2021年4月26日更新事業承継

不動産の事業承継

不動産業界は、他の業界と同じく事業承継の重要性が高まっています。一方で、不動産自体を事業承継に活用する動きも活発です。この記事では、「不動産業界の事業承継」と「不動産活用による事業承継対策」についてそれぞれご紹介します。

目次
  1. 不動産の事業承継
  2. 不動産業界の事業承継
  3. 不動産業界の事業承継におけるポイント
  4. 不動産を活用した事業承継対策
  5. 不動産活用における事業承継のポイント
  6. 不動産活用以外の事業承継対策
  7. まとめ
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不動産の事業承継

不動産の事業承継

事業承継とは、経営する会社を後継者に引き継ぐ行為です。昨今、「事業承継」という言葉が身近なものになってきました。日本では近年経営者の高齢化に伴い、多くの企業で代替わりの時期を迎えています。経営者は、事業承継について熟知しておく必要があります。

そのような事業承継は、しばしば「不動産」と一緒に語られることも多いです。不動産と事業承継との関係は、主に2つあります。1つ目は、「不動産業界における事業承継」です。不動産業界において事業承継の問題が深刻化しています。

2つ目は、「不動産活用による事業承継対策」です。事業承継では多額の税金がかかります。不動産活用により、事業承継時に節税対策を施せます。この記事では、「不動産業界における事業承継のポイント」と「不動産活用による事業承継対策」の二部構成で、不動産と事業承継の関係について解説します。

不動産業界の事業承継

不動産業界の事業承継

まずはじめに、不動産業界の事業承継について解説します。

⑴不動産業界の現状

競争が激しくなってきている中、業務の効率性が悪い不動産業者は生き残ることが難しくなっています。従来不動産業は、中小企業が事業の主要な担い手でしたが、近年は大手不動産業者の勢力が増してきました。顧客が不動産業者に対して、包括的なサポートを要望するようになった背景があります。

今後もこの傾向が続いていくことが予想され、中小不動産業者が生き残ることはさらに困難になるでしょう。そうした背景から、M&Aによって大企業の傘下に入る中小不動産業者が増加しています。

また、中小不動産業者同士でのM&Aも活発化しており、不動産業界は事業承継問題が深刻化しています。多くの不動産会社では、後継者不足に悩んでおり、経営者の高齢化に伴い世代交代の時期を迎えているのです。M&Aによって第三者に事業承継するケースも珍しくありません。

もしくは、後継者はいるものの事業承継が進まない企業も多いです。不動産業界にとって、事業承継問題は早急に解決すべき課題です。

⑵不動産会社の事業承継で引き継ぐ資産

一般の会社と不動産会社とでは、事業承継で引き継ぐ資産が若干異なります。ここでは、不動産会社が事業承継で引き継ぐ資産を紹介します。

①有形資産

一般企業の場合、事業承継で引き継ぐものといえば自社株です。自社株を引き継ぐ際、相続税の節税が重要となります。事業承継税制、生命保険の活用により、相続税を抑えられます。株式会社として不動産業を営んでいる場合でも、自社株の承継も重要です。

しかし不動産会社の事業承継では、不動産の引き継ぎも重要となります。多数の不動産や土地を持っている場合、自社株以上に相続税の負担が重くなります。現金化できないにもかかわらず高額の税金がかかります。

そのため、事業承継向けの対策をしないと事業承継後の資金繰りが厳しくなり、その結果、不動産業の運営が困難になります。事業承継には、不動産特有の節税対策を実行する必要があり、不動産の節税対策の1つに、「評価額の見直し」があります。

②現金

不動産業者に限らず、事業承継では現金も引き継ぎます。現金は事業の運転資金として非常に重要です。運転資金は多いほど、事業承継後の経営が安定します。特に不動産業者の場合、多額の負債を抱えているケースが多くあります。負債返済に滞りがないように、運転資金は無駄使いしないようにしましょう。

