2021年7月27日更新会社・事業を売る

事業譲渡の手続き方法は?全体のスケジュール・期間、注意点、法務の届出を解説!

事業譲渡によるM&Aを成功させるためには、その手続き内容について把握する必要があります。合わせて、注意点も知っておかなければなりません。本記事では、事業譲渡を実施する際のスケジュールや手続き方法、注意点を解説します。

目次
  1. 事業譲渡とは
  2. 事業譲渡のメリット・デメリット
  3. 事業譲渡の手続きにおける全体スケジュール・期間
  4. 事業譲渡の手続き方法・流れ
  5. 事業譲渡の手続きに関する注意点
  6. M&A仲介会社に相談してスムーズな事業譲渡を実現
  7. 事業譲渡の手続き方法まとめ
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事業譲渡とは

M&Aにはさまざまなスキーム(手法)があり、そのうちの1つに事業譲渡があります。上図はそのイメージを示しており、譲渡側の会社の事業を譲受側の会社に売却するのが事業譲渡です。このとき、売却する事業は、会社の中の一部の場合もあれば全部の場合もあります。

仮に全ての事業を売却したとしても譲渡側の会社組織はそのまま残るので、経営者は変わらず会社が存続するのが事業譲渡の特徴です。また、事業譲渡の際には、事業だけが売却されるのではなく、それに関連する資産や権利義務なども協議のうえ選別されて譲渡されます。

さらに、事業の運営には人材が欠かせませんから、譲渡側企業において該当事業に従事する従業員は、事業譲渡に伴って譲受側企業に移籍を要請されるのが常です。

事業譲渡の意義

譲渡側・譲受側いずれにおいても、売りたい・買いたい事業および資産などを選別できるM&Aであることが、事業譲渡の最大の意義です。最終的な合意内容に至るまでに両者の協議・交渉は欠かせませんが、売買対象内容を自由選択できるスキームはほかにありません。

事業譲渡と合併の違い

ここからは、M&Aのほかのスキームと事業譲渡との違いについて簡潔に掲示しておきます。まずは、合併との違いです。合併には吸収合併と新設分割がありますが、ここでは吸収合併と事業譲渡を比較します。

なお、吸収合併とは、譲渡側企業が丸ごと譲受側企業に吸収・統合されるM&Aスキームです。その吸収合併と事業譲渡の違いには、以下のようなものがあります。

  • 吸収合併では譲渡側企業は統合され消滅するが、事業譲渡では経営者も代わらずそのまま存続する
  • 吸収合併の譲渡側は法人に限定されるが、事業譲渡では個人事業主でも譲渡実施可能
  • 吸収合併では譲渡側企業の権利義務を包括的に承継するが、事業譲渡では選別して契約したものだけを引継ぐ
  • 吸収合併では競業避止義務はないが、事業譲渡では20年間、譲渡事業と同一の事業を同一地域で行えない
  • 吸収合併では譲渡側従業員の労働契約をそのまま引継ぐが、事業譲渡では譲受側企業に移籍するかどうかは従業員ごとに個別合意を得なければならない

事業譲渡と株式譲渡の違い

次に、株式譲渡と事業譲渡の違いを見てみましょう。株式譲渡は、譲渡側企業の株式を譲受側に売却するM&Aスキームです。株式は会社の経営権に直結します。中小企業の株式譲渡では全株式を売却することがほとんどであり、株式譲渡=会社売却です。

株式譲渡と事業譲渡の違いには、以下のようなものがあります。

  • 株式譲渡では譲渡側企業の経営者が買収側企業に交代するが、事業譲渡では経営者は代わらない
  • 株式譲渡は会社を丸ごと引継ぐ包括承継だが、事業譲渡は引継ぐ(売買する)ものは選別される
  • 株式譲渡は株式売買のみでシンプルな取引・手続きだが、事業譲渡は譲渡対象それぞれに個別手続きが必要
  • 株式譲渡では譲渡側企業の持つ許認可もそのまま引き継げるが、事業譲渡では基本的に買収側が新たに許認可を取得する必要がある

