2021年4月29日更新節税

保険を活用した節税

企業にとっての保険は、単なる福利厚生として活用するだけでなく、節税対策として経営のコストを抑えこともできます。ただし、企業のいわゆる節税保険については、規制が厳しくなったため注意が必要です。今回は節税という観点から見た保険の活用方法と注意点を解説します。

目次
  1. 保険を活用した節税
  2. 保険を活用した節税の例
  3. 法人が節税に活用できる保険の種類
  4. 保険を活用した節税のメリット・デメリット
  5. 保険を活用する際の注意点
  6. まとめ

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保険を活用した節税

保険というと、医療保険や生命保険のように、病気やケガなど万が一の場合に備えるというイメージがありますが、場合によっては節税効果が期待できます

法人の場合は、保険は単なる福利厚生として活用するだけでなく、節税として活用することによって経営のコストを抑える使い方もできます。

ただし、保険を使った節税は、正確な知識を身につけておかなければ活用することができないので注意が必要です。

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保険を活用した節税の例

保険を使った節税の代表的な例として、以下の3パターンがあります。

  1. 生命保険を活用した相続税の節税
  2. 個人型確定拠出型年金・医療保険・地震保険を活用した所得税・住民税の節税
  3. 法人契約の保険加入による法人税の節税
次に、上記の各パターンについて詳しく説明します。

①生命保険を活用した相続税の節税

これは、相続税の非課税枠内であれば、生命保険金に相続税がかからないことを利用したものです。生命保険の非課税枠は、「500万円×相続人の数」で決定します。

この金額に合わせて生命保険の生命保険金を設定することによって、相続税がかからない範囲でまとまったお金を残すことができます。

②個人型確定拠出型年金・医療保険・地震保険を活用した所得税・住民税の節税

保険の種類によって、所得税・住民税について以下の金額を上限に控除を受けることができます。

  • 生命保険・医療保険(介護保険も含む)・個人年金:保険所得税は最大12万円、住民税は最大7万円、
  • 地震保険:所得税は最大5万円、住民税は最大2万5千円

また、個人型確定拠出型年金の場合、掛金と運用益について所得税・住民税は全額控除されます。長年積み立てを続けるほど運用する資産の額が増えていくため、運用益も大きくなるにつれて受け取る額も多くなります。

ただ、気をつけておきたいのが、こういった個人型確定拠出型年金のセールストークで「運用益」が出るというものがありますが、確実に運用益が出るとは限らず、運用益が出るまでに長い期間がかかることもあります。

また、個人型確定拠出型年金に加入すると10年以上は元本割れのマイナスの状態が続くこともありますので、注意しておきましょう。

③法人契約の保険加入による法人税の節税

法人が保険に加入し、その保険料を損金として計上することで法人税を節税できます。また、保険金や退職金の支払いと解約返戻金の受け取りなどの収支をうまく調整して、大きな出費が発生するタイミングに合わせれば、利益をコントロールし、業績を平準化させる効果も期待できます。

一般的には、節税を念頭に置いて保険に加入する場合、積み立てがメインであれば退職金が発生したタイミングで解約し、業績を平準化させることが一般的です。なお、退職金は損金として計上されます。

ただ、保険料を損金として計上できる一方で、受け取る保険金や解約返戻金は益金として算入されます。つまり、その益金に法人税がかかることになります。詳しくは後述しますが、この点には注意しておく必要があります。

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法人が節税に活用できる保険の種類

法人が節税する際に使える保険として代表的なものには、以下の2つがあります。

  1. 経営者保険
  2. 福利厚生保険
節税対策としてだけでなく、法人としてどのような補償を受けたいのかという視点で検討しましょう。

①経営者保険

経営者保険は経営者向けの生命保険であり、経営者を被保険者とするものです。経営者保険は経営者に万が一の事態が発生した際に、企業の立て直しなどのために必要な資金をまかなってくれる保険です。