⑶不動産の事業承継における無形資産

事業承継で引き継ぐのは、有形資産と現金だけではありません。「無形資産」も事業承継で引き継ぐ重要な資産です。一般企業の場合、ブランド力や特許・ノウハウ、独自の製品技術、販路・顧客リストなどが無形資産に該当します。

では、不動産業の事業承継で引き継ぐ無形資産とは、一体どのようなものがあるか以下でご紹介します。

①顧客サポート

近年は不動産に関する包括的なサポートの需要が高まっています。例えば設備故障時の迅速な対応、豊富な保険です。こうしたサポートシステムがそろっているほど、価値は高くなります。中小不動産業者が生き残るためには、「顧客サポート」を充実させるのが非常に重要です。

事業承継の際は、この部分を強化しましょう。そうすることで、後継者にとって引き継ぐ魅力のある会社となります。例えば管理に関連するサービスが挙げられます。設備が壊れたり故障したり、カギを紛失した際にすぐに駆けつけるなどのサービスです。

一般的にこうした場合、専門の管理会社に業務を依頼するケースが多くなります。こうした緊急事態に対処できるよう顧客サポートの体制を充実させることが、信用につながるわけです。

②自社独自の物件

有形資産に分類されるかもしれませんが、要するに「製品差別化」です。不動産業の場合、最も差別化すべきが「物件」です。ただし単に差別化すれば良いわけではなく、競争力を持った差別化が重要です。競争力のある自社独自の物件を持っているほど、事業承継後の運営は成功しやすいでしょう。

③物件の立地条件

独自性だけでなく、立地条件も重要です。条件としては、駅が近い、周辺の環境、眺望、日当たりなどがそれに当たります。どんなに豪華で独自性のある物件でも立地や日当たりが悪いと、顧客にとっての魅力は下がるでしょう。顧客を引き寄せるためには、立地条件の良い不動産であるのが大前提です。事業承継の際には、物件の立地条件についても確認しておきましょう

④担保力

担保力は、金融機関などから融資を受ける際に威力を発揮することでしょう。物的担保だけでなく、物件の収益力や会社経営の信用力によって、将来的にも有利な融資条件を引き出すことが可能になります。

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事業承継とは?方法や事業承継税制・補助金、M&Aでの活用について解説

不動産業界の事業承継におけるポイント

不動産業界の事業承継におけるポイント

ここでは、不動産業界の事業承継におけるポイントについて解説します。

⑴後継者教育

どのような業界でも大事なことですが、後継者教育には特に力を入れましょう。事業承継を成功へと導くためには、後継者教育を円滑に進めることが重要となります。経営者には、資質・能力が伴っていなければなりません。 

自社の不動産事業に関する専門知識、事業に関する実務経験などの教育が必要となってきます。また後継者として、経営に対する意欲や覚悟を持ってもらわなければなりません。不動産業界では、多額の現金が動きます。

それに加え、さまざまな利害関係者、顧客とのコミュニケーションが発生します。そのため、不動産業を営むのことは簡単ではありません。生半可な気持ちでは、事業承継後会社を持続できません。経営者は、後継者に対して高い教育を施す必要があります。

経理や総務を経験させ、運営状況を理解させることも大切かもしれません。また一緒に仕事をして、経営者としてのノウハウや決断力を伝えることも重要です。後継者教育には、早くとも10年程度かかります。後継者が決まった段階で、早期から教育を開始することが大切です。

⑵相続時のトラブル回避

事業承継の際、しばしば相続問題が発生します。特に不動産業の事業承継では、相続時にトラブルが発生しやすいです。なぜなら、財産の多くが後継者に集中しがちだからです。一定範囲内の相続人には、最低限の財産相続(遺留分)が保障されています。

事業承継によって財産を相続しても、遺留分減殺請求を行われる恐れがあります。そうしたリスクを回避するために、相続財産を「事業用資産」と「個人資産」に分けることが有効です。事業用資産を後継者に相続させ、個人資産を相続人に相続させることで、不公平感は軽減します。