事業譲渡と会社分割の違い 

続いて、事業譲渡と会社分割の違いを掲示します。会社分割とは、譲渡対象事業および資産、権利義務や人材・組織をまとめて切り出し(=分割)、それを買収側が吸収するものです。形式としては、事業譲渡とよく似て見えます。

会社分割と事業譲渡の違いは、以下のとおりです。

  • 会社分割は事業・資産・権利義務・人材・組織を買収側は包括承継するが、事業譲渡ではそれぞれ個別に引継ぐため再契約や個別で同意を得る必要がある
  • 会社分割の包括承継では買収側は債務も含めて引継ぐが、事業譲渡では選別できるため不要な債務などを引継がずに済む
  • 会社分割は包括承継であるため消費税の課税対象とならないが、事業譲渡では譲渡内容によっては消費税の課税対象となる

【関連】M&Aのスキームを解説!特徴やメリット・デメリット、事例も紹介します

事業譲渡のメリット・デメリット

M&Aを検討・実施するにあたっては、それぞれのスキームのメリット・デメリットを把握することが肝要です。ここでは、事業譲渡のメリット・デメリットを解説します。

売り手側のメリット

事業譲渡の売り手側と買い手側では立場が異なるため、そのメリット・デメリットは別のものです。そこで、売り手側・買い手側に分けて、それぞれのメリット・デメリットを解説します。まずは、売り手側のメリットです。

  • 譲渡資産を選べる
  • 現金を入手できる

譲渡資産を選べる

譲渡する事業や資産などを選べることが事業譲渡の売り手のメリットの1つです。事業譲渡をすると事業のスリム化・効率化を図れるようになり、これを目的に事業譲渡する企業も少なくありません。経営に負担がかかる事業を売却することで、財務に余裕を持たせられます。

現金を入手できる

事業譲渡を行った際の対価は、現金で支払われます。これも事業譲渡の売り手側のメリットの1つであり、入手した現金で債務を返済したり、事業資金に用いたりできます。

売り手側のデメリット

事業譲渡の売り手側の主なデメリットとしては、以下の2点があります。

  • 譲渡益に税金が発生する
  • 債務が残る

譲渡益に税金が発生する

事業譲渡の売り手のデメリットは、譲渡益に対して法人税が発生する点です。法人税は実効税率約32%にもなり、税額が高額になってしまいます。ただし、法人税は1年間の会社全体の利益に対してかかるものですから、譲渡益単独に法人税が課せられるわけではありません。

債務が残る

事業譲渡で買い手側が債務を引継がない場合、売り手側に債務が残ります。事業譲渡で承継(売買)できるは、あくまでも買い手側との交渉によって決まるため、必ずしも債務を承継してもらえるわけではないことに注意しなくてはなりません。

また、もしも買い手側が債務を引継ぐ場合でも、債権者に通知をして説明をする義務があるため、いずれにしてもデメリットとなります。

買い手側のメリット

ここからは、事業譲渡における買い手側のメリット・デメリットを見ていきます。まず、買い手側のメリットは、主に以下のようなものです。

  • 簿外債務リスクを回避できる
  • 節税できる

簿外債務リスクを回避できる

事業譲渡では、買い手側も譲受する資産・債務を選べます。たとえば、株式譲渡では会社全体を包括承継するため、簿外債務などの偶発債務も引継いでしまう可能性が捨てきれません。偶発債務は、内容次第では経営に大きなダメージを与えるものです。

ところが、事業譲渡では譲受するものを選別できるので、簿外債務などの偶発債務を引継いでしまうリスクはありません。

節税できる

売り手側の資産を買い取る場合、現在の事業価値に加えて3~5年分の将来価値を買取額に上乗せすることで、簿価と差額が発生します。この差額を「のれん」といい、損金算入が可能です。のれんは5年かけて償却し、その間、節税の助けとなります。

