猶予を受けるためには、さまざまな要件があるため注意が必要です。
特例活用における注意点
特例活用の際は、いくつか注意点があります。
1つ目の注意点は、3年おきに継続届出書を提出する必要があるという点です。継続の届出をしなければ納税猶予が取り消されるうえに、猶予していた相続税と利子税を納める義務が発生するため注意しましょう。
2つ目の注意点は、農業をやめると納税義務が生じるという点です。この特例は、農業を引き継ぐ者を対象としているため、農業をやめた場合は納税義務が発生し、未納分と利子税を支払うと決まっています。
相続した農地の売却
この項では、相続した農地を売却する場合に必要な手続きを説明します。必要な手続きは、相続した農地を売却する際、どのように売却するのかによって異なります。ここでは、以下のケースに分けて説明します。
- 相続した農地をそのまま売却するケース
- 相続した農地を農地以外の用途で売却するケース
①相続した農地をそのまま売却するケース
相続した農地をそのまま売却する際には、農業委員会の許可を得なくてはなりません。これは、届出ではなく許可であるため、売却を認められない場合もあり、認められなければ売却もできません。
また、農業委員会から許可を得るためには、農地を取得する者(買い手)が農業経営に関して、一定水準以上の基準をクリアする必要があります。農地を取得する者(個人)の要件は以下のとおりです。
- 農地のすべてを効率的に利用する
- 必要な農作業に常時従事する
- 一定の面積を経営する
- 周辺の農地利用に支障がないこと
以上の条件を満たせば、相続した農地を取得できます。
②相続した農地を農地以外の用途で売却するケース
相続した農地を農地以外の用途に変えて売却する場合は、農業委員会の許可が必要です。農地のまま売却する場合とは違い、立地基準と一般基準に基づいて売却可否が判断されます。
立地基準では、相続した農地の立地に関する基準となります。一方で、一般基準は土地の利用目的や周囲への影響に関する基準です。農地のまま売却するケースと比べると、許可が下りるまでに時間がかかるという特徴があります。
相続した農地が不要な場合の対処法
最後に、相続した農地が不要である場合の対処法に関してご説明します。相続した農地が不要である場合には、下記の3つの方法で対処法できます。
- 農地の相続放棄
- 農地の売却
- 農業に関心がある人を雇用し農業を続ける
①農地の相続放棄
相続した農地が不要な場合の最も手っ取り早い方法は、相続放棄です。相続放棄では、相続人としての権利自体を放棄するため、不要な農地を相続せずに済みます。相続税の負担もなくなるため、農地を不要とする場合にはメリットが大きい手法です。
一方、他の資産を一切相続できないというデメリットがあります。そのため、多額の相続財産が存在する場合は、慎重に検討することをおすすめします。仮に全員が相続放棄を行い、農地を相続する人物がいなくなった場合には、相続人のいない財産となり国庫に帰属されます。
②農地の売却
不要な農地に関しては、売却することも1つの手です。農地を売却すれば、相続税は発生するものの、不要な農地を管理する手間や費用が省けるうえに、売却代金も獲得できます。許可を得る必要があるものの、実用的な対処法といえるでしょう。
③農業に関心がある人を雇用し農業を続ける
農地が不要であるとはいっても、相続放棄や売却により農地を手放すことを「もったいない」と感じる方も多いでしょう。
そういう方は、農地を有効活用する手段として、農業に関心のある人を雇用し、引き続き農業を続けることも選択肢の1つです。農業に関心のある人に農地の管理を任せるため、手間を省けます。
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まとめ
今回は、農地の相続に関して解説しました。農地の相続は、通常の相続とはいくつか異なる点があります。そのため、農地相続の際は、十分に調べたうえで実施することをおすすめします。
要点をまとめると、下記のとおりです。
・農地相続の届出とは
→農地を相続する際には登記に加え、農業委員会へ届出書を提出する必要がある
・相続した農地の評価額と計算方法
→相続する農地の種類によって異なる
・純農地・中間農地を相続する場合
→倍率方式により評価額を算出する
・市街地周辺農地を相続する場合
→市街地農地として評価した価額の80%を相続財産の評価額とする
・市街地農地を相続する場合
→宅地比準方式、もしくは倍率方式により評価額を算出する
・特例猶予
→税負担を気にせずに農業を承継できる
・特例活用における注意点
→3年おきに継続届出書を提出する必要がある、農業をやめると納税義務が生じる
・相続した農地が不要な場合の対処法
→農地の相続放棄、農地の売却、農業に関心がある人を雇用し農業を続ける
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。