2024年1月19日公開事業承継

管工事会社の事業承継の動向や事例を徹底解説!メリットや費用相場・注意点は?

管工事会社業界は将来的な需要増加が見込める半面、人材不足や後継者不在といった問題が深刻です。当記事では、過去の事例を取り上げながら、管工事会社(管工事業界)の事業承継について解説します。事業承継で得られるメリットや成功させるポイント・注意点も押さえましょう。

目次
  1. 管工事会社(管工事業界)の現状と事業承継の動向
  2. 管工事会社の事業承継を行うメリットとデメリット
  3. 管工事会社の事業承継(M&A)の成功事例
  4. 管工事会社の事業承継を行う基本的な手続き方法と流れ
  5. 管工事会社の事業承継を行うべきタイミング
  6. 管工事会社の事業承継の費用と価格相場
  7. 管工事会社の事業承継をする上での注意点
  8. 管工事会社の事業承継を成功させるポイント
  9. 管工事会社の事業承継はM&A専門家の助けを得て成功させよう
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管工事会社(管工事業界)の現状と事業承継の動向

最初に、管工事会社(管工事業界)の基本的な知識をチェックしましょう。管工事会社(管工事業界)の主な業務内容と特徴、市場規模を押さえた上で、業界の各社で見られる事業承継・M&Aの動向を解説します。管工事会社(管工事業界)では、どのような目的で売却・買収が繰り広げられているのでしょうか。

管工事会社(管工事業界)とは

管工事会社(管工事業界)は、空調や給排水、ガスや冷暖房機器に必要な配管工事・施工・管理といった業務を手掛ける業界です。水や空気、ガスや油などの物質を通すために使われる設備の工事を請け負います。

管工事の部分をゼネコンから発注を受けて請け負う「下請け」と、計画立案から施工まで自社で手掛ける「自己建設」という2種類の業態が存在する点が管工事業界の特徴です。幅広い設備を請け負えるように、建設に関するさまざまな許認可を取得している会社も存在します。

管工事会社(管工事業界)の市場規模

国土交通省によると、管工事業界の工事種類別受注高は、2023年9月では1,864億円で、2022年9月よりも2.9%減少が見られます。このうち、民間からの受注は0.7%増え、一方官公庁からの受注は47.9%減少しています。(国土交通省「令和5年9月分(速報)設備工事業に係る受注高調査結果(各工事主要20社)」

管工事会社(管工事業界)の事業承継の動向

管工事会社(管工事業界)では、主に以下のような事業承継の動向が見られます。

  • 経営者高齢化による後継者不足を解決するための事業承継が増加
  • 大手企業がM&Aを活用して配管工事ノウハウを獲得する
  • リニューアル事業の需要増加に伴い管工事業界も注目されている

管工事会社では、職人の高齢化が深刻です。そのままの状態では廃業リスクが高まるため、事業承継で別会社に事業を引き継ぐケースが見られるようになりました。

また、老朽化した建物や設備のリフォーム需要が高まる中、関連業種である管工事業界は建設業界から注目を集めています。大手建設会社が管工事の内製化を目指し、ノウハウを獲得するためにM&Aを活用するケースが見られる点が特徴です。

【関連】管工事業界のM&A動向!会社売却のメリットや流れと事例7選を徹底解説【2023年最新】

管工事会社の事業承継を行うメリットとデメリット

管工事会社(管工事業界)で事業承継を実施する際に当事者企業が得られるメリットと、同時に想定されるデメリットを解説します。事業承継に成功すれば、確かに多くの恩恵を受けられますが、一定のリスクにも配慮しなければなりません。売却側・買収側それぞれの立場でメリット・デメリットを確認しましょう。

売却側

まず、売却側の視点からメリットとデメリットを解説します。管工事会社(管工事業界)の事業承継で売却を実施する際、どのような点で恩恵が受けられ、一方どのような点に留意すべきなのでしょうか。両方をバランスよく確認してから、事業承継手続きに入りましょう。