買い手側のデメリット

事業譲渡の買い手側のデメリットとしては、主に以下の2つがあります。

  • 手続きが煩雑である
  • 消費税がかかる

手続きが煩雑である

事業譲渡では、売り手側が持つ事業の許認可や従業員との雇用契約は引継げません。したがって、買い手側では、売り手との事業譲渡契約以外にも、事業に必要な許認可の新たな取得手続きと、移籍してくる売り手側従業員それぞれと個別に雇用契約を結ぶ必要があります。

包括承継ができる株式譲渡などと比べると、それらの手続きの煩雑さはデメリットです。

消費税がかかる

事業譲渡は売買取引です。したがって、買い手側が譲受する財産の中に、消費税の課税対象資産が含まれていれば、そこには当然、消費税が課されます。つまり、買い手側としては事業譲渡そのものに要する資金のほかに、消費税分の資金も必要なのです。

引継ぐ事業財産が多いほど消費税額も高騰し、多額の資金が必要になるため、この点はデメリットとなります。

【関連】事業譲渡のメリット・デメリット

事業譲渡の手続きにおける全体スケジュール・期間

事業譲渡の手続きにおける全体スケジュール・期間

事業譲渡の手続きの全体的なスケジュールは、以下の流れで進みます。

  1. 取引候補企業の選定
  2. 秘密保持契約
  3. トップ面談
  4. 意向表明書・基本合意書
  5. デューデリジェンス
  6. 条件交渉
  7. 取締役会の決議
  8. 事業譲渡契約書
  9. 法務に関する届出
  10. 株主に対する通知・公告
  11. 株主総会の特別決議
  12. 反対株主の買取請求
  13. 財産などの名義変更手続き・許認可手続き
  14. クロージング

 

事業譲渡は、ほかのM&Aスキームと比べてスケジュールが長期に渡るため、コストが高くなる傾向があります。また、買い手側が承継する内容によっては、さらに手続きが増え長期化する点は覚えておきましょう。

手続き完了まで3カ月~6カ月はかかる

事業譲渡には多くの手続きが必要であり、全ての手続きが完了するまでには、短くても3カ月~6カ月かかるのが一般的です。また、場合によっては、10カ月~1年以上の長丁場となることもあります。

会社の状況によっては、可能な限り早く事業譲渡を実施したいケースもあるでしょう。その場合、できるだけ早い段階からサポートを依頼する専門家を定め、そのアドバイスを当初から受けて事業譲渡を進めるのが得策です。

事業譲渡では条件交渉と契約が重要

事業譲渡において重要なのは、条件交渉です。譲渡される資産の内容は、全て両者の交渉によって決まります。このプロセスでは、譲渡する資産の選別や従業員の処遇の決定など、契約上の重要な事柄が協議されるのです。

事業譲渡の手続きにおけるスケジュールの例外について

全ての事業譲渡が、上述したスケジュールで行われるわけではありません。事業譲渡手続きは、事業が小規模であれば略式となり、株主総会承認の手続きが必要にならないケースもあります。

たとえば、買い手側が売り手側の株式を90%所有している場合、株主総会の手続きが不要です。また、譲渡内容が売り手の全ての事業でなく、譲渡する資産が総資産の20%以下の場合も株主総会は省略できます。

譲渡会社の手続き

事業譲渡は事業を譲渡する取引契約であるため、譲渡会社は事業を全て売却したとしても法人格は残ります。したがって、事業譲渡後もそのまま会社は継続されますが、譲渡会社が持つ債務がどうなったかによって、対応手続きが変わる点に注意しましょう。

債務を承継するかで対応も変わる

事業譲渡の際に、債務の免責的譲渡を行っていれば、譲受会社が債務を背負います。その場合、譲渡会社は、債権者保護手続きを行う必要が出てくるなど、一部の手続きプロセスが変わるのです。

もしも免責的譲渡が行われない場合は、債権者保護手続きが発生せず、譲渡会社がそのまま債務を背負い続けることになります。

譲受会社の手続き

譲渡会社にとって煩雑な手続きの代表格は、事業の許認可と移籍してくる譲渡側所属だった従業員との個別労働契約締結です。事業の許認可は、該当事業を行う会社が管轄省庁から取得する必要があります。

