2020年1月26日更新会社・事業を売る

競業避止義務とは?意味や判例、M&Aでの活用方法を解説

会社の利益を守るために競業避止義務を厳格に設定しておきたいというのが経営者の本音です。しかし従業員・取締役の職業選択の自由を侵害することは憲法義務違反であり、感情に任せた非合理的な措置は認められません。ここでは、競業避止義務の意味や判例、効力などについて解説していきます。

目次
  1. 競業避止義務とは
  2. M&Aにおける競業避止義務の条項
  3. 競業避止義務の判例
  4. 取締役の競業避止義務とは
  5. 競業行為に対する損害賠償請求
  6. 退職後の競業避止義務の効力
  7. まとめ
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競業避止義務とは

「競業避止義務」という言葉をご存じでしょうか?

競業避止義務は法学上で使う言葉であり、知っている方は少ないかもしれません。しかし、「競業避止義務」は非常に重要なものであり、違反してしまうと重い罰則が科せられてしまう可能性があります。ここでは、「競業避止義務」の意味や目的などをわかりやすくお伝えしていきます。

①競業避止義務の意味

競業避止義務には、2つの概念があります。

  • 従業員が使用者の不利益になるような兼業などの競業行為を行うことの禁止
  • 一般企業で従業員が退職した後に競合他社に就職することを禁止することを定めている誓約書や就業規則などの特約(競業禁止特約)

つまり、「競業避止義務」を簡単に言うと、自社の利益を損ねるような行いを禁ずることです。そのため、競業避止義務を違反してしまうと退職金の減額や競業行為の差し止め、損害賠償請求、懲戒処分といった重い処分が下されます。

最悪な場合は会社を解雇されることもあるのです。さらに、競業避止義務を違反すると裁判に発展するケースも少なくありません。社会的な信頼にも傷がついてしまいます。

②利益相反取引との違い

競業避止義務とよく似たものに「利益相反取引」があります。競業避止義務と同じように、「利益相反取引」も自社の利益を損ねるような行為を禁止するものであり、非常に似た意味合いを持ちます。競業避止義務が「競業行為」に対するものであるのに対し、「利益相反取引」では、会社との取引や条件などが該当するという違いがあります。

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M&Aにおける競業避止義務の条項

「競業避止義務」については、M&Aの際に交わす契約の中で「禁止事項」として盛り込まれることが一般的です。M&Aは「会社の合併と買収」のことです。売り手が買い手と同じ事業を行ってしまうと競業行為に該当してしまい、大きな損失を生む恐れがあります。そのため、M&Aの際には、契約の中で競業避止義務の禁止条項について盛り込むことが一般的です。

①従業員との競業避止義務契約

従業員との間に競業避止義務契約を締結する際にも、競業避止義務契約の条項は重要です。

しかし、条項によっては従業員に本来認められているさまざまな自由を侵害することにもなるため、条項の内容に注意を払う必要があります。とりわけ「その従業員を競業避止義務契約の対象にすることの合理性」には、一層注意を払っておきましょう。

従業員全員対象であっても、特定の地位にある従業員対象であっても、競業避止義務契約には以下のような観点から条項を設定しましょう。

  • 競業避止義務を課すべき従業員か?
  • 業務の性質などに見合った絞り込みがなされているのか?
  • 競業避止義務の期間は適切なのか?
  • 競業避止義務を設けるほどの『営業秘密』であるのか?

万が一競業避止義務契約の条項に合理性が認められない場合には、裁判時に会社側が負けることになります。もちろん、競業避止義務は会社の利益を守るためのものであるため、必要に応じて競業避止義務契約を設けるべきです。

何よりも従業員の権利は法的に守られるべきであり、いくら雇い主とはいえ従業員が本来持つべき権利を侵害してはなりません。

②競業避止義務は極めて複雑、専門家のアドバイスを

このように、競業避止義務は大変複雑であるため、専門家のアドバイスを得ることをおすすめします。その際には一度M&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、M&Aに豊富な知識と経験を持つプロがM&Aをフルサポートいたします。

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競業避止義務とは?意味や判例、M&Aでの活用方法を解説

競業避止義務の判例

競業避止義務の違反は多くの企業で発生しており、裁判に発展したケースも少なくありません。ここでは、競業避止義務違反に関する判例をご紹介していきます。

①フォセコ・リミデッド・ジャパン事件

昭和45年のフォセコ・リミデッド・ジャパン事件は、会社が設けた競業避止義務契約が認められた判例の1つです。フォセコ・リミデッド・ジャパンは各種治金用資材の製造・販売を行う会社でした。しかし、元従業員が競合他社の役員に就任したことで競業避止義務に違反するとして、裁判になりました。

