2022年10月18日更新事業承継

株式相続の注意点と方法は?株式の種類による手続きの違いまで解説

株式相続では、株価の変動や会社経営に影響を与える可能性があることに注意が必要です。また、中小企業に多く見られる非上場株式の相続は、上場株式と比べて手続きが煩雑になります。本記事では株式相続の流れ、注意点について解説します。

目次
  1. 株式相続の流れ
  2. 株式相続の注意点
  3. 株式の種類による手続きの違いと注意点
  4. 株式相続時の評価・節税方法
  5. 株式相続の注意点と方法まとめ
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株式相続の流れ

経営者が亡くなった際、家族や親族が相続すべき財産には経営者の株式があります。株式も家族や親族にしかるべき形で相続する必要があります。

しかし、株式の相続は現金と違い、特別なプロセスを必要とします。まずは株式相続の流れを紹介します。

株式相続の方法・手順

株式を相続する際の注意点を共有する前に、株式相続の流れをおさらいしていきます。

①遺言書の確認と相続人の確定

遺言書をもとに相続されるので、まずは遺言書の有無と内容を把握します。遺言書がなければ、法定相続人が相続する流れです。相続人の確定には調査が必要で、財産を残す人の出生から死亡までに関する戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍を用意します。

②相続財産に含む株式を把握

ほかの相続財産の調査と同時に株式についても把握します。株式の種類は、証券取引所に上場された上場株式、上場されていない非上場株式などです。財産を残す人物が従業員持株会に加入して持分を保持している場合や、新株予約権を持つケースではそれぞれを相続できます。

ただし、持株会の規定で死亡時に持分を買い取る場合がほとんどで、結果として買取代金を相続する可能性が高いです。

新株予約権は、新株予約権割当契約で死亡に権利喪失する内容が定められていると相続できません。いずれもトラブルにならないよう、事前に知っておきたい知識です。

③相続の承認と放棄を選択

相続財産を調査した結果、財産を残す人物が債務超過であるケースもあります。その際に相続すると財産を受け継いだ側で負債の弁済を迫られるため、その点も含めて相続の承認と放棄を選択します。

なお、相続を放棄するのであれば、原則として財産を1円も使ってはなりません。また、相続開始から原則として3ヶ月以内に家庭裁判所に申請を行います。必ずしも財産を相続する必要がないので、それぞれの目的や状況によって選択しましょう。

④準確定申告を実施する

財産を残す故人に代わって、亡くなった年に相続人が確定申告します。仮に残された財産に株がある場合、配当金が生じている可能性もあります。準確定申告の期限は、相続開始を認識した日の翌日から4ヶ月以内です。

⑤相続人が複数なら遺産分割

相続人が複数人いれば、遺産分割協議が必要です。株式は、遺産分割協議が完了するまで相続人の間で管理しますが、共有したままでは名義書換できないので、協議して株式の配分を決めます。遺産分割は、相続税の申告期限までに終えるのが無難でしょう。

⑥株式の名義を書き換える

企業は自社の株主を把握するために株式名簿を作成しています。株式相続の際にも名義書換が必要で、株主名簿に記載されている株主の名義を変更します。名義書換にかかる期間はおよそ3週間です。

名義書換に期限はありませんが、手続きが完了しないと株式を売却して現金化できません。もちろん、配当も受け取れないので気を付けましょう。

⑦相続株式の評価と相続税の申告

故人の財産を相続する場合は相続税が発生します。ただし、一定の金額までは相続税の申告と納税の義務が発生しない点は知っておきましょう。具体的には、遺産の総額が相続税の基礎控除額以下である場合が該当します。基礎控除額の計算式は、下記のとおりです。

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

相続株式の評価方法は株式の種類によって異なります。上場株式は原則として終値をもとに評価し、非上場株式は経営権支配の有無や会社の規模に応じて評価します。株式を含めた相続財産の評価額を算出したら、相続税を計算して申告する流れです。