したがって、譲受側が必要な許認可を持っていないのであれば、新たに取得しなければなりません。従業員については、個別に譲渡会社を退職し譲受会社に入社という扱いになるため、1人ひとりと労働契約を締結する必要があるのです。

初期段階ではマッチングが重要

事業譲渡の初期段階でいうと、譲渡会社と条件がいかにマッチしているかも重要なポイントといえます。もしもリスクがある譲渡会社だと、手続き全体に影響する恐れがあるからです。

より条件の合う譲渡会社を見つけるためにも、M&A仲介会社など専門家に依頼して幅広い選択肢から譲渡会社を探す方法が効率的でしょう。

【関連】事業譲渡における債権者保護手続きとは?事業譲渡の流れも解説

事業譲渡の手続き方法・流れ

事業譲渡の手続き方法・流れ

ここでは、前項で掲示した事業譲渡手続きの各プロセスについて、それぞれの具体的な内容を説明します。

  1. 取引候補企業の選定
  2. 秘密保持契約
  3. トップ面談
  4. 意向表明書・基本合意書
  5. デューデリジェンス
  6. 条件交渉
  7. 取締役会の決議
  8. 事業譲渡契約書
  9. 法務に関する届出
  10. 株主に対する通知・公告
  11. 株主総会の特別決議
  12. 反対株主の買取請求
  13. 財産などの名義変更手続き・許認可手続き
  14. クロージング

①取引候補企業の選定

まず前提として、事業譲渡を実施するにあたり、そのサポート業務をM&A仲介会社に依頼したものとして説明を進めます。早速ながら、この取引候補企業選定プロセスは、譲渡側と買収側とで内容が異なることを知っておきましょう。

譲渡側が最初に行うのは、具体的な企業名がわからない状態で会社概要を記したノンネームシートの作成です。M&A仲介会社は、このノンネームシートを開示し、買収先候補が現れるのを待ちます。

買収側が行うのは、M&A仲介会社を通して得た複数のノンネームシートの中から、条件の合致する譲渡側の選別です。両者それぞれの検討を経て絞り込まれた候補の中から、取引先候補が定まったら次のプロセスへ移行します。

【関連】ノンネームシートとは?意味やM&Aでの活用、情報漏えいの危険性を解説

②秘密保持契約

相互に事業譲渡取引の候補が定まったのなら、具体的な交渉に入るために秘密保持契約の締結が必要です。その理由は、秘密保持契約抜きでは企業の重要な情報を開示できませんし、また、事業譲渡を実施しようとしていることも当面、秘密にする必要があるためです。

【関連】秘密保持契約(NDA・CA)

③トップ面談

秘密保持契約の締結後、事業譲渡の交渉の過程で実施されるのがトップ面談です。譲渡側・買収側それぞれの経営トップが直接、会って話をします。企業の経営には、経営者の理念や人生観が色濃く反映されるものです。

トップ面談では、そういった部分を相互に確認し、良い事業譲渡取引が行える相手かどうかの見極めを行います。このトップ面談で意気投合したケースでは、即座に取引がまとまった事例もあり、重要なプロセスです。

④意向表明書・基本合意書

意向表明書は、買収側が事業譲渡に応じる意思があることを正式に文書で申し入れるものです。ただし、このプロセスは必須ではありません。省かれるケースも多いです。いわば、買収側の誠意を示す行動といえるでしょう。

トップ面談や意向表明などの交渉を経て、大筋で事業譲渡の実施に合意が形成される段階になったら、基本合意書を締結します。ここまでの交渉で合意できた事業譲渡条件の内容を確認するための重要なプロセスです。

ただし、まだ正式な最終契約段階ではないことには注意しましょう。基本合意書によって事業譲渡の成約が確定したわけではなく、法的拘束力はないのです。実際に、基本合意書は締結したものの、その後のプロセスで破談になった例もあります。