メリット

管工事会社(管工事業界)で事業承継を実施する際、売却側企業が得られるメリットには、主に以下のような項目が挙げられます。

  • 経営者が会社や事業の売却益を獲得できる
  • 廃業を避け事業を存続できる
  • 自社従業員の雇用を継続させられる
  • 経営者高齢化による後継者不在の問題を解決できる
  • 大手のグループ企業になれば経営状況を改善できる

M&Aによる事業承継に成功すれば、国内の多くの企業で深刻化する後継者不足や人材不足の課題を解決できます。廃業を避けられる上、売却先企業で事業を継続させられる点が大きなメリットです。将来の経営難が心配される場合、大手の傘下企業になることで、安定した経営のもとで事業展開できるでしょう。

デメリット

一方、管工事会社(管工事業界)で事業承継を実施する際売却側に対して想定されるデメリットは、次の通りです。

  • 自社従業員が売却を不安視し退職するおそれがある
  • 取引先との関係悪化により契約が打ち切られる可能性がある
  • 相手企業とのマッチングに苦戦する場合がある
  • 経営者の会社経営に対する影響力が縮小する
  • 理想の条件が全て通るとは限らない

事業承継を進める中で、売却の誤った情報を耳にした従業員が、今後の処遇に不安を感じて退職するおそれがあります。企業価値が下がり交渉が決裂する可能性もあるので、情報管理を最後まで徹底しなければなりません。また、相手企業がすぐに見つかるとは限らないので、余裕を持った手続きをおすすめします。

買収側

では次に、買収側の視点から事業承継で得られるメリットと留意すべきデメリットとなる点をチェックしましょう。一般的に事業承継で想定されるデメリットは、多くの場合事前に入念な対処を講じることでリスクを軽減させられます。

メリット

管工事会社(管工事業界)で事業承継を実施する際、買収側企業が得られるメリットには、主に次のような点が挙げられます。

  • 売却側の人材を獲得できる
  • 売却側との協業によりシナジー効果が生まれ事業拡大が期待できる
  • コストやリスクを抑えながら新しい事業に参入できる
  • 売却側の拠点を活用し事業展開エリアを拡げられる
  • 売却側の事業ノウハウを獲得できる

買収の大きなメリットは、売却側の経営資源や人材を有効活用できるという点です。特定事業に参入する場合、設備投資や人材採用・教育研修に多額の費用を投じなければなりません。事業承継なら、コストや労力を抑えられるため、効率的に事業を軌道に乗せられます。シナジー効果で事業拡大も目指せるでしょう。

デメリット

一方、管工事会社(管工事業界)で事業承継を実施する際買収側企業が考慮すべきデメリットとなる点は、以下の通りです。

  • 売却側とのシナジー効果がなかなか得られない場合もある
  • 売却側の従業員が処遇に不満を抱くおそれがある
  • 売却側の簿外債務が見つかる可能性がある
  • 買収にかかる資金を調達しなければならない
  • 売却側の企業価値が下がりのれん代を回収できない場合がある

メリットで挙げたシナジー効果は、必ずしも得られるとは限りません。また、買収先従業員との人間関係構築に苦戦する可能性もあるでしょう。また、簿外債務発覚で買収資金を回収できなくなるおそれもあります。このように一定のリスクを想定しながら、買収手続きを進める必要があるでしょう。

【関連】M&Aのメリット・デメリットとは?買い手・売り手ごとのメリット・M&A戦略策定・手法別の効果を紹介

管工事会社の事業承継(M&A)の成功事例

ここで、管工事会社(管工事業界)で過去に執り行われた事業承継(M&A)による成功事例を紹介します。当記事で取り上げるのは、以下の6事例です。当事者各社はどのような目的・狙いから売却・買収を実施したのでしょうか。活用したスキーム(手法)や実施目的を中心に、それぞれ取引概要を確認しましょう。

  • コムシスホールディングスと朝日設備工業のM&A
  • 中電工と杉山管工設備のM&A
  • 四電工と菱栄設備工業のM&A
  • イシイ設備工業と東海管工のM&A
  • 協和日成と静岡ガスリビングのM&A
  • OCHIホールディングスと太陽産業のM&A

