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2021年1月21日更新会社・事業を売る
M&Aにおける占禁止法の規制とは?規制内容、リスク、対策を解説
大企業がM&Aを行う時、独占禁止法の規制が関係してくることがあります。本記事では、M&Aと独占禁止法の関係について、規制内容とリスク、対策法を解説します。加えて、クロスボーダーM&Aを行う時に注意しておきたい、海外の独占禁止法についても概要を解説します。
目次
M&Aにおける独占禁止法の規制とは?
独占禁止法は、健全な市場経済を維持するために、市場のメカニズムに悪影響を及ぼすような行為を規制する法律です。正式名称は「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」といいます。
市場では、企業がより良い製品やサービスを提供すべく互いに競うことで、質の高い製品・サービスが適正な価格で提供されます。
しかし、例えば企業同士が談合して価格をつり上げたり、特定の企業だけが大きなシェアを持って価格を決めてしまうと、消費者は不当に高い価格で製品・サービスを購入せざるを得なくなってしまいます。
そういった事態を起こさないために、独占禁止法により企業が守るべきルールが規定されています。
具体的には、以下のような行為が規制されています。
【独占禁止法で規制される行為】
- 私的独占
- カルテル
- 入札談合
- 共同の取引拒絶
- 再販売価格の拘束
- 優越的地位の汎用
- 競争制限的な企業結合
M&Aにおける独占禁止法
M&Aは他の企業を買収したり吸収したりする取引を含むので、買収・吸収した企業は業界でのシェアが拡大します。
そのため、買収規模が大きい場合は独占禁止法の規制対象となる可能性があり、適切な届出や対処を行う必要が出てきます。
M&Aにおいて独占禁止法を考慮する必要があるのは大規模な買収の時で、中小企業の事業承継などの場合は特に気にする必要はありません。
M&Aにおける独占禁止法の規制内容
M&Aを行う時に関係する独占禁止法の規制には、実体規制と届出規制があります。この章では、実体規制・届出規制の内容と対象、判断基準について解説します。
【M&Aにおける独占禁止法の規制の種類】
- 実体規制
- 届出規制
実態規制の内容
実体規制とは、独占禁止法に抵触しているM&Aに対して、その取引自体を規制することです。
対象は?
公正取引委員会の「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」によると、企業結合審査の対象となる取引は以下のとおりです。
企業結合審査の結果M&Aの内容に問題があると判断されると、独占禁止法の規定に従い、排除措置命令や課徴金の納付命令が出されます。
【企業結合審査の対象となる取引】
- 株式保有
- 役員の兼任
- 合併
- 分割
- 共同株式移転
- 事業譲受け等
判断基準は?
実体規制は、届出規制のように具体的な数字で基準が設けられているわけではありませんが、独占禁止法によると、以下の2つのケースに該当する取引を禁止すると定められています。
【M&Aにおける独占禁止法の実態規制の判断基準】
- 一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合
- 不公正な取引方法による企業結合が行われる場合
届出規制の内容
独占禁止法に抵触しないM&Aであっても、規模が大きい場合は公正取引委員会に届出を行う必要があり、これを届出規制といいます。
届出規制の対象となるM&Aの規模は、使用するM&Aの手法によって変わってきます。自分が使用するM&A手法の規定を確認して、間違えないようにしておくことが重要です。
対象は?
独占禁止法の届出規制対象となる企業結合の種類は以下のとおりです。まずは自分がM&Aで使用するスキームが当てはまるかどうか確認しましょう。
【独占禁止法の届出規制の対象となるM&A手法】
- 株式譲渡
- 事業譲渡
- 合併
- 共同新設分割
- 吸収分割
- 共同株式移転
判断基準は?