【関連】M&Aにおける意向表明書とは?
【関連】M&Aの基本合意書

⑤デューデリジェンス

デューデリジェンスとは、買収側が実施する譲渡側企業の精密監査です。士業などの専門家が起用され、さまざまな観点から譲渡側企業の調査が行われます。最終的な条件内容や事業譲渡契約締結に直結することなので、譲渡側は建設的に対応しなければなりません。

デューデリジェンスの内容は以下のように多岐にわたりますが、全ての調査が行われるわけではありません。当該企業や事業内容に応じたデューデリジェンスが行われますが、ほぼ全てのケースで実施されるのは財務・法務・会計デューデリジェンスなどです。

【デューデリジェンスの種類】

  • 財務デューデリジェンス
  • 法務デューデリジェンス
  • 税務デューデリジェンス
  • 労務(人事)デューデリジェンス
  • ビジネスデューデリジェンス
  • ITデューデリジェンス
  • 環境デューデリジェンス
  • 知的財産デューデリジェンス
  • 顧客デューデリジェンス
  • 不動産デューデリジェンス
  • 技術デューデリジェンス

【関連】デューデリジェンスとは?目的・方法・種類

⑥条件交渉

デューデリジェンス終了後、そこで明らかになった譲渡側企業の実態や将来性なども加味したうえで、最終的な条件交渉が行われます。簿外債務や訴訟リスクなど何らかの問題点が発見されていれば、条件は基本合意時よりも下げられてしまうでしょう。

最悪のケースでは、問題点を看過できないとして破談になるケースもあります。その逆に、デューデリジェンスで譲渡側企業の技術力やノウハウ、有効な知的財産の存在などが確認されれば、条件は引き上げられる可能性、大です。

⑦取締役会の決議

取締役会が設置されている企業の場合は、取締役会での決議を行ったうえで事業譲渡を行う必要があります。取締役会では、「どの程度の交渉期間とするか」、「どの事業を買収・売却するのか」など事業譲渡に関する基本的なことを決めるのです。

この取締役会の決議後、トップ面談、基本合意書締結、デューデリジェンスなどの手続きを経て、最終的に事業譲渡契約の締結に至ります。

【関連】株主総会と取締役会の違い

⑧事業譲渡契約書

⑥の条件交渉後、事業譲渡の内容に合意したら、事業譲渡契約の締結です。ただし、この契約を行っても即時に効力は発生せず、後述する手続きを行った後に実際に契約の効力が生じます。

【関連】事業譲渡契約書の作成ポイントと注意点を解説!雛形は危険?

⑨法務に関する届出

事業譲渡契約締結後、当該企業の状況により、各種書類を提出する必要が生じる場合があるので注意しましょう。ここでは、公正取引委員会への届出と、臨時報告書の提出を説明します。

公正取引委員会への届出

買収側が、グループ会社も含めた国内売上高の合計が200億円超の場合、以下の項目のいずれかに当てはまると公正取引委員会への届出手続きが必要です。

  • 国内売上高が30億円を超える会社の事業の全部を買収する場合
  • 譲渡企業の事業の重要部分を買収する場合で、かつその事業の国内売上高が30億円を超える場合
  • 譲渡企業の固定資産の全部または重要部分を買収する場合で、かつその固定資産による国内売上高が30億円を超える場合 
ただし、譲渡側と買収側が同一企業グループに属する場合には、公正取引委員会への届出は不要です。また、届出が受理されてから30日が経過するまでは、原則として事業譲渡は行えません。ただし、公正取引委員会が認めた場合には、期間の短縮が可能です。

臨時報告書の提出

有価証券報告書の提出義務がある企業の場合、以下の項目のいずれかに当てはまるときには、臨時報告書を内閣総理大臣に提出する義務が生じます。

  • 事業譲渡によって、買収側が純資産額30%以上増加する見込みか、譲渡側が純資産額30%以上減少する見込みの場合
  • 事業譲渡によって、買収側の売上高が前年比で10%以上増加する見込みか、譲渡側の売上高が前年比で10%以上減少する見込みの場合