経営者の存在は、企業の規模が小さいほど重要であり、経営者が倒れてしまうと、経営自体が立ち行かなくなるおそれがあります。万が一、このような事態になれば、経営者が復帰しても、立てなおしは決して容易ではありません。そんな事態に陥った場合に経営者保険は役立ちます。

②福利厚生保険

福利厚生保険は、社員向けの退職金や弔慰金などといった福利厚生を用意するための保険です。福利厚生のアウトソーシングに近いものともいえます。

福利厚生保険は貯蓄性のある養老保険と組み合わせることで、退職金や弔慰金などが発生した際の出費をあらかじめ備えておくことができ、決して安くない福利厚生の費用をまかなうことができます。

福利厚生保険や養老保険のように貯蓄性のある保険をうまく活用すれば、解約返戻金である程度のバックも期待できます。この解約返戻金を資金としてプールするということもできます。

つまり、損金として算入することで法人税の節税を行いつつ、解約返戻金で大きなバックを得るための積立を同時に行うことで保険を活用します。

経営者保険と同じく、福利厚生保険も保険料の支払いを損金として計上することで、節税効果が期待できます。また、経営者保険も福利厚生保険も、保険として有用的であるため、節税に関係なく加入しても損はしないでしょう。

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保険を活用した節税のメリット・デメリット

上記の保険を使った節税の特徴や注意点を踏まえたうえで、保険を活用したメリットとデメリットについて詳細に説明します。

①保険を活用した節税のメリット

保険を使った節税のメリットは、先述した内容も含めると以下のとおりです。

  1. 目先の利益を圧縮できるため直近の法人税の節税には有効的
  2. 保険の保障を活用することができる
  3. 税率が下がった場合は解約返戻金にかかる法人税が少なくなる
  4. 契約者貸付による貸付額は益金として算入されない
  5. 解約返戻金が発生するまでは課税を待ってもらえる
①②は先述のとおりですが、③④⑤も保険のメカニズムならではのメリットといえます。

②保険を活用した節税のデメリット

保険を使った節税のデメリットは、先述した内容も合わせると以下のとおりです。

  1. 保険金や解約返戻金が入ると益金に算入されるため、その際には節税効果が薄れ、あくまで業績を平準化させる効果しか得られない
  2. 解約返戻金が100%未満になるケースが多い
  3. 支払いは現金のみ

①は先述のとおりです。ここでは②と③について詳しく伝えしていきます。

まず、②ですが、これは保険である以上珍しいケースではありません。解約返戻金は解約のタイミングによって総額が変わってくるものであり、退職金を支払うタイミングが解約返戻金の100%になるタイミングとは限りません。

むしろ、元本割れしている状態で返ってくるパターンがほとんどといえます。確かに保険は資金をプールしておく手段としては使えますが、預金ではないため、ある程度お金が減ってしまうことに注意しましょう。

そして、③は中小企業の経営者にとっては、大きなデメリットになりえます。保険の支払いは現金のみであるため、契約した法人は保険料の支払いのために常に現金を用意しておく必要があります。

しかし、中小企業が常に一定以上の現金を用意することは簡単ではなく、保険料の支払いが難しくなる可能性があります。法人が入る保険は、保険料が数百万、数千万になることもありえるため、それだけの高額な現金を常に用意しておくことが負担になることにも注意しましょう。

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保険を活用する際の注意点

節税のために保険を活用する際に特に注意しなければならないのは、以下の4点です。

  1. 長期的な視点での節税効果には期待しない
  2. 保険の加入は必要最低限にとどめる
  3. 法人契約の保険の損金算入に対する規制強化
  4. ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談する
次に、上記の注意点についてそれぞれ説明します。

①長期的な視点での節税効果には期待しない

退職金が発生すれば法人税が減る状態であるにもかかわらず、保険金や解約返戻金が発生することによって益金が発生し、結局、法人税が増えてしまう可能性があります。このように保険金や解約返戻金があると、厳密な意味では節税にはなりません。

