2021年4月28日更新資金調達

資金調達コスト

ビジネスを拡大させ、経営を継続していくためには資金調達が必要不可欠です。しかし、資金を調達するとなればコストも必要になります。今回は、資金調達におけるコストの概要やコストを抑える調達方法などについて詳しく解説していきます。

目次
  1. はじめに
  2. 資金調達コストとは
  3. 株主資本コストと負債コスト
  4. 資金調達コスト(WACC)の算出方法
  5. 資金調達コストが安くなる調達方法
  6. まとめ
  • 今すぐ買収ニーズを登録する
  • 公認会計士がM&Aをフルサポート まずは無料相談

【※メルマガ限定】プレミアムM&A案件情報、お役立ち情報をお届けします。

はじめに

会社を経営する中で、資金調達が必要となる場面は意外と多く、ビジネスを拡大させ経営を継続していくためには必要不可欠なことです。しかし、実際に資金を調達するとなると、どの程度のコストがかかるかご存じない方も多いのではないでしょうか?

資金調達には借り入れや増資などさまざまな方法があり、それぞれの方法で調達コストが異なっています。正確な資金調達コストを把握するためには、ファイナンス、会計に関する専門的な知識が必要です。

そこで今回は、資金調達コストに関してわかりやすくご紹介します。企業ファイナンスの基礎となるため、経営者の方は必見です。

資金調達コストとは

資金調達コストとは、文字通り「資金調達する際に必要になるコストのこと」です。

借り入れや増資などさまざまな資金調達手段があり、健全な経営を続けるためには、資金調達コストを正確に把握しておく必要があります。

またM&Aを行ううえでも、会社を買収するためには多額の資金が必要です。買い手は資金調達のコストを考慮しておかなければなりません。

※関連記事

中小企業が資金調達を成功させる方法とは?現状や課題を解説

株主資本コストと負債コスト

会社が資金を調達する際のコストには、大きく分けて2つの方法があります。

1つ目は株主からの投資「株主資本コスト」、そして2つ目は銀行や金融機関等からの借り入れである「負債コスト」です。株主からのお金は「投資」と考えられ、銀行融資などの借り入れは「負債」と考えられます。

①株主資本コスト

はじめに、「株主資本コスト」について説明します。

「株主資本コスト」とは、株主から資金調達する際に必要になるコストをさします。具体的には、増資による資金調達のコストです。企業が株式を発行して調達する際に必要になります。

株主は、リターン(配当金) を期待して投資を実施しています。そのため、最低でも期待されている収益率を株主に分配する必要があります。

会社にとって株主に支払う分配は、資金調達に要するコストであると考えられるため、株主資本コストは株主が要求するリターン(要求収益率)と同じであると言えるのです。

ただし、一般的な中小企業の場合、株主資本コストは考慮しなくても問題ないでしょう。なぜなら、株主と経営陣が一致していることが多いからです。経営陣が株主である場合、ほとんどの中小企業では配当金を配りません。そのため、株主資本コストはかからないものであると言えます。

株主資本コストの計算方法

負債コストとは違い、株主資本コストに明確な数値は存在しません。なぜなら、株主ごとに要求する収益率が異なるからです。そこで、ビジネスの現場では、「CAPM」と呼ばれるモデルを利用します。

「CAPM」は、主にM&Aの企業価値評価(DCF法)に必要となる割引率(WACC)を計算する際に用いられるものです。株主資本コストを用いてWACCを計算し、そのWACCを用いてM&Aで必要となる企業価値を算出します。

「CAPM」では、下記の計算式によって株主資本コストを計算することができます。

  • 株主資本コスト=リスクフリーレート+β×市場リスクプレミアム

リスクフリーレート

「リスクフリーレート」とは、投資する際のリスクがほぼ0の資産から得られる収益率です。具体的には、銀行預金や長期国債の収益率が該当します。

β(ベータ)

「β」は、その資産が市場の動きに対して、どの程度変動するかを表す数値です。「β」が大きいほど、リスクが大きいと言われています。

リスクプレミアム

「リスクプレミアム」とは、ある資産に期待していたリターン(配当金)から、無リスクで得られる収益率(リスクフリーレート)を差し引いた残りのことです。そのため、「リスクプレミアム」は、一定のリスクを負って得られる収益率とも言えます。

