2024年1月28日更新会社・事業を売る

M&Aのデメリットとは?買い手・売り手別のデメリットや海外M&Aについても解説

M&Aは多くのメリットを享受できますが、そこにはデメリットもあり、内容を認識しておかなければいけません。本記事では、M&Aのデメリットを売り手・買い手それぞれの視点から解説しつつ、海外企業とのM&Aにおけるデメリットも紹介します。

目次
  1. M&Aのデメリット
  2. M&Aにおける売り手のデメリット
  3. M&Aにおける買い手のデメリット
  4. 海外M&Aのメリット・デメリット
  5. M&A手法別のメリット・デメリット
  6. 資本業務提携のメリット・デメリット
  7. M&Aのデメリットとリスク
  8. M&Aによる従業員のデメリット
  9. M&Aによる顧客・地域社会のデメリット
  10. M&Aのデメリットを回避するための対策
  11. M&Aのデメリットまとめ

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M&Aのデメリット

従来、M&Aは、大企業が行うものというイメージでした。しかし、昨今は、それだけではなく、事業承継を目的に中小企業が売り手となるM&Aや、ベンチャー企業やスタートアップのイグジット戦略の手段としてなど、日本のさまざまな企業にM&Aが広く浸透しています。

M&Aには多くのメリットがあり、有効な経営戦略手段として活用されていますが、場合により生じるかもしれないデメリットの存在も無視できません。言い方を変えれば、デメリットの内容を把握しておいてこそ、M&Aを有効に活用できるといえるでしょう。

そこで、本記事では、あえてM&Aのデメリットに焦点を当てて解説をします。まず冒頭では、M&Aで得られるメリットの概要を確認しておきましょう。

M&Aのメリットとは

M&Aの売り手と買い手では得られるメリットが異なるため、それぞれ分けて掲示します。

M&Aにおける買い手側のメリット

M&Aの買い手には、主に以下のようなメリットがあります。

  • 事業規模の拡大を見込める
  • 既存事業の強化を見込める
  • 新規事業を迅速に始められる

M&Aによる買収を行うと、事業用設備・機械類や不動産などの有形資産、人材・技術・顧客や取引先リストなどの無形資産を取得できるため、事業規模の拡大につながります。獲得したこれらの資産を活用して、既存事業のさらなる発展が期待できるでしょう。

新規事業を迅速に始められることも、買い手にとってはメリットです。自力で新規事業を起こしても、成長させ軌道に乗せるまでには多大な時間と費用を要します。失敗に終わるリスクも覚悟しなければなりません。

M&Aで会社や事業を買収する場合、すでに軌道に乗っている事業を取得できます。時間や労力を削減でき、事業失敗のリスクを極力、抑えられるので、買い手にとって大きなメリットです。

M&Aにおける売り手側のメリット

M&Aの売り手には、主に以下のようなメリットがあります。

  • 事業の存続・発展を見込める
  • 後継者不在問題を解決できる
  • M&A成立後に売却益を得られる

売り手側の経営者が、事業の成長に限界を感じていたり、後継者不在で悩んでいたりする場合、M&Aはその有効な解決手段です。M&Aが成立すると買い手が新たな経営者となり会社は存続していくので、後継者不在問題は解消され従業員の雇用も維持されます。

買い手側と技術やノウハウの共有を行うことで、さらなる事業の発展も期待できるでしょう。そして、中小企業のオーナー経営者の場合、M&A(株式譲渡)によって得られる売却益は、大きなメリットです。老後の生活費や新規事業立ち上げなど自由使途の資金を得られます。

メリットを生かしたM&A実現のための相談先

M&Aプロセスは複雑で、多岐にわたる専門知識が要求されます。M&Aのメリットを享受しつつデメリットを最小限に抑えるためには、専門家に業務を依頼するのが得策でしょう。M&Aの専門家選びでお悩みでしたら、M&A総合研究所へご相談ください