⑩株主に対する通知・公告

事業譲渡を行う場合、その契約の効力が発生する20日前までに、株主に対して通告する手続きを行わなければなりません。ただし、後述する株主総会の決議によって事業譲渡に関して承認された場合には、株主に通知しなくても公告の手続きをすればよいと決まっています。

これは、事業譲渡に反対する株主に対して、株式買取請求の機会を与えることを目的として通知するのです。

⑪株主総会の特別決議

事業譲渡を行う際は、基本的に株主総会における特別決議を行わなくてはなりません。しかし、一定のケースでは、この特別決議を省略できます。

一般的な事業譲渡

以下の事業譲渡のケースでは、株主総会の特別決議の手続きが必要です。

  • 譲渡側:事業の全部または一部を譲渡する場合
  • 買収側:事業の全部を買収する場合  
買収側は事業の全部譲渡のときにのみ、特別決議を行う必要があるということで、それ以外の事業譲渡については特別決議の必要がありません。一方、譲渡側は、全部譲渡だけでなく、重要事業の一部譲渡を行う場合も特別決議が必要です。

したがって、譲渡側は、経営再建などの理由で赤字事業を譲渡する場合、特別決議を行う必要はありません。

特殊なケース(簡易事業譲渡、略式事業譲渡)

以下のケースは特殊な事業譲渡として、株主総会の特別決議を省略できます。

  • 簡易事業譲渡:買収側が対価として支払う財産や、譲渡側が譲渡する資産の帳簿価額が、各会社の純資産額を超えない場合
  • 略式事業譲渡:買収側が譲渡側の議決権90%以上を保有している特別支配会社である場合

【関連】特別決議とは?拒否権や普通決議との違いを解説
【関連】事業譲渡と株主総会

⑫反対株主の買取請求

事業譲渡に反対する株主から株式の買取請求があった場合には、企業側は事業譲渡の効力発生日から60日以内に支払いの手続きを行わなければなりません。事業譲渡においては、株主の説得も非常に重要となります。

したがって、できる限り株主から買取請求されないよう、慎重に進めることが肝要です。

⑬財産などの名義変更手続き・許認可手続き

事業譲渡実施に伴って必要となる手続きには、財産などの名義変更と事業の許認可取得もあります。

財産などの名義変更手続き

事業譲渡を行う場合には、資産をそれぞれ個別に譲渡する形式を取ります。したがって、移転した資産のうち預金や土地など譲渡側の名前で登録しているものは、それぞれ買収側の名義で再度登録・登記する手続きが必要です。

買収側は、その手続き分のコストや時間がかかることを念頭にスケジューリングしておきましょう。また、商号を続用する場合は、会社法の規定について注意し対応を取らなければなりません。

会社法第22条において、買収側が譲渡側の商号を引き続き使用する場合、買収側には譲受側の事業で生じた債務を弁済する義務が生じるとされています。

ただし、事業譲渡後すぐに、買収側が譲渡側の債務を弁済する責任を負わない旨を登記するか、通知する手続きを行った場合には義務が生じません。

許認可の取得

買収側が、有料職業紹介事業やガス・電気事業、各種建設業など、監督官庁や自治体の許認可が必要となる事業を譲受した場合、その許認可を所持していなければ事業譲渡後に許認可を取得する必要があります。

許認可は各企業が対象事業を行うことについて許可を与えているものであるため、事業譲渡によって事業運営当事者が変わった場合、新たに取得する必要が生じるのです。許認可がなければ当該事業を行えませんから、これもスケジューリングに加えておきましょう。

⑭クロージング

事業譲渡などM&Aでのクロージングとは、最終契約書締結後、当事者双方がその内容に記載された手続き・実務を行うことです。具体的には、資産の移転、対価の支払いなどが該当します。このクロージングをもって、事業譲渡は完了です。

