2024年7月29日更新資金調達

合併特例債と事業再生スキームの完全ガイド!資金繰り方法や成功事例も詳しく解説!

債務超過に陥った企業が事業再生を行うには、適切な事業再生スキームの選択が重要です。金融機関・日本公庫が中小企業の資金繰りや事業再生をサポートしています。本記事では、事業再生スキームの種類や再成長のための資金繰り方法、合併特例債などを紹介します。

目次
  1. 市町村が利用できる合併特例債とは?
  2. 事業再生スキーム一覧
  3. 事業再生のスキーム選びで大切なこと
  4. 事業再生による再成長への資金繰り方法
  5. 事業再生の成功事例など過去事例
  6. 合併特例債と事業再生スキームのまとめ
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市町村が利用できる合併特例債とは?

企業ではなく市町村が有利な財源として利用できる「合併特例債」について、具体的にどのようなものか概要を紹介します。

合併特例債の概要

合併特例債とは、合併を行った市町村が新たなまちづくりに必要な事業に対する財源として、「新市建設計画」にもとづき借り入れを行える地方債のことです。

事業費の95%までを上限として借り入れができ、毎年度返済する元利償還金の70%が普通交付税によって措置されるため、市町村にとって有利な財源と考えられています。

そもそも市町村の合併行為には莫大な費用がかかるため、地方自治体の単年度予算だけでは財政に大きな負担がかかりやすいですが、合併特例債を活用し対象の事業費に充てれば、公共的施設の整備事業をスムーズに進められます。

合併特例債の対象

合併特例債とは、総務省が定める特定の事業に対して利用されるものです。これには以下のような事業が含まれます。

公共施設の整備 合併した市町村を結ぶ道路、橋、トンネルなどの交通インフラ、運動公園のような住民の集う場所、市町村間の格差を埋めるための施設、または既存の公共施設の統合などが含まれます。
地域振興基金の造成 合併市町村の一体感を高めるイベントや事業、伝統文化や地域行事、商店街の活性化対策などに使用される基金の創設が対象です。
地方公営企業への出資・補助 上下水道、病院など地方公営事業への出資や補助が含まれます。これにより、地域の公共サービスの維持・向上が図られます。

合併特例債の対象外事業

合併特例債の対象事業外となるものは、以下に挙げる事業です。

  • 利益が得られる施設の整備
  • 特定の人のみ利益を得る施設の整備
  • 民間と競合する施設の整備
  • 土地取得のみを目的とした事業
  • 一定水準を超える建設費や整備費

合併特例債の優遇措置

国からの地方交付税は年度ごとに交付されます。そのため、合併特例債には、合併後に地方交付税が減少しないようにする優遇措置が設定されています。

合併後に算出した地方交付税は、合併前よりも少なくなってしまい、公共事業へ使用する資金が不足する可能性が高くなります。そのため事業費の95%まで借り入れが可能で、毎年度返済する元利償還金の70%が普通交付税によって賄われます。

つまり、債券の償還額のうち、合併した市町村は3割だけ負担するのみで、残り7割は国が負担するという優遇措置となっています。

合併特例債のメリット

合併特例債のメリットとしては、国が債券償還額の70%を負担する点が挙げられます。これにより、地方自治体は大規模な公共事業を実施できる機会が拡がります。

合併特例債のデメリット

合併特例債を発行する自治体は、残りの30%を自己負担しなければならず、合併による税収増や財政の健全化が期待ほど得られない場合、自治体の財政に大きな負担がかかるリスクがあります。

また、合併特例債の対象事業は総務省が定めていますが、具体的な使い道の決定は地方議会に委ねられており、総務省による詳細なチェックは行われていません。合併した市町村とそうでない市町村間の格差問題も指摘されています。