M&A総合研究所には。知識と経験が豊富なM&Aアドバイザーが多数、在籍しており、これまで培ったノウハウを生かしてM&Aをフルサポートいたします。

通常、M&Aは半年〜1年程度の期間が必要ですが、M&A総合研究所ではスピーディーなサポートを実践しており、成約まで最短3カ月の実績を有している点も強みです。

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M&Aにおける売り手のデメリット

M&Aの売り手、つまり買収される側の主なデメリットには、以下の6つがあります。

  1. 買い手が見つからない
  2. 希望条件で売却できない
  3. 取引先や顧客から反発を買う
  4. M&Aの交渉自体が白紙になる
  5. 経営に関する権限が小さくなる
  6. 経営者や労働条件の変更により従業員のモチベーションが低下する

①買い手が見つからない

数多くある企業の中から、こちらを買収しようという買い手を見つけるのは簡単ではありません。M&A仲介会社に依頼しても、買い手候補となる企業が見つからないケースもあり、このデメリットを完全にはなくせません。

買い手が見つかる可能性を高めるためには、「磨き上げ」を実施しましょう。磨き上げとは、自社の企業価値を上げる対策であり、たとえば自社の強み(独自の技術力やノウハウなど)を伸ばしたり、不要な在庫を処分したりすることが有効です。

②希望条件で売却できない

M&Aの相手候補が見つかっても安心できません。希望価額でM&Aを実施できないデメリットが生じる場合もあります。会社(事業)を売却する際の価額は、将来にわたってどの程度の収益を獲得できるかという観点での算出です。

現在は収益を上げている事業であったとしても、将来性がないと判断されれば企業(事業)価値を低く評価されます。自社の企業価値に自信を持っている場合、思わぬデメリットとなるでしょう。このデメリットを軽減するためには、前述した「磨き上げ」が重要です。

少しでも企業価値を高め、希望する価額でM&Aできるよう、設備投資やノウハウ・技術力の強化、借入金の削減、訴訟などトラブルの解消、未払い給与の支払いなど企業価値の向上に努めましょう。

③取引先や顧客から反発を買う

M&Aの実施を取引先や顧客が知った場合、大きなデメリットが生じる可能性があります。具体的には、M&Aの前後で取引先や顧客から反発を買ってしまうケースです。

M&Aを実行すると経営母体が変わり、契約条件や顧客・取引先の担当者も変更したりすると、顧客や取引先から契約を打ち切られてしまうこともあります。

ビジネスは、人と人のコミュニケーションによって継続・発展していくものです。長きにわたり良い関係を築いてきたのに、突然、担当者が変われば、顧客や取引先は不信感を抱く可能性があります。

M&Aによって生じるこのデメリットを軽減するためには、事前に顧客や取引先に説明を行うことが肝要です。ただし、顧客や取引先への説明は、適切なタイミングで行いましょう。M&Aの構想段階や初期段階で説明してしまうと、不安ばかりが先行してしまう可能性があります。

取引先・顧客はメリットも享受できる

M&Aを実施した場合の取引先・顧客サイドのメリットも確認しておきましょう。まず、後継者不在状態の中小企業は、廃業危機があります。仮に廃業してしまったら、取引先は契約を失い、顧客は商品・サービスの提供を受けられません。

後継者不在の中小企業が、事業承継を目的に売り手としてM&Aを実施すれば、取引先・顧客ともに何も失わずにすみます。M&Aの実施によって、売り手企業は買い手企業と経営統合されます。

買い手が同一・関連事業を行っている企業であれば、商品やサービスのラインナップが拡充したり、スケールメリットによるコストダウン効果で取引額や販売価格の値下げが行われたりなど、取引先・顧客にとって喜ばしい事態です。

