M&Aとは?手法ごとの特徴、目的・メリット、手続きの方法・流れも解説【図解】
2021年4月25日更新事業承継
事業承継で消費税は課税されるのか
個人事業主の事業承継の際に気になるポイントの1つとして「消費税がいくらかかるのか」が挙げられます。実際に、事業を引き継ぐ後継者にとって、税金の支払いは今後の経営にも影響を及ぼす厄介な存在です。今回は、事業承継での消費税について詳しく解説していきます。
個人事業主の事業承継における消費税について
個人事業主が事業承継を検討する際、「消費税がどうなるのか」は非常に気になるポイントではないでしょうか?実際に、個人事業主の事業承継で重要になるのが「税金の支払い」です。
特に業績の悪い事業を引き継ぐ後継者にとっての税金の支払いは、大変負担になるでしょう。
しかし、納税義務がありながら支払いを怠ってしまうと、経営権自体を失う恐れもあるので気をつけなければなりません。今回は、個人事業主の事業承継の中でも重要である消費税について解説します。
消費税とは
消費税とは、商品や製品の販売、サービスの取引にかかる税金のことで、消費者が負担して、事業者が納める仕組みになっています。
消費税は、ビジネスの場面ではもちろん、一般消費者の生活でも重要な税金です。2020年5月現在では、商品やサービスの金額の内10%が消費税となっています。つまり、100,000円の商品を買えば10,000円の消費税がかかることになるので、決して少ない金額とは言えません。
また、消費税は、コンビニで飲み物を購入した際や、旅行先のホテルに泊まった際など、物やサービスを得る際の税金です。従って、ビジネスの場面でも消費税を支払う必要があり、個人事業主の事業承継の場面で必要となるケースがあります。
ただし、すべての事業承継で消費税が必要であるわけではないので、注意しておかなければなりません。事業承継を行う前に、消費税がかかるパターンと、消費税がかからないパターンを押さえておけば、いざというときにも安心できます。
ここからは、事業承継のパターンごとに、消費税の課税有無を紹介していきます。
事業承継のパターン
事業承継は「誰から誰へ行うのか」「どのような方法で実施するか」という2つの観点からパターン分けができます。
事業承継のパターンは、全部で以下の6通りがあります。
- 個人から個人へ売買:①
- 個人から法人へ売買:②
- 個人から個人へ譲渡:③
- 個人から法人へ譲渡:④
- 個人から個人へ相続:⑤
- 個人から法人へ相続:⑥
誰から誰へ行うのか
「誰から誰へ行うのか」という観点から見ると、「個人から個人」と「個人から法人」の2つのパターンがあります。
「個人から個人」のパターンでは、基本的に経営者が会社や飲食店などの店舗を経営しており、その経営権を子息や子女に引き渡すケースが考えられます。
一方、「個人から法人」へと事業承継するケースは、個人で事業運営している経営者から、法人経営している経営者に自社を譲渡する方法です。
どのような方法で実施するか
また「どのような方法で実施するか」という観点から見ると、「売買」「譲渡」「相続」の3種類があります。「売買」とは、会社を相手に引き渡して、対価を受け取る方法です。一方、「譲渡」とは対価を受け取らずに事業承継する方法を指します。
さらに、「相続」とは経営者が亡くなった後に後継者が引き継ぐ形の事業承継です。このように、ひと口に事業承継と言っても様々なパターンがあります。
次に押さえるべきことは、各事業承継のパターンごとに、支払う税金が異なるということです。つまり、各方法に応じて、事業承継に対する消費税の発生有無が変わってきます。
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売買で行う事業承継と税金
売買による事業承継とは、経営者から後継者に対して会社を売却するケースのことです。会社の引き渡しに対して、ふさわしい対価を支払う必要があります。先述したように、事業承継のパターンは以下の6通りに分類できます。
- 個人から個人へ売買:①
- 個人から法人へ売買:②
- 個人から個人へ譲渡:③
- 個人から法人へ譲渡:④
- 個人から個人へ相続:⑤
- 個人から法人へ相続:⑥