このように、株主資本コストの算出は非常に複雑で難しいものですが、中小企業の場合、基本的には株主資本コストは0であるため、使いこなせなくても問題はありません。

②負債コスト

次に、「負債コスト」について説明します。

「負債コスト」とは、銀行から借り入れをする際に発生するコストのことです。負債による資金調達では、ほぼ利子の支払いが発生します。よって、負債コストは、負債の利子率(支払利息の利率)となります。

「負債コスト」は、「株主資本コスト」とは違い、非常に簡単に算出することができます。そのため、多くの中小企業では、負債による資金調達を実施しており、「資金調達コスト=負債コスト」となるのが一般的です。

負債コストの計算方法

負債コストは、下記計算式によって計算できます。

  • 負債コスト=支払利息の利率×(1−法人税率)

ここで注目したいのが「(1−法人税率)」の部分です。負債の利子支払い分は損金算入できます。損金算入すると、その分税金の支払いが減少します。

つまり、利子の支払い分だけ、節税の効果が生じるということです。資金調達コストを考える際は、節税効果を考慮する必要があるため注意しましょう。

※関連記事

資本コスト

有利子負債=悪とは限らない

資金調達コスト(WACC)の算出方法

ここまでは、「株主資本コスト」と「負債コスト」の概要と計算方法について紹介してきました。先述した通り、会社が資金を調達したい場合は「株主資本コスト」と「負債コスト」によって資金を調達します。

しかし、資金調達コスト(WACC)を求める場合は、株主資本コストと負債コストを加重平均しなくてはなりません。

ここでは、資金調達コスト(WACC)の概要や計算方法を解説します。フリーキャッシュフロー(FCF:自由に使える資金)の計算にとって、非常に欠かせない概念です。しっかりと押さえておきましょう。

①資金調達コスト(WACC)

資金調達コストを考える際は、株主資本コストと負債コストの双方を考慮することが重要です。そこでビジネスの現場では、「WACC」と呼ばれる指標が用いられます。

「WACC」とは、株主資本コストと負債コストの加重平均します。加重平均とは、単純に数値を平均するのではなく、値の重み(=ウェイト値)を加味したうえで平均することです。従って、「WACC」とは各コストの重みを考慮した資金調達コストになります。

また、資金調達のコストを下げるためには、WACCを下げる必要があります。そのためには、負債の割合を増やす方法がベストです。ただしその分、倒産リスクが高まる点には注意しなくてはなりません。

もしくは、株主に対する情報伝達を工夫することも効果的です。投資するリスクが高いと判断されれば、株主資本コストも高まります。安心して投資できる会社だと証明できれば、資金調達コストを下げられる可能性があります。

②資金調達コスト(WACC)の計算方法

資金調達コスト(WACC)は、下記の式で計算できます。

  • 資金調達コスト(WACC)={E×rE+D×rD×(1−t)}÷E+D

E=時価株主資本総額

株式の時価総額のことです。株価に発行済み株式数を掛けて算出します。

rE=株主資本コスト

「株主資本コスト」は負債コストとは違い、株主資本コストに明確な数値は存在しません。そのため、「CAPM」と呼ばれるモデルを利用します。

  • 株主資本コスト=リスクフリーレート+β×市場リスクプレミアム

D=有利子負債総額

金利や社債クーポンを付けて返済しなければならない債務のことです。簡単に言うと、利子が付いている負債額のことをいいます。

rD=負債コスト

銀行融資や債権者からの借り入れに対して支払う利息のことです。つまり、負債コストは負債の利子率(支払利息の利率)となります。この利息は会社によって異なるため、当然利率の低い融資を選択すれば資本コスト自体も高額にはなりません。

t=実効税率

税金の負担額のことです。法人の所得金額に対する法人税、地方法人税、住民税、事業税の額の合計額の割合、つまり合計税率をいいます。損金として算入される税金を考慮し、基本的には40%で計算します。

※関連記事

事業価値

資金調達コストが安くなる調達方法

最後に、資金調達コストが安くなる資金調達方法をご紹介します。

  1. 増資
  2. 内部留保
  3. 負債の借り入れ

①増資

増資とは、新株発行によって資金調達する方法です。増資だけを行った場合、株主資本コストが資金調達コストとなります。つまり、株主の要求収益率の分だけコストがかかることになります。

②内部留保

内部留保とは、会社内に貯めてある利益のことです。つまり、会社の貯金のことをいいます。利益から法人税などの税金を支払い、その後の残りが内部留保となります。従って、法人税などの税金が内部留保に要する資金調達コストに該当します。