④M&Aの交渉自体が白紙になる

トップ面談(当時会社双方のトップ同士での面談)や基本合意書(M&A交渉が大筋合意した場合の確認書)の締結など、M&Aを進めるには多大な時間や労力、費用を要します。しかし、最終契約書を締結するまでは法的な拘束を受けないため、M&A交渉の打ち切りは自由です。

M&A仲介会社などの協力のもとで慎重にM&Aを進めたにもかかわらず、最後の最後でM&Aの交渉自体が白紙になる可能性もゼロではありません。M&Aでは、お互いに条件や目的を持っています。

交渉を進めていくうちに希望の条件や目的と合致しないことがわかれば、M&Aを行わない選択肢を選ぶことも可能です。そうなると、それまでかけてきた時間や費用、労力が全て無に帰してしまいます。

M&A仲介会社のサポートを受ける場合、会社によっては着手金や中間金、月額報酬などが発生しますが、M&Aが破談になってもそれらの手数料は返金されません

このデメリットを軽減するには、「本当にM&Aが必要なのか」「この相手に売却してよいか」などを、その都度、真剣に考える必要があります。少しでも不安がある場合は、専門家と協議することも必要です。成功しないと判断したら、早い段階で取りやめるべきでしょう。

⑤経営に関する権限が小さくなる

市場での生き残りをかけて、M&Aによって大企業の傘下に入る中小企業は少なくありません。しかし、M&Aによって大企業の傘下に入った場合、経営者の権限が小さくなるデメリットが生じます。

経営方針や目標利益額はもちろん、予算配分や社内人事までを買い手企業の指示に従うことになります。自社の成長の観点からみると、その方がメリットは大きいかもしれません。しかし、これまで頑張ってきた経営者にとって、M&A後に権限が小さくなるのはデメリットになり得ます。

⑥経営者や労働条件の変更により従業員のモチベーションが低下する

M&Aによって、従業員にもデメリットが生じる可能性があります。M&Aを実施すると、従業員は相手企業に引継がれるのが一般的で、従業員が職を失うことはありません。しかし、経営者や労働条件は変わるケースもあり、従業員がデメリットを被る場合もあります。

特に中小企業の場合、経営者の人柄に惹かれて働いている従業員は多いでしょう。そうした従業員にとって、経営者の変更はモチベーションに悪い影響を与えかねません。労働条件の変化によって、これまでとは違う環境にストレスを抱える従業員が出てくる可能性があります。

その結果、業績が低下したり従業員が一斉に離職したりするなどのデメリットが発生するかもしれません。M&Aでは、優秀な従業員の存在も評価したうえで買収されるケースが多いです。その従業員が離職した結果、売り手側の責任を問われる事態にもなりかねません。

従業員に対しても適切なタイミングでM&Aの説明をすることや、労働条件が悪くならないよう交渉することが大切です。

M&Aにおける買い手のデメリット

M&Aで買収を行う買い手には、主に以下のような7つのデメリットがあります。

  1. 従業員同士で摩擦が生じる
  2. 組織文化の統合に時間とコストがかかる
  3. 重大なリスクが表面化する
  4. 期待したシナジー効果が得られない
  5. のれんの減損リスク
  6. 多額の資金が必要
  7. 売り手が見つからない
  8. 許認可を承継できず事業を継続できない

①従業員同士で摩擦が生じる

M&A成立後、買い手側と売り手側双方の従業員が同じ環境で仕事を行うようになります。つまり、別々の規則や環境で仕事を遂行してきた人同士が突然一緒になることで、意見や価値観が合わずに衝突する可能性があるでしょう。

M&A後に従業員同士が衝突してしまうと、不利益を招きかねません。従業員のモチベーションが低下し、業績が下がるケースもあり、最悪の場合、優秀な人材が辞めていくデメリットも考えられます。このデメリットを回避するためには、M&A前後の人事交流が有効です。

