M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2021年4月22日更新会社・事業を売る
ゴールデンパラシュート
ゴールデンパラシュートとは、経営陣や役員の退職金を巨額に設定することで、自社への敵対的買収の意欲を減じさせる買収防衛策です。メリットだけでなくデメリットも多いため、ゴールデンパラシュートの設定を検討したら専門家に相談すると良いです。
ゴールデンパラシュート
M&Aを実施する場合、必ずしも友好的に売買取引が進められるとは限りません。場合によっては、企業を無理やりにでも買収したいと考える経営者も存在します。結果として、望まない形で買収が進んだり、合併への同意を迫られるパターンも少なくありません。
望まない買収に備えて、企業は様々な防止策を講じることができます。ゴールデンパラシュート(英語:Golden parachute)とは、こうした不本意な売買取引を未然に防ぐことのできる方法の1つです。この記事では、ゴールデンパラシュートの意味・メリットやデメリットなどをわかりやすく解説します。
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ゴールデンパラシュートとは
ゴールデンパラシュートは、敵対的買収を防止する方法(買収防衛策)の1つです。自社が敵対的買収に成功されてしまうと、多くのケースで経営陣の解任が求められます。そこで「事前に経営陣や役員の退職金を巨額に設定しておき敵対的買収に対抗する」施策のことをゴールデンパラシュートと呼んでいます。
ゴールデンパラシュートの名称は、「敵対的買収によって乗っ取られた企業から脱出すべくお金(ゴールド)をパラシュートに見立てて活用する」という表現が由来となっています。ちなみに経営陣や役員ではなく、従業員の退職金を高額にする買収防衛策はティンパラシュート(ブリキの落下傘)といいます。
ここではゴールデンパラシュートについてより深く理解するために、以下の2項目に分けて解説します。
- 敵対的買収とは
- ゴールデンパラシュートの仕組み
それぞれの項目を順番に見ていきます。
①敵対的買収とは
そもそも敵対的買収とは、買収先の経営陣の同意なしに株式を買い占めて、強制的に所有権を掌握する買収方法です。 日本では敵対的買収とは対照的に、両社が合意の上で買収を行う友好的買収が一般的です。しかし、まれにこの敵対的買収が実施されるケースがあります。
対象企業の株式の3分の1を所有すると、特別会議の拒否権などの権利が手に入ります。この権利を行使すれば、無理やりにでも対象企業を子会社化することが可能です。敵対的買収が実施されるとき、買収される会社の多くは企業統合を望んでいません。
したがって敵対的買収は、周囲からのイメージが決して良いとはいえない買収方法ですが、法律に違反している行為ではありません。
②ゴールデンパラシュートの仕組み
ゴールデンパラシュートは、買収価格を上昇させて自社を買収するリスクを増やすことで、敵対的買収から自社を防衛する仕組みです。具体的には、経営陣の退職金を高額に設定することで、企業の買収に必要となる資金額を引き上げます。これによって、敵対的買収を仕掛ける企業の意欲を削ぐことが可能です。
つまり買収価格を引き上げることで、敵対的買収が実施されない可能性を格段に上げることができます。なおゴールデンパラシュートを設定しておけば、敵対的買収が決定し取締役が退職するときに、従業員もリストラされる可能性があります。
このとき会長や取締役のみが高額な退職金を貰えるゴールデンパラシュートが存在していると、企業のイメージを低下させることになります。
つまり事前に企業イメージ低下のリスクが判明しているため、敵対的買収の抑止力としても機能することになります。
このようにゴールデンパラシュートを活用すれば、敵対的買収に対抗できる可能性があります。
設定される退職金額の相場
ゴールデンパラシュートで設定される経営陣や役員の退職金額の相場は、取締役の年収の3倍程度が目安とされています。
一方で敵対的買収に成功されると、多くの従業員が解雇されるおそれがあります。こうした状況のなかで、経営陣や役員はゴールデンパラシュートによって多額の退職金を受け取ることができます。
そのためゴールデンパラシュートを設定しつつも敵対的買収を食い止められなかった場合、経営陣や役員に対するイメージが著しく低下しかねません。
そこでイメージ低下を避けるべく、条件付きのストックオプションなどの形態を採用して、ゴールデンパラシュートの発動に条件をくわえるケースもあります。
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ゴールデンパラシュートのメリット
前述のとおりゴールデンパラシュートは敵対的買収を避ける目的で設定されます。ここでは敵対的買収を防ぐメリットについて、以下の3項目に分けて解説します。
- 社風・歴史の改変を防げる
- 役員の交代を防げる
- 株主に余計なリスクを与えずに済む
それぞれのメリットを順番に見ていきます。
①社風・歴史の改変を防げる
ゴールデンパラシュートを活用すれば、敵対的買収に伴う社風・歴史の改変を防げます。敵対的買収を許してしまえば、これまで築き上げてきた社風や歴史を変更されてしまうおそれがあります。
場合によっては、従業員が働きやすいと感じていた会社が働きにくい会社に様変わりしてしまうケースもあります。
給与や勤務地などの待遇面も大きく変更されることもあり、従業員は厳しい状況に立たされてしまいます。さらには「参入予定のなかった市場への新規参入が急遽開始される」というように、これまでの経営方針の急激な転換もあり得ます。
敵対的買収を実施されれば、従業員に深刻な影響を与える可能性は高くなります。従業員の保護を考えるならば、ゴールデンパラシュートの設定を検討すると良いです。
②役員の交代を防げる
ゴールデンパラシュートを活用すれば、敵対的買収に伴う役員の交代を防ぐことが可能です。敵対的買収を許してしまえば、会社が統合されることとなります。会社が統合すると、両社経営陣の間で役職が重複するケースがあります。
