M&Aとは?意味や動向とM&Aを行う目的・メリットなどをわかりやすく解説!
2022年1月16日更新会社・事業を売る
垂直型M&Aとは?特徴や戦略、手法もご紹介!
垂直型M&Aとは、製造~流通~販売といった縦に並んだ事業を垂直的に統合するM&Aです。垂直型M&Aでは異業種企業によるM&Aとなり、どの企業から見ても新事業への進出ですが、垂直的な事業統合が事業体制強化となり、その推進力となります。
垂直型M&Aとは
近年、さまざまな業界で活発化しているM&Aですが、その中に「垂直型M&A」と呼ばれるものがあります。垂直型M&Aとは、商品の製造~流通(卸売)~販売(小売)といった事業の流れの中で、異業種である企業を垂直的に統合することです。
例えば、自動車メーカーが部品メーカーを買収するケースや、スーパーマーケットが生産工場を買収するケースなどが考えられます。つまり、事業としては関連していますが、明らかに別の業態である企業を統合しようというM&Aが垂直型M&Aです。
垂直型M&Aを活用した戦略
垂直型M&Aの戦略について、その根本的な内容と各種メリット、また、水平型M&Aと呼ばれるM&Aとの違いについて確認してみましょう。
垂直型M&Aが実現できること
商品事業が成り立つ仕組みとして、商品の製造メーカー、その流通を担う卸売業者、商品を消費者に販売する小売業者が必要です。異業種であるそれらの各企業間においてM&Aが実施された場合、製造から販売までの事業が縦に統合され、事業体制の強化を図れます。
例えば、製造メーカーが取引先であった卸売業者に垂直型M&Aを実施し、さらに卸売業者の取引先であった小売業者にも垂直型M&Aを実施するケースです。この統合によって、製造から販売までの一貫した事業体制構築が実現します。
この垂直型M&Aで得られるメリットは、主として以下の3点です。
- 新規事業への進出
- コスト削減効果
- マーケティング情報のダイレクトな反映
それぞれの垂直型M&Aのメリットについて概要を掲示します。
新規事業への進出
垂直型M&Aにおいて、製造メーカー、卸売業者、小売業者のうち、どの企業が垂直型M&Aの主体になったとしても、それまでの自己の事業とは別分野の企業に対し、M&Aをしたことになります。これはすなわち、その企業にとっては、新規事業への進出以外の何ものでもありません。
通常、新規事業への進出は周到なる準備が必要であるとともに、多大なるリスクが伴います。M&Aであれば、そのどちらに対しても一定のリカバリーがある状態にできますが、縦に一気通貫した統合を行う垂直型M&Aの場合は、その度合いがさらに向上するのは明らかです。
つまり、垂直型M&Aであれば、困難な準備もいらず、よりリスクが低い体制で新規事業への進出が果たせます。
コスト削減効果
垂直型M&A実施前であれば、別々の企業同士ですから、そこには当然、各社間で流通マージンが発生していました。垂直型M&Aで各社が統合されれば、その費用はなくなります。つまり、製造メーカーから卸売業者、卸売業者から小売業者という2度のマージンが消えるわけです。
このコスト削減効果は、とても大きなものがあるでしょう。第一段階として、利益率の向上につながります。そして、それによって商品の販売価格を下げることも可能となり、ライバル商品に対して強い競争力を獲得、発揮するのです。
マーケティング情報のダイレクトな反映
商品の開発、あるいは改良を実施するにあたっては、製造メーカーにおいても常にマーケティングは行われています。それに加えて垂直型M&Aの実施後は、小売事業において直接、消費者と向き合い、市場に対して肌感覚で接している現場の生の声が届くことになります。
メーカーのマーケティングの全てがそうであるとはいいませんが、場合によっては恣意的な傾向になりがちな点は否めません。しかし、垂直型M&Aによって、その点を是正し得る価値あるマーケティング情報が得られることは、既存商品の改良や新規商品の開発にとって非常に有効です。
水平型M&Aとの比較
垂直型M&Aを活用した戦略への理解を、「水平型M&A」との比較で確認してみましょう。水平型M&Aとは、端的にいえば同業他社とのM&Aのことです。身近でわかりやすい例でいうと、過去に都市銀行が統合され誕生した現在のメガバンクなどが該当します。
水平型M&Aの場合、これまで市場で競合していた会社同士でM&Aを行うことになり、本業の事業強化、事業エリア・事業規模の拡大などが目的のM&Aです。これを横方向に事業が拡大するととらえ、水平型M&Aと呼んでいます。
一方、垂直型M&Aは、事業の流れである縦方向に目を向け垂直的にM&Aを行います。製造・流通・販売など、それぞれ業態が異なる企業同士でM&Aを行うことで、事業の強化を図るという戦略です。
M&Aの手法