前もって人事交流を実施して従業員同士で打ち解ければ、互いに信頼感が生まれます。その結果、M&Aによって生じ得るデメリットを回避できる可能性が高まるでしょう。

②組織文化の統合に時間とコストがかかる

M&Aは最終契約を締結して対価を支払った時点が終わりではなく、成立後にPMI(Post Merger Integration=経営統合プロセス)の実施が不可欠です。PMIとは、M&Aの成果を得るために、組織内を統合するプロセスのことをいいます。

従業員の統合のみならず、組織文化や情報システム、従業員の評価システムなども統合しなくてはいけません。しかし、M&A後の統合作業は簡単ではなく、特に長年培われてきた組織文化を統合するのは大変であり、多くの時間とコストを要します。

組織文化の統合に時間やコストがかかり過ぎると、二次的な弊害が生じることもデメリットです。このデメリットを軽減するためには、PMIを慎重に実施しなくてはいけません。PMIの成功実績が豊富な仲介会社にサポートしてもらうのも1つの選択肢です。

③重大なリスクが表面化する

M&Aの成立後、偶発債務などの簿外債務の存在が発覚するケースがあります。簿外債務とは、貸借対照表に計上されていない債務のことであり、未払い給与や賞与、退職給付引当金などです。

偶発債務とは、まだ債務として発生していないものの、後日、債務になる可能性のあるものをさします。環境汚染による訴訟リスクなどが代表的です。M&Aによって引継いでしまった簿外債務が、後々、大きなデメリットとなって多額の費用が発生するリスクがあります。

このデメリットを回避する手段は、デューデリジェンスの徹底的な実施と事業譲渡の活用です。デューデリジェンスにより、あらゆるリスクを表面化させ、許容できないリスクが発覚した場合は、M&Aの可否を検討します。

事業譲渡とは、事業と関連する資産や権利義務などを選別して売買するM&A取引のことです。この事業譲渡を活用することで、譲渡対象の資産や負債を契約の中で個別に指定して買収できるため、デメリットになる不要なものの引継ぎを遮断できます。

④期待したシナジー効果が得られない

多くの場合、買い手側はシナジー効果を期待してM&Aを実行します。しかし、想定していたシナジー効果が得られるとは限りません。M&Aの買収価額には期待するシナジー効果分も上乗せされ、シナジー効果を評価するほど、買収価額は高額になります。

高額の資金を使ってM&Aを行ったにもかかわらず、シナジー効果が発揮されないのは大きなデメリットです。事前の見立てが甘かったケースや交渉に失敗して高値で買収したケースなど、シナジー効果が発揮されない要因はさまざまあります。

このデメリットを回避するためには、適切な価額でM&Aを実施することが大切です。しっかりと事前調査を実施し、想定できるシナジー効果を極力、正確に算出しましょう。

⑤のれんの減損リスク

買い手にとってM&Aで最も大きなデメリットともいえるのが、のれんの減損リスクでしょう。のれんをひと言で表すと、相手企業の付加価値です。前述した期待シナジーやブランド力、高度な技術力などが該当します。

買い手企業は、のれん代も含めたうえで買収し、こののれん代が多過ぎると後々、大きなデメリットにつながる可能性が高いです。のれん代は毎年、減価償却する必要があり、想定していた利益が出なかった場合には、のれんの償却によって利益がマイナスになってしまいます。

減損の必要が生じるリスクもあります。減損とは、投資費用が回収できないと見込まれる場合、回収不能額をまとめて損失として計上する手続きのことです。つまり、予想よりも利益が出ない場合、のれん代の分をまとめて費用処理しなくてはいけません。

のれん代が数千万円〜数億円規模の場合、その分が一気に費用としてのしかかって、経営の継続が困難になる可能性があります。このデメリットを回避するためには、シナジー効果も含め妥当な価格で買収することが大切です。

⑥多額の資金が必要

M&Aを実施するためには、基本的に多額の資金が必要になり、場合によっては失敗する可能性もあります。つまり、買い手にとってM&Aの実行にはリスクも伴います。

多額の資金支出は回避することが難しく、そのためにはM&Aを行う目的を明確化することが大事です。M&Aを実行する目的を明確にして、その目的を達成するための相手を慎重に選びましょう。