保険金や解約返戻金を益金として算入することで経営が赤字になっても業績を平準化させ、調整することはできても、節税の効果を期待するのは難しいでしょう。

この点を踏まえると、保険を使った節税はあくまで保険料の支払いにより損金に算入することがメインになります。実際に保険を活用するなら、あくまで目先の節税、例えば、決算前に法人税の支払いを調整するために使う際に一番効果を発揮するといえます。

つまり、保険を使った節税は、トータルで見たときの節税効果はあまり高いとはいえず、あくまで目先の利益を圧縮するためには効果があるといえます。そのため、長期的な視点での節税の効果にはそこまで期待しないほうがいいでしょう。

②保険の加入は必要最低限にとどめる

保険である以上、節税ばかりを考えるのではなく、具体的な保障内容についても入念に検討しておくことが重要です。節税ばかり考えてしまうと、保障が不十分など無駄な保険に加入してしまう可能性があります。

あくまで保険は保険であり、必要かつ有益な保障だけを備えたものを持っておくだけで充分です。そもそも保険の節税効果は、目先の利益の圧縮に特化していますし、長期的な視点に立った際の節税効果を期待するものではありません。

そのため、必要な保障をしっかりと吟味して、必要最低限の保険に加入するようにしましょう。

③法人契約の保険の損金算入に対する規制強化

高額な保険料支払いで利益を圧縮して、保険料はのちのち解約返戻金で取り戻せるという売り文句で、法人契約の保険は「節税保険」として人気を博し、法人の加入が急増しました。

しかし、国税庁は2019年に、法人契約のがん保険や医療保険について、全額損金算入できる保険料の範囲を1契約あたり年間30万円までに制限し、販売が過熱していた法人契約の節税保険への規制を強化しました。

また、金融庁も法人契約の保険について、過度に節税効果をあおる売り方や、商品内容やリスクを十分に顧客に説明したうえで販売しているかを問題視し、保険商品の売り方に対して監視を強化しています。

このように、法人契約の保険については税制など規制が強化されており、今後さらに強化される可能性があるため、規制の動向にも注意する必要があります。

④ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談する

保険を使った節税を行う場合には、ファイナンシャルプランナーのような保険のプロフェッショナルや税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

そもそも保険は非常に多種多様であり、どのような保険が自分に合っているかを判断するのは素人ではなかなか難しいものです。よくわからないまま保険に入ってしまうと、必要のない保障が付いていたり、保険料を無駄に支出することにもなりかねません。

ファイナンシャルプランナーのような専門家であれば、中立的な立場で保険を判断してくれるため、自分に合った保険を見つけやすくなり、さらには、不必要な保障を選別できるようになります。

また、節税そのものを考えたいのであれば、税理士のような税務のプロフェッショナルに相談することをおすすめします。保険の活用はあくまで数ある節税方法の1つにすぎず、保険以外にも方法はあります。

まずは、法人の節税の方法として保険が合っているかどうかを検討しておくことは非常に重要であるため、専門家に相談しながら進めることがおすすめです。

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まとめ

保険は素人には非常にわかりにくいため、ファイナンシャルプランナーや税理士などの専門家に相談しつつ、規制強化にも注意しながら加入を検討するようにしましょう。今回の記事をまとめると以下のとおりです。

・保険を活用した節税の例
→①生命保険を活用した相続税の節税
 ②個人型確定拠出型年金などを活用した所得税・住民税の節税
 ③法人契約の保険加入による法人税の節税

・保険を活用した節税のメリット
→直近の法人税の節税、保険の保障を活用など

・保険を活用した節税のデメリット
→解約返戻金の受け取りによる節税効果の低下、支払いは現金のみなど

・保険を活用した節税の注意点
→長期的な節税効果に期待しない、規制強化に注意など

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