コムシスホールディングスと朝日設備工業のM&A

情報通信工事や電気通信設備工事を手掛ける会社が、管工事会社を株式交換で完全子会社化した事例です。市場で見られる競争激化や顧客獲得競争に対応するには、生産性の高い施工体制や経営基盤の強化が必要と判断し、今回の買収で経営資源のシナジー効果を得ることを目的に買収を実施しました。

売却側企業(株式交換完全子会社) 朝日設備工業
(管工事、水道施設工事、機械器具設置工事)
買収側企業(株式交換完全親会社) コムシスホールディングス
(情報通信工事事業、電気通信設備工事業、情報処理関連事業)
M&Aのスキーム(手法) 株式交換
M&Aの実施目的 ・東海を中心とする地域や事業分野等の強み活用
・広範囲な事業展開と経営資源の連携によるシナジー効果の最大化
・グループにおける成長戦略推進
・企業価値の一層の向上
実施時期 2020年8月

簡易株式交換による朝日設備工業株式会社の完全子会社化に関するお知らせ

中電工と杉山管工設備のM&A

空調管工事を手掛ける会社間で実施されたM&A事例です。買収側は、売却側が保有する優秀な人材と協力会社、優良顧客を獲得することで、グループ会社として首都圏における空調管工事の拡大を目指せると期待しました。当事例で活用されたM&Aスキームは、株式譲渡です。なお取引価格は公表されていません。

売却側企業 杉山管工設備
(空調管工事、冷暖房設備工事、給排水・衛生工事、産業配管プラント工事、防災設備工事)
買収側企業 中電工
(空調管工事)
M&Aのスキーム(手法) 株式譲渡
M&Aの実施目的 ・優秀な人材と協力会社の確保
・売却側が保有する優良顧客の獲得
・首都圏における電気工事や空調管工事の拡大
実施時期 2016年8月
取引価格 非開示

杉山管工設備株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

四電工と菱栄設備工業のM&A


電気設備工事を手掛ける企業が、管工事会社を株式譲渡で買収したM&A事例です。売却側と買収側の工事領域を掛け合わせることで、より一体となったサービスの提供と、首都圏での収益基盤強化を期待できるとしました。

売却側企業 菱栄設備工業
(管工事、給排水・衛生設備工事、空調設備工事)
買収側企業 四電工
(電気設備工事業)
M&Aのスキーム(手法) 株式譲渡
M&Aの実施目的 ・電気と空調・管工事を合わせた一体的なサービス提供の実現
・首都圏における収益基盤の強化
・協業による売上・利益の拡大・収益力強化・効率化
実施時期 2018年10月
取引価格 非開示

菱栄設備工業株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

イシイ設備工業と東海管工のM&A

管工事を手掛ける2社によるM&A事例です。売却側はかねてより経営体質の強化に向けて取り組んでおり、買収側のグループ会社になることで、その目的を達成できると判断しました。買収側もM&Aを活用し、更なるユーザーニーズに応えるとしています。

売却側企業 東海管工
(管工事、空調・冷暖房、給排水・衛生設備工事)
買収側企業 イシイ設備工業
(管工事、空気調和・冷暖房設備・給排水・衛生・換気設備工事、
省エネ・リニューアル工事)
M&Aのスキーム(手法) 株式譲渡
M&Aの実施目的 ・更なるユーザーニーズ対応
・更なる事業の発展
実施時期 2020年12月
取引価格 非開示

株式会社イシイ設備工業のグループ会社になりました

協和日成と静岡ガスリビングのM&A

こちらは吸収分割が実施された事例です。ハウジング事業やライフサポート事業など多岐にわたる事業を手掛ける会社に対し、売却側が保有するエネリア事業(機器販売事業)を吸収させる形でM&Aが実施されました。

売却側企業(分割会社) 協和日成
(管工事、ガス設備事業、建築設備事業、電設土木事業)
買収側企業(承継会社) 静岡ガスリビング
(ハウジング事業、ビジネスサポート事業、ライフサポート事業、
工事保安事業、エネリア事業等)
M&Aのスキーム(手法) 吸収分割
※分割対象事業は、売却側のエネリア事業(機器販売事業)
M&Aの実施目的 ・買収側におけるエリア営業体制の再構築実現
・工事会社としての機能強化の推進
・安定した収益確保
実施時期 2018年9月
取引価格 非開示