上記以外にも、相続財産を公平に分配できる方法はあります。不動産業の事業承継では、円滑な事業承継を実現するためにも、相続の公平性確保に目を向ける必要があります。

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相続と事業承継

不動産を活用した事業承継対策

不動産を活用した事業承継対策

ここからは、不動産を活用した事業承継対策について解説します。不動産を活用することで、事業承継時に課される税金を抑えられます。

⑴不動産の購入

事業承継では、多額の資産を引き継ぎます。引き継ぐ資産の金額が大きいほど、課される相続税も大きくなります。相続税の負担が大きすぎて、事業承継後の事業運営が困難になるケースもあります。よって事業承継の際は、相続税をいかに安く抑えるかが重要です。

相続税は、「不動産の購入」によって抑えることが可能です。不動産を購入することで、その分保有する資産の額が減少します。中古物件になった時点で、価値が下がるからです。資産の減少に伴い、必然的に相続税の額も減少します。

また持株会社の場合、自社株の評価減による節税も期待できます。全資産に占める株式の割合が高い場合、その会社の株価は純資産価額法によって評価されます。その結果、自社株の価値は高くなります。自社株の価値が高ければ、事業承継時の相続税も高額になります。

そこで不動産を購入すれば、全資産に占める株式の割合が減少します(不動産の価値が高まるため)。それにより、株価を引き下げられる場合があります。結果として、事業承継の際に支払う相続税を抑えられます。

⑵不動産評価の見直し

事業承継の際、「不動産評価の見直し」によって相続税を抑えられるケースがあります。不動産の価値が下がれば、それに伴い相続税も減額されます。特に土地は高額なので、評価額の見直しによる効果が大きいです。土地の評価額が下がる要因には、主に下記があります。

  • 土地に高低差がある
  • 土地の形がいびつ
  • 土壌汚染が確認される
  • 騒音等により住環境が悪い
  • 私道にしか面していない
  • 土地が著しく広い(広大地)

上記以外にも、土地の評価額が下がる要因はさまざまあります。では、どの程度評価額を下げられるのでしょうか?例えば土地の形状がいびつな場合、最大40%評価額を下げられます。一方で広大地は、最大で65%程度評価額を減らせます。

上記の通り不動産評価の見直しは、事業承継の節税対策として効果的です。生命保険への加入にばかり目が行き、この対策は見落としがちです。土地を持っている場合、是非とも評価見直しの実行をおすすめします。

ただし土地などの評価には、専門的な知識が必要ですので、不動産鑑定士といった専門家に評価を依頼しましょう。

⑶設備投資

不動産とは厳密には異なりますが、設備投資も事業承継対策となります。将来を見越して新規で工場を建設したり、機械設備を購入すると、事業承継後の資金繰り対策になります。コンピュータや新しいシステムを導入したりするなど、積極的に設備投資を行うことも検討しましょう。

事業用設備を10万円以上購入する場合、資産扱いにできます。事業用資産は、毎年減価償却費として損金処理可能となります。その結果、純資産額を引き下げる効果が期待できます。事業承継のみならず、後々の事業運営にも効果を発揮する対策です。

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相続税評価額を用いた節税

不動産活用における事業承継のポイント

不動産活用における事業承継のポイント

最後に、不動産活用における事業承継のポイントについて解説します。前述の通り、不動産購入によって事業承継時の相続税を抑えられます。一方で、注意すべきポイントもあります。

⑴後々大幅な評価減になるリスクがある

不動産購入によって、事業承継対策は実行できます。ただし、購入した不動産の価値が下落する可能性があります。事業承継後に不動産売却を検討している方にとっては、大きなリスクとなります。本業に関係のある資産や、価格が下落しにくい不動産を購入するのがおすすめです。

⑵相続時に不利になる可能性がある

不動産の取得後3年以内に土地が高騰する場合、相続時に不利になるケースがあります。なぜなら土地高騰に伴い、その際に相続が発生した場合、借入金額より相続税評価額のほうが高くなる可能性があるからです。