合併特例債と地方債との違い

合併特例債と地方債との違いがあります。合併特例債の対象事業は、地方債の対象事業と違って合併を効率化するための事業のみが対象となります。

地方債の充当率は毎年度総務省が告示する、事業ごとの充当率で決定されるため変動します。一方、合併特例債は95%の充当率と決まっています。

事業再生スキーム一覧

事業再生スキームとは、経営難や債務超過に陥った会社が事業再生および財務状況の改善を成し遂げるために利用する手段のことです。以下のようにさまざまな種類の事業再生スキームがあるため、その中から自社に合った適切なスキームを選択し実践するのが一般的です。

  • リスケジュール
  • DDS(デット・デット・スワップ)
  • DES(デット・エクイティ・スワップ)
  • 債権放棄
  • 第二会社方式
  • M&A

それぞれの概要を順番に紹介します。

リスケジュール

リスケジュールとは、金融機関などの債権者と相談し、債務の返済期限延長や返済条件変更、返済猶予などをすることで事業再生を目指す方法です。リスケジュールにより債務の猶予や返済期限の延長はなされたとしても、債務が減るわけではないため、この方法のみで財務状況が健全化されて事業再生が成功するのは稀です。

DDS(デット・デット・スワップ)

DDS(デット・デット・スワップ)とは、債権を劣後ローンや劣後債などに変更する行為であり、債務者の返済を一定期間猶予する方法です。資金繰りの安定化や利息の減額を見込めると同時に、劣後ローンは自己資本とみなされることから、自己資本比率が上がり財務状況が改善する点にメリットがあります。

債権を劣後化することで、他の債権者への債務よりも返済順位が下がるものの、債務がなくなるわけではないため、事業再生がうまくいかなければいずれ再び資金繰りに困ってしまうおそれがあります。

DES(デット・エクイティ・スワップ)

DES(デット・エクイティ・スワップ)とは、債権を債務者である会社の株式に振り替えることで借入金を減らす方法です。これにより、自己資本比率の向上と財務状況の改善の実現につなげられます。

ただし、DESでは、資本金が増加するため、法人住民税額が引き上げられたり、中小企業の税制特例から外れたりする場合もあるため、注意が必要です。また、DESにより借入金を減らすことが債務消滅益とみなされて、課税対象となる可能性がある点にも注意しましょう。

債権放棄

債権放棄とは、債務超過に陥った会社が債権を放棄する行為で、借入金を減らし財務状況を改善させるために実施されます。債権の一部または全部の返済義務が消滅するために財務状況は劇的に改善されますが、経営者は経営責任を問われます。

近年は、事業再生のための私的整理の方法として、前述したDDSやDESなどのスキームが浸透してきており、債権放棄のみで事業再生を行うケースは減少している状況です。

第二会社方式

第二会社方式とは、会社分割や事業譲渡などにより、好調な事業と不採算事業を別会社に分け、好調な事業は存続、不採算事業は清算する方法です。一般的に好調な事業が新しい会社に移され、もとの会社に不採算事業や債務などを残して清算します。

会社分割や事業譲渡はM&Aスキームの1つでもありますが、M&Aを行う場合は債権者の同意は必要ありません。これに対して、事業再生スキームとして会社分割や事業譲渡を行う際は、債権者保護の観点から債権者の同意が必要です。

【関連】事業再生の手法とは?M&Aを利用する方法、手続き、メリット、成功のポイントも解説

M&A型

第三者割当増資・株式譲渡・事業譲渡などのM&A手法も、事業再生スキームの1つとして利用されています。M&A型の事業再生では、買収企業がスポンサーとなる形で事業再生を目指すのが一般的です。

第三者割当増資・株式譲渡による事業再生の場合、経営権がスポンサーに移るため、再生会社がスポンサーの子会社となって事業再生が行われます。その一方、事業譲渡や会社分割では、事業のみがスポンサーとなる会社に引き継がれて、もとの会社と切り離される形で事業再生を目指します。

M&A型の事業再生を行う際のおすすめの相談先

M&Aによる事業再生では、M&Aの決定・相手先の選定・基本合意契約・表明保証などに関する専門的な知識が必要とされるため、事業を継続しながらM&Aを行うことは決して簡単なことではありません。そのため、M&A仲介会社などの専門家に相談し、支援を受けながら進めていくのが一般的です。