届出規制の対象となるかどうかの判断基準については、各M&A手法によって取り決めがあるので、M&A仲介会社などの専門家に相談するか、公正取引委員会のHPを参照するなどしてご確認ください。
一例として株式取得では、株式を取得する会社とそのグループ企業全体(企業結合集団)の売上高がトータル200億円を超え、かつ株式を取得される側の会社とその子会社の売上高の合計が50億円を超える場合、届出規制の対象となると定められています。
他の手法においても、買い手側・売り手側それぞれに売上高の基準が設けられるのが一般的です。
独占禁止法における届出規制の判断は、グループ企業全体の売上高を基準にするので、M&Aを行う会社自体に売り上げがほとんどない、または全くない場合でも、独占禁止法の届出規制の対象となる場合があるのが注意点です。
公正取引委員会による詳細
どういった条件が独占禁止法の届出規制にあたるかは、公正取引委員会のHPで詳細を確認することができます。
前節の繰り返しになりますが、例えば株式取得の場合は、株式を取得しようとする企業結合集団の売上高の合計が200億円以上、株式を譲渡する会社(株式発行会社)とその子会社の売上高の合計が50億円以上です。
それに加えて、取得する議決権が新たに20%又は50%を超えるという条件もあります。
この詳細を見ると、グループ会社といっても「企業結合集団」「株式発行会社及びその子会社」など定義が違ったり、会社の規模以外に議決権の割合などの条件があったりと、初めて見る人にとって間違えやすい部分があります。
M&Aを行う際は、やはり独占禁止法に詳しい専門家に相談する必要があるといえます。
M&Aにおける独占禁止法のリスク
M&Aでは独占禁止法に抵触しないように気をつけるのは当然ですが、たとえ十分気をつけていたとしても、思わぬリスクが発生してM&Aが失敗してしまう恐れもあるので注意が必要です。
例えば、公正取引委員会による審査が予想以上に長引いてしまい、M&Aのスケジュールが遅れて頓挫してしまうというケースは、主に大企業のM&Aで見られることがあります。
特に、企業結合審査が2次審査までもつれこんだ場合は、審査終了までの期間が予測しづらくなるので注意が必要です。
M&Aにおける独占禁止法の違反対策
M&Aにおける独占禁止法の違反対策は、実体規制に抵触しないか十分に確認することと、届出規制の対象にあたる場合は必ず届出を行うことです。
企業結合審査では、役員の兼任といった一見M&Aと関係なさそうな行為も対象となるので、見落とさないようにしておくことが重要です。
届出審査に関しては、使用するM&A手法によってそれぞれルールが決められているので、専門家のサポートのもとしっかり確認しておくことが大切です。
海外M&Aにおける独占禁止法
日本に限らず海外の国々でも独占禁止法にあたる法律がありますが、その内容は国によって違いがあります。
海外展開している企業やクロスボーダーM&Aを検討している企業は、この点を注意しておかないと思わぬトラブルに巻き込まれる恐れもあります。
この章では、海外の独占禁止法の例としてアメリカ・EU・中国をとり上げ、各国の独占禁止法の概要を見ていきます。
アメリカの場合
アメリカで日本の独占禁止法にあたるのは「反トラスト法」という法律で、これは「シャーマン法」「クレイトン法」「連邦取引委員会法」という3つの法律の総称です。
シャーマン法はカルテルなどの禁止行為とその罰則の規定、クレイトン法は企業結合などに関する規定、連邦取引委員会法は不公正な競争などの規制を定めています。
EUの場合
EUではEU機能条約に基づき、企業結合や競争制限的な行為について規制が定められています。
EU機能条約では、違反行為に対して「総売上高の10%までの制裁金を課すことができる」と定められており、場合によってはかなりの高額となるので注意が必要です。
過去にはGoogleやマイクロソフト、インテルなどの大企業に、1,000億円以上の制裁金が課された事例があります。
中国の場合
中国では「中華人民共和国独占禁止法」によって、企業結合や独占的協定などに規制がかけられています。中国は他国に比べて、審査期間が長く期間の予想がしづらいといわれているので注意が必要です。
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まとめ
本記事では、M&Aにおける独占禁止法について解説しました。
ほとんどの中小企業のM&Aでは独占禁止法が絡んでくることはありませんが、大きなグループ企業の一つである場合は関係してくることもあるので、ルールをよく理解してトラブルが起こらないように注意しましょう。
【独占禁止法で規制される行為】
- 私的独占
- カルテル
- 入札談合
- 共同の取引拒絶
- 再販売価格の拘束
- 優越的地位の汎用
- 競争制限的な企業結合
【M&Aにおける独占禁止法の規制の種類】
- 実体規制
- 届出規制
【企業結合審査の対象となる取引】
- 株式保有
- 役員の兼任
- 合併
- 分割
- 共同株式移転
- 事業譲受け等
【M&Aにおける独占禁止法の実態規制の判断基準】
- 一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合
- 不公正な取引方法による企業結合が行われる場合
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株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。