株式の確定申告とは?節税のポイントや注意点を解説| M&A・事業承継の理解を深める

株式相続の注意点

株式を相続する際には、まずいくつかの注意点を押さえておきましょう。株式は現金とは異なる性質を持ち、均等に分けるのに手間がかかります。

また、株式の相続が会社に影響を及ぼす可能性もあり、経営者が亡くなる前に協議すべき事柄もあります。

株価の変動に注意

株価は企業価値などのさまざまな要因によって変動します。同じ株式でも計算法によって算出株価が異なるケースもあります。そのため、株式を売却したり、現金換算後に相続税を計算したりする際には、予測していた価額にならないことも珍しくありません。

家族・親族間で均等に株式を相続したつもりでも、相続人が売却するタイミングによっては、金額にバラつきが発生する恐れもあります。その点をふまえながら株式の相続を実施しましょう。相続税を計算したい場合は、上場株式であれば「被相続人が死亡した日の終値」で計算する必要があります。

株式の名義変更

株式を相続する際、株式の名義変更をする必要があります。具体的には、株式を発行している会社に相続の連絡をします。亡くなった被相続人の名義のままであると売却できなくなるためです。名義変更は、株主名簿管理人を通じて実行します。

上場会社であれば証券発行会社や投資信託銀行の窓口で実施し、非上場会社であれば会社に赴いて株主名簿の変更手続きを行います。株式の名義変更には、下記の書類が必要です。

  • 株券(発行されていないなら不要)
  • 株式名義書換請求書
  • 名義変更をした結果株主となる人の株主票
  • 遺産分割協議書(共同相続人の同意書でもOK)
  • 相続人全員の印鑑証明書と戸籍謄本
  • 死亡した被相続人の戸籍謄本

ほかの相続人と一緒に用意する書類もあるので、スムーズに手続きできるよう、前もって協議しておきましょう。

相続の分配割合が変わる

株式を相続する場合、分配割合が一般的な相続と異なるケースがあります。現金を相続する際は、遺言書などで指示されていない限り、民法で定められている割合で分配します。しかし、株式を相続する場合はそれに従う必要はありません。

株式相続では、相続人の経済力を鑑みて割合を決定するケースが一般的です。ただし、経営権を引き継がせる際に、特定の相続人に株式の大半を相続する事例もあります。もちろん、相続人が一人だけであれば、株式の分配に関する協議は不要です。

会社経営に影響を与える場合も

株式相続が株式発行元の会社の経営に影響を与える場合があります。相続が経営権に影響を与える普通株式ならば相続で株式の所有率が変わり、結果として経営者が入れ替わるケースが考えられるでしょう。経営者が後継者に会社の経営権を移譲する際には、保有株式を相続によって受け継がせます。

その際、会社から株式を買収するように求められるケースもあります。また、経営者が後継者を定めないまま亡くなってしまった場合は、株式相続だけでは経営権を継げない恐れもあるので注意が必要です。

そのほか、株式相続の結果、想定外の人物が経営に影響力を持つ可能性もあります。経営権の委譲と株式相続が直結しているケースでは、特に注意しましょう。

株式の種類による手続きの違いと注意点

株式の一般的な種類は、公開済みの上場株式と非公開の非上場株式の2つで、それぞれ相続の手続きが異なります。各株式の相続手続きについて解説します。

上場株式

上場株式の場合、相続の手続きが比較的楽です。証券発行会社が投資信託銀行や証券会社などに窓口を委託している場合が多く、依頼すればスムーズに株式を相続できます。

相続の手順としては、投資信託銀行や証券会社に連絡し、取引残高報告書を発行してもらい、どれだけの株式があるかを確認します。その後、株券名義書換依頼書や被相続人の戸籍謄本、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書と戸籍謄本などの必要書類をそろえる流れです。