垂直型M&Aであれ、水平型M&Aであれ、M&Aが実施される際の具体的な手法に変わりはありません。そこで、あらためてM&Aにはどのような手法があるのか、一度整理しておきましょう。垂直型M&Aの理解を深めるためにも、それぞれの手法の特徴をつかんでおくのは役立つはずです。
M&Aの手法には、買収、合併、会社分割があるほか、緩やかなM&Aとして資本業務提携を含める場合もあります。買収の手段である株式取得は、株式譲渡、新株引受、株式交換、株式移転という4つの方法に分かれます。
また、買収に類する手法として事業譲渡もありますが、こちらは全部譲渡と一部譲渡の2種類です。さらに、合併は吸収合併と新設合併、会社分割は吸収分割と新設分割のそれぞれ2種類に大別されます。それぞれの概要を掲示します。
株式取得
株式取得が意味するものは、経営権の取得です。株式は原則的に株主総会の議決権があり、株主総会では経営に関係する決議が行われます。つまり、株式を取得して株主総会の議決権を持てれば、経営に関われます。
そして、株式を多く保有すればするほど、それだけ経営に深く関わり影響をおよぼせることになります。最終的にある会社の株式全てを取得すれば、その会社の経営権を全て取得したことになるのです。
このように、株式の取得割合によって、どの程度経営に関わることができるかが決まります。こうした株式取得の仕組みは、以下に掲示する株式譲渡、新株引受、株式交換、株式移転全てに共通することです。
株式譲渡
株式譲渡というのは、株主が保有する株式を第三者に譲渡することを意味します。この場合の譲渡とは、株式を売買することです。株式譲渡は、特に中小企業のM&Aでしばしば活用される手法です。
例えば、株式の100%を譲渡し、経営権を全て移転させるといったケースで考えてみましょう。これは、資金面などで経営上の問題を抱えていた中小企業が、資金力のある企業に株式を全て譲渡することで、経営を任せ、事業を引き継いでもらうという手法です。
この場合、資金力のある企業から見れば、中小企業を買収したことになります。そして、その買収の手法として、株式譲渡が行われたのです。また、中小企業に限らず、M&Aの買収事例としても株式譲渡が多く見られます。
新株引受
第三者割当増資とも呼ばれる新株引受とは、第三者に新株の割り当てを受ける権利を与えることです。例えば、新しく株式を発行した会社をA社、新株の割り当てを受ける権利を与えられた会社をB社とします。
この場合、A社が新たに発行した株式をB社が引き受けるという形で、B社がA社の株式を取得することになります。この時、B社はA社が新しく発行した株式のみを取得するわけですから、A社の株式を全て取得したわけではありません。この点が、先述した株式譲渡との大きな違いです。
非上場の中小企業であれば株式100%をM&Aの買い手に譲渡することが可能ですが、上場企業の場合、それは不可能です。逆にいえば、買い手に一定比率の株式を取得させるための手段が新株引受といえるでしょう。また、新株引受は上場廃止を企図する場合にも用いられます。
株式交換
株式取得には、完全親会社と完全子会社の関係を構築する手段として、「株式交換」と「株式移転」の2つの方法があります。まず、株式交換から整理しておきましょう。株式交換は、ある会社の発行する株式全てを取得したもう一方の会社側が、対価を株式交付で行います。
株式を全て取得した会社は完全親会社であり、取得された会社側は完全子会社という関係が生まれるわけです。完全子会社となった側の元株主に対して、対価が完全親会社の株式交付であるため、株式交換と呼ばれています。なお、対価は株式以外にも現金などの交付も可能です。
文脈からいえば当然のことですが、株式交換はすでに存在している会社間で可能な株式取得によるM&A行為になります。
株式移転
株式移転は、1つ以上の株式会社が、発行する株式の全てを新たに設立する株式会社に取得させることです。株式の全てを取得した会社は完全親会社となるので、こちらも株式交換と同じように、完全親会社と完全子会社の関係が生まれます。対価を株式交付とする点も同様です。
株式交換との大きな違いは、株式移転では完全親会社となる会社を新たに設立することです。株式交換はすでに存在する会社の間で行われるのが条件であり、新設会社が含まれる株式移転とは絶対的な違いとなります。
事業譲渡
買収に類する手法には、事業譲渡もあります。事業譲渡は文字どおり「事業を譲渡する」ことです。ある会社の事業の全部または一部を譲渡することであり、会社そのものは譲渡(買収)の対象に含まれていません。
事業の全てを譲渡する場合が「全部譲渡」、事業の一部を譲渡する場合が「一部譲渡」となります。事業譲渡の大きな特徴は、会社の中にある事業および資産を選別して譲渡・譲受できる点です。譲渡する側、譲受する側双方が協議のうえ、その内容を決めます。