会社分割(簡易吸収分割)の基本合意書締結に関するお知らせ

OCHIホールディングスと太陽産業のM&A

建材や住宅設備機器の卸売会社が空調機器の販売会社を買収したM&A事例です。買収側は、売却側の事業ノウハウを獲得することで事業ポートフォリオの拡大と東日本エリアでの事業強化が見込めるとして、M&Aを実施しました。

売却側企業 太陽産業
(冷凍冷蔵・空調・厨房機器の販売・設置工事)
買収側企業 OCHIホールディングス
(建材・住宅設備機器の卸売事業、
生活事業・加工事業)
M&Aのスキーム(手法) 株式譲渡
M&Aの実施目的 ・事業ポートフォリオの拡大
・東日本地区における事業展開の強化
・持続的成長の実現
実施時期 2018年8月
取引価格 約18億円

太陽産業株式会社の株式取得に関するお知らせ

管工事会社の事業承継を行う基本的な手続き方法と流れ

上記では、管工事会社(管工事業界)で実施された事業承継の成功事例を紹介しましたが、実際に事業承継を実施するとなると当事者企業はどのような手順で手続きを進めていけば良いのでしょうか。ここでは、管工事会社(管工事業界)における事業承継の基本的な手続きの流れを9つのステップに分けて解説します。

  1. 事業承継(M&A)の検討・専門家への相談
  2. 事業承継(M&A)売却価格・条件・課題などを検討
  3. 交渉相手を選ぶ
  4. 秘密保持契約の締結
  5. 相手企業との交渉開始
  6. 基礎情報開示
  7. デューデリジェンス実施
  8. 最終契約締結
  9. クロージング

①事業承継(M&A)の検討・専門家への相談

まず、事業承継(M&A)の検討を実施します。自社状況の把握と課題点を明確にした上で仲介会社や専門家に相談し、事業承継をすべきか判断しましょう。事業承継を実施することで課題解決や一定の効果が見込める場合に、具体的な手続きに進みます。効果が期待できない場合、無理に手続きを進めるのは危険です。

②事業承継(M&A)売却価格・条件・課題などを検討

事業承継(M&A)を実施するべきと判断した場合は、M&A仲介会社のサポートを活用しながら売却価格や希望取引条件などの検討に入ります。会社名が特定されない匿名の状態で、事業展開エリアや事業内容・売却価格・条件を記載した「ノンネームシート」と呼ばれる書類を作成・提出するのが一般的です。

③交渉相手を選ぶ

次は、相手企業の選定(マッチング)プロセスです。買収側企業は、公開されたノンネームシートを活用しながら事業を譲り受ける相手企業を絞り込みます。効果が見込めると判断できた企業があればマッチングは成功ですが、市場動向や業界需要の状況によっては時間を要する場合もあるので注意してください。

④秘密保持契約の締結

相手企業が見つかったら、条件交渉に入る前に秘密保持契約書(Non Disclosure Agreement)を締結しましょう。交渉中に情報漏洩があると、当事者企業は従業員の退職や取引先との関係悪化など不利益を被り交渉が失敗する可能性があります。リスク軽減のためにも、取り交わすことを強くおすすめします。

⑤相手企業との交渉開始

秘密保持契約書を締結したら、事業承継・M&Aの具体的な条件交渉に進みます。売却側も買収側も有益だと思える取引内容にまとめ上げることが重要です。売却側企業の場合は、売却後に自社従業員の待遇が悪化することが無いよう、待遇確保に努めましょう。不安要素をよく確認しておくことをおすすめします。

⑥基礎情報開示

ノンネームシートを介して企業選定を行っていた場合、インフォーメーションメモランダム(IM)と呼ばれる資料を活用して情報が開示されます。インフォメーションメモランダムには、会社名や所在地、企業概要のほか、財務情報や税務情報など、より具体的な情報が記載されているのが特徴です。