⑦売り手が見つからない

売り手が買い手を見つけられないデメリットがあるのと同様に、買い手も売り手を見つけられない可能性があり、相手を見つけられずにM&Aを断念してしまうケースも少なくありません。

このデメリットを回避するためには、M&A仲介会社などの専門家を起用するのが得策です。M&A仲介会社などは、独自のネットワークなどを活かして最良の相手を探してくるだけでなく、交渉などのサポートも受けられます。

買収先が見つからずお悩みの際は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、知識と経験が豊富なM&Aアドバイザーによる専任フルサポートを行っています。

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⑧許認可を承継できず事業を継続できない

許認可が必要な事業を行っている会社を買収した際、許認可を承継できず事業を継続できない可能性があります。このような場合には、買い手企業が許認可を新規で取得しなければなりません。

会社売却の多くで用いられる株式譲渡は包括承継なので、売り手が所有している許認可も原則、買い手へ引継がれます。しかし、売り手企業の粉飾(許認可を全て取得していなかった、重大な法令違反がM&A取引後に発覚したなど)の場合は、引継げないケースもあるでしょう。

こうした事態に陥らないよう、許認可の有効性や、新規で許認可を取得するための期間・コストなどは事前の入念な確認が重要です。事業譲渡を活用する場合は個別承継となるため、事業に必要な許認可を買い手が取得していない場合は新規取得が必要になります。

海外M&Aのメリット・デメリット

海外M&A(クロスボーダーM&A)は、海外進出を行う会社が用いる手段です。海外M&Aにはこれまで紹介したものに加え、さらにいくつかのデメリットがあります。ここでは、メリットとともに海外M&A特有のデメリットを確認しましょう。

海外M&Aのメリット

海外M&Aのメリットは、海外進出をスピーディーに行える点です。通常、海外進出を行うには現地に拠点を設立し、従業員を集めて設備を整え、販路を確保するために取引先を探すなど、さまざまなプロセスを行う必要があります。

これらのプロセスを全て行うには時間もコストがかかりますが、進出したい地域の会社を買収すればプロセスを一挙に完了できるため、海外進出を円滑に行うことが可能です。

海外M&Aのデメリット

海外M&Aのデメリットは、現地の情報をしっかり集めておかなければ成功しにくいという点です。海外でM&Aで行う以上、その地域の法律や税制を把握しておく必要があり、言語の習得も不可欠です。

いずれ進出することを考えると、ただ現地のコーディネーターに任せたままというわけにはいきません。M&Aが成功したとしても、海外の拠点を運営していくうえで、現地の文化や慣習、宗教などさまざまな事柄を考慮する必要があります。

海外では、予期せぬ事件や災害、規制の変更が、M&Aや拠点運営を左右します。国内でのM&A以上に、予期せぬ事態に備えておく必要があることが海外M&Aの難点です。

【関連】クロスボーダーM&Aとは?海外企業の買収メリットや手法と事例を解説!

M&A手法別のメリット・デメリット

M&Aには多くの手法があり、生じ得るメリット・デメリットも変わります。本章では、M&A手法別のメリット・デメリットを解説します。

株式譲渡

株式譲渡とは、売り手企業の発行済み株式を買い手企業が取得し、経営権を得る手法のことです。株式の取得方法には3種類の方法があります。

  1. 相対取引
  2. 市場買い付け
  3. 公開買い付け

相対取引は、株主から直接、株式を取得する手法になります。市場買い付けは、上場株式を証券取引所などで買い付ける手法です。公開買い付けは、不特定多数の株主に対し、公告により株式買い付けを表明して市場外で株式を買い付けます。