例えば、譲渡側の視点でいえば、採算事業を残して不採算事業を譲渡するということも可能です。譲受側からすると、不要な資産や負債などは譲渡されるリストから外せます。会社を丸ごと譲渡することになる株式譲渡とは、この点が大きな違いです。
合併
2つ以上の会社が1つに統合されるM&Aが合併です。合併には吸収合併と新設合併の2種類があります。吸収合併は、合併により消滅する会社の権利義務の全てを、合併後存続する会社に承継させるという手法です。
例えば、A社とB社の間で、合併後に存続する会社をB社とするのであれば、B社がA社の権利義務を全て承継し、合併によってA社は消滅することになります。一方、新設合併というのは、2つ以上の会社が新たに設立する会社に合併し、全ての権利義務を承継させるという方法です。
例えば、A社とB社を消滅会社とし、新たに設立されたC社がA社とB社の権利義務を全て承継するという形になります。いずれにしても合併の特徴は、消滅する会社があるという点です。
会社分割
会社を分割させるM&Aである会社分割も、吸収分割と新設分割の2つの方法があります。吸収分割とは、会社がある事業に関して有する権利義務の全部または一部を、分割後の他の会社に承継させることです。
例えば、A社とB社の間で、A社が事業を分割する会社、B社はそのA社の分割事業を承継する会社とします。この時、A社の分割事業に関する権利義務の全部または一部を、B社が承継するわけです。また、合併のように消滅する会社はありません。
一方、新設分割とは、1つ以上の会社が、ある事業に関して有する権利義務の全部または一部を、新しく設立する会社に承継させるという手法です。特に2つ以上の会社が分割会社となる場合、新設会社に同一事業を集約できることが特徴です。
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M&A成功と失敗の分析
近年のM&Aの活発化により、国内でのM&A件数は年々増加の一途です。多くのM&Aが行われるようになると、その中には成功している例もあれば、失敗してしまったケースも出てきます。M&Aの失敗と成功の分かれ道とは、どのようなものなのか分析してみましょう。
M&A失敗の原因
M&Aで失敗するということは、ごく単純に考えれば、M&Aによるシナジー効果が得られなかったということです。せっかくM&Aを実施しても、想定したようなシナジー効果が生まれなければ、かえって損失が発生することにもつながりかねません。
実際に失敗といわれるM&Aを見てみると、基本的にM&A後の業績は悪化しています。そして、その場合のM&Aによるシナジー効果が得られなかった原因として挙げられているのは、対象企業が適切でなかったこと、M&A戦略自体に無理があったことなどです。
もちろん、M&Aで失敗する原因は単純なものではありませんが、端的に分析すれば、対象企業の絞り込みやM&A戦略の見通しが甘かったことに集約されます。例えば、多くの企業を買収し過ぎたことで、かえって経営が立ち回らなくなり、業績が悪化したとします。
これは、多くの企業を買収する中で適切でない企業も買収してしまった(=対象企業の絞り込みが甘い)こと、そもそも多くの企業を買収し過ぎることに無理があった(=M&A戦略の見通しが甘い)ことなどが原因といえるでしょう。
M&A成功要因
一方、M&Aの成功事例を見てみると、適切な対象企業とのM&Aによってさまざまなシナジー効果を創出し、順調に業績を伸ばしています。これは、失敗の場合とは逆に、対象企業の選定をしっかりしていたこと、M&A戦略自体が理にかなったものであったことが要因といえるでしょう。
これを垂直型M&Aで例えれば、M&Aによって製造から販売まで一体的な事業体制を構築することに重点を置いたM&A戦略であること、なおかつ、M&Aによってその事業体制を効率的に構築できるような相手企業を選定することが、成功のポイントになるわけです。
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まとめ
垂直型M&Aは、成熟期に達している市場が多い日本においては、他社との競争に打ち勝つという観点で有効な戦略となり得る経営手段です。ただし、製造・流通・販売という業態が異なる企業が一堂に会する垂直型M&Aは異業種結合であり、どの企業にとっても重大な決断になります。
M&Aの専門家であるM&A仲介会社への相談も十分に行いながら、検討と最終決断を行いましょう。本記事の要点は、以下のとおりです。
・垂直型M&Aとは
→製造~流通~販売までの一貫した事業体制構築を実現するM&A
・M&Aの手法
→株式取得(株式譲渡・新株引受・株式交換・株式移転)、事業譲渡、合併、会社分割
・M&A失敗の原因
→対象企業が不適切、M&A戦略に無理
・M&A成功要因
→対象企業の適切な選定、M&A戦略に合理性
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