⑦デューデリジェンス実施

事業承継(M&A)の具体的な取引条件がまとまったら双方で基本合意書を締結し、買収側によるデューデリジェンスが実施されます。デューデリジェンスは、売却側の財務や税務状況、リスク・負債などあらゆる項目を調査し、開示された情報に虚偽が無いかをチェックするために実施される実態把握プロセスです。

⑧最終契約締結

次に、基本合意書の記載内容とデューデリジェンスの実施結果をもとに細かい条件を再調整します。最終的な取引条件がまとまったら、当事者間で最終契約書を締結しましょう。最終契約書は締結すると、法的拘束力が発生する書類です。トラブルを最小限に抑えるために、契約前に条件を入念に確認してください。

⑨クロージング

最終契約書に記載されたスケジュール・内容に従い、売却側は株式の譲渡や事業の引き継ぎ、買収側は対価の支払いを実施します。事業承継手続きの中で、最終段階に位置するこのプロセスがクロージングです。クロージングの際の具体的な取引内容は、採用した手法や最終契約書の条件によってさまざまです。

【関連】株式譲渡の手続きの流れ!手順・必要書類・注意点も徹底解説

管工事会社の事業承継を行うべきタイミング

事業承継は、一般的に会社が抱える課題の解決を目指す際に用いられることが多い対処方法ですが、実際に行うとなるとどのタイミングで手続きを始めれば良いのか気になるというのが経営者の本音です。ここでは、管工事会社(管工事業界)で事業承継やM&Aを開始するべきタイミングを3パターン解説します。

  • 業界内の競争環境が変わったとき
  • 会社の経営状態の良いとき
  • 経営者が元気で引き継ぎの準備ができるとき

業界内の競争環境が変わったとき

1つ目のタイミングは、業界内の競争環境が変化したときです。管工事会社(管工事業界)の市場動向や競合他社の状況を常に注視しましょう。例えば、自社における市場占有率が高い状態なら一般的に企業価値が高くなるので、より理想に近い価格で事業承継(M&A)を実施できます。

会社の経営状態の良いとき

2つ目は、自社の経営状態が良いときです。経営が好調な企業は、一般的に企業価値を高く評価されます。逆に経営が悪化してから事業承継やM&Aの手続きに入っても、なかなか相手企業が見つからない可能性があるでしょう。業績が良い時ほど将来に向けて事業承継の計画を立てておくことをおすすめします。

経営者が元気で引き継ぎの準備ができるとき

3つ目のタイミングは、経営者が元気なときです。経営者が健在なうちに引き継ぎ準備を済ませておけば、相続トラブルを回避できます。本人の意思もスムーズに反映させられるので、早めに後継者や事業承継の話をしておくと良いでしょう。高齢になってから急いで手続きを行うのはリスクが高くおすすめできません。

【関連】事業承継のタイミングはいつが最適?計画をはじめる3つのタイミングを紹介

管工事会社の事業承継の費用と価格相場

事業承継による売却を実施する際の取引額相場ですが、管工事業界内には一概に言える共通相場がありません。会社や事業の規模、将来性や収益性など当事者ごとに企業価値を評価する必要があるためです。ここでは、事業承継の価格相場を算出する際に用いられることが多い3つの評価アプローチを紹介します。

  • コストアプローチ
  • インカムアプローチ
  • マーケットアプローチ

コストアプローチ

1つ目は、コストアプローチです。これは、企業の純資産における時価評価額等を基準に価値を算出する評価方法です。中小企業で用いられるケースが多く、別名でストックアプローチとも呼ばれます。客観性のある価値を算出できる点が魅力です。一方、将来の価値を反映できないというデメリットもあります。

インカムアプローチ

2つ目は、インカムアプローチです。これは、当事者企業の将来におけるキャッシュフロー(利益予想)を基準に価値を算出する評価方法です。企業の将来性に焦点を当てるため、現実的な価値を算出できる点が魅力です。一方、客観性が薄く、必ずしも正確な数値を出せるとは限らないというデメリットもあります。

マーケットアプローチ

3つ目は、マーケットアプローチです。これは、当事者と同じ市場で実施された類似の取引事例を基準に価値を算出する評価方法です。算出が比較的簡単で、客観性のある価値を算出できる点がメリットです。一方、市場に影響されやすく、業界が冷え込んでいる際は価値が下落しやすいというデメリットもあります。

