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M&Aの税務

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

M&A手法ごとに、それぞれ税務知識が必要となります。例えば、株式譲渡による発生する課税や税務。また、事業譲渡、組織再編で発生する課税や税務について解説します。経営者、M&Aアドバイザリーの方必須となる税務知識をお伝え致します。

目次

    M&Aの税務

    ここ数年、M&Aの件数が増加しています。

    従来とは違い、大企業のみならず中小企業までもがM&Aを活用する動きを見せています。

    一昔前までは、自社の力で着実にスケールアップを図る経営手法が一般的でした。

    近年は市場の変化が激しくなり、従来の経営戦略が通用しなくなっています。

    例えば国内市場の縮小やプロダクトライフサイクルの縮小、多種多様な要因が絡み合っています。

    激化した市場で生き残る為には、スピードと効率性を重視した経営が欠かせません。

    自社の力のみでは、市場の移り変わりについていくことは難しくなりました。

    スピードと効率性を両立できる戦略として、M&Aの活用は非常に有効です。

    しかし、M&Aは専門知識を必要とし、法律や経営、IT等多角的な知見が求められます。

    その中でも特に、税務はM&Aにとって不可欠です。

    M&Aを実行すると必ず税金が発生します。

    M&Aで生じる税金を減らす為には、節税対策を施す必要があります。

    M&Aと税務は切り離せない関係です。

    ただし、M&Aの手法によって必要となる税務知識は異なります。

    つまり、M&Aで必要となる税務知識は多岐に渡ります。

    この記事では、手法ごとにM&Aの税務について詳しくご紹介します。

    自社のM&Aに合わせ、必要な税務の知識を身につけてください。

    M&Aを検討している経営者、税務担当者の方必見です。

    株式譲渡によるM&Aの税務

    まず初めに、株式譲渡によるM&Aの税務を解説します。

    中小企業のM&Aは、株式譲渡によって実行されるケースが大半です。

    よって中小企業の方は、この項で説明する税務知識を重点的に習得してください。

    ⑴株式譲渡によるM&Aとは

    株式譲渡では、経営者が保有する自社株を第三者に売却する形で、M&Aが実施されます。

    株式を用いたM&A手法である為、個人事業主の方は活用できません。

    買い手側の企業は、株式の対価として現金を渡します。

    株式会社では、持ち株数に応じて行使可能な権利が異なります。

    経営権を行使する為には、最低でも3分の2以上の自社株保有が必須です。

    3分の2以上を保有していれば、特別決議を一人で遂行できます。

    よってM&Aでは、3分の2以上の株式譲渡が基本となります。

    中小企業のM&Aに限れば、全株式の譲渡がベストとされています。

    前述の通り、株式譲渡は中小企業のM&Aで最も利用されている手法です。

    その背景には、手続きの簡便さがあります。

    他のM&A手法と比べて、特別決議等の面倒な手続きは不要です。

    ⑵株式譲渡に関する税務

    株式譲渡によるM&Aでは、買い手側に株式が交付されます。