しかし、法人税などによって、2~3割の利益が失われるため、内部留保による資金調達に頼ることはあまり合理的ではありません。

③負債の借り入れ

最後に、負債の借り入れによる資金調達コストを考えて見ましょう。負債の借り入れのみを考えると、負債コスト(支払利息の利率)が資金調達コストということになります。

負債コストを計算する際は、利息支払いで生じる節税効果分を差し引くことができるため、負債コスト自体が低くなる傾向にあります。

仮に同じ金額を資金調達する場合は、増資よりも借り入れのほうが資金調達コストが安く済みます。一般的に、「負債の借り入れ」というとマイナスなイメージが持たれていますが、資金調達コストを考えると、最も有利な資金調達の方法ともいえるでしょう。

しかし、すべての資金調達を借り入れで済ませることはおすすめできません。なぜなら、借り入れを増やすほど倒産リスクも高まってしまうからです。当然ながら、支払利息が払えないと資金繰りは悪化してしまい、経営継続が困難となる可能性もあります。

資金調達をする際はさまざまな資金調達方法を併用するなど、リスクとリターンのバランスをとりながら、自社に合った方法を選ぶことが大切です。

※関連記事

資金調達方法について解説します

M&A実施の資金調達コストでお悩みの経営者様は、ぜひ一度M&A総合研究所にご相談ください。M&Aアドバイザーが親身にフルサポートいたします。

M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。

M&A・事業承継ならM&A総合研究所

まとめ

今回は、資金調達コストについてご紹介しました。資金調達コストには、株主資本コストと負債コストがあり、双方を考慮する際にはWACC(加重平均資本コスト)を資金調達コストとして用いるのが一般的です。WACCを計算することで、設備投資やM&Aの意思決定の参考になります。

また、資金調達にはさまざまな方法があります。理論上は、負債による資金調達を行うことが最も資金調達コストを抑えられますが、負債のみに頼ると資金繰りが苦しくなる恐れがあるため、会社を経営していくうえではさまざまな資金調達方法を併用することをおすすめします。

要点をまとめると、下記になります。

・資金調達コストとは?
資金調達する際に必要になるコストのこと

・株主資本コストとは?
資金調達コストの1つで、株主から資金調達する際に必要になるコストのこと

・負債コストとは?
資金調達コストの1つで、銀行から借り入れをする際に発生するコストのこと

・資金調達コスト(WACC)の算出方法
資金調達コスト(WACC)={E×rE+D×rD×(1−t)}÷E+D

・資金調達コストが安くなる調達方法
増資、内部留保、負債の借り入れ

M&A・事業承継のご相談なら24時間対応のM&A総合研究所

M&A・事業承継のご相談は成約するまで無料の「譲渡企業様完全成功報酬制」のM&A総合研究所にご相談ください。
M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴をご紹介します。

M&A総合研究所が全国で選ばれる4つの特徴

  1. 譲渡企業様完全成功報酬!
  2. 最短49日、平均6.6ヶ月のスピード成約(2022年9月期実績)
  3. 上場の信頼感と豊富な実績
  4. 譲受企業専門部署による強いマッチング力
>>M&A総合研究所の強みの詳細はこちら

M&A総合研究所は、M&Aに関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによって、相談から成約に至るまで丁寧なサポートを提供しています。
また、独自のAIマッチングシステムおよび企業データベースを保有しており、オンライン上でのマッチングを活用しながら、圧倒的スピード感のあるM&Aを実現しています。
相談も無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。

>>【※国内最安値水準】M&A仲介サービスはこちら

【※メルマガ限定】プレミアムM&A案件情報、お役立ち情報をお届けします。

あなたにおすすめの記事

M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!

M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!

近年はM&Aが経営戦略として注目されており、実施件数も年々増加しています。M&Aの特徴はそれぞれ異なるため、自社の目的にあった手法を選択することが重要です。この記事では、M&am...

買収とは?用語の意味やメリット・デメリット、M&A手法、買収防衛策も解説

買収とは?用語の意味やメリット・デメリット、M&A手法、買収防衛策も解説

買収には、友好的買収と敵対的買収とがあります。また、買収に用いられるM&Aスキーム(手法)は実にさまざまです。本記事では、買収の意味や行われる目的、メリット・デメリット、買収のプロセスや...

現在価値とは?計算方法や割引率、キャッシュフローとの関係をわかりやすく解説

現在価値とは?計算方法や割引率、キャッシュフローとの関係をわかりやすく解説

M&Aや投資の意思決定するうえでは、今後得られる利益の現時点での価値を表す指標「現在価値」についての理解が必要です。今の記事では、現在価値とはどのようなものか、計算方法や割引率、キャッシ...