【関連】M&Aにおける企業価値評価とは?手法ごとに算定方法をわかりやすく解説

管工事会社の事業承継をする上での注意点

ここでは、管工事会社(管工事業界)で事業承継を実施する際に当事者が気を付けたいポイントを紹介します。事業承継に成功すれば多くのメリットを獲得できますが、見込んだ効果を得るためには事前の準備やリスク軽減など対策が必要です。以下、6つの点に注意しながら事業承継手続きを進めましょう。

  • 受注の計画に配慮しながら前もって準備を始める
  • 透明性のある経営に努力し魅力的な会社作りを行う
  • タイミングを逃さない
  • 情報の漏えいに注意する
  • 従業員や職人の離脱・モチベーションの低下に注意する
  • M&Aの専門家に相談する

受注の計画に配慮しながら前もって準備を始める

1つ目の注意点は、受注計画に配慮することです。管工事の受注を請け負っている最中に突然事業承継を実施すると、業務に支障をきたすおそれがあります。現在受注がある場合は業務に配慮しながら事業承継計画を立ててください。先ほど記載しました通り、できるだけ早い段階から準備を進めることが理想です。

透明性のある経営に努力し魅力的な会社作りを行う

2つ目は、魅力的な会社作りを心掛けることです。企業価値を高めたいからといって虚偽情報を提示したり粉飾決算を行ったりしないようにしてください。企業価値を高めるためには、透明性のある経営と労働環境整備が欠かせません。経営者は労力がかかるかもしれませんが、有益なM&Aを目指すためには必要です。

タイミングを逃さない

3つ目は、タイミングを逃さないことです。理想に近い価格で事業承継やM&Aを実施するには、企業価値が高い状況で売却する必要があります。経営者が健在で経営が比較的安定しており、管工事業界の需要も高まったタイミングですぐ売却できるように準備を済ませておくことが重要なポイントです。

情報の漏えいに注意する

4つ目は、情報が流出しないように注意することです。事業承継の交渉中に誤った情報が流れると、従業員の退職や取引先との関係悪化による契約打ち切りといったトラブルが発生します。最悪の場合、事業承継やM&Aの話が破談に終わる可能性があるので、当事者は特に注意が必要です。

従業員の退職や取引先の減少があると、企業価値の下落は避けられません。このようなリスクを最小限に抑えるためにも、当事者間で交渉を実施する際は、事前に秘密保持契約書を取り交わしましょう。

従業員や職人の離脱・モチベーションの低下に注意する

5つ目は、従業員や職人の離脱やモチベーション低下が起こらないように注意することです。情報管理を徹底していても、情報公開を行った時点で全従業員が納得するとは限りません。売却後の処遇への不安から、離職を考える方も出てきます。不安を解消するためには、交渉段階で待遇を確保しておくことが重要です。

取引前に従業員や職人が去ってしまうと、事業承継が失敗する可能性が高まります。人材は企業価値を決める重要な要素であるからです。売却後に会社が不利益を被ることが無いよう、配慮が求められます。従業員や職人に対して丁寧に説明し、事業承継やM&Aが有益なものであることを理解してもらいましょう。

M&Aの専門家に相談する

6つ目は、M&Aに詳しい専門家に相談することです。事業承継やM&Aは、手続きに税務や法務に関する専門知識が求められます。その上、相手企業の選定まで行わなければなりません。多大な労力がかかるので、当事者個人の力だけで進めるのはおすすめできません。M&A仲介会社など専門家のサポートを得ましょう。

【関連】M&Aの注意点(売り手編)

管工事会社の事業承継を成功させるポイント

管工事会社(管工事業界)で事業承継を成功させるために押さえたいポイントを紹介します。事業承継の手続きには税務や法務に対処できる専門知識が必要です。個人の力で進めると多くの労力がかかるため、専門家に相談しサポートを得ながら進めることをおすすめします。以下3つの相談先を押さえましょう。