    その対価として、売り手側は現金を獲得します。

    よって通常の株取引と同様に、株式の売却益(キャピタル・ゲイン)に課税されます。

    ただし、株式を売却するのが個人か法人かによって、税務上の考え方は異なります。

    ここでは、個人と法人それぞれの税務をお伝えします。

    ①個人によるM&Aの税務

    個人の場合キャピタルゲインは、税務上は譲渡所得と見なされます。

    譲渡所得は申告分離課税によって、課税が発生します。

    つまり、他の事業所得や給与所得とは分離した上で、税務について考えなくてはいけません。

    ②法人によるM&Aの税務

    個人の場合キャピタルゲインは、税務上は会社が得た利益だと見なされます。

    つまり普段の事業で得た利益と同様に、法人税が課税されます。

    個人の場合とは違い、他の所得と合算した上で、税務を考える必要があります。

    ⑶株式譲渡で生じる税金

    売り手の株主次第で、M&Aの税務が変わってきます。

    ここでは、個人と法人に分けて解説します。

    ①個人によるM&Aの税金

    M&Aで得た譲渡所得に対して、所得税が発生します。

    譲渡所得の金額とは無関係に、一律で20.315%(所得税15.315%、住民税5%)の課税となります。

    譲渡所得は、M&Aで得た売却金額から、取得費やM&Aに要した費用を差し引くことで求められます。

    つまり会社の設立費用や、M&Aアドバイザリーに支払った費用を差し引きます。

    ただしM&Aの現場では、取得費を把握できないケースがあります。

    その場合は、売却代金の5%を取得費として代用可能です。

    この仕組みは、概算取得費と呼ばれます。

    以上が、個人によるM&Aにおける税務となります。

    まとめると、下記の計算式で課税される税額を計算可能です。

    • 税額=譲渡所得(売却金額−各費用)×20.315%

    ②法人によるM&Aの税金

    M&Aで獲得した譲渡益に対して、法人税が課されます。

    譲渡所得とは違い、税率は会社によって変わります。

    法人税率は、会社によって15%から23%程度となります。

    よって実際どの程度の税金が課されるかは、各企業によって異なります。

    法人株主がM&Aを行う際には、自社の状況に合わせて税務を考えなくてはいけません。

    ⑷株式譲渡の節税対策

    株式譲渡を用いたM&Aでは、節税対策が可能な場合があります。

    具体的には、役員退職金の制度を活用します。

    役員退職金とは、経営陣が退職する際に支払われる退職金です。

    一定金額の範囲内においては、退職金に対する税率の方が、譲渡所得に対する税率よりも有利となります。

    つまり有利な範囲内で、譲渡金額の一部を退職金として受領します。

    そうすれば、M&Aで支払う税金を抑制できます。

    ただしこの対策を活用する為には、税務の知識が必要です。

    よって、税務に詳しいM&Aアドバイザリーに相談した上で、節税対策を実施しましょう。

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    株式譲渡とは?メリット・デメリット、M&A後の社員や税務を解説