メリット

株式譲渡におけるメリットとしては、他のM&A手法と比べて手続きが簡易である点が挙げられます。M&A成立後も買収対象企業はそのまま存続するため、独立性が保ちやすいのも特徴です。

株主総会の承認や債権者保護手続きなども不要のため、複雑な手続きを回避できます。買い手は株式譲渡によって過半数の株式を取得できれば、反対株主の存在に対応できるため、多くのケースでは50%超の株式取得が目的です。

デメリット

株式譲渡におけるデメリットは、株主が分散している場合、株式の全てを買収できない可能性がある点です。包括承継であるため簿外債務の存在に気付かず、負債ごと継承してしまうおそれもあります。

事業譲渡

事業譲渡とは、売り手企業の行う事業とそれに関連する資産、権利義務などを選別して売買する手法のことです。事業譲渡における事業は、「一定の目的のために組織され、有機的一体として機能する財産」をさします。

メリット

事業譲渡のメリットは、買い手は必要な経営資産をピンポイントで選択し買収できること、売り手も売りたいものだけを売れる(手元に残したいものは売らない)ことです。事業譲渡は個別承継であるため、株式譲渡のように簿外債務を継承してしまう可能性がありません。

デメリット

事業譲渡のデメリットは、個別財産の所有権や契約上の地位などの移転手続きが発生するため、時間と労力がかかる点です。事業譲渡で継承した消費税課税対象の資産には、買い手側に税金が発生する点も注意しましょう。

会社分割

会社分割には、「新設分割」と「吸収分割」の2種類があります。新設分割とは、単体もしくは複数の会社が有する、事業に対しての権利の全部または一部を分割し新しく設立する会社に引継ぐ手法のことです。

吸収分割では、単体もしくは複数の会社が有する事業の権利の全部または一部を分割し、他社へ引継ぎます。会社分割を用いたM&Aでは、対価を株式もしくは金銭などで行うことが可能です。

対価の引き渡し方法も、分割会社の株主が対価を受け取る「分割型」と、分割会社自体が受け取る「分社型」の2種類があります。

メリット

会社分割のメリットは、新しく発行される株式を対価として行えるので、資金を準備する必要がない点があります。包括承継であることから、事業譲渡に比べて手続きが簡便であり、M&Aに伴う従業員の移籍でも個別の同意は不要です。

デメリット

会社分割では、人事制度や社内システムを統合する際、現場が混乱し統合が円滑に進まない事態も考えられます。買い手企業が上場している場合、会社分割によって1株の株価が下落するおそれがあることも注意が必要です。

株式交換・株式移転

株式交換は、対象会社を完全子会社にする際に用いられる手法で、株式移転は、持株会社を設立する際に用いられる手法です。株式交換では、完全子会社となる会社(売り手企業)の全ての株式を、完全親会社となる会社(買い手企業)の株式と交換します。

完全親会社となる会社の親会社の株式を対価として用いる「三角株式交換」という手法もあります。株式移転は、完全子会社となる会社の全ての株式を、新しく設立する完全親会社(持株会社)の株式と交換する手法です。

世間でよく耳にする「ホールディング」と名のついた会社などが、これに該当します。会社分割と同様、株式交換・株式移転の対価は、株式以外に金銭などでも可能です。

メリット

株式交換・株式移転のメリットは、株式を対価とできるので、多額の資金を準備する必要がない点です。会社売却に必要な合意は売却企業株主の3分の2以上なので、少数株主の反対があっても完全子会化が可能です。

M&A取引後も売り手企業は法人として存続するため、独立性が維持できます。経営統合の作業を急ぐことなく、他の手法と比べて手間がかかりにくいこともポイントです。

デメリット

株式交換・株式移転のデメリットは、売り手企業の株主が買い手企業の株主となるため、株主構成が変化する点です。買い手企業が上場企業であった場合は、株式交換・株式移転を行うことで1株あたりの株価が下落するおそれもあります。