  • ポイント①:金融機関に相談する
  • ポイント②:公的支援機関に相談する
  • ポイント③:M&Aの経験と知識が豊富なM&A仲介会社に相談する

金融機関に相談する

銀行などの金融機関では、事業承継やM&Aに関する相談を受け付けるケースが多くあります。普段から金融取引のある地方銀行なら、自社の経営状況に寄り添ったアドバイスが得られるでしょう。M&Aの専門知識を持った行員が在籍する銀行は多く存在します。金融機関なので、情報流出リスクが少ない点も魅力です。

公的支援機関に相談する

事業承継やM&Aの相談を受け付ける公的支援機関の利用もおすすめします。国や公共団体によって設置・運営されているため、さまざまな支援サービスを無料で受けられる点が魅力です。事業承継の支援が受けられる公的支援機関には、主に以下のような窓口があります。最寄りの機関を活用してみてください。

  • よろず支援拠点
  • 事業承継・引継ぎ支援センター
  • 商工会議所
  • 信用保証協会

M&Aの経験と知識が豊富なM&A仲介会社に相談する

事業承継やM&Aの手続きに関する全般的なサポートを受ける場合は、M&A仲介会社の利用をおすすめします。各種手続きに加え、M&A手法の策定や相手企業の選定までさまざまなアドバイスを受けられる点が魅力です。依頼の際は、仲介手数料など料金体系を確認してからアドバイザリー契約を取り交わしましょう。

【関連】会社売却の成功・失敗ポイントとは?手順や注意点を事例付きで徹底解説

管工事会社の事業承継はM&A専門家の助けを得て成功させよう

管工事会社(管工事業界)では、リニューアルやリフォーム工事の需要が増えたことから、将来的に需要が伸びる業界と予想されます。ただ、多くの企業で後継者不在や職人の高齢化による人材不足といった課題が深刻です。事業承継やM&Aを活用すれば、廃業を避けられる上、売却先で事業拡大も狙えます。

ただ事業承継やM&Aは、手続きに高度な専門知識が求められる上、多くの労力がかかるものです。より多くの効果が得られる有益な事業承継に繋げるためにも当事者個人の力だけで進めようとはせず、M&A仲介会社など専門家に相談することをおすすめします。

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M&Aを実施する際に人事デューデリジェンス(人事DD)は重要です。丁寧に手続きを進めないとM&Aで高い効果は得られません。今回はM&Aを検討している企業に向けて、人事デュ...

二段階買収の手続き方法を徹底チェック!目的やメリット・注意点は?

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二段階買収(Two-Tier Takeover Strategy)は、買収側が売却側の少数株主から株式を買い集める際に有益な手法です。当記事では、実施目的や手法、メリットやデメリット、過去事例や...

事業承継の相談先はどこがいい?選び方から注意点まで徹底チェック!

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近年は中小企業の経営者の高齢化に伴い、積極的に事業承継を行って生き残りを図る企業が増えています。 事業承継には複雑な手続きが多いため、信頼できる相談先の選択が重要です。そこで本記事では事業...

M&A後の退職金や給与はどうなる?節税方法や注意点まで徹底チェック!

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M&Aで退職金を活用すると、節税効果が得られます。当記事では、退職金を利用したM&Aの節税方法やメリット、注意点を交えながら、退職金の扱い方や税務について解説します。従業員や役員...

M&Aにおける人事DDの目的や調査範囲を徹底チェック!費用・注意点は?

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人事DD(デューデリジェンス)は、買収側がM&Aの実施後に受ける損失を最小限に抑えるために必要な調査です。当記事では、調査が行われる目的や調査範囲、かかる費用や注意点を踏まえながら、人事...

100日プランとは?PMIの概要・重要性・策定のポイントまで徹底解説!

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M&Aを実施する際にはPMIの工程が重要となり、100日プランはPMIの成功に大きな役割を果たします。今回はM&Aを検討している企業に向けて、100日プランの概要・重要性・策定の...

管工事会社の事業承継の動向や事例を徹底解説!メリットや費用相場・注意点は?

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管工事会社業界は将来的な需要増加が見込める半面、人材不足や後継者不在といった問題が深刻です。当記事では、過去の事例を取り上げながら、管工事会社(管工事業界)の事業承継について解説します。事業承継...

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