この番号で解説すると、①と②が売買で行う事業承継に該当することになります。売買で事業承継を実施する際には、対価を支払った後継者と、会社を売却した側の双方が税金を支払う必要があるため、注意が必要です。
個人から個人へ売買する場合:①
個人から個人へ事業承継を実施する場合、売却側が支払うのは「所得税」と「消費税」です。
個人から個人へ事業承継を実施する場合、会社を売却して得られた対価のほとんどは現金となるでしょう。まれに現物での支給もありますが、多くのケースで金銭でのやり取りとなります。その際、売却側が受け取った現金は所得として扱われることになるため、売却側は「所得税」と「消費税」を支払う必要が出てくるのです。
一方、買い手側(後継者)となる側は、「贈与税」を支払う必要があります。しかし、贈与税に関しては、金額にとって特例のケースのみ必要となるので、すべてのケースでは必要ありません。また、登録免許税を支払う場合があったり、不動産を同時に取得する場合には、「所得税」と「消費税」も必要になります。
このように、さまざまなパターンで支払う税金が異なってきます。売買による事業承継を個人から個人で行う場合は、専門家に相談したうえで手続きを進めることをおすすめします。
個人から法人へ売買する場合:②
個人から法人に事業承継を実施する際にも、売却側は所得税と消費税を支払います。しかし、①の「個人から個人へ売買」の場合とは、後継者が支払う税金が異なるため、注意が必要です。
個人から法人に売却するケースでは、価値のあるものを取得したという扱いになるため、買い手側(後継者)は法人税を支払うことになります。
贈与で行う事業承継と税金
贈与による事業承継には、以下③と④が該当します。
- 個人から個人へ売買:①
- 個人から法人へ売買:②
- 個人から個人へ譲渡:③
- 個人から法人へ譲渡:④
- 個人から個人へ相続:⑤
- 個人から法人へ相続:⑥
事業承継では、譲受側(後継者)は資産である会社を得るので、税金の支払い義務が生まれます。基本的には、売買による事業承継と必要な税金は変わりません。対価を支払っているかどうかの違いであり、「財産を手に入れる」という行為に変わりはないからです。
一方で、譲渡側は、対価を受け取らずに会社を譲渡します。そのため、売買とは大きく異なってきます。対価としての金銭が手に入らないということは、基本的に譲渡側は税金を支払う必要がありません。
みなし譲渡所得とは
④の「個人から法人への譲渡」に限っては、「みなし譲渡所得」が発生する可能性があります。みなし譲渡所得となった場合は、「みなし譲渡所得課税」がかかってしまうので注意が必要です。みなし譲渡所得課税は、個人が法人に無償譲渡するケースや低廉譲渡するケースで考えておかなければなりません。
みなし譲渡所得課税については、所得税法第59条第1項、所得税法施行令第169条で定められています。その内容は、個人から法人に対する譲渡や贈与で、著しく低い価額(時価の1/2未満)で譲渡した場合に適用されるというものです。時価で譲渡や贈与した場合には気をつけておきましょう。
③の「個人から個人へ譲渡」では、会社を引き渡す行為と捉えられるため、税金がかかりませんが、④の「個人から法人への譲渡」では、会社をタダで売却したと考えられます。従って、みなしの所得税が課税される可能性があるのです。ただし、売買とは違って、消費税を支払う必要はありません。
以上が、贈与で行う事業承継と税金についてでした。ここからは、相続で行う事業承継と税金について見ていきましょう。
相続で行う事業承継と税金
相続による事業承継とは、対象となる事業を引き継ぐ形の承継方法です。一般的には、経営者が亡くなってから後継者が事業承継する際に使用されます。相続での事業承継の際は、後継者の準備が整っていないことも珍しくないので、事前にできるだけ税金の準備もしておきましょう。
この方法による事業承継に該当するのは、以下の⑤と⑥が該当します。
- 個人から個人へ売買:①
- 個人から法人へ売買:②
- 個人から個人へ譲渡:③
- 個人から法人へ譲渡:④
- 個人から個人へ相続:⑤
- 個人から法人へ相続:⑥
個人から個人へ相続する場合:⑤