この判例では、フォセコ・リミデッド・ジャパンが競業避止義務契約に設けていた競業制限が合理的であると判断され、フォセコ・リミデッド・ジャパンが勝訴しています。フォセコ・リミデッド・ジャパンの競業制限が2年間という短期間であったうえに、在職中には機密保持手当を支払っていました。

また、フォセコ・リミデッド・ジャパン自体が特殊な事業であったことや、制限の対象が狭かったことが勝訴した理由であるとされています。

②東京リーガルマインド事件

東京リーガルマインドは、弁護士をはじめ国家資格取得を支援する資格取得支援予備校を運営しています。しかし、元専任講師で弁護士の伊藤誠が司法試験の受験指導を行う伊藤塾を設立した際、競業避止義務を定める従業員就業規則などに基づき、塾の営業差止めを求めました。

ところが、この裁判で、東京リーガルマインドは競業避止義務違反を認められず請求棄却しています。そもそも東京リーガルマインドの競技禁止特約に代償措置がないうえに、禁止の内容や程度が必要最低限のものではなかったことが原因でした。

一般に、会社と従業員との間に結ばれる競業避止契約は、退職後の従業員の職業選択や営業の自由を不当に侵害するものです。そのため、期間・地域を必要最小限とし、代償措置がなければ無効とされます。

③三晃社事件

三晃社事件は、自主退職をした従業員が就業規則に反して競合他社に入社したため、その従業員が受け取った退職金の半額の返還を請求して三晃社側が裁判を起こしました。

三晃社側は会社の就業規則において、ある一定の期間内に同業他社へ就職をした場合には、退職金の支給額を自己都合で退職した場合の半額とすることを定めていました。そのため、支給した退職金の返還を求めて従業員を提訴したのです。

三晃社事件は少々入り組んだ裁判であり、最初は名古屋地裁で請求棄却されました。棄却された原因は、三晃社が請求した退職金半額返還は損害賠償を予定した約定であると判断されたためです。

しかし、名古屋高裁は、あくまで三晃社側は従業員の足止めを狙って退職金半額変換を請求したため、損害賠償を予定した約定ではないと判断して判決を取り消しました。

そもそも三晃社の退職金半額返還請求については、従業員の再就職の自由を不当に拘束するものであり、合理性がある措置とはいえません。一方、退職金半額返還請求自体も労働基準法に反したものであるとはいえません。

なぜなら、就業規則に反した再就職を行った以上、退職金の基準となる勤務中の功労は減殺されてしかるべきものだからです。

取締役の競業避止義務とは

ここでは、取締役に適用される競業避止義務について解説します。

競業避止義務が会社の利益を守るためのものである以上、従業員のみならず取締役などの役員にも適用されます。とりわけ、取締役においては、会社法第356条「取締役が会社と競業するような取引を行う場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない」と規定されています。

そもそも取締役はその立場上、機密を含めた会社の内部事情に精通しており、経営の手腕や知識も有しているものです。そのような取締役が所属している会社と同じ営業を行うようになれば、その会社のノウハウの流出や顧客の奪取、従業員の引き抜きにつながってしまうため、利益を大きく損なうことになります。

よって、取締役会が所属している会社と同じような営業を行う際には取締役会から承認を得る必要があるのです。

①取締役会の承認

取締役会では、取締役が行おうとしている営業が競業に該当するかどうかという点が主眼に置かれます。取締役会では、取締役が行おうとしている営業の取引先や扱う製品、数量、取引期間などの重要な事実を確認し、それを審議して承認を出すかどうかを決定することになります。これが取締役の競業避止義務です。

②競業避止義務に違反した取締役には損害賠償請求

万が一取締役が競業避止義務に違反した場合は、会社から取締役に損害賠償が請求されることになります。ちなみに、過去の商法では競業避止義務に違反した取締役に対して「介入権」という権利を行使することができました。

この介入権とは、競業避止義務を違反した取締役が競業を通じて獲得した経済的利益を会社に移転させることができるというものです。しかし、損害額の推定と効果にあまり差がなかったことから、現在の会社法では削除されています。

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競業行為に対する損害賠償請求

ここでは、競業避止義務を違反した際に行う損害賠償請求について解説します。

競業避止義務を違反した場合は、その従業員もしくは取締役に対して、会社側が損害賠償請求を行うことができます。しかし、競業避止義務を違反した相手に行った損害賠償請求が認められたケースはあまりありません。