合併

合併とは、複数の会社を1つの法人に統合する際に用いられる手法で、新設合併と吸収合併の2種類があります。新設合併では、合併しようとしている複数社の権利義務を新設会社に引継ぎ、合併しようとしている複数社を全て消滅させる手法です。

吸収合併では、合併しようとしている複数社の権利義務を一社(存続会社)に引継ぎ、存続会社以外の会社(消滅会社)を消滅させます。

メリット

合併のメリットは、複数の会社が1つにまとまる点です。これにより、会社統合効果の早期発揮を期待できます。株式を対価とできるため、資金の準備が不要な点も、合併のメリットです。

デメリット

合併のデメリットは、負債を承継してしまうリスクがあることです。合併に伴い権利義務が包括的に承継されると、簿外債務を引継いでしまう可能性があります。

合併対象会社で重複する取引先があると、契約縮小の可能性もあるでしょう。会社合併の消滅会社は、文字どおり消滅するため、経営者にとって自社を残せない点も、デメリットといえます。

新株引受

新株引受とは、売り手企業が新株を発行し、それを引き取る権利と対価を交わす手法です。新株引受は、以下の2種類に分類できます。

  • 第三者割当増資(新株の割り当てを特定の第三者とする手法)
  • 新株予約権(あらかじめ設定した価額で新株を引き受ける権利)

第三者割当増資では、売り手企業が出資金として現金を受け取れるため、企業再生を目指す際に用いられることの多いM&A手法です。

メリット

新株引受のメリットは、対価として現金を受け取れるため企業再生の手法として有用なことです。そのほか、買収対象企業が公開会社であれば、株主の合意なしにM&Aを実行できる点や公開買付規制の適用を受けない点などがあります。

デメリット

新株引受では、新株価格の公正性やM&A後に100%支配権を得られない点がデメリットとして挙げられます。株式割合をある程度保有したいと考えたとき、資金面で敷居が高くなる点も注意が必要です。

資本業務提携のメリット・デメリット

資本業務提携は経営統合を行うわけではありませんが、資本の移動を伴うため広義のM&Aとして扱われています。海外M&Aと同様に、資本業務提携のメリット・デメリットも確認しましょう。

資本業務提携のメリット

資本業務提携のメリットは、会社の独立性を損なわずに会社同士のノウハウや資本などを組み合わせて事業に取り組めることです。資本業務提携は、基本的には会社の経営権を支配する手法ではないため、会社の独立性を維持できます。非上場会社と上場会社が提携する際、非常に有効です。

非上場会社が上場会社を買収するようなことになると、上場会社が上場廃止になってしまいます。それを防ぐために資本業務提携を行うというわけです。通常の会社同士の契約よりも強固な関係で事業に取り組めるため、一定以上のシナジー効果も期待できます。

資本業務提携のデメリット

資本業務提携のデメリットは、異なる会社同士がノウハウや資本を持ち寄ることで、それぞれの会社の機密情報が漏出するリスクがある点です。

単独で事業に取り組んでいれば機密情報が漏出することはほとんどありませんが、異なる会社同士が提携する以上、お互いにある程度、情報を開示します。それが情報の漏出につながる可能性があるため、開示する情報は慎重に選別しましょう。

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M&Aのデメリットとリスク

M&Aを行う際のリスクを考慮していない場合、多大なリスクを抱えることになります。その中で、特に重大なリスクは以下の2点です。

人材の流出

手法を問わず、M&Aは人材が流出するリスクを常にはらんでいます。M&Aは異なる会社同士が経営統合するため、一方の会社の企業文化と合わずに従業員が離職してしまうことは十分に考えられます。

買収される側であれば、会社が売られるということに対して抵抗感を抱くこともあり得るでしょう。人材の流出は、M&A後の経営に多大な影響を与えるため、従業員に継続して働いてもらえるよう対策を講じる必要があります。