M&A総合研究所では、主に中小・中堅規模のM&Aを手掛けており、さまざまな業種で成約実績を積み重ねております。M&Aの知識・支援経験豊かなM&Aアドバイザーが担当につき、事業再生M&Aを徹底フルサポートいたします。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)ご相談はお電話・メールより無料で承っておりますので、M&Aによる事業再生をご検討の際はM&A総合研究所にお気軽にご連絡ください。

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事業再生のスキーム選びで大切なこと

事業再生のスキーム選びで失敗してしまうと、会社の倒産に直結するため、慎重に検討しなければなりません。本章では、適切な事業再生スキームを選択するために留意しておくべきポイントを解説します。

事業再生の対象を決める

適切な事業再生スキームを選択するには、事業再生の対象を決めて事業計画を立てる必要があります。事業計画を作成する際は、会社が置かれている状況を把握したうえで、再生方針を策定することが求められますが、その中でも事業再生の対象を決定することが非常に重要なポイントです。

なぜなら、事業再生を成功させるには、財政に大きな影響を与えている不採算部門の整理や人員の削減なども行わなければならない場合があるためです。事業再生の対象を決めて事業計画を立てたうえで、その計画に沿った事業再生スキームを選択することが大切です。

事業再生スキームを選ぶ目的を知る

財務状況を改善するための事業再生スキームには、さまざまな種類があります。自社の状況に合った事業再生スキームを見極めるためには、それぞれのスキームを選ぶ目的を知らなければなりません。

また、債務の弁済計画も、適切な事業再生スキームを選ぶ際に重要なポイントです。事業計画や弁済計画をもとに、事業再生スキームを決定するのが一般的です。弁済計画に則った債務の返済を行い、財務状況を改善させることを目的に、自社に合った適切な事業再生スキームを選びましょう。

事業再生による再成長への資金繰り方法

適切な事業再生スキームを選択するには、どのような資金繰り方法があるのかを把握し、妥当な事業計画や弁済計画を策定する必要があります。本章では、事業再生スキームを決定するうえで重要とされる、再成長のための資金繰り方法を解説します。

  • 経営改善の計画を立てる
  • 資金繰り表を作成する
  • 金融機関などに資金繰りを相談する

経営改善の計画を立てる

経営改善計画の作成は事業再生を成功させるための第一歩であり、債務超過を解消するために非常に重要なポイントです。経営改善計画に問題があれば、金融機関や債権者などの理解を得られず、事業再生が滞って最終的に倒産となるリスクがあります。

経営改善計画には、企業概要・組織図・事業の方向性・経営改善の具体的な施策、・財産計画・キャッシュフロー計画・借入金の返済計画などが盛り込まれます。効果的な経営改善計画を立てるために、中小企業庁が実施する経営改善計画策定支援事業を活用し、専門的なアドバイスを受けることも可能です。

資金繰り表を作成する

現金収入と支出をまとめた資金繰り表を作成することで、資金状況をリアルタイムかつ明確に把握できます。また、資金繰り表は、銀行からの融資を受けるために求められることもあるほか、事業再生スキームの選定や事業再生計画には必要不可欠な資料です。

正しく資金繰り表が作成されていれば、スピーディに財務状況を把握でき、債務超過に陥る前に健全な財務状況に改善することも可能です。

金融機関などに資金繰りを相談する

債務超過に陥っている会社が事業再生を行う際、まず金融機関に事業再生のための融資や適切な事業再生スキームなどを相談するケースが多いです。

金融機関としても、企業に倒産されてしまうと債権を回収できなくなるおそれがあるため、事業再生の可能性がある場合は、適切な事業再生スキームを提案したり、事業再生までの融資や支援を行ったりします。

取引先の金融機関

取引先の金融機関に相談することで、事業再生のための融資の可否および、リスケジュール・DDS・債権放棄などの事業再生スキームや事業に関するアドバイスなどを受けられます。普段から取引のある金融機関であれば相談しやすいうえ、金融機関も事業内容や財務状況を知っているため、的確なアドバイスが期待可能です。