    事業譲渡によるM&Aの税務

    次に、事業譲渡によるM&Aの税務を解説します。

    中小企業のM&Aでは、株式譲渡に次いで利用される手法です。

    よって中小企業の経営者は、事業譲渡の税務も知っておくのが望ましいです。

    ⑴事業譲渡によるM&Aとは

    事業譲渡では、自社内の事業や資産の一部を第三者に売却する形で、M&Aが遂行されます。

    M&Aクロージングの際に、買い手側は対価として現金を渡します。

    株式を用いないM&A手法である為、個人事業主の方でも活用可能です。

    会社全体ではなく、一部の事業分野のみを売買する目的で実施されます。

    売り手側には、主力の事業に集中できるメリットがあります。

    一方で買い手側には、簿外債務や偶発債務を除外した上で、M&Aをできるメリットがあります。

    事業譲渡を行う売り手側には、法律によって20年の競業避止義務が発生します。

    競業避止義務は、買い手側がM&Aによって確実に利益を得る為に存在します。

    一部の事業のみを売却できる点では、柔軟に活用できます。

    ただし他の手法と比べて、手続きが非常に複雑です。

    M&A実行の為に、特別決議が必須となります。

    また、事業の全部譲渡の条件に該当する場合には、債権者保護手続きも必要です。

    プロセスが非常に面倒である為、中小企業のM&Aでは株式譲渡がよく利用されています。

    ⑵事業譲渡に関する税務の基本

    税務上は、M&Aによって会社が利益を手に入れたと見なされます。

    通常の事業で得た利潤と同様に、税務を考慮する必要があります。

    つまりM&Aによって、法人税と消費税が発生します。

    ①法人税

    事業譲渡では、資産と負債の差額分を超える売却代金に対して、法人税が発生します。

    ここでいう資産と負債とは、売却する事業に属する部分です。

    つまり、売却する事業の純資産を超過する部分が、課税対象となります。

    超過部分が0もしくはマイナスの場合、法人税は課税されません。

    ②消費税

    事業譲渡の税務を考える際、売却する資産を課税の可否で分類します。

    何故なら、消費税は課税資産に対してのみ課税されるからです。

    M&Aによって得た、売却代金の全てに課税される訳ではありません。

    課税資産と非課税資産について、具体的なものを幾つか紹介します。

    • 課税資産

    (土地以外の)有形固定資産、棚卸資産、のれん代(営業権)、無形固定資産

    • 非課税資産

    有価証券、売掛債権、土地

    事業譲渡におけるM&A税務を考える際は、資産の課税可否に注意しましょう。

    ⑶事業譲渡で生じる課税

    ここでは法人税と消費税に分けて、M&Aの税務を解説します。

    ①法人税

    売却金額のうち、純資産を超過する部分に法人税が発生します。

    前述の通り、法人税率は各企業毎に様々です。

    M&Aを行う際には、自社の法人税率を必ず確認しましょう。

    まとめると、下記の計算式で支払うべき法人税税額を計算可能です。

    • 譲渡益=売却金額−純資産相当額(資産−負債)
    • 法人税額=譲渡益×法人税率

    ②消費税

    一方で消費税は、課税資産にのみ課税されます。

    つまり、下記の計算式で支払うべき消費税額を計算可能です。

    • 消費税額=課税資産(売却金額−非課税資産)×消費税率(現行8%)

    ⑷税務上の注意点

    事業譲渡によってM&Aを行う際は、税務上いくつか注意すべき点があります。

    ①のれん代

    M&Aの税務を考える上で、のれん代は無視できません。

    のれん代とは、M&Aの売却価格のうち、時価純資産を上回る部分を指します。

    前述した法人税が課される金額と、基本的にはイコールです。

    またのれん代は、消費税が課される資産となります。

    つまりのれん代が大きいほど、法人税・消費税共に負担が増えます。

    事業譲渡によるM&Aでは、のれん代の金額に注意しましょう。

    のれん代が大きくなると予想される場合、他のM&A手法を用いた方が税務上有利となります。

    買い手の場合、のれん代を意識するなら売り手の選び方がポイントになります。
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    ②棚卸資産の変動

    棚卸資産とは、いわゆる在庫などを指します。

    棚卸資産も、前述の通り消費税が課される資産です。

    ところでM&Aの契約日から、実際に代金が支払われるまでには、時間が空くのが普通です。

    その間も、棚卸資産の額は日々変動します。

    契約で買収価格が決定されても、クロージング日の妥当価格とは異なる可能性があります。

    この難点を解消する為に、M&Aでは「価格調整条項」が設定される場合があります。

    価格調整条項の設定により、最終契約日からクロージング日までの企業価値変動が、買収価格に反映されます。

    つまりこの条項が設定される場合、課される税額は最後まで分かりません。

    M&Aの税務を考える際は、契約内容や棚卸資産も考慮しなくてはいけません。

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    事業譲渡とは?意味や方法、M&Aにおける活用​を解説

    組織再編によるM&Aの税務(組織再編税制)