【関連】M&Aのクロージング

事業譲渡の手続きに関する注意点

事業譲渡の手続きに関する注意点

事業譲渡の手続きの際には、以下の4点に注意を向けましょう。

  1. 従業員の流出
  2. 競業避止義務
  3. 守秘義務
  4. 事業譲渡契約書は専門家にチェックしてもらう

①従業員の流出

事業譲渡では、該当事業を担当する従業員は一度、譲渡側を退職します。そして、買収側が再度、従業員と雇用契約を交わすのです。したがって、従業員が流出しやすい状況が生まれます。

もし、事業譲渡に不満を持っている従業員がいたり、雇用契約に納得できない従業員がいたりすれば、買収側と雇用契約を結ばず他社に入社してしまう危険性があるのです。

そうなれば事業の価値が低下したり、重要な機密情報が漏えいしたりするなど、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。事業譲渡を行う際には、従業員の流出が起こらないように細心の注意を払う必要があるのです。

②競業避止義務

競争避止義務(会社法第21条)とは、事業を譲渡した企業が、その後、20年間に渡り、同一区市町村および隣接区市町村で、譲渡事業と同一の事業を行ってはいけない規定をさします。仮に譲渡側が再び同じ事業を行った場合、買収側の優位性が失われるからです。

ただし、事業譲渡契約時に、当事者間で競争避止義務を負わないと定めた場合には、義務を排除できます。同様に、事業譲渡契約時に競業避止義務の特約を定めた場合には、その義務を最大30年まで延ばすことも可能です。

③守秘義務

経営者の立場であれば、守秘義務を心得ているはずですが、従業員の場合、その重大性について認識が甘い可能性もあります。仮に自社が秘密を漏らしてしまった場合、損害賠償などが請求され、そのダメージは甚大です。

​​​​​​​したがって、秘密保持契約締結以降は、その内容が社内で順守されるように情報管理を徹底しなければなりません。

④事業譲渡契約書は専門家にチェックしてもらう

事業譲渡契約締結時には、当事者のどちらかが契約書を作成することになります。その際には、コストを最小限に抑えるためインターネット上に出回っているひな形などを使用せず、専門家に作成を依頼しましょう。

専門家に依頼すれば、無料のひな形にありがちな抜けや漏れによるトラブル発生の恐れはありません。事業譲渡契約書は大変、重要な契約書ですから、費用を惜しむのはやめましょう。なお、この場合の専門家とは、弁護士またはM&A仲介会社のことです。

また、契約書を作成しない立場であったとしても、提示された契約書案について、やはり専門家に入念なチェックを依頼すべきであることは、言うまでもありません。

【関連】事業譲渡における競業避止義務

M&A仲介会社に相談してスムーズな事業譲渡を実現

M&A仲介会社に相談してスムーズな事業譲渡を実現

事業譲渡は、手続きが煩雑でスケジュールが長期に渡ります。そして、事業や資産などを選別する際に、交渉が進みにくくなる場面も少なくありません。交渉を円滑かつ有利に進めるには、法務や税務などの専門的な知識やM&Aの経験を持つ専門家の存在は不可欠です。

全国の中小企業のM&Aに数多く携わっているM&A総合研究所では、M&Aの専門的な知識や経験が豊富なアドバイザーが案件ごとに専任となり、相談時からクロージングまでM&Aを徹底サポートいたします。

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事業譲渡の手続き方法まとめ

事業譲渡の手続き方法まとめ

事業譲渡には、一部の事業だけを売買できることや、買い手側企業が簿外債務や不要な資産を引継ぐリスクがないメリットがあります。一方、事業譲渡は、ほかのM&Aスキームと比べて手続きの複雑さや、顧客や従業員を包括承継できない点などがデメリットです。

したがって、メリットとデメリットを比較したうえで、実際に事業譲渡を用いるかどうか判断することになります。自社だけの判断で不安がある場合には、M&Aの検討段階から専門家に相談し、そのアドバイスを得ながら進めていくのが得策です。

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