結果、相続人の相続税の負担も増すからです。不動産を事業承継に活用する際には、購入するタイミングを十分に考慮しましょう。

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経営に求められる判断

不動産活用以外の事業承継対策

不動産活用以外の事業承継対策

不動産の購入・評価以外にも、事業承継ではさまざまな対策を実行できます。

⑴事業承継税制の活用

事業承継税制とは、非公開株式の取得時の納税が猶予される制度です。一定条件を満たすことで、相続税の納税が80%猶予されます。また、贈与税の場合には100%の猶予を受けられます。上記の通り、事業承継時の税負担を大幅に軽減できます。

事業承継税制は、平成30年度に改正されました。この改正により、事業承継をさらに円滑に実行しやすくなりました。相続税の納税猶予が、贈与税と同じく80%から100%になります。加えて、納税猶予の条件も緩和されます。

従来は、雇用の8割を維持し続けるのが条件の1つでした。しかし税制改正により、正当な理由があれば、維持できなくても納税猶予を受けられるようになりました。加えて税制改正後は、親族外承継でも事業承継税制を活用できるようになりました。

さらには、M&Aによる事業承継でも、税負担の軽減措置を受けられます。上記の通り、事業承継税制は効果的な対策手段となりました。不動産業を営む方は、事業承継税制の活用をおすすめします。

事業承継税制を活用して自社を引き継ぎたいとお考えの経営者様は、ぜひ一度M&A総合研究所へご相談ください。

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⑵生前贈与の活用

事業承継では、生前贈与の活用も非常に有効です。生前贈与とは、経営者が存命のときに財産を後継者に引き継ぐ行為です。あらかじめ財産を引き継ぐため、相続税の負担を減らせます。一方で、後継者側に贈与税が発生します。累進税率により、多額の贈与税が課される恐れもあります。

しかし、年間110万円以下の株式贈与を繰り返すことで、贈与税の課税を免れます。110万円以下の贈与では、贈与税が課税されないからです。また、非課税贈与を継続すれば、税負担を軽減したうえで事業承継を実行できますが、110万円ずつでは、事業承継の完了までに長い時間を要します。

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事業承継税制とは?事業承継税制の要件やメリット・デメリットを解説

まとめ

まとめ

今回は、不動産と事業承継の関係性についてご紹介しました。前半は、「不動産業界の事業承継とポイント」を解説しました。

不動産業界では、ニーズの多様化により中小業者の生き残りが困難になっています。加えて、後継者の不足に悩む中小企業も増加しています。不動産業界では事業承継に対するニーズが高まっているのです。

不動産業の事業承継を成功させるためには、不動産の取り扱いに注意する必要があります。また、節税対策にも気をつけないといけません。後半は、「不動産活用による事業承継対策」を解説しました。

不動産の購入や再評価により、事業承継で発生する税負担を軽減できます。ただし、後々評価減のリスクなどが生じる恐れがあるため、事業承継の際は、不動産活用に頼り過ぎないようにしましょう。必要に応じて、事業承継税制や生前贈与などを活用することもおすすめです。

不動産業界に限らず、経営者にとって事業承継は重大なイベントです。よって、早期の段階から入念な対策を実行する必要があります。

要点をまとめると下記になります。

【不動産業界の現状】

  • ニーズの変化や世代交代により、事業承継の重要性が高まっている

【不動産業で引き継ぐ資産】

  • 不動産や運転資金、各種の無形資産

【不動産業界の事業承継におけるポイント】

  • 後継者教育、相続時のトラブル回避

【不動産を活用した事業承継対策】

  • 不動産購入、評価額の見直し、設備投資

【不動産活用における事業承継のポイント】

  • 後々大幅な評価減になるリスクがある、相続時に不利になる可能性がある

【不動産活用以外の事業承継対策】

  • 事業承継税制の活用、生前贈与の活用

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