また、日本政策金融公庫よりもスピーディに対応してくれることが多いため、即座に融資を受けたい場合などは金融機関への相談がおすすめです。

日本政策金融公庫

日本政策金融公庫は、事業再生を行っている中小企業・小規模事業者などに向けて、セーフティネット貸付としてさまざまな資金繰り支援を行っています。経営環境や金融機関との取引状況の変化・関連企業の倒産などに対応できず、資金繰りが悪化した中小企業などが対象です。

金融機関よりも金利が低く、保証人や担保がなくとも融資を受けられるものの、審査に時間がかかるなどのデメリットもあります。

【関連】資金繰りに関するノウハウ

事業再生の成功事例など過去事例

この章では、金融機関や日本政策金融公庫のサポートを受けて事業再生を行った成功事例を3つ紹介します。

  1. 酒類製造業会社のDESおよび第二会社方式併用による事業再生
  2. 水産加工会社のDDSによる事業再生
  3. 医療用器具製造会社の債権放棄による事業再生

①酒類製造業会社のDESおよび第二会社方式併用による事業再生

1つ目の成功事例は、清酒・焼酎・リキュール類を扱う酒類製造会社の事業再生です。この酒類製造会社は、消費者の嗜好の変化や焼酎ブームの収束により主要商品の販売が低迷し、経営状態が悪化したことで債務超過に陥っていました。

倒産となれば地域経済や地域の雇用に大きな影響が生じることが予想されたため、民間の金融機関と日本政策金融公庫が事業再生支援を行いました。

事業再生スキームは、第二会社方式により採算の取れている事業を承継するための新会社を設立したうえで、ガバナンス強化と経営の安定化を図るために金融機関や公庫が持つ債権を株式に変えるDESを活用しています。

会社分割前の旧会社は多額の債権放棄を行い、清算しました。これらの事業再生の結果として、経営体制が強化されて、財務体質の改善および地域経済の活性化などの効果を得ています。

②水産加工会社のDDSによる事業再生

2つ目は、水産加工会社の事業再生成功事例です。この水産加工会社は、事業規模拡大のために新店を立て続けにオープンしたものの、客足が伸びなかったうえに、不動産投資の失敗などもあり大幅な債務超過に陥っていました。

こうした状態であったため、金融機関から設備投資用の融資を受けられず、設備が老朽化しても買い替えられずに生産効率が下がっていました。そこで、日本政策金融公庫は、この水産加工会社が地域経済の活性化に必要不可欠であることから、DDSによる事業再生支援を行っています。

また、取引金融機関も公庫の支援に追随し、金利の免除や新規融資などの支援に乗り出しました。DDSによる債務超過の解消や財務体質の強化が行われた結果として、老朽化した設備の更新が行われ、起業維持力が回復・強化されています。

③医療用器具製造会社の債権放棄による事業再生

最後は、東日本大震災の影響で資金繰りが苦しくなった医療用器具製造会社が、債務放棄により事業再生を行った事例です。この医療器具製造会社は、厳しい品質管理と生産の合理化を行うことで取引先から高い評価を得ており、設備の老朽化による生産効率低下の問題はあるものの、一応の利益は確保していました。

事業再生には老朽化した設備の刷新がポイントであったため、設備投資費用を賄えるスポンサー企業からの支援を受けて事業再生を行っています。これと同時に、抱えていた債務を放棄しました。

設備投資による生産効率の向上に加えて、スポンサー会社からの経営陣により経営管理体制の強化を行ったことで、事業再生に成功しています。

【関連】事業再生の手法と流れ、成功させる7つのコツを徹底解説【事例あり】

合併特例債と事業再生スキームのまとめ

本記事では、事業再生を目指す企業の財務状況改善のための手段、事業再生スキーム選択のために大切なこと、事業再生のための資金繰り方法などを中心に解説しました。

経営環境の変化や時代の流れについていけずに債務超過に陥った企業でも、金融機関や日本政策金融公庫などの支援を受けることで、事業再生を目指せます。

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