上場株式は基本的に電子化されているため、相続時に証券口座を設けるのが一般的です。相続人の数が多い場合、代表者が証券口座を作って現金化したのち、ほかの相続人に分割する方法がよく活用されます。株価の計算も、上場株式であれば仲介会社が代わりに実行してくれます。

ただし、上場株式は公開されているので、日々の売買で株価が変動しやすいです。そのため、株式相続のタイミングを見計らう必要があります。

非上場株式

中小企業に多い非上場株式の場合、投資信託銀行や証券会社などの仲介がないため、株式を発行している会社と直接やり取りする必要があります。その際、中小企業の株主名簿が適切に管理されていないこともあるので注意しましょう。

株式の保有者や保有量が曖昧になっている場合もあるので、会社側と協議しておく必要もあります。また、非上場株式を持つ中小企業では、都合の悪い人物に株式を渡さないよう、譲渡制限株式を発行しているケースが多いです。亡くなった経営者が指名した後継者であれば問題ありません。

しかし、株式を分配した結果、株式の保有率が上がっては困る人物がいる場合、売り渡しの請求がされるケースもあります。株式の保有率によって、経営権が動く中小企業ならではの事例です。また、相続の際に最も手間がかかるのが非上場株式の株価計算です。

非上場株式の株価計算では、株式を発行している会社の客観的な価値を分析する必要があり、計算方法も会社の規模によって異なります。以上の点から、非上場株式の相続では、さまざまな手続きが必要となるので、流れを事前に把握しておきましょう。

株式相続時の評価・節税方法

株式は相続時の評価額が予想以上に高額になってしまう可能性もあるため、生前贈与をしておくと相続税を節税しやすいでしょう。具体的には株式の評価額が下がった際に生前贈与をすると、少ない贈与税負担で株式を譲渡できます。

中小企業などの非上場株式の場合、一定の条件を満たせば「相続税の納税猶予制度」を活用して相続税の支払い猶予・免除が可能でしょう。事業承継税制にある相続税の納税猶予制度は、中小企業の株式を生前贈与・相続した際の贈与税・相続税の支払いが猶予・免除される仕組みです。

評価方法

株式を相続すると、遺産分割協議や相続税の申告のために評価額を求める必要があります。ここでは、上場株式と非上場株式の評価方法を紹介します。

上場株式

上場株式を相続する場合、相続税法では毎日株価が変動することを考慮し、以下に記載された4つの算出方法のうち最も低いものを使ってよいことになっています。

  • 相続が開始された日の終値(相続開始日が取引所の営業日でなかった場合、最も近い日の終値)
  • 相続が開始された月の毎日の終値である月平均額
  • 相続が開始された日の前月の毎日の終値である月平均額
  • 相続が開始された日の前々月の毎日の終値である月平均額

非上場株式

非上場株式を相続する場合、評価方法は会社の経営権を持つかどうか、そして会社の規模によって異なるでしょう。総資産価額、従業員数および取引金額によって大会社、中会社、小会社に分けられます

  • 大会社の場合:類似業種比準方式が採用され、類似業種の複数企業の株式の平均値などを基準に計算される
  • 小会社の場合:純資産価額方式が採用され、会社を清算した場合の株主一人あたりの分配額によって計算される
  • 中会社の場合:大会社と小会社を併用して計算
上記以外にも会社の経営権を取得しない場合、その株式の発行会社の規模にかかわらず配当還元方式の手法が採用されます。非上場株式の評価方法は非常にわかりづらいため、専門家へ相談するのがベストです。

株式相続の注意点と方法まとめ

株式の相続は一般的な相続と異なる点があり、中小企業によく見られる非上場株式では、より手間がかかる場合が多いです。そのため、経営権を受け継ぐ際は、会社への影響を多角的に分析しておくことが大切でしょう。もちろん、個人で全ての株式相続の手続きを済ませるのもできます。

しかし、株式価格の計算や相続税の知識が必要なので、弁護士や税理士などの専門家からアドバイスを得たほうが賢明です。トラブルを起こさず株式相続の手続きを進行できることでしょう。

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