そこで役職の重複を解消するために、これまで自社の役員として経営に携わってきた人材が別の役職へと移されることがあるのです。最悪の場合には、役員が退職に追い込まれてしまう可能性もゼロではありません。自社の役員を守りたい場合には、ゴールデンパラシュートの設定を検討するのも良いです。
③株主に余計なリスクを与えずに済む
ゴールデンパラシュートを活用すれば、株主に余計なリスクを与えずに済みます。基本的に敵対的買収を実施された会社の株主は、統合会社の株式を保有することになります。
つまり自社の株主が保有する株式が変わるため、場合によっては株式の売却金額が低下する可能性もあり得るということになります。
このように株主にもリスクを与える危険性を孕んでいます。ゴールデンパラシュートは、株主保護の観点からも有効策となります。
敵対的買収に無縁な企業はない
ゴールデンパラシュートの活用場面を想定するのは簡単ではありませんが、敵対的買収に無縁な企業はありません。
近年の日本ではM&Aが盛んに実施されており、敵対的買収が発生する可能性が高まっています。万が一に備え、抑止力としてゴールデンパラシュートを設定しておくことは有効策です。
ただし、後述するようにデメリットも存在するため、ゴールデンパラシュートの設定を検討する場合には専門家からアドバイスを受けることをおすすめします。
M&A総合研究所には、M&Aに関する豊富な知識と経験を持つM&Aアドバイザーが多数在籍しており、培ってきたノウハウを活かしてしっかりサポートいたします。
料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)相談料は無料となっておりますので、ゴールデンパラシュートなどの買収防衛策についてお悩みでしたらお気軽にご相談ください。
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ゴールデンパラシュートのデメリット
これまで様々なメリットを紹介しましたが、ゴールデンパラシュートの活用には以下のようなデメリットも生じるため、事前に把握しておく必要があります。
- 設定が困難である
- 失敗すると信用度が失墜する可能性がある
- 利益相反による義務違反に問われるリスクがある
それぞれのデメリットを順番に見ていきます。
①設定が困難である
ゴールデンパラシュートの設定は、株主からすれば経営陣による自己保身策と捉えられやすいです。つまり、ゴールデンパラシュートの設定にあたって株主から承認を得にくいのです。原則として、株主の承認を得なければ、ゴールデンパラシュートを設定できません。
ところが株主としては、「現経営陣による経営体制の維持」と「敵対的買収による経営体制の刷新」のどちらが自分たちに利益があるのか的確に判断することは困難です。したがってゴールデンパラシュートの設定を株主に納得させるには、敵対的買収を仕掛ける企業よりも現経営陣の方が優れていることをわかりやすく示す必要があります。
②失敗すると信用度が失墜する可能性がある
もしもゴールデンパラシュートの効果が充分に働かずに敵対的買収が成立してしまった場合、経営陣の信用度が低下する可能性があります。結果的に敵対的買収を許してしまっているため、経営陣のみが得できるようにゴールデンパラシュートを設定したのだと誤解されかねません。
会社としても経営者個人としても信頼度が低下してしまい、将来的に再び会社を設立しようとしても信用を集められず難しい状況に置かれるケースが多いです。
③利益相反の義務違反に問われるリスクがある
ゴールデンパラシュートを実行すれば、利益相反の義務違反に問われるリスクがあります。利益相反とは、本来他人の利益を図るべき立場に置かれる企業・個人が、他方にとって不利益になる行為を実施することです。つまり、自分だけ得しようと考えて実行する行為をさします。
前述のとおりゴールデンパラシュートは、経営者のみが利益を得ようと考えて実行される行為だと、株主から誤解されることが多いです。そのため経営陣は、常に利益相反に違反しないかを考えて行動しなければなりません。
ゴールデンパラシュートが盛んなアメリカでも議論される問題
アメリカにおいて、ゴールデンパラシュートは大多数の企業が導入しているシステムです。しかしアメリカでも、「ゴールデンパラシュートが利益相反に違反するか否か」という問題がたびたび議論されています。この議論では、2つの結論が出されています。
1つめは、ゴールデンパラシュートは株主との関係において、明らかな利益相反であるとの結論です。そして2つ目は、ゴールデンパラシュートを実行するとき、取締役は退任時に自己の利益を一切に放棄して、株主に選択を委ねているため利益相反には値しないとの結論です。
つまり、あくまでも敵対的買収のために設定するので、取締役は株主の決定に従っているという考え方です。2つの結論は真っ向から対立していますが、どちらが正しい結論であるかは未だ定まっていません。とはいえゴールデンパラシュート自体は悪ではないという考え方は、共通認識として広がっています。
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まとめ
ゴールデンパラシュートは、日本ではまだあまり馴染みがない買収防衛策です。しかし今後日本でもスタンダードな方法として捉えられる可能性はあります。したがって株主や経営陣としては、敵対的買収に対する防衛策の知識を身につけておかなけれなりません。
ゴールデンパラシュートそのものは善悪のつけにくい方法です。ゴールデンパラシュートを実施しても、必ずしも敵対的買収から逃れられるとは限りません。そのためゴールデンパラシュートのみに頼るのではなく、様々な観点から経営の安定化を心がけることが大切です。要点をまとめると、以下のとおりです。
・ゴールデンパラシュート
→経営陣の退職金を巨額にして敵対的買収から自社を防衛する手法
・ゴールデンパラシュートが活用される理由
→経営陣・従業員・株主に悪影響を出す敵対的買収を防げるため
・ゴールデンパラシュートのデメリット
→実施が困難・失敗すると信用度が低下する・利益相反の義務違反に問われるリスク
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。