⑤の「個人から個人への相続」では、後継者となると、贈与税ではなく「相続税」を支払います。どの程度の財産を相続したかによって、この相続税額が異なるので財産の金額が重要なポイントになってきます。相続の場合、消費税は不要です。
個人から法人へ相続する場合:⑥
⑥の「個人から法人へ相続」するケースで課される税金は、売買や贈与により事業承継したときと同様に「法人税」が必要な場合において「登録免許税」と「不動産取得税」を支払います。こちらも、消費税は不要になります。
つまり、事業承継に対して消費税が必要になるのは、①の「個人から個人への売買」と、②の「個人から法人への売買」を選択した譲渡側のみです。ただし、売買でも消費税が必ず課されるわけではありません。
どのようなケースなら売買での事業承継で消費税がかかるのかについては、次項で解説します。自分の行う事業承継に消費税がかかるのかどうか、しっかり確認しましょう。
事業承継と消費税
前述した通り、消費税は事業承継を売買した際に発生します。消費税をできるだけ少額に抑えたい場合は、以下のポイントについて理解しておく必要があります。
- 年間売上高に注意する
- 生存中に事業承継を実施する
①年間売上高に注意する
消費税の仕組みとして、年間の売上高が1,000万円以上を超えた場合は注意が必要です。具体的には、2年前の売り上げが1,000万円を超えていると消費税が発生します。つまり、過去に売り上げが1,000万円を超えたことがある場合は消費税を考える必要があるのです。
②生存中に事業承継を実施する
また、経営者が生存中に事業承継したかどうかで、消費税の扱い方は異なることにも気をつけなければなりません。生前に事業承継すると、譲渡する側が事業を廃止し、後継者が事業の開始を実施したという扱いになります。従って、後継者が開業したのと同じ意味になるのです。
事業承継における消費税は、過去2年間の売上高が1,000万円以上の場合に発生します。開業時には消費税の支払いは不要です。つまり、経営者が生存中に事業承継を実施すれば、消費税はかかりません。加えて、2年経過しても売り上げが1,000万円を超えなければ、当然消費税は不要です。
一方で、経営者が亡くなった後に事業承継するケースでは、経営者が生きていた頃の売上高も引き継ぎます。つまり、開業後であっても、場合によっては消費税の支払いが必要になる可能性があるのです。
例えば、2018年に相続した場合、その年の売上高が800万円、後継者の売上高が300万円であった場合は、合計が1,100万円となります。そうなると、この時の相続では消費税を支払う必要が出てきます。
このように、消費税の支払いを考えると、経営者の生存中に事業承継したほうが節税になるでしょう。とりわけ業績が良く、高い売り上げを生み出している場合には、生前に事業承継することをおすすめします。
消費税に関する書類について
消費税の支払いに対しては、原則として書類などの提出は必要ありません。後継者の売上高合計が1,000万円以下であれば、自動的に消費税の支払いは免除となります。一方、売上高が1,000万円を超えている場合には自動的に消費税が発生します。よって、基本的に手続きは不要です。
事業承継を成功させるためには、税金についての準備が欠かせません。特に消費税のような事業承継の方法によって変動する税金は、事前に考えておかなければ、いざというときに慌ててしまいます。もしも事業承継の税金に不安があるなら、早めに専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
事業承継の消費税は、事業承継の方法や経営者が生きているか否かによって大きく変わってきます。従って、後継者となる場合には、自分がどのような立場に置かれているのか、事業承継を行った後は税金がかかるのかなどをしっかりと把握する必要があるでしょう。
一方、現経営者であれば、後継者が困らないように消費税などの税金についてはしっかり考えておく必要があります。事業承継にかかるコストをなるべく抑えたいと考えているのは、譲渡側も後継者も同じです。
事業承継を視野に入れたうえで、今後の経営について熟慮することが重要になるでしょう。
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