    最後に、組織再編によるM&Aの税務を解説します。

    どちらかと言うと、大企業のM&Aで重視する税務となります。

    組織再編のM&Aを実行する方にとって、必見の税務知識となります。

    ⑴組織再編によるM&Aとは

    組織再編によるM&Aとは、組織再編を目的として行うM&Aです。

    組織再編目的で実施する主なM&A手法は、下記となります。

    • 会社分割
    • 合併
    • 株式交換
    • 株式移転

    組織再編目的のM&Aでは、他の手法とは税務の考え方が大きく異なります。

    次項からは、組織再編に関する税制を詳しく解説します。

    ⑵組織再編税制に関する税務

    組織再編を行う場合、組織再編税制に基づいてM&Aの税務を考えなくてはいけません。

    何故なら、ビジネスの売買目的のM&Aとは、税務上考え方が異なるからです。

    前述の通り、資産を第三者に移転(売却)すると、譲渡益が生じたと見なされます。

    そして譲渡益に対して、法人税が課されます。

    ビジネスの売買目的ならば、全く問題ありません。

    しかし組織再編が目的の場合、大きな問題に直面します。

    組織再編M&Aの場合、対価として株式を交付する場合が多いです。

    株式を対価として受け取る為、手元の現金が増える訳ではありません。

    それにも関わらず、法人税が生じてしまいます。

    実際の利益が無いのに税金が課されるのは、税務上非常に不合理です。

    そもそも利益獲得が目的では無い為、通常のM&A税務とは異なる考え方をすべきです。

    以上の問題を解決する為に、組織再編M&Aでは独自の税制が適用されます。

    一定条件を満たせば、譲渡益を発生させずにM&Aを実行できます。

    譲渡益が発生しないM&Aを、税務上は適格組織再編と呼びます。

    M&Aを行う際、適格組織再編の方が税務上有利です。

    ⑶組織再編で生じる課税(適格要件)

    組織再編M&Aを実施する際には、適格要件のクリアが税務上重要です。

    非適格の場合、税務的には圧倒的に不利なM&Aとなってしまいます。

    ここでは、適格組織再編の要件を簡単に解説します。

    税務上適格となる条件は、下記3パターンごとに異なります。

    1. 完全支配関係にある企業同士のM&A
    2. 50%超の支配関係にある企業同士のM&A
    3. 共同事業目的でグループ外企業と行うM&A

    上記3パターンに付いて、それぞれざっくり解説します。

    ①完全支配関係にある企業同士のM&A

    完全支配関係とは、片方企業がもう片方の企業の全株式を持っている関係です。

    完全支配関係同士のM&Aでは、株式以外の対価が交付されないのが大前提となります。

    ちなみにこの条件は、税務的には金銭不交付要件と呼ばれます。

    加えて、M&A以後も支配関係が維持されるのも要件となります。

    ②50%超の支配関係にある企業同士のM&A

    完全支配関係のケースと同様に、金銭不交付要件は必須です。

    また関係維持も、同様に満たさなければいけません。

    加えてこのケースでは、子会社従業員の約8割が、引き続き事業に従事するのも要件となります。

    ③共同事業目的でグループ外企業と行うM&A

    基本的には、支配関係であるのが税務適格の前提となります。

    しかし共同事業目的ならば、グループ外企業とのM&Aでも、適格要件が認められます。

    支配関係で述べた要件に加えて、役員や規模に関する要件も満たす必要があります。

    以上が、適格要件の概要となります。

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    組織再編税制

    まとめ

    今回はM&Aの税務について、各手法ごとに解説しました。

    M&A手法によって、必要となる税務知識が異なります。

    そもそも、税務上の考え方が異なります。

    M&Aの税務を考える際には、まずは何を用いてM&Aを実施するのかM&A手法を決定することが重要です。

    中小企業のM&Aでは、株式譲渡や事業譲渡の税務知識で事足りるでしょう。

    しかし大企業のM&Aでは、組織再編税制も把握しましょう。

    組織再編税制は、他のM&A税務とは異なる点が数多くあります。

    株式交換や合併を行う際には、通常のM&A以上に税務の観点を重視しなくてはいけません。

    要点をまとめると下記になります。

    • 株式譲渡によるM&Aとは

    →経営者が保有する自社株を、第三者に売却する形で行うM&A

    • 株式譲渡で生じる課税

    →個人では所得税等、法人では法人税等が課される

    • 事業譲渡によるM&Aとは

    →自社内の事業や資産の一部を、第三者に売却する形で行うM&A

    • 事業譲渡で生じる課税

    →法人に対して、法人税や消費税が生じる

    • 組織再編によるM&Aとは

    →会社分割や合併、株式交換、株式移転を用いたM&A

    • 組織再編で生じる課税

    →適格組織再編の場合には非課税

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