経営統合が失敗するおそれもある

M&Aを行ったからといって、経営統合が必ず成功するとは限りません。M&Aが完了してから訴訟や債務が発覚することがありますし、買い手となる会社のやり方や方針が合わずに業績が向上しないということもあり得ます。

M&Aを完了させることに体力を奪われ、その後の経営統合がおざなりになっているケースも少なくありません。M&Aはあくまでも経営戦略の1つであり、M&Aを行うこと自体を目的に設定しないようにしましょう。

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M&Aによる従業員のデメリット

M&Aの際、売り手企業の社員が買い手企業に移ることで、新しい業務体制や異なる社内文化に順応する必要があります。この大きな変化は、売り手企業の社員にとってストレスの原因となることがあり、M&Aのデメリットの一つとして考えられます。

M&Aによる顧客・地域社会のデメリット

M&Aの実施にあたっては、顧客・地域社会に対してデメリットをもたらすこともあります。代表的なデメリットをそれぞれ順番に解説します。

顧客のデメリット

もし買い手企業と売り手企業が同じ市場で競合している場合、顧客は取引を続けられなくなる可能性があります。

企業が統合された後、一部の事業や製品が廃止されることで、以前と同じような取引ができなくなることも懸念されます。

地域社会のデメリット

企業の合併・買収(M&A)が行われた後、売り手企業の一部の事業が廃止されると、それを利用していた地域の住民にとっては不利益になります。

M&Aを通じて悪質な企業が地域社会に進出すると、健全な地域文化の維持が困難になることも懸念されます。

M&Aのデメリットを回避するための対策

M&Aを行う以上、デメリットやリスクは何としても回避したいと考えるのは当然のことです。では、そのためにどのような点を意識して進めておくのがよいのでしょうか。最後に、M&Aのデメリットを回避するための対策を解説します。

成功よりも大きな失敗の回避を目指す

M&Aは、成立すれば成功というわけではありません。例えば、M&A成立後に簿外債務が見つかったり、重要な人材やノウハウが流出してしまったりすれば、想定したシナジーは得られないおそれも出てきます。

そのような事態を避けるためには、大きな失敗の回避を目指すことを意識して進めていくことが大切です。M&Aにおいて大きな失敗の回避を目指すうえでポイントになるのは、デューデリジェンスの工程です。

デューデリジェンスでは、企業の買収価額を査定するだけでなく、リスクの顕在化や手元資料の信頼性を徹底的に分析します。しっかりと徹底されたデューデリジェンスを実施することで、意図せず継承してしまう債務の可能性などが把握できリスクを最小限に抑えることが可能です。

優秀な人材などが流出しないよう、事前にしっかりケアしておくことも欠かせません。

専門家の起用が最も有効な対策

デメリットやリスクを回避するために最も有効な対策が、専門家の起用です。M&Aに精通する専門家であれば、あらゆるデメリットやリスクから身を守る術を持っています。一般的にM&Aの際に専門家を起用するのも、こうしたリスクマネジメントにも効果的だからです。

M&Aの専門家をお探しになる際には、ぜひM&A総合研究所にご連絡ください。M&A総合研究所には、M&Aの経験が豊富なアドバイザーが多数、在籍しており、リスクの洗い出しや対策、相手先選定や交渉など、M&Aのプロセスをフルサポートいたします。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。随時、無料相談をお受けしておりますので、M&Aをご検討の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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M&Aのデメリットまとめ

M&Aを活用するとメリットが大きい分、デメリットやリスクも大きいです。慎重かつ計画的にM&Aを実行しなくてはいけません。中途半端な準備でM&Aを行うと、後々大きなトラブルが生じる可能性があります。

リスクを抱えている意識を常に持ったうえで、M&Aを活用しましょう。そして、M&Aの際は専門家を起用するのが得策です。専門家のサポートによりデメリットを把握できるだけでなく、その対策法もアドバイスが得られます。

煩雑なM&Aプロセスのサポートも受けられますので、M&Aの成功率を高められます。

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