株価算定方法とは?非上場企業の活用場面、必要費用、手続きの流れを解説

株価算定方法とは?非上場企業の活用場面、必要費用、手続きの流れを解説

株価算定方法は多くの種類があり、それぞれ活用する場面や特徴が異なります。この記事では、マーケットアプローチ、インカムアプローチ、コストアプローチといった株価算定方法の種類、株価算定のプロセス、株...

赤字になったら会社はつぶれる?赤字経営のメリット・デメリット、赤字決算について解説

赤字になったら会社はつぶれる?赤字経営のメリット・デメリット、赤字決算について解説

法人税を節税するために、赤字経営をわざと行う会社も存在します。しかし、会社は赤字だからといって、必ず倒産する訳ではありません。逆に黒字でも倒産するリスクがあります。赤字経営のメリット・デメリット...

関連する記事

事業再構築補助金はM&Aでも利用できる?要件や活用方法・補助額まで徹底解説!

事業再構築補助金はM&Aでも利用できる?要件や活用方法・補助額まで徹底解説!

事業再構築補助金は要件を満たせば、中小企業や中堅企業に補助金を支給する制度です。中にはM&Aを実施するときに制度を利用する企業も存在します。この記事ではM&Aを実施しても事業再構...

DDSとは?DESとの違いや手順・活用方法・メリット・デメリットまで解説!

DDSとは?DESとの違いや手順・活用方法・メリット・デメリットまで解説!

企業再建手法の1つとして注目されているDDS。そんなDDSとよく似た言葉にDESがありますが、それぞれの違いは何なのかを本記事で解説していきます。またDDSを実施する手順や活用方法、メリットやデ...

CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)とは?メリット・デメリットを解説!

CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)とは?メリット・デメリットを解説!

ベンチャー企業へ投資をするCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)。VC(ベンチャーキャピタル)と混同されがちなCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)とは何なのか、活用するメリット・デメリ...

エンジェル投資家について徹底解説!メリットやデメリット・探し方は?

エンジェル投資家について徹底解説!メリットやデメリット・探し方は?

企業がイグジット(上場、ハイバリエーションでの売却)をした際のキャピタルゲインを目的とした投資を行うエンジェル投資家。返済義務がない投資をメインとしているエンジェル投資家について知らない人も多い...

シード期とは?定義やスタートアップの資金調達方法・成功のポイントを解説!

シード期とは?定義やスタートアップの資金調達方法・成功のポイントを解説!

成長していく過程においてIPOやM&Aを活用することも重要ですが、具体的にどのようなポイントを抑えれば良いのでしょうか。 この記事では、シード期の定義やスタートアップの資金調達方法・成...

M&Aにおけるエスクローの意味とは?メリット・デメリットについて紹介!

M&Aにおけるエスクローの意味とは?メリット・デメリットについて紹介!

日本のM&Aでは、活用されているケースは少ないとされている仲介サービス「エスクロー」があります。海外では多く活用されていますが、この「エスクロー」とはどういう意味なのでしょうか。ここでは...

投資銀行のM&Aにおける役割とは?部門ごとの業務内容や違いを解説!

投資銀行のM&Aにおける役割とは?部門ごとの業務内容や違いを解説!

投資銀行は銀行の一種ではないと聞くと、驚かれる方が多いかもしれません。投資銀行は、銀行業ではなく証券業に分類されます。本記事では、投資銀行の概要、投資銀行がM&Aにおける役割、投資銀行の4大業務...

スケールメリットが経営に与える効果は?意味や仕組みを具体例に徹底解説!

スケールメリットが経営に与える効果は?意味や仕組みを具体例に徹底解説!

スケールメリットとは、同種の業種やサービスが多く集まることで単体よりも大きな成果を生み出せることです。会社経営を行う際、不必要な経費を活用しているケースが多いです。このような課題を解決できるスケ...

株式分割とは何?仕組みやメリット・デメリットなどをわかりやすく解説!

株式分割とは何?仕組みやメリット・デメリットなどをわかりやすく解説!

株式分割とは、1株をいくつかに分割して、発行済みの株式枚数を増やすことです。株式分割には企業側、投資家側にメリット・デメリットが存在します。理解していないとトラブルに発展する可能性があります。そ...

M&Aコラム
人気の記事
最新の記事

【※メルマガ限定】プレミアムM&A案件情報、お役立ち情報をお届けします。

ご相談はこちら
(秘密厳守)