競業避止義務の違反について損害賠償を請求する際は、「競業避止義務を違反した際の措置が合理的かどうか」を含め、「競業避止義務の違反に相当する損害を立証・主張できるか」も大きな論点になります。この損害の立証は非常に難しい作業です。

①競業避止義務違反における損害賠償を請求するポイント

競業避止義務の違反に相当する損害を立証する際は、競業避止義務を違反した従業員・取締役によって、会社がどれだけ利益を損失したのかを正確かつ具体的に把握しなければなりません。基本的に「損害」とは逸失利益(将来の得られなくなった収入)として金銭に換算されますが、すべての損害が金銭として数値化できるものとは限りません。

損害の中には、従業員の引き抜きや顧客を奪われたことなども含まれます。それらの損害を金銭に換算するには、人材の流動性や市場の動向などといった事柄を踏まえたうえで合理性のある算定を行う必要があります。

さらに、逸失利益が発生した期間についても、会社が競業避止義務の違反によって発生した損失からどれくらいで回復できるかどうかが検討されます。

また、競業避止義務の違反に対する措置自体に合理性がなければ、損害賠償請求が棄却されてしまう恐れもあります。従業員との間に競業避止義務契約を締結する際には、競業避止義務契約の合理性をきちんと意識して設定するようにしておきましょう。

②競業避止義務契約の設定段階から弁護士に相談を

もし確実に競業避止義務の違反に対する損害賠償請求を通したい場合は、競業避止義務契約の設定の段階から法律のプロフェッショナルである弁護士の力を借りていることをおすすめします。紛争解決のプロである弁護士であれば、万が一訴訟に発展したとしてもしっかりとバックアップしてくれるでしょう。

また、M&Aの際は、いかに相性のいい売り手を見つけられるかも重要です。そもそも相性のいい売り手なら、トラブルが起こるリスクも低いです。相性のいい売り手を見つけたいなら、M&A総合研究所のM&Aプラットフォームをご利用ください。

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退職後の競業避止義務の効力

ここでは、従業員・取締役の退職後の競業避止義務の効力について解説します。

競業避止義務を巡るトラブルは、従業員・取締役の退職後に発生することが多いです。この際に重要視されることは、憲法に定められている「労働者の職業選択の自由」と照らし合わせたうえで、どこまで従業員・取締役の再就職先に制限をかけられるかという点です。

①就業規則などの効力

基本的に、労働者は再就職においてどの職業を選ぶかは自由であり、かつての会社であっても厳密な制限をかけることはできません。しかし、就業規則などに、過剰に侵害しない範囲で職業選択の自由に関する競業避止義務についての条項を設けることで、ある程度の効力を持たせることができます。

しかし、就業規則が曖昧で非合理的なものであると競業避止義務の効力はないものとして扱われてしまいます。そもそも裁判所の判断基準も決して明確ではありません。そのため、就業規則などに、会社独自に合理的かつ具体的な条項を設けることに尽力する必要があります。

②競業避止義務の効力が及ぶ期間

競業避止義務の効力が及ぶ期間に関しても、あまりに期間を長く設定すると非合理的な措置とみられる可能性が高くなります。競業避止義務の効力が発生する期間は1~3年程度であり、それ以上の長さになると非常に厳密な合理性が求められるので注意しましょう。

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事業譲渡における競業避止義務

まとめ

経営者の立場であれば、会社の利益を守るため、競業避止義務について厳格に設定しておきたいのが本音です。しかし、従業員・取締役の職業選択の自由を侵害することは憲法義務違反であり、また感情に任せた非合理的な措置は認められません。

過去の判例を見ればわかるように、競業避止義務に関する条項の設定は「合理性」というファクターが重視されることを意識しておくようにしておきましょう。

要点をまとめると、下記になります。

・競業避止義務の意味

 →「競業避止義務」とは、自社の利益を損ねるような行いを禁ずること

・取締役の競業避止義務について

 →取締役会が所属している会社と同じような営業を行う際には、取締役会から承認を得る必要がある

・競業行為に対する損害賠償請求について

 →競業避止義務を違反した場合は、会社側が損害賠償請求を行うことができる

・退職後の競業避止義務の効力

 →就業規則などに記載することで、ある程度の効力を持たせることができるが、競業避止義務の効力が発